あらすじ
東京・上野の片隅にある、あまり流行っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場には、客をもてなす個性豊かな女給がいた。竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里を、大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子。彼女たちは「西行」で朗らかに働き、それぞれの道を見つけて去って行ったが……。大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”。/【目次】稲子のカフェー/嘘つき美登里/出戻りセイ/タイ子の昔/幾子のお土産
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Posted by ブクログ
2025.直木賞、芥川賞の候補作品が
発表され、前回受賞作品がなかったことから
気になっていて候補作品をいくつか
読みたくなりました。
1番初めに目についたのがこの作品で
直木賞、芥川賞の候補作は読み進めにくい
物が多いような気がして躊躇したのですが
題材がカフェー(カフェではなく敢えてのカフェー)
だった事もあり読んでみました。
明治〜大正〜昭和と移りゆく時の中で
カフェーの女給として生きた数名の女性達の
物語。気を衒う派手さはないけれど
こんなにも静かに揺るぎなく本を読めたのは
久しぶりでした。
後半は戦中、戦後の女性達の大切な息子達が
出征し胸が詰まるようなシーンもあるのですが
決して苦しいばかりでも苦悩するばかりでもなく
読後は爽やかで年の瀬にとても良い作品に
出会えた事が嬉しいです。
今度こそ受賞作品が決まることを楽しみに
他の候補作も気になるところです。
Posted by ブクログ
忘れ去られたような寂れた一角に、そのカフェーはある。著名な哲学者にあやかって名付けられた正式名称を持つが、覚え違いによる哲学者名の誤りを帝大の教授に指摘され、備前焼の西行法師で看板を隠したことで、いつしか『カフェー西行』と呼ばれるようになった。女給の出入りも激しく、そこには様々な女給たちがいる。字が読めない女性もいれば、嘘つきな女性もいるし、十年後に出戻りしてくる女性もいる。
本書は関東大震災の二年後、大正十四年(いまからちょうど百年前ですね)から終戦の五年後、昭和二十五年までを舞台にした連作集になっています。視点も時代も移り変わり(重複する場所もありますが)、それぞれの短編はそれひとつひとつで一個の作品として形を成しながらも、通して読むと短編同士の繋がりに気付いて、世界観の奥行きが広がっていくのが、楽しく魅力的な一冊です。
分かりやすい派手さは脇において、丁寧に紡いだ文章から、市井の人々の確かな声が浮かび上がってきて、とても心地よく胸に響く作品でした。個人的には、「嘘つき美登里」と「タイ子の昔」が特に好きでした。
Posted by ブクログ
東京上野の場末、お客は近所の年寄がメインの、流行らないけど細々続くカフェー西行。そこで銘仙の着物の上に白いフリルエプロンを着て働く女給たち。彼女達を主人公に、大正末期から大戦後までの場末の風情を描いた連作短編。
物語の中で何か特別な事件が起こるわけでもなく、大きな変動に揉まれた時代の片隅の風情~カフェ、女給、夢二、エレベーターガール、戦争、そして終戦後の再生~を情緒豊かに、繊細に描いて見せます。変動の片隅がたまらなく愛おしく感じられる物語。嶋津さん上手いな。
『この世界の片隅で』に近い印象かな。お勧めです。
Posted by ブクログ
昭和の戦前の情景が目の前に流れるような本です。
カフェーと聞けば大正の頃を想像しますが、戦前、戦中、戦後のお話で、庶民のどうしようもできない無力感を感じました。でもその中で立ち直って行く人間。
特に悲しくも、驚くこともないのですが、淡々と続く日々を綴った良書です。
多分タイ子さんやセイさんは、本当にいたんじゃないでしょうか?ひょっとすると今でも谷中銀座辺りにいそうです。
Posted by ブクログ
大正〜戦後を舞台に、上野の池之端近くにある喫茶店で働く女性たちの群像劇。
自分の主人の不倫(かもしれない)相手や、大胆な嘘をつく同僚といった、同性に対しての興味や憧れ方というのが、どことなく女性的で、かつよい関係性だと感じた。
話の中で戦争を経ていくが、彼女たちなりの経験を通してより「いい女」になっていく過程も気持ち良く読むことができた。
Posted by ブクログ
嶋津さんの前回の本は、とても苦手でスルーしていましたが、今回こちらも直木賞候補作に選ばれたので購入。大正時代、カフェーで働く女性たちを描いていてとても面白かった。
Posted by ブクログ
とても良かった。大正から昭和に掛けてカフェーで働いていた女給達の物語。大事件は起こらなくて極めて平穏な日々。でも子供や恋人を戦争に取られるのは辛かった。「襷がけの二人」の著者
Posted by ブクログ
街中を歩けば、この作品の登場人物たちが働いている。
そんな情景が頭に浮かぶ。
戦前・戦時・戦後。それぞれの時間で戦う女性たちの生きる姿に、現代の裕福さの中であぐらをかく自分が情けないと感じた。
我慢して、我慢して、我慢して━━━。
そんな当時を暮らした人たちがいたことを、
忘れないでいたい。
Posted by ブクログ
装丁賞を差し上げたい。
当時をイメージした表紙デザインそして、本の上部
「天アンカット」であること。
歴史的背景が書ききれていなさが残念。
カフェーという場所がどういう場所なのか、そこの描き方のゆるさに肩透かしを喰らう。
それは読者側が知識を他で獲得するしかない。
たんたんと、市井の人たちのオムニバス的なお話。
Posted by ブクログ
大正時代のカフェー西行に関する短編集。オーナーが間違って覚えた西洋人(カフェーアウグイステヌス)の看板を隠すためツケで回収した西行法師の置物で隠してたら、そんな名前がついた店
◎
字が読めないタイ子は美人だが20代後半のカフェ店員。女子高の先生の鷲鼻の紳士がカフェに来て字を教えてくれる。程なく人気が出て京橋の店に移る。
◎
嘘つきの美登里は小さな嘘をつく。ある日どう見ても30後半のデブが19歳と偽ってカフェ店員の募集に来る。オーナーなので雇い入れる。妹小路と名乗り華族だと言う。どれが嘘でどれが本当か。高熱で家まで同行すると、成金の娘で引きこもっていたけど、銘仙にエプロンのカフェー給仕の格好をしたかったと言う自分と同じ理由。おじいちゃんに身請けされていった。
◎
盧溝橋事件からきな臭い空気が漂う昭和初期。女子高を出ているセイは出戻る。作家になろうと給仕していたが、事務員になり出ていくも事務員も28歳で定年の空気があり辞めて色んな仕事を転々とするも優秀な女は求められず出戻る。理髪師の男といい仲になり本を書くが出征し、帰らぬ人となった。
◎
タイ子のその後の話。京橋の店で妾になり、タバコ屋を営む。ガタイが大きかった息子の豪一と二人暮らし。息子は出征する。隣に住む豊子さんは理髪師の男の妹。豊子さんが悪阻で苦しむ中、ウナギを所望して探す。西行に久しぶりに行くとオーナーの菊田がいた。ボケてきてたがうなぎの缶詰を貰う。
◎
昭和一桁生まれの給仕の戦後数年後。マスターは美登里と結婚している。帰り道で国語教師俣野の家を通る。セイさんは闇市を任せれており、時折喫茶店にお土産を持ってくる。タイ子さんも常連として通ってる。幾子は母親が息子を亡くしたことに立ち直れない。タイ子さんの気遣いでゴールデンバットを贈呈され、死んだ息子の吸っていたので懐かしくなり立ち直る。タイ子さんの息子も怪我をしたものの生きて帰ってきていた。
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二百三高地髷。ゆばーばの髪型。日露戦争で激戦地だった二百三高地(旅順)から名前をとった。