あらすじ
【第174回直木賞受賞作】東京・上野の片隅にある、あまり流行っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場には、客をもてなす個性豊かな女給がいた。竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里を、大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子。彼女たちは「西行」で朗らかに働き、それぞれの道を見つけて去って行ったが……。大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”。/【目次】稲子のカフェー/嘘つき美登里/出戻りセイ/タイ子の昔/幾子のお土産
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Posted by ブクログ
上野のカフェーで働く女給のドラマを描く。大正から昭和を描く。着物にフリルのエプロンだなんて想像しただけでレトロで粋だ。
好きな世界観。
美しいが学がなく文字の読めない未亡人であるタイ子。客だった女学校の国語教師に字を教わる。その妻の稲子に関係を疑われる。タイ子より稲子目線の話。皆純粋。学がないことを恥じる稲子とタイ子それぞれがいじらしい。
嘘を好む美登里とどう見ても四十路近いのに19歳と言い働き始めた園子の話。園子の言うことのどこからどこまでか本当か!?
気が強く高学歴でプライドの高いセイの話。一度はカフェーを辞めて他の職につくもののやはり時代的に女性は活躍しづらい。結局、カフェーに出戻った。セイの魅力を引き出す理容師の客との淡い恋のような話。
タイ子のその後の話。息子が成長し、出征し、手紙のやり取りを通して過去を振り返る。
最後は戦後の話。カフェー西行は店長の菊田は高齢なのでコーヒーを淹れるだけ。コックは別に雇っていた。新しい若い女給を迎え、美登里と菊田が結婚していて、セイやタイ子も時々客としてくる。
それぞれ必死に生きていて、すごく素敵だった。
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向井正一に髪を切ってもらいたい。そして、「28歳でしょ?」と本気で言ってもらいたい。
容姿を美しくさせる能力が高いのに、年齢を当てる能力が破滅的な向井が面白い。そして、悲しい。
人間の魅力は、アンバランスさにあるんだなと思う。
向井といい、菊田といい、園子といい、脇役も魅力的だった。
明治から昭和に生きた女性を主人公に描いた小説。
きっと、私の曾祖母と同年代だろうか。
遠い昔の物語のようだけれど、一方で生きていた頃の曾祖母を重ね合わせると、最近の話のような気もする。
タイ子のナチュラルなパパ活は、全く古さを感じなかった。そして、セイの職場での男尊女卑。当時の女性の生き様は、現代とそう変わったものじゃないかもしれない。
誰も戦争に翻弄される人生を送らなくて済む世界になって欲しい。
Posted by ブクログ
直木賞作品として話題の本。カフェーを舞台に大正から昭和の時代をたくましく生きる女性の姿は、現代にも通ずる葛藤や困難を乗り越えて掴み取る自分らしさに共感する。優美な文章にどんどん引き込まれていき、その世界観にどっぷりとつかって最後読み終えたら、ため息が出るほど面白かった。
当時の華やかな世界から戦争が落とす悲惨な影。そこには母であり、妻であり、娘であるそれぞれの女性の姿が確かに存在していたと感じさせてくれる。
勝手ながら天海祐希を想像させるタイ子が、努力して学んだ文章で綴ったものの、出せなかった息子への手紙に涙し、今の時代も平和でありますようにと祈らずにいられなかった。
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ものすごく私好みのお話でした(о´∀`о)
大正から昭和の時代を生きた、「カフェー西行」で働く女給達の連作短編集。
連作短編集ってやっぱりいいな、と思いました。
前のお話では脇役だった人が次のお話では主人公になっていて、誰もがその人の人生の主人公なんだと気付かせてくれます。
一冊の中で二十年ほど経過しているので、その時間を生きてきた彼女達の暮らしに思いを馳せてしまいます。
若い頃は不安や不満があった彼女達も、歳を重ねた今は、後輩女給の悩みに、その人それぞれの言葉ややり方で、慰めやアドバイスを与えたりして。
きっとこの後輩女給も数年後には誰かを助ける言葉をかけたりするのでしょう。こう思うと歳をとるのも悪くないなと思えます。
こうやって時代や人は繋がっていくんだろうな。
スルスルと読みやすく、もっとこの物語の中にいたい、と思わせてくれる一冊でした。
Posted by ブクログ
時代を感じる小説ではあるものの
とても面白い。
色々な女給さん達が登場し
個性的な人物描写で
読みやすい。
寝る前に読んでいたが、楽しく読むことが出来た。
ドラマ化しても面白そう!
Posted by ブクログ
さすが直木賞受賞作。
時代物は苦手だったけど、読み進めるうちに引き込まれた。戦前から戦後の時代の流れの描写が細かく、しかし今に通じる登場人物の人柄や思考があり、親しみやすい作品だった。
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主人公の女性たちが、人間味に溢れていてとても魅力的だった。様々な視点から物語が紡がれており、その度に女性たちの人間味溢れた性格を素敵な個性だと感じてしまう。自分自身に対する嫌気や後悔も、時代と年齢を重ねながら自分の個性として受け入れ強く生きていく主人公たちに、胸が満たされあたたかくなるのを感じた。
女給や戦争、時代がめまぐるしく変化していく中で、カフェー西行での繋がりやそれを受けた帰り道での気持ちひとつ一つに、どうしようもないほどの胸が詰まる気持ちが生まれた。
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大正から昭和時代に、カフェで働いていた女性たちの物語。短編小説で、一人一人の女性の人生について、丁寧な心情描写で書かれている。読み終わった後は、登場人物に対してほっこりする気持ちになる。
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島津輝さんは『襷掛けの二人』についで2度目の作者さん。
この作品も直木賞候補に上がっていましたが、今回は見事に受賞なさいました。おめでとうございます。
時代も、女性の生き方というテーマも、襷掛けの〜とほぼ同じで、別の場所で生きる女性たちの物語になる。
小説としては本編の方がすっきりとまとまっていて、わかりやすいと思う。
というわけで、今回の小説。
初期のカフェの女給は、華やかで憧れの職業でもあったようだ。時代が進むにつれて、いかがわしい所と見られるようになり、規制が厳しくなった。「西行」は店主のおおらかで優しい人柄と、真面目な性格からそういう店にはならず、戦後まで、コーヒーを出し続ける店だった。
そこで女給として働くタイ子、美登里、セイ、園子、幾子と、その周囲の人々の人生を、群像劇として描いていく。最後まで読むと、全ての登場人物のその後がわかるのは満足感が高い。面白くて、読みやすい文章で、一気読みだった。文句なく面白かった。
Posted by ブクログ
直木賞受賞作品。大正から昭和初期の激動の時代、カフェー西行に縁のできた女性たちの物語。
どの話もいいけど、特に出戻りセイとタイ子の話が好き。セイと向井さんには幸せになって欲しかったし、タイ子の子供を想う気持ちには共感した。
本当に戦争は碌なものじゃない。飢えや空襲の心配がないのは幸せなことだと実感。
Posted by ブクログ
戦前から戦後に至るまでのカフェー西行で働く女給さん達の物語。
そうか、ほんの100年前の東京はこんな景色だったのか。皆それぞれ沢山思い悩みながらも周りの人に助けられ励まされ時にはそっと寄り添い…そういうことの積み重ねで人って何度でも前を向いて生きていけるんだなぁとしみじみ思った。
文章も読みやすく、昔の東京にタイムスリップしたかのような感覚が味わえて非常に面白かった。ずっと手元に置いておきたい良作
Posted by ブクログ
第174回直木賞受賞作品
美術海(近代図案コレクション)の図案のカバーが、大正時代を思わせ、目を惹きます。大正から昭和にかけて、喫茶西行で働いた女性達の物語にふさわしい装丁だと思いました。
ページをめくると、最初の情景を表す文章から引き込まれました。カフェー、女給、 昇降機ガールなど時代を表す言葉とカフェーで働く女性たちの生きざまが興味深かったです。
ひょんなことから西行という名前で呼ばれるようになったカフェーと、そこで働く女性達が時代の流れと共に変わっていく様子がうまく表現されていました。
大正から昭和へ、そして戦後と目覚ましく変わっていた時代に働いていた女性達の思い、生き方、家族への思いが伝わってきた見事な作品でした。読者の私は、どんどん登場人物の女性達に愛着がわいてきました。最後は未来への力を感じさせる終わりかたでした。何度でも読みたくなる作品で、とてもよかったです。
〈目次〉
稲子のカフェー
嘘つき美登里
出戻りセイ
タイ子の昔
幾子のお土産
Posted by ブクログ
戦前から戦後までの女給達の人生を詳細に描いていて良かった。中盤まではほのぼのした話が多いが、戦争の影はこの時代の話なら必ず差してくる。内地に残された女給や登場人物達にも戦争の傷は多く読んでいてずっと悲しい気持ちだった。
カフェーで働いていたそれぞれの女給達がその「傷」とどう向き合い、生きたのか。そしてその傷がどう「再生」されたのか。
読後温かい様な悲しい様な、そして希望も感じる様な終わり方が良かった。
Posted by ブクログ
一つひとつの作品の終わり方は、「なるほど」と思わせてくれる。上品よりも、少し通俗的と思えるような感じ。
一つの連作となった時に、何かそこに込められたメッセージはあったのだろうか。
Posted by ブクログ
さらさら〜と読める物語と思いながらそれなりに楽しんで読んでしたが、「出戻りセイ」と「タイ子の昔」は他と違いました。戦争の影響が市民に忍び寄り、日常を変化させ。
菊田マスターの温かい優しさ。タイ子さんの美しくさや色気、人を惹きつける魅力や奥深さ。セイさんの豪快さ。西行ってすんごいカフェーだ。その上、美味しいコーヒーが飲めるなんて言うことなしですね。
Posted by ブクログ
温かくて少しほろ苦い物語でした。さびれたカフェーに勤めた3人の女給の人生が絶妙に交差していました。さらに、戦中、戦後という時代背景もあって、大切な人を兵役にとられる悲しみや、その中でも懸命に生きようとする人たちの強さを感じました。
Posted by ブクログ
1ページ目を読んで、
ん、ちょっと文体に馴染みがないぞと思ったけど
慣れてくると知らない言い回しも学べて
たのしく一話一話読めた。
若気の至りでトゲトゲしていたひとが
一周まわって毒気が抜けたり
ムキになってした厚化粧が功を奏したり
なんだかみんなかわいらしかった。
すべてを包み込んだ鷹揚な菊田さんありがとう。
戦後とコーヒーでよしながふみさんの
「環と周」を思い出した。
女性の28歳定年説に憤ったりもしたけど
この時代の男性が戦地に赴くこともまた
許しがたいことだよ。
タイ子さんがタバコ屋を開業できたのは
未亡人だったからなんだろうか、とかとか。
戦争、どんどん遠い話になっていくけれど
そこにあった過去があっていまがあるんだよなあ。
個人的なたのしみとしては
台東区のあたりの馴染みの地名が多々出てきて
かつて住んでいたまちを思い出し懐かしかったし
装丁や製本も少しレトロ風味で趣深かった。
Posted by ブクログ
たくましく強い そして可愛い女たち 市井に生きる人々の物語 千駄木 谷中 本郷 上野 馴染み深いところ
一緒に歩いてるようでした 日常の幸せを感じる一冊でした
Posted by ブクログ
読んでみて良かった。
今とは全く違う立場の女性が、その時代のなかで頑張って暮らしている日常が描かれている。
この時代の女性から考えると、今は女性が社会に声をあげられ分、幸せになってるんだなと思う。
昔の時代の女性は何で男性に従っていたのか?
他のドラマや作品をみていてモヤモヤしていたことが、この作品で気付いて解決した。
女性から学業を奪うことで文字の読み書きもできない、家事しか役割を貰えない。
"分からない"ことを分かろうと思ったり、疑問に思ったりする以前に"自分には学がないから"と引け目を感じながら生きていたんだなと感じた。
Posted by ブクログ
第174回直木三十五賞受賞作。
大正末から始まって、戦後すぐまでの東京下町のカフェーの変遷とそれに関わる市井の人々の生活がリアルに感じさせます。
特に2回出征した理容師の世代が祖父の職や世代と重なり、祖父は召集令状を受けてからすぐ修正になったため出征せずに済んだと聞いていたので、自分の生まれる目前の時代を感じました。
前に読んだ著者の「襷がけの二人」も祖母と重なるところがあったので、著者には親近感がわきました。
戦前のカフェーは今で言うところのスナックやバーやパブのような感じですね。
カフェーから戦中統制により喫茶となり、戦後は純喫茶となるのも、時代を生き抜く大変さを感じました。
本当の店名のアウグイステヌスがアウグスティヌスを間違えてつけたことや店頭の西行像から西行と呼ばれるところはユーモアも感じられます。
Posted by ブクログ
◾️ページ数 P227
◾️読んで抱いた感情
しっとりとした日本の古き良き情景、風情
戦時中の家族の悲しみ
◾️感想
カフェというと喫茶店というイメージだけど、ここでいうカフェーとは今でいうスナックやキャバクラのようなイメージに近いものだったんだなと思った。
それぞれの人生を短編的に綴っている物語でそれぞれの人生がジーンと胸に迫るものがあった。
豪一さんが生きていてくれてよかった!
Posted by ブクログ
激動の時代を、しなやかに
凛と生きる女性たち_
直木賞受賞作という期待を大きく超えて
一文字一文字が心に深く染み渡る
本当に美しい作品でした
装丁も着物のような素敵なあつらえで
気に入ってます♡♡
舞台は大正から昭和
女性が自分の人生を自由に選ぶことが
今よりもずっと難しかった時代に
彼女たちが守り抜いた「自分らしさ」や
ささやかな幸せが描かれています
五感を刺激するような
瑞々しい文章に触れていると
まるで自分もその時代の風に吹かれ
賑わうカフェーの隅に座っているような
錯覚に陥りました
その時代ごとに迷い、悩み
時に諦めそうになりながらも
最後には自分の足で一歩を踏み出す
しなやかな強さは
いまを生きる私の背中を、静かに
力強く押してくれました!!
Posted by ブクログ
時代は大正から昭和。
東京・上野にある「カフェー西行」で女給として働く女性たちの人生が描かれている。
女性たちはそれぞれに魅力的だったが、マスターの存在も印象的だった。
静かな優しさをまとい、どこか揺蕩うような雰囲気が心に残る。
Posted by ブクログ
戦前、戦後のカフェーの女給さんをめぐる短編集。柔らかな文体で穏やかな時間が静かに流れていく物語。
しかし物語に大きな起伏はなく、その静けさゆえに、やや物足りなさも残る一冊でした。
Posted by ブクログ
大正から昭和へ。戦争の足音が背後からひたひたと迫り、時代全体が重苦しい影に覆われていく。そんな逃れようのない閉塞感の中で、上野の「カフェー西行」に集う女たちの物語。
タイ子と稲子の、上品な仮面を被りながらの丁々発止のやり取り。相手より優位に立とうとする。
けれど、そうして意地を張り合い、出し切ることでようやくお互いに「気が済んだ」のだと思える幕引きには、理屈抜きの潔さを感じる。
印象的だったのは、美登里が見せる「してやったり」の瞬間。
彼女がつく大胆な嘘は、ままならない日常に風穴を開けるための、彼女なりの切実な生存戦略のよう。あのスッキリとした読後感は、彼女たちの図太い生命力に触れた証のようで、何とも言えず心地いい。
最終章。
時代の波がすべてを塗りつぶしていく静かな空虚さが漂う。
けれど、だからこそ、かつてこの場所で確かに彼女たちなりに誠実に、強く生きた姿が、消えない残像のように胸に焼き付いて離れない。
そこに歴史がある。