あらすじ
【第174回直木賞受賞作】東京・上野の片隅にある、あまり流行っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場には、客をもてなす個性豊かな女給がいた。竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里を、大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子。彼女たちは「西行」で朗らかに働き、それぞれの道を見つけて去って行ったが……。大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”。/【目次】稲子のカフェー/嘘つき美登里/出戻りセイ/タイ子の昔/幾子のお土産
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直木賞受賞のニュースを見た直後に予約してやっと読めました。
朝ドラ好きとしては、NHKにドラマ化してほしい素敵な作品だった。
戦争の影が見え始めると、不穏な世相になり、悲しい話も増えていくが、復興も感じさせられるラストで、登場人物のその後が別の話で分かるのも安心できた。
特に印象深い短編は「出戻りセイ」で、ページを捲った後に読んだ最後の一文はショックで心が痛くなった。
これは文章で、紙の本で読むからこその醍醐味だと思う。(電子書籍やオーディオブックを否定しているわけではありません。念の為)
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文章の佇まいというか、文章の間がとても心地よくて、ゆったりとした気持ちでお話の中に入り込めました。語彙も漢語よりも(ちょっとこだわりのありそうな)和語が多く使われていて、作品にたおやかな雰囲気を醸し出しています。
様々な境遇が語られて、それは幸せな話ばかりではありませんが、少ししたたかでしなやかなユーモアが根底に流れていて、人生いろいろだなぁという深みを感じさせてくれます。
登場人物たちが、他者を見る見方が、相手から見られている見方と食い違っているのが、とても面白く読めました。自己卑下の気持ちを持っているのに、相手からは全然逆に堂々としていると思われていたりとか、現実は案外そんなものかなぁ、と可笑しくなりました。
時代の流れ、人の流れの中で、人生は過ぎていくんですねぇ。。。
人というのは、可愛いものです♡
今後、何度も読み返したくなるだろうなぁと感じた作品でした。
超オススメの愛読書です♡
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面白かった。とある喫茶の女給たちの物語。上野、千駄木、谷中と地名が出てくる度に今の景色との違いを思い浮かべて、ふっとなる。
「出戻りサイ」が好きな人は多そう。わたしもだいすき。
女にとって女であるということは生きることと同義なんですけども、それが嫌味なく書かれているというか生き様として見えるところがすき。したたかでありたおやかであり、己の手で生きていくんだという気概を感じさせる。
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短編が繋がっていて、その後、あの彼は、あの彼女はどうなったのか、が最後まで描かれるので、気持ちが途切れず読むことができた。
登場人物が皆、芯があって優しくて逞しくて愛おしい。それぞれの時代背景は違っても、日常をただ一生懸命に生きている人々。派手さはないけどじんわーり心が暖かくなる。宝箱のような1冊。
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物語全体として、登場人物たちが今ではすっかり聞くことがなくなったモダンな喋り口調?を使って話で展開されていて、それが帰って新鮮で引き込まれた。
大正と昭和初期の時代背景や人々の生活を舞台とした、読み手をタイムスリップさせてくれる構成がとてもよかった。
カフェー西行の歴史とともに登場人物たちの人生そのものを透かして見て行く物語でユーモラスで愛らしいストーリーで心癒されながらも、厳しい時代背景が彼女たちの人生に辛い試練を与えるストーリーもあり、読む手を止めることが難しかった。
また、本の貞操も和紙が使われたりして大変綺麗。
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直木賞受賞作。
関東大震災から2年以上が経った東京・上野の片隅にある、あまり流行っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場では、竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里、そして、美登里を大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子と個性的な女給たちがいた。
大正時代から昭和の戦後までを「西行」で働く女給たちを主人公にした連作短編集。
装丁がとにかく美しい。装丁を見るだけで、大正モダンな物語だとわかる。
カフェーでのやりとりや日常生活の中に少しずつ戦争が紛れ込み、彼女たちの人生にも影響を与える。でも、その中でも彼女たちは彼女たちなりに生活していく。
とても読みやすい淡々とした文章の中にもクスリと笑えるところがあったり、重い場面もあったり。
『神都の証人』を読んだ後、この本が直木賞を取って欲しかったと思ったけど、この作品が受賞したことに納得できる内容だった。
昨年から今年にかけて多くの「昭和100年。戦後80年」の本を読んでいる。読むたびに戦争で得たものなんて何もない、失うものだけが大きいと思ってしまう。
しかし、『カフェー西行』の正式な店名が未だ覚えられない。
Posted by ブクログ
大正~昭和の時代。カフェー西行を軸に当時を生きる女性たちの姿が描かれる。今と変わらず恋をし、働き、何かに憧れ、家族を思いながら溌剌と生きる姿に読後は温かいものが胸に広がった。いいもの読んだなぁ···。戦地に赴いた息子への手紙には思わず涙。
〈心に残った言葉〉
"ただ豪一が帰ってきてくれればそれでいい。豪一さえ無事ならば、家が焼けようが日本が敗けようが、たいした問題ではないのだ。"
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直木賞
さすが直木賞受賞作。うまいなあ。
私の好みのジャンルで、文章。
満場一致で、受賞が決まったそうだが、さもありなん。
『襷がけの二人』にしても、本作にしても、時代設定といい、内容といい、大きなストーリー展開はないものの、もっと読んでいたい本だった。
戦争を挟んでいるものの、登場人物たちが、前向きに生きているのがよかった。
連作短編集であり、ゆるくつながっているものの、わざとらしくなくよかった。
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連作短編集5篇
上野の少し寂れた所にあるカフェ西行で働く女給達の戦前戦後の日々の物語。精一杯生きる彼女たちに戦争が落とす影、マスター菊田氏のおおらかな優しさに癒されました。
Posted by ブクログ
戦前戦中戦後、一つの喫茶店とそこに関わる人達のそれぞれの物語が少しずつ展開されていく。
ドラマチックな展開や、あっと驚くような事件があるわけではない。小さな問題と小さな幸せ、そこには喫茶西行がある。
時代は激動だが、ハートフルな表現でほっこりをもらいました。
当時の喫茶店の情景等を思い浮かべながら浸れる1冊です。
Posted by ブクログ
『カフェー西行』を中心に、淡々と続くそれぞれの日々。
楽しいことも、つらいことも、悲しいことも、
夢見ることも、人と人が縁で交わり癒されていく。
戦前、戦中、本当にこの人たちが居たんじゃないかと思えるほど、街並みやキャラクターが思い浮かびます。
Posted by ブクログ
あー、なるほどね
こりゃ直木賞取るわ!
だって良い作品でしたもん
この作品の好きの度合いは様々だと思います
めっちゃ好きって人もいれば、うん好きって人もいるし、まあ好きって人もいるでしょ
だけど、この作品嫌いだわ!っていう人はいないと思います
きっと読んだ人みんながそれなりに好きになって、嫌いっていう人がいないのなら、そりゃ直木賞取るでしょ!
(直木賞の選考基準はこんなにもシンプルなのです)
安心して読める一冊です♪~(´ε` )
Posted by ブクログ
直木賞受賞作
カフェーで働く女性たちの成長物語。戦時中の苦しい生活や、周りの人との助け合う姿が描かれており自分の生活や夢を守るために奮闘するところが印象てきでした。前に出てきた人物が成長してまた登場するのがリアルで良かったです。
Posted by ブクログ
大正から昭和にかけ、女給として働いた女性たちの物語。時代が進むにつれて、女性たちの生き方が少しずつ変わっていく様が丁寧に描かれていました。
個人的には『出戻りセイ』と『タイ子の昔』がお気に入り。セイと向井の関係がとても良かったし、タイ子の息子・豪一を思う気持ちに胸が締め付けられました。
この一冊で、女性の色んな気持ちを体感できる作品でした。
Posted by ブクログ
直木賞って少し大人のイメージがあったけど、受賞作を読んでみて少し理解できた気がする。
全体を通してのひっそりとした雰囲気と、時代背景と、人と関わり。全てがカフェ西行を中心として繰り広げられていく。時代も、人も、移り変わっていく。そして芯の優しさが、全体に沁みている。
旦那(先生)とタイ子の関係を疑いつつもタイ子の美しさに見惚れる稲子、そしてそんなタイ子は夫に先立たれ、子供の豪一を育てつつ文字を教わる。豪一は戦争へ。セイも西行に戻り、美登里も一時離れつつ西行にもどり、最後はマスターの菊田と結婚してるなんて。
セイの話が1番好きだった。戦時の悲しい背景を感じながら、強い女性を描いていた。というか、この物語の女性はみんな強い。それは力とかではなく精神力かな、強かだなと感じる。
私の好きな恩田陸の描く女性に似ている。
でもそれよりも人間っぽくて、それでいて自己嫌悪にもなりつつ前を向く強さがある感じ。
より近く感じられる。
セイの思い人って、タイ子の仲良い人(豊子)の連れ子だよね。
つながり合っている感じも、いい。何がいいんだろう。優しさとかではなく、静かに関わり合って、影響しあっている感じ。直接的ではないけど他の人を描写することで、静かに優しくしっとりと取り巻く環境を教えてくれる感じ。豪一が生きていたって話もそうだよね。
もう少し歴史について詳しければ思うことも違ったかもしれない。
あと子供がいて、母親視点でも違ったかもしれない。読んで思うことは。
時代背景と人間関係、そして戦争の前後で「西行」の在り方変化もあって面白かった。わかりやすい。しっとりしていた、全体的に。ずっと。しんみりと。物悲しさを漂わせつつも、ずっと優しい物語だった。みんな素敵な人間関係を持っている、西行を軸として。
西行が素敵なのはマスターの菊田の人間性のなすところ。みんな救われていたんだ、西行の存在に。
大人になっても、戦争が終わっても、いつまでも帰れる場所。
それが西行なんだ。
誰かの居場所になるって、狙ってできることじゃないよ。
2026年1月14日、第174回直木賞受賞作。ほぼ満票で選ばれた作品。
作者の島津輝さんって知らなかったな、56歳での受賞。
派手な場面は描かれなくとも、確かにそこに人間が存在したと感じられる読後感。うーん、まさに。
島津さん「私は物語を書きたいというよりも人を書きたいという気持ちが強いんです、読んでくださる方それぞれにとっての好きな登場人物が1人でも見つかればいいですし、あわよくば全員を好きになってもらいたいです」
というコメント、好きだな。作品に愛を感じる。
第173回は直木賞も芥川賞も受賞作がなかったという異例の結果だったからこそ、今回はいいニュースだったと。隙がない完成度、短編集なのに全編のクオリティが一定以上に保たれている。全てが等しく面白い。
本当に読んでよかった。
そしておそらく、読む場面によって感じ方が違うから定期的に読み返したいと思った。
Posted by ブクログ
この前に襷掛けの2人を読んでからのこちらだったのだけど、ずっといい。同じような時代でも何が違うかというと、まず、出てくる人全てを愛せるし共感できる。切ないけど愛おしい。この時代の女性たちを通して元気をもらえるのだ。それぞれの繋がりもとてもいい。上野、谷根千、浅草あたりのカフェーに行きたくなる、というか、働きたくなるなぁ。日々、朝が来たら背筋を伸ばして仕事に向かう気持ちにさせてくれる良書。
Posted by ブクログ
直木賞受賞で読み始めた作品ᴗ ̫ ᴗᴗ ̫ ᴗᴗ ̫ ᴗ
戦争がメインテーマではないけれど、それでもやっぱりこの時代の人々の暮らしは戦争と切っても切り離せないんだなあ。
戦争中、出征とか疎開とかではなく、戦争前の暮らしと地続きの暮らしをしている人から見た戦争をちょっとだけ想像できるお話だった、
Posted by ブクログ
登場する女性達の生きる姿が、健気で一生懸命で、素敵でした。
それぞれ世間に対して引け目や不満はあるものの、決して卑屈にならず、前を向いて生きているところが清々しく、文中にある可笑しみも伝わってきました。
戦中の女性達の辛さを思うと、辛うじて守られている今の平和の大切さを痛感します。
Posted by ブクログ
平らかな文体が読みやすく、その分一撃が強い。
面白かったと言える話だが、戦争の時の描写の何気ない一文にやられる。マジで途中ひぃ、となった。
カフェーで働くそれぞれが事情があり、でも生活があり、必死に生きている。今とは違う常識に腹立たしく思うし、ゾッとするところもある。
生きることが今よりも難しく、でも確かに逞しい彼女たち。なんだか眩しく思えるよ。
Posted by ブクログ
モノが豊かな時代ではないけれど、ヒトへの関心、思いやりが窺い知れる物語でした。『カフェー西行』で働く滑稽な女性たちの隙間に、悲惨な戦争を挟む哀楽のバランスが良かった。タイ子が幾子に贈った粋な計らいや、菊田の優しさが心に染みた。第174回直木賞受賞作。
Posted by ブクログ
戦中、戦後をカフェー西行という鄙びた喫茶店で生きた女性たちの物語。
文体にユーモアがあり、笑ったりじんわりと胸が温かくなったり、目頭が熱くなったり。
嘘つき美登里、タイ子の昔、出戻りセイどれも良きエピソード。不慣れなタバコに咳き込む字面に笑ってしまった。
Posted by ブクログ
彼女たちの働く姿が素敵でうれしい気持ちと、彼女たちが生きた時代の過酷さに胸が詰まる気持ちを行ったり来たりしながら読んだ。コーヒーを飲みながら読むのがいいかも!
【読んだ目的・理由】直木賞受賞作が読みたかったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.2
【一番好きな表現】見られることで、自分という存在を、誰かに知ってもらいたかったのだ。(本文から引用)
Posted by ブクログ
大正から戦後にかけて戦争の重くのしかかる影の中、
懸命に生きるカフェーで働く女給さんたちの短編集
ほっこりもあるけど胸が締め付けられることもあり、
どの話もバランスが絶妙でした
美登里さんの話がお気に入り
Posted by ブクログ
さて、明日はどんな一日になるのでしょう。
タイ子の場合は出世して、
稲子の場合は安心して、
美都里の場合は友達が出来て、
セイの場合はその恋心に気付かされて、、。
出世も安心も、喜びや恋心を感じることも、
どれも人生の一時でしかない。
それなのに、過去を振り返る時に思い出すのは
いつも感情が動かされた時のことばかり。
「カフェーの帰り道」は、大正から昭和にかけて
同じカフェーで働いていたりそこを訪れた女性たちの群像劇。
明治に開いた華やかなカフェ文化と、
その後待ち構えていた戦争は、明と暗をわかりやすく表現していて、
その時代を生きた女性たちの日常に、どんな花を咲かせ
どんな影を落としていったのかを丁寧に描き出していた。
特に印象に残ったことで言えば、
美都里の章で登場する園子さん。
彼女が唐突に現れた時は驚いたし、
実際に物語の中で得体の知れない人物として動き回っている時には、
なんとも言えない異物感や、少し嫌悪感さえあったのに、
正体を知った途端に「まあ!」と言いたくなるそのあっけない結末が、
ちょっとしたスペクタクルのように面白かった。
そして最終章の最後の一幕は、
たばこ文学の一ページにしっかりと載せてほしい一幕です。
カフェーという日常の延長線にある場所を舞台として設定していることから、
読んでいる方としては、なんとなく誰かの日常を少し覗かせてもらうような
ちょっとした好奇心くらいの軽い気持ちで読み進める。
ページを手繰るうちに、図らずも感動するし切なくなってくる。
さて、彼女らの明日はどんな一日になるのでしょう。
きっといい一日でありますように。
Posted by ブクログ
連作短編集という形式、短編集の中では、没入した世界観を短編毎に切り替えなくてもよいし、気になるあの人がどうなったのかその後もわかるし、登場人物が少しずつ色濃くなって親しみが持てるようになってくるのがいいところ。
戦争に突入して家族が出兵するあたりが読ませどころだ。この山場がこの作品を直木賞にさせたんだろうな。
Posted by ブクログ
戦前戦後、とあるカフェーで働く女性たちを主人公にした物語。
エンタメとしてのわくわく感はそんなに無かったけれど、優しくて暖かくて、「素敵なお話だったな」とじんわり反芻したくなる連作集だった。
大正昭和の街の風景や市井の人々の空気感が味わえるのも面白かった。
個人的に「出戻りセイ」のお話が1番好き。「幾子のお土産」も本の最後を飾るにふさわしい話で印象に残った。