【感想・ネタバレ】カフェーの帰り道のレビュー

あらすじ

【第174回直木賞受賞作】東京・上野の片隅にある、あまり流行っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場には、客をもてなす個性豊かな女給がいた。竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里を、大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子。彼女たちは「西行」で朗らかに働き、それぞれの道を見つけて去って行ったが……。大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”。/【目次】稲子のカフェー/嘘つき美登里/出戻りセイ/タイ子の昔/幾子のお土産

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Posted by ブクログ

ネタバレ

戦前から戦後にかけて、カフェーで女給として働く女性たちの連作短編集。

登場人物みんな個性的で面白い。みんな事情があって「カフェー西行」というカフェーで働いているのだけれど、それぞれ容姿にしろ、育ちにしろコンプレックスがあって、どこか卑屈だった。そこが同じ女性として共感できたし、自分の持っているポテンシャルでどうにか生きようとしている姿に元気を貰えた。数章に渡り、カフェー西行で働く女給たちの生き様を見て、最後は登場人物みんなが愛おしく感じた。

また、最初はカフェーで働くただのお仕事小説的な小説かと思ったが、章が進むにつれ、どんどん戦争の話へと移り変わったのがぐっと物語に引き込まれたポイントだったように思う。

各章は同じ時期の話とは限らず、1章で脇役として出てきた女給の子供が、別の章では時を経て、戦地へ出征することとなる描写がある。私は「あの時、あんなに幼かった子が…」と泣きながら読んだ。

当時、戦争に行く訳でもない女性という立場で、どう生きたか。

身を削る思いで愛する人を戦地へと送った女性たち。
この作品は、フィクションではあれど、戦時中はこのように苦しんだ人がいっぱいいたのだろうな、と想いを馳せることが度々あった。

戦争は、決してしてはいけないと改めて思った。

戦争を知らない世代が国民の8割を占める現代。
語り継ぐ人が減って、戦争が風化している中で、こういった作品があると、戦争のおぞましさを忘れずにいられる。日本は、戦争を決して忘れてはいけないと思う。この本を読んでから、平和を祈らずにはいられない。

しかし、戦争をテーマにしながらも、この本が暖かく感じる所以は、戦争のおぞましさだけではなく、そんな中どう生きたかを描いているところだと思う。

戦時中でも人との繋がりを忘れず、カフェーで働いていた皆で力を合わせながら少しずつ立ち上がる登場人物達に、最後は元気や勇気を与えてもらえる、とても良い作品だった。

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2026年08月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大正時代の舞台設定が元々好きで、冒頭からその時代ならではの装いや文化に惹かれるとともに、現代に生きる私たちと通ずる女性の感性の動きが精緻に描かれていて、文体も心地好くかつわかりやすく、情緒のある見慣れぬ単語も上手く扱いながら溶け込むような優しさがあってとても好きな作品となりました。
カフェーを取り巻く女性たちの短編集で、各章スポットの当たる人物が変わるも全て繋がりのあるお話となっており、時系列も進む形となっています。
途中から戦争の時代が色濃く表れており、かつ印象的だったのは「戦争時代・戦後の日常生活を生きる人々」が描かれていたことです。戦争そのものに焦点を当てた作品は数多くあるかと思いますが、戦争の悲惨さそのものではなく、そこに生きる人々の、時代が違っても現代と通ずる感情がひたひたと心に染み入りました。
「お国のために」と国民全体が思い込んでいた時代という漠然とした印象がありましたが、子を想う親の心は今も昔も変わりなく、再び戦争の時代を迎えぬようにしなければならないと思いました。

0
2026年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

時の流れとともに、いろんなものが大きく変わっていく。穏やかだった日常もなにもかも、戦争がすべてを塗りつぶしていく。それでも変わらないものがある。そんなことを感じさせてくれる作品でした。おもしろかったです。

大正から昭和の時代にかけて、喫茶店「カフェー西行」で女給として働いていた女性たちの人生の足跡を追体験するような物語。
最も秀逸に思ったのは、直接的な戦争の描写がほとんどないのに、その悲惨さがありありと感じ取れることだ。残された人側の、特に女性の目線で、戦争に対する思いが赤裸々に表現され、戦争は国家を運営するお偉いさん方が自分たちの面子を保つためだけにやってることで、国民のことなどまったく考えていないんだなということが今更ながらはっきりと理解できた。

第174回直木賞受賞作品で装丁がお洒落で厳かなこともあり、当初はとっつきにくさを感じていたのだけど、読み始めてみるとそんなことは吹っ飛んでしまった。ちょっと古い言い回しだったり、初見で読めない漢字はいくらかあったけども、それもまた勉強です!

それにしても、当時の雰囲気をそのままの空気で感じられるようなこの感覚はなんだろう。著者の先生の技巧の為せる技だとは思うのだけど、うまく説明できない……。
まるで私自身が「カフェー西行」の客になって、懸命に生きる女給たちの姿を眺めていたような……。こんな言い方をするとストーカーみたいになっちゃうけど、疚しい意味はもちろんありませんよ!

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2026年08月20日

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