【感想・ネタバレ】でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―のレビュー

ユーザーレビュー

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2022年08月30日

ノンフィクション作品に初挑戦。
当時幼かったからか、このような事件があったことを恥ずかしながら知らなかった。
フェイクニュースが蔓延る今だからこそ読む価値のある本だと思った。
マスコミのいい加減さには辟易とさせられた。
教師目線の話のため、自称被害者の両親はどんな気持ちで、こんなでっちあげをしようと...続きを読む思ったのか一才分からなかったのが怖かった。
でっちあげはさておき、自分が親になったときに、教師を一方的に責めるような人間にはなりたくないなあ。


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Posted by ブクログ 2020年08月31日

こんなに大事になっておいて
教育現場は何一つ変わろうとしない
変えようとしない
お上たちは何を考えてるんだろう。

なにが子どもファーストだ
逃げ回ってても本当の教育にはならない
そんな環境の中で野蛮に育った
その子供たちにどうやって
国の将来が任せられようか

最後まで追って事実を明かしてくれた
...続きを読む著者に拍手を。
映画化等、もっと話題になるべきだと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年07月18日

「筆者の主観が多い」と批判、あるいは否定している人に言いたい。著者の主観を除いて、客観的なことだけ拾って読んでみたらよいと。鼻持って振り回された子が鼻血で血まみれで帰ってきても病院に連れて行かなかったり(私だったら鼻骨骨折を疑って病院へ行く)、拳でパンチされたならいざ知らず、ほぺったぐりぐりされて歯...続きを読むが折れたりするか?口内炎より頬が腫れ上がるだろうよ、とか、虐待現場の小学校に似た別のっ小学校に近づいただけでPTSDを発症するような状態の子が、校庭でサッカーの練習は元気にできたり、通ってもいないアメリカの小学校で進級したり、もうツッコミどころ満載でノンフィクションでなければ「笑い話か?」と思う。特に反省してほしいのは言うなりの校長、そして弁護士と精神科医!頭の悪い私でも気づくことに気づかないなんて。法律家でしょ?科学者でしょ?プロでしょ!?

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Posted by ブクログ 2022年03月24日

読みやすく先が気になり、ほぼ一気読み。

内容の気持ち悪さと読後感の悪さは、下手なホラー小説よりもある。

悪意を持って他人を落としめようとする人に、善意の人は無力なのか?

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Posted by ブクログ 2021年02月27日

読み始めからずっと、
眉間にしわ寄せ、口角下がりまくりの
ひどい人相になりっぱなしで一気に読みました。

(喫茶とか電車で読んでたけど、側から見たら怖いだろうなと...)

ひどくてひどくて、信じられないことばかり続いて、しかも実話とは。

怒り憤り悲しみやるせなさ、
いろんな負の感情でいっぱいにな...続きを読むり、決して気持ちのいいものではないけど、それだけ心を揺さぶられたということ。

メディアが報道することなんて
ほんの一部でしかないんだろうなと痛感。
ニュースを見ただけで知ったような気になって、見知らぬ誰かを心なく批判しないための、ストッパーが1つ増えた。

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購入済み

モンスターとしか言いようがない

まろ 2021年02月05日

信じられないような理不尽な言いがかりにイライラしながらも
早く真実を暴いてほしくて一気に読んでしまった。

これが実話というから恐ろしい。

報道される全てが真実じゃないかもしれない。
かといってこの話自体も全てが真実とは限らない。

何を信じたらいいか考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2020年10月23日

内容は知らずに購入。
冒頭から目を覆いたくなるようなひどい体罰と自殺強要に対する殺人教師の記事でこの教師への怒りが湧いてくる。
そして次の章からこの教師目線で冤罪事件がなぜ起こったのかの顛末が進んでいく。
わかりやすくこの教師に悪意を抱いていた自分はカウンターを喰らってしまった。
この記事を書いた記...続きを読む者達や冤罪に追い込んでしまった人達も同様の考えだったのだと思う。
子供は善で、教師は悪だと短絡的に考えてしまったのだろう。
先入観で考えず、きちんと事実を根拠にして考えられる大人にならなければ。

結果、半沢直樹や水戸黄門のような気持ちの良い終わり方じゃないのも考えさせられる。
ノンフィクションはやはり面白いなあ。

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Posted by ブクログ 2020年07月15日

モンペとマスコミによって「殺人教師」と言う汚名を着せられてしまったある教師に起きた事件。
学校と言う場において、教師は絶対的な存在ではなくなったものの、情熱を持って教育に臨んでいる教師もたくさんいる。それを評価するのは校長でも、教育委員会でも、親でもなく生徒たちなのでは?
ろくな検証もせずに思い込み...続きを読むで一人の人生を狂わせたマスコミの罪は重い。同時に、私自身も「でっちあげ」に踊らされないようにしなければ。

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Posted by ブクログ 2020年07月16日

冤罪は自分にも起こり得ることなので、この本を読んでいても他人事には思えなかった。大事なのは、ありもしない事実を認めないこと、事実を事細かに明らかにしていくことだ。周りの環境が変わっても、真実は変わらない。そのことを常に念頭において生きていかなければならないと思った。

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Posted by ブクログ 2022年10月19日

私達に出来る事はこの本の内容を鵜呑みにして教師側の供述が正しかったんだ!嘘つきでっちあげ親子最悪だな!と憤る事ではなく、安全圏から叩く正義に酔う事ないよう戒めとして留め置くだけ。

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Posted by ブクログ 2022年08月19日

こんなことあるんだ!って
信じられないし何のために?!と思った。

でもモンスターペアレンツの出現に意外性はない。私は21歳なんですが、教師の立場の低下ということには驚きはなかった。

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Posted by ブクログ 2022年07月12日

本当にあった出来事だと思ったら、恐ろしい。
些細な出来事を、ふくらまされて「殺人教師」にさせられてしまう。

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Posted by ブクログ 2022年05月17日

こんなことが本当に起こり得るのか? と思うくらい、無茶苦茶非論理的な主張をするモンスターペアレンツと、裏付け取材なしにセンセーショナルに煽るマスコミと、その場凌ぎの本意ではない説明による火消しを目指して墓穴を掘った学校(被告の教師を含む)による、壮大な茶番劇の舞台裏。

最大の被害者は、教師、生徒、...続きを読むの順番か。

元祖モンスターペアレンツ、ともいうべき夫婦の思考回路がよく分からないが、うんと出来の悪い息子の出来の悪さを誰かのせいにして、すっとしたかった、って感じだろうか。。

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Posted by ブクログ 2022年04月17日

この世の中に満映している怠惰で杜撰な組織のやり方、逃げ方がかかれてる。

アイドルの性被害の事件を思い出す。
トップのものはそそくさとマスメディアや面から逃げて、安易なところに移動する。
苦しめられた当事者が、歪んだ真実が広がり、善意あるものたちが槍を投げ入れる。
本当の真実をしっかり見つけること、...続きを読む見極めることがどれほど大切かこの本を読むとわかる。
安易に知った情報だけで当事者を罵倒するのはそれこそ阿呆である。

失礼極まりない。
その安易な自分の選択が、その人を自殺に追い込むかもしれない。
そんなことも考えれないで、何でもかんでもヤジを飛ばすのは恐ろしい行為。

自分自身も気をつけなきればと改めて思った。
簡単にSNSにそんなことを書いてはいけない。
その軽はずみの発言が当事者を傷つけて、歪んだ真実を広めてしまう。

中途半端に追いかけるな。
足を踏み入れたのなら最後まで見続けろ。
そんなメッセージを感じたし、受け止めるべきメッセージだと思った。

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Posted by ブクログ 2021年10月25日

リアルに起こった事件の真相を描いた話。

「お前の血は穢れている」「早く死ね、自分で死ね」

史上最悪の殺人教師は
母親の虚言と
マスコミの妄信で作られたものだった…。


学校関係者なら一度は読んでおいた方がいい本。
マスコミ関係の人にも読んでもらいたい。

親からの学校へのニーズが
多種多様にな...続きを読むってきているのが現状。
教師は親より弱い立場だとは思わないけど
上手くやるために
何でも聞き入れちゃう先生がいるのも現状。


自分の記憶に自信があっても
保護者に「私はこういいました」
って強く言われて
「私が勘違いしていました。」
って言った方が丸く収まるなら
謝ってしまうだろう。

家庭訪問の日程なんて
絶対私も謝っちゃう。


この川上先生には本当に同情するけど
この世にはいろんな親がいて
いろんな子どもがいるのは当たり前。
そこは割り切ってやっていかないといけないと
改めて思う。
特に公立の学校は。


何か学校関連の事件が報道されると
どうしても子どもが正義で
教師は悪と描かれがちだけど
本当のことは
本人や周りの人しか知らないなんてこと
いくらでもあると思う。
学校の事件に限らずとも
本当の気持ちとかは当人しか分からない。

ネットのニュースだって
芸能ニュースだって
話半分で見なきゃいけないよなと
改めて思い知らされた。

子どもは正義ではないけども
学校、家庭、地域、教育委員会、時にはマスコミ
みんなで連携して
子どもたちをいい方向に導いていくことが
良い未来を作るために最も大事なことだと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月05日

生徒が正義で教師が悪という立場を利用し、大人が正義を振りかざして悪を叩く人がいることを知った。叩く内容が真実かどうかは当人にとって重要ではなく、ただ吊し上げてリンチをする大人がいることを知り、恐ろしさを感じた。また、教育現場で教諭に対し一切話に耳を傾けてくれなかったこと、教諭の保護者に対しての気遣い...続きを読む、事態をまるく収めようとした言動から教師の立場の低さ、息のしづらさを知った。加えてマスコミの嘘の報道が重なったことででっちあげが完成してしまったことから、マスコミの威力を痛感した。

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Posted by ブクログ 2021年08月03日

九州福岡の本屋にフラッと立ち読ったら、レジ前に山積みになっていたので購入。読みやすく、夢中になって一気読みした。
当時、殺人教師とテレビの報道で知った事件に、まさかこんな真実があるとは知らなかった。
モンスターペアレンツ…あまりに酷い。
最初は、子供の小さな言い逃れが始まりだったのかもしれない。それ...続きを読むでも、自分を保身するためにどこまでも嘘を誇張させていく親…異常過ぎる。
でも、こうしてまで嘘を突き通す親を見て育ったその子供の傷は相当深いと思う。多分、一番の被害者はモンペの息子だ。

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Posted by ブクログ 2021年06月24日

下手なホラーより怖い。
嘘を嘘と見抜けないやつは…とか、週刊文春はフィクションだと思って読まなきゃ…とか、そういう話ではない。
正義を振りかざして誰かを叩くチャンスを舌なめずりしながら待っている人間が沢山いること。
そういった人達にとって大切なのは、誰かを批判する材料になるモノだけで、それが真実かど...続きを読むうかなどどうだってよいこと。
それをわかった上で利用したがっている、または、自分自身がそうである事に気づいていない記者や著作家によるニュースがメディアに溢れていること。
そして私も、被害者にも加害者にも容易になってしまうこと。
ほんとに怖い。

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Posted by ブクログ 2021年03月06日

どうなるんだろう?と引き込まれていくドキュメンタリーです。主人公の先生の追い込まれ感と、マスコミの無責任さが際立ちます。

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Posted by ブクログ 2021年01月16日

この教師の不運の発端は、交通事故のようなものではないだろうか。常軌を逸した虚言を繰り返すモンスターペアレントに、たまたまつかまってしまった。それも、常人には理解し難い言動を繰り返す、行動原理が全く不明の支離滅裂な人間に。
さらにそこへ、弱腰の校長やマスコミなどが加わり、事態は悪化するばかり。教師自身...続きを読むの優柔不断さがあったとは言え、事態を丸く収めようとしてありもしない体罰を認めてしまった彼の行為は、社会人なら理解できるものではないか。つまり、普通に生活していても、身に振りかかってしまえばどうしようもない、交通事故のようなものだ。貴志祐介の『黒い家』に通じる理不尽さとよく似ている。ただしこの事件は、小説ではなく事実だというのがさらに怖いところ。

裁判では体罰が認定されたが、人事委員会によって処分が撤回されたことには、ほっとした。ただ、朝日や毎日は、やっぱりだめだなと感じた。メタタグやWaiWai記事など数々の問題で、心底どうしようもないと思っていたが、今回この本を読んで、やはり体質としてずっとこうだったんだと改めて感じた。ろくな取材もせず扇情的に報道するだけならまだしも、裁判で記事の誤りが判明しても謝罪すらなしとは。まさにマスゴミ。

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Posted by ブクログ 2020年05月16日

マスメディアによる事実の歪曲・印象操作に恐怖を感じた一冊。数々の冤罪事件でもそうだが一旦加害者とみなされた本人が内側からいくら訴えても大きな権力で圧されてしまう。外側からの第三者の疑惑が罪なき人を救うことに繋がる有効なアプローチなので、何が正確な情報なのか見極める努力を怠らない事が大切だと感じた。
...続きを読む多くの人は浅川和子(仮名)の現在が気になったことだろう。狂言ともいえる妄想で1人の人間の人生を潰そうとした恐ろしい女。実名も公にされておらず、何の罪にも問われていないなんて信じられない。以前からのモンスターペアレント(ツ)には何らかの策を講じるべきだという考えに一層拍車がかかった。自らの教育が上手くいかないことを教師になすりつけてやろうと粗を探し、下品に喚き立てる。よくもまあ子供が子供を作れたものだと思う。そんな保護者のご機嫌とりすら教師の仕事、能力の見せ所というような暗黙の了解があるから年々教員を志望する人が減っていくのだろうな。
そして本書でも中心となるマスコミの罪。川上先生の噂をハイエナのようにいち早く嗅ぎつけ、あることないこと面白おかしく書き立て、プライバシーを侵害した記者らは何ら罰せられないのか。今回の事件に限らず、無礼な奴らは名誉毀損罪で捕まれと心底思う。というと、表現の自由を偉そうに語るのだがそもそも私人間に憲法の条項を適用しようとすることがおかしい。(話題が逸れるのでこのへんで)本当にそんな仕事を夢見て生きてきたのか問うてみたい。
情報を疑ってかかるという意味では先生がどの程度の体罰をしたのか不明瞭ではあるのだが、もう少し体罰の有無、スキンシップの域を出たのか審議して欲しかった。日本の司法機関は国民性を反映するかのように白黒つけるのが本当に苦手なのだなと感じる。先生の発言を信じるならば、実際にしたことより重い体罰をしたと判決文には認められている。「検討中であります」「適切に対処していくつもりであります」等具体的に明言することを避け、中間をとるというのは本当に裁きの概念に合っているのと言えるのだろうか。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年05月03日

小説のようなスリリングな展開。無実の方が性格が災いしてとんでもない残酷な教師に仕立て上げられる過程が、きちんと描かれている。大手マスコミの報道を鵜呑みにできないと改めて知る良い本。

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Posted by ブクログ 2022年11月05日

終始胸糞悪かった。
実際にこんな事が起こったとは。事件についても初耳だった。

一番悪いのはもちろん、虚言癖のあるモンペだけど、教頭と校長も悪いよね。
部下を守れない管理職なんかいらないんよ。
メディア関係者は必ず一度はこの本読んで、もっと信憑性のある報道をしてほしい。
(そもそもテレビなんて話半分...続きを読むで見るのがちょうど良い)
教師の立場って弱いのでどうにかならないかな。

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Posted by ブクログ 2022年07月30日

文章が読みづらい。
教師が追い詰められていくシーンのつらさもあって、じっくり読みすすめることができなかった。
戦前からずーっと変わらず、マスコミも行政も最後まで責任を取らない。
なのにいまだにマスコミと行政を無為に信じてるのはなんでなんだろうか。

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Posted by ブクログ 2022年03月22日

なんだか終始「?」って感じることが多かった本。初代モンスターペアレントとも言える生徒の両親から、とことん追い詰められていく担任がとてもかわいそうであった。モンスターペアレントの元に生まれてしまった子どもは、何を思っているのだろうか。

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Posted by ブクログ 2021年08月05日

小学校の先生をしている知り合いに本書を読んでもらったところ、「自分も思い当たる節がありすぎて、読むのが辛かった」と漏らしていた。教師という仕事は、親に絶対逆らえず、身に覚えのないことであっても「私がやりました」と言わざるをえない。自らの言葉によって追い込まれた川上と自分の立場を重ね合わせて、「他人事...続きを読むではない」と感じたとのことだった。

本書は、全国で初めて「教師による児童へのいじめ」と認定された事件の裏を辿ったノンフィクションである。
主人公は、「史上最悪の殺人教師」として全国のワイドショーに報道された川上譲(仮名)。
教え子の裕二に対し、10秒以内に帰り支度をできなければ、「ピノキオ」(鼻をつまんで血が出るほど引っ張る)」やミッキーマウス(耳を割けるほど引っ張って持ち上げる)といった「刑」を執行。また、「お前のような穢れた血の人間は生きている価値がない。早く死ね、自分で死ね」と罵倒して自殺を強要させていた。
まさに全国の親子を震撼させた事件であったが、その真実は、被害者とされた浅川裕二(仮名)の親である和子と卓二によるでっちあげであった。

読んでいてゾッとすると共に怒りが沸いた。
どうして無実の人間が、ここまでへりくだらなければならないのか。何故やったこともない体罰を認め、親の一方的な言い分に頭を下げ続けないとならないのか。

その理由は、教師と親の間には王様と農民ほどの身分の違いがあるからだ。

いまやモンスターペアレントという言葉が有名になっているが、そもそも、相手が悪質なクレーマーでなくとも、教師は親の言うことに絶対服従を強いられる。保護者トラブルは言った言わないの水かけ論が常であり、また、最低でも1年間、最長では6年間も同じ人間を相手にし続けなければならない。そのような閉鎖的な環境では、例え身に覚えが無くとも「私が悪かったです」と言うことが、トラブルを避けるためのテクニックになる。

「保護者と教師は同等じゃないんですよ。教師の方がなにごとも一歩下がって対処しないとうまくいかないんですよ」
文中で川上が語るこの言葉こそが、教師という職業の厄介さを物語っているだろう。

またそれと同時に、校長や教頭など上の立場の人間は、現場の物事を理解しようとせずに謝罪を強要するきらいがある。彼らにも「保護者は絶対だ」という意識が刷り込まれているからだ。
本書では、校長が最初から「わたしに責任は無い」と決め込んだのが混乱の発端だった。生徒と教師を統べる人間として、自らの責任も追及されることがあれば、より正確な現状把握に努めるはずである。しかし、結局のところ管理者責任を被ることなく、川上という一教師を切って騒動を鎮静化しようとした。その結果が、全国のワイドショーを賑わせ裁判にまで発展する事態となった。

教師という弱い立場の人間を、保護者という立場を利用して痛めつけ、自分が望む行動を強いる。周囲の人間も、「大人と子ども」という力関係から、教師のほうが嘘をついており、体罰はあったに違いないと決めつける。こうした虚言と思い込みが暴走する恐怖は、川上の陳述書にはっきりと記されている。
「本件に関与している専門家の集団である弁護団も、裕二君の精神科の診療に関与した医師も、マスコミも、福岡市も……、まるで、裕二君自身の問題点や、ご両親自身の問題点などについては、それがまるで聖域であるかのように、一切検証することなく動いています」

この事件は、「自分に都合のいいように物事を進める」人間たちが生んだ惨劇である。
親である和子や卓二の虚言はもちろん、センセーショナルな記事を書いて国民の関心を焚きつける一方で、間違った報道に対しては反省もしないメディア。また、自己保身に走るあまり、教師を切って事を収めようとする校長と市教委。全ての人間が川上を「殺人教師」と決めつけ、事実とウソの境界が曖昧になっていく。もはや引くに引けなくなった結果、「茶番」としか言えない民事裁判が行われてしまった。

現職・前職が教師の方はぜひ読んでみて欲しい。気分が悪くなるかもしれないが、それほどこの事件は骨身に染みる。そう思える本だった。

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余談だが、この事件、「どうしてそうなるんだ」とツッコみたくなることがいっぱいある。
例えば和子が証言するミッキーマウスやピノキオ。「体が宙に浮くほど強く耳を引っ張って持ち上げる」だとか、「鼻をつまんで鼻血が出るほど強く振り回す」だとか、聞いただけで「そんな無茶苦茶なことしてればバレるわ」と言いたくなる。また、小学校に近づくだけでPTSDが発症する子が、友達と校庭で元気よくサッカーしていたり、川上が撮る写真に笑顔で映っていたりだとか、「少し考えればおかしいと分かるだろう」と言いたくなるほど嘘が粗い。550人の弁護団は途中で不審に思わなかったのか謎である。

極めつけは和子と卓二。嘘を嘘で塗り固めていた彼らだったが、相手に謝罪させるだけでは納得せず、裁判を起こすなど正気の沙汰ではない。裁判で真偽が問われれば、見せかけの嘘など平気で暴かれる。バレたらまずい、などとは考えていないのだろうか。
しかも、この嘘をさらに厚塗りするために、裕二に転校を強いて、インターナショナルスクールにまで通わせているのだ。どういう思考回路なのだろうか。

読んでいて、本当に恐怖を感じた。
1人の教師がいじめによって追い詰められていく様と、関係者たちが嘘によって狂気的な行動に駆られていく様の、2つの理由で。

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【まとめ】
●浅川裕二:他の子どもに暴力をふるい、問題行動を起こす問題児。
●浅川和子と卓二:「川上先生は裕二に体罰をふるっている」とでっち上げ、民事裁判まで起こした筋金入りのモンスタークレーマー。

「血」の問題で生じた裕二への漠とした負い目と、他人に異を唱えられない生来の気の弱さ。そこへ執拗に、「体罰をやっただろう」「子供が見とった」と追及され、川上は困り果ててしまった。さらに、自分のことで校長や教頭に面倒をかけたという気兼ねもあいまって、彼らの望む方向へ迎合する心理が働いた。
そして、「自分が謝れば丸く収まるから」という理由で、消極的ながらも体罰の事実を認めてしまったのだ。

川上の謝罪を見た和子と卓二は、「体罰があった」という情報をマスコミにリーク。A小学校には全国からマスコミが押し寄せるようになった。
A小学校の校長は、このマスコミ対応で最悪の行動を取る。川上を軟禁状態にし、マスコミとの窓口を自身に一本化した校長は、川上に不利な証言をし、トカゲのしっぽ切りを図ったのだ。校長と市教育委員会のコメントを得たことで、ほとんどの記者たちは、体罰は事実なのだとほぼ断定してしまった。

川上は、全く身に覚えのない言いがかりをつけられ、何が何やらわけがわからないままにあれよあれよと大騒ぎになり、マスコミにまで叩かれた揚句、とうとうA小学校を放逐されてしまったのだ。

その後の市教委での事情聴取は、一転して「自分はやっていない」との立場に回るも、下された処分は「6か月の停職」。相当な重さであった。

朝日新聞、西日本新聞、週刊文春などが川上を「殺人教師」と報道し、全国に「福岡殺人教師」事件が知れ渡ることになった。

そして、浅川裕二とその両親は、裕二のPTSDを理由に、川上と福岡市を相手取って約1300万円の損害賠償を求める民事訴訟を福岡地裁に起こした。

驚くべきはこの偽の証言に加担した人間の数。校長、教頭、市教委、主治医、550名の原告人弁護団(福岡県弁護士会のほぼ1/3)、週刊誌、新聞記者、ワイドショーのコメンテーターなど、ありとあらゆる人間が川上を「殺人教師」と見なし、嘘の報告・報道を行っていたのである。

こうして口頭弁論が始まったが、和子の証言に疑わしい部分が見つかっていく。結局、いじめの原因とされていた「裕二にはアメリカ人の祖父がいる」は真っ赤な嘘であった。
また、裕二のPTSDは、和子の話の中でのみ存在している疑いが次第に強まっていった。

裁判の判決は、「福岡市は、原告裕二に対し、220万円を支払う。原告裕二と卓二と和子の請求は棄却」だった。川上がしたとされる行為は、「原告らの主張するいじめ行為に比べて相当軽微なものであり」、PTSDを引き起こすほどのものではなかったと判断されるも、体罰やいじめの一部が認定される結果となった。

どうしてこれほどの大騒ぎになったのか。マスコミは、校長が認めた、市教委が認めた、精神科医がPTSDだと診断したからだと言うが、真相を探る方法は他にもあった。にもかかわらず、誰もが思い込みと憶測で話をし、裏を取らなかった。バイアスのかかった一方的な情報が人々を思考停止に陥らせ、集団ヒステリーを煽った揚句、無辜の人間を血祭りに上げたのだ。

教師という弱い立場の人間を、保護者という立場を利用して痛めつけ、自分が望む行動を強いる。周囲の人間も、「大人と子ども」という力関係から、教師のほうが嘘をついており、体罰はあったに違いないと決めつける。こうした虚言と思い込みが暴走する恐怖は、川上の陳述書にはっきりと記されている。
「本件に関与している専門家の集団である弁護団も、裕二君の精神科の診療に関与した医師も、マスコミも、福岡市も……、まるで、裕二君自身の問題点や、ご両親自身の問題点などについては、それがまるで聖域であるかのように、一切検証することなく動いています」

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Posted by ブクログ 2021年02月10日

いやこれやべぇでしょ。
まじで胸糞悪い話。
実話って言うんだからもう世の中信じられなくなるよね。軽く人間不信。
泣き寝入りはやっぱ良くないんだなって思う

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Posted by ブクログ 2020年12月27日

クレーマーの親も『バケモノ』だが教師の方もかなり『バケモノ』で徹底抗戦した結果なんだろう。
相手も、いつものようにクレームを入れたら引き下がるだろうと思っていたろうにお互い相手が悪かった。
周りが何の責任も取らずに自体をエスカレートさせてゆく所が恐ろしかった。

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Posted by ブクログ 2020年09月28日

クレーマー保護者の虚言によって、彼は史上最悪のいじめ教師に仕立てられた。
「早く死ね、自分で死ね!」
2003年6月、全国ではじめて「教師によるいじめ」と認定される事件が福岡で起こった。
問題の小学校教師は、担当児童を自殺強要や暴力でPTSDによる長期入院に追い込んだとされ、「殺人教師」とまで報じ...続きを読むられた。
だが後に、一連の事実は、児童両親によるでっちあげだったことが明らかになる──。
子供は善、教師は悪という単純な二元論的思考に陥り、550人もの大弁護団を結成した人権派弁護士、保護者の無理難題を拒否できない学校現場や教育委員会、すぐに騒いで教師を悪者にするマスコミ、被害者を救うヒロイズムに酔う精神科医、そしてモンスター・ペアレント……。
病める教育現場で偽善者たちが引き起こした、驚愕の冤罪劇!


構成がうまい。
まるで上等のサスペンスを読んでいるような気分にさせられた。
事件の全貌を簡潔に、それでいてリアルに、筋道立てて表現してくれている。
事件そのものがセンセーショナルだったということもあるが、この著者の構成力、文章力あってこそ、第六回新潮ドキュメント賞を受賞することができたのだろう。
ひさしぶりにぐいぐいと引き込まれるドキュメンタリーを読んだ。

最初に朝日新聞で報じられた記事、そして週刊文春での扇動的な記事の概略が掲載されている。
これらの記事からは、鬼のように、と言ったら鬼から苦情がきそうなほど非道な教師と、教師のいじめにけなげに耐える少年、そして少年を守るために必死に教師や学校、市と戦った両親の姿が読みとれる。
僕は怒りで目の前が真っ赤になりそうだった。
自分の子供がそんな目にあっていたら怒るよりも先に泣き出してしまいそうだ。
それほど残忍で非道な仕打ちだと思った。

だが読み進めるうちにまったく別の、と言うよりはほぼ100パーセント正反対の事実が浮かび上がってくる。
今度はごく当たり前のどこにでもいる普通の教師の人生を面白半分に(としか思えない)ぶち壊そうとする狂った親子の姿に、これまた怒り心頭に達する思いがした。
嘘を嘘で塗り固め、何のメリットもないのに一人の教師を徹底的に追い込もうとする両親の行動は完全に常軌を逸している。
傍若無人に奇行を繰り返す少年も含めて、親子共々精神鑑定に回すべきだと思った。
彼らが真に憂うべきは、有りもしないPTSDなどではなく、彼ら自身の虚言癖だろう。

それにしてもマスコミとは本当に恐ろしいものだとつくづく思った。
こうも真逆の出来事をろくな調査もせずに堂々と書きたてて、一人の人間の人生を破壊し、しかも謝罪もなければ、何の責任も取らずに済むというこの事実に今さらながら背筋が凍る思いがした。
他人事ではない。
誰の身にも起こり得ることだ。
(そういう意味では教師を救ってやりたいがキチガイ親子と関わり合いになって今度は自分が攻撃されることを恐れた他の父兄の心情は十分に理解できる)

この教師は今も不都合なく教鞭をとれているのだろうか。
彼の生活は乱されていないだろうか。
また、この親子はどこかで同じことを繰り返しはしないだろうか。
周りの人の生活をぶち壊すようなことはないだろうか。
傍観者としてはただ平穏を願うしかない。

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Posted by ブクログ 2020年03月31日

在宅ワーク中のため、読書が進みます。

さて、テーマとしては興味深いのだが、書き方?構成?よく分かりませんが、読みづらかった…
結果として流し読みしちゃいました。
いわゆるモンペアなんでしょうが、ここまで凄いのいるの?私、昭和の人間なんで、そもそもモンペアなんて全く皆無でしたが、ちょっとキチガイです...続きを読むね。
その後よく知りませんが、この夫婦はのうのうと生活してるんでしょうか…

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Posted by ブクログ 2022年02月27日

おっそろしいモンスターペアレントとメディアの人権蹂躙の話。
こういう事例があったことを知れたのはよかったけど、読み物としては物足りないので星3つ。

とにかくモンスターな保護者と週刊新潮と朝日新聞と校長がひどすぎる。だけど変な人はどこにでもいるから、対人職としては余計なことは言わないようにする等自衛...続きを読むも必要だなと思う。そして何よりこの少年がその後ちゃんと治療(PTSDではなく)なり適切な環境での教育なりを受けられたのかとても心配。

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