小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
村田沙耶香さん初の上下巻の長編は、ただただすごかった
下巻では世界がリセットされ「汚い感情」のないクリーンな世界
性欲処理や出産、汚かったり命がけな仕事をピョコルンが引き受けてくれるから心はクリーンでいられる世界
ウエガイコク、シタガイコク
恵まれた人、クリーンな人、かわいそうな人、最後には見えない人
かわいそうな人のもっと下に見えない人…
なんでこんなに穏やかな優しい口調でグサグサ刺してくるんだろう…
人間のグロテスクさを、この穏やかな優しい口調であらわにされ、こちらの心は終始混乱するのだけれど、この長編を締めくくるラストの壮大な『儀式』では、自分が空子になったかのように静かな気持ちで没入で -
Posted by ブクログ
大好き。
この作品が伝えたかった核心は、“当たり前だと思って見落としている他者の優しさや愛に気づくことの大切さ” なのかも知れない。
作中で描かれる愛は、恋愛・情熱・大きな犠牲のような派手なものではなく、
そばにいてくれること、見守ってくれていること、存在を認めてくれること といった静かな形。
題名にある、隣人とは単なる隣に住む人ではなく、
家族でも親友でも恋人でもないけれど、自分を救っていたり、気づかないうちに支えてくれている存在。
この物語は、相手が愛を“くれるか”ではなく、自分が愛を“知れるか・感じられるか”の物語 。
みんな愛し、愛され、繋がっている。
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Posted by ブクログ
春日まほろさんの本棚より選書
とても良い本に巡り会えた。思索、著作と文体、読書について、の三篇からなる本書はどれをとっても「知」にたいする凄まじいまでのこだわりを感じた。
天才ゆえの思想なのだが、学者や著述家、出版者や評論家を次々に腐す言葉の数が圧倒的量にのぼり、読み始めは少し不快に感じた。人の悪口を聞いて気持ち良い事はない。言葉のプロフェッショナルによる罵詈雑言は凄い。
しかし読み進めると、ドイツ語を愛しているからこそ、失われていく文体を嘆き、文学を扱う人々を批難する理由には一応納得がいくし、「言葉が貧しくなれば思想も貧しくなる」もその通り。
以下は本文中から掬いとり噛み締めたい箇所 -
Posted by ブクログ
シリーズ3作目、一番切ない展開だった。
本文中で問いかけられる。「犯人は探偵の敵なのか」。ミステリーの根幹が揺らぐような問いかけ。この問いかけが、ラストに効く。
過去2作以上に「邸」の構造が複雑で、ロジックも複雑、見取り図を何度も何度も見直しながら読み進めなくてはならず、サラッと読めるタイプの作品ではないが、一層、読みごたえを感じた。
そして、最後のトリックの鮮やかさ!
続編が楽しみでならない。
ちなみに、巻末には作者と綾辻行人さんの対談が収録されていたが、これがまたおもしろい!作者のデビュー作である『屍人荘の殺人』の創作エピソードには驚かされた。「才能」の一言で片付けては、産みの苦し -
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主人公菖蒲の30代北京駐妻物語。
彼女の無敵感がすごい。夫になんでも買ってもらっているし、もちろん家事はしないし、遊びに全力投球!
その自信はどこからくるのかと思うが、本人も全くメタ認知ができていないわけではなく、どこでなら勝てるのか分かってやっている。無敵でいられるためのポジション選びは抜かりないく、潔いので気持ちが良い。
北京の異国情緒をあらゆる場面で感じられるのも良い。
インフルエンサーでいうところの妹尾さんに似た歯に衣着せぬ物言い。
本当は大事じゃないことに悩んだり、迷ったりしている自分って、大人なふりをしているだけなんじゃないかと気づかせてくれる一冊。
生命力が強い女って最高