小説・文芸の高評価レビュー
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ネタバレ
読み始めて冒頭で「彼が犯人だ」と確信する。その後、どんな描写があろうとも、それは疑うことなく読み進めた。
主人公と倉敷が「僕のこと覚えていますか?」と話しているシーン(P78あたり)で、万が一彼が犯人でなければ倉敷が犯人だとそれも確信した。
倉敷が犯人だったらこの話しは面白くない、しかし倉敷犯人説で確定のような最後の展開。
頭を抱えた。この本を「ぜひ!」と貸してくれた大好きな先輩に何と言って返却すればいいのか。
残りのページ数を恐る恐る確認しながら、ラストシーンを読み込む。これであとがきや、解説があるならば、この物語はここで終わりだ。
、、しかし!きた!美濃部の言っていることがグダグダだ!
ここからはもう私の理想通りのフィナーレ。
事件の経緯も腑に落ちるし、動機もただのサイコではない(と私は理解した)。
主人公には申し訳ないが、最高に気持ちの良い終わり方だった。 -
Posted by ブクログ
初美の引力、圧倒的。ここまで明確に自分の思想を持つ人に対して、空虚さを抱えた人間ほど強く惹かれてしまう感じ、すごくよく分かる。
徳山も厭世主義のような側面を持っていたけど、初美ほどに徹底的に磨かれてはいなかった。徳山にとって初美との結婚は唯一の希望で、彼女と同化する手段でもあった。
でも初美が徳山の在日であるという背景を理由に結婚を断る。初美がどんな気持ちで、どんな意図で断ったのか、明確には描かれていないけど、私の解釈では、結婚して幸せになるというイマジネーションも、初美にとっては馬鹿馬鹿しいものだったのでは?と思った
徳山は彼女に同化しようとしたけど、その同化のための手段(=結婚)は彼女の思想(=厭世家)の立場によって否定される。つまり、結婚という儀式は、彼女と共にあることではなくて、彼女の思想に同化することを意味していて、結果的に拒絶される構図となっているの皮肉すぎる
私も、厭世主義の思想は若干あるけど、なぜかあの圧倒的な初美との同化に向かうというより、むしろ初美とは対極の形岡側の思想を志向するような謎の感覚が味わえた。
「深刻な事こそが常にリアルだなんて、思わないで。」
「人生を平穏に無事生き残っていくためには、吊り橋を渡っている時みたいに、あんまり下を見ない事。
前だけ向いて一歩一歩歩く事。そうしたら意外と遠くまで来ていた、なんて事がある。」
この辺の文章に心惹かれた。死んだら全てがクリアになるという予感、希望にはすごく共感する一方で初美の思想の徹底ぶりに思わず萎縮させられた。
圧倒的に振り切った物語に触れることで、むしろその対極へと向かうエネルギーが自分の中に生まれるというような貴重な読書体験。 -
Posted by ブクログ
最近読んだ本の中だとかなり好き!!
一見、嫌だなっていう登場人物もいるんだけど、嫌な面だけではなくて、その人たちそれぞれの事情とか書いてあるから、嫌な気持ちにならずに読めた
主人公、人を故意に傷つけたりはしないけど飄々としていて軸があって、言うべきことははっきり言うところがめちゃくちゃ好き
朔は確かにできないことも沢山あって、いわゆる学習障害があるのかもしれないけど、この本の中ではそれを病気や障害と表さず描き続けているのも良かった
妹も最初はひどいなって思ってたけど、主人公としっかり話せて良かった!
妹の名前の由来のシーンのところめちゃくちゃ泣きそうになってしまった
子どもが出来てまた読んだら、感じ方も違いそう!
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ネタバレ死について、家族について、結婚について考えさせられた作品だった。
人が死ぬのは怖い。
葬儀屋芥子実庵を舞台として、様々な人物の目線で物語が進んでいく。
この本を読んで思ったことは、人が死ぬのはいつか起きてしまうことだけれど、それをどう受け入れていくのか。
死んでしまっても、私たちはその人との思い出話をすることで、その人の生きていた存在を後世へつなげることができる。
きっと、一緒に生きていた人が思い出す限り、その人は生きているのだろう。
人によって生まれる環境も死ぬ環境も、全く異なる。
でも、私は人と比べることではなく、その人がどんな生き方をしたか、どんな人に出会ったか、どうやってその人を大切にしたのか、ということがその人の生きた証なのだと思った。
本を読みながら、自分の今を省みて思った。
結婚についても考えさせられた。
対等を望んでいても、どこか私たちの心には男女差が生じてしまう。
これは、男性であれ女性であれ、ときには傲慢や安心、ときには疑問が生じてしまう。
私は真奈さんのお母さんの言葉に心打たれた。
独身だから、真奈に自分の病気に伴う負担を負わせたくないと。
これは、単に独身を軽視したりしているのではなく、独身だからこそひとりで働き、ときにはひとりで抱えきれないような感情までも抱えなければならない。
一緒に荷物を持ってもらえる人がそばにいるという意味で、結婚が非常に魅力的に見えた。
夫婦で支え合ってるからこそ、子どもはもちろん、親や身内をも助けることができる。
また、その逆で助けてもらうこともあるだろう。
私はそういう意味で、一緒に生活をともにしたいと思える相手にすごく憧れた。
私も支えたい。支えられたい。一緒に頑張りたい。
死に向き合うことは怖い。
けれど、いずれ向き合わなければならない。
私も向き合うことができるのだろうか。
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「震洋」という特攻兵器があったことは以前から知っていて、合板製のモーターボートというその概要を知ったときは、狂気の沙汰であるとしか思えなかった。爾来、とくに専門書を読むようなことはなかったが、この兵器のことは関心の一端にありつづけていた。そして今回、それとは知らずたまたま手に取ったこの『魚雷艇学生』が、まさにその「震洋」の話であった。とはいえ本作は特攻そのものを描いているわけではなく、戦争映画のようなスペクタクルもなければ、人がバタバタと亡くなるわけでもない。「解説」でも触れられているが、語り口はあくまでも淡淡としている。でも戦争の脅威や非人道性が伝わらないかといえばぜんぜんそんなこともなく、そもそもほんらい一介の学生に過ぎなかったはずの主人公=著者がいつのまにか指揮官に任じられていることじたい、この戦争の無謀さを物語っている。数数のエピソードにしても、とうてい戦争で勝てるような集まりではないことがよくわかる。主人公が入隊した時点ですでに勝機はなかったといってよいだろう。野間文学賞および川端康成文学賞を受賞していることからもわかるとおり、本作は単純に文学作品としても名高いが、このような戦争の一端を知ることができるという点で、貴重な戦争の記録としても読む価値がある小説である。
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書店で装丁に惹かれて手に取った一冊が、なんとも心揺さぶられる作品だった。マーク・トゥエインの「ハックルベリーフィンの冒険」(というか個人的には世界名作劇場のアニメ「トムソーヤの冒険」が馴染み深いお年頃だけど)のいわゆる改変もので、元になった作品のストーリーを途中までトレースしつつ、黒人奴隷の「ジョン=ジェイムズ」を主人公に彼の視点で物事が描かれる。人でありながら「奴隷」として扱われるジョンことジェイムズの視点で見ると、往年の名作はガラリのその様相を変え、奴隷制度のあまりの非道さに読み進めるのがためらわれるほどだ。
訳あって“白人”の元から“逃亡奴隷”となったジェイムズは、残してきた家族を取り戻すべく、たまたま“白人の子”ハックルベリーフィンと一緒に逃避行する身となった。
白人の前では知識のない馬鹿の振りをし続けてきた(白人より下に見せる必要があった)ジェイムズは、“ある行為”で自らの存在を客観視し、自我を手に入れていく。その過程から目が離せなくなってしまった。
なぜいまだに人種問題がアメリカで蔓延っているのか。下手な論評を読むより、この作品を読めば一発で腑に落ちる。大人はもちろん、中高生にこそ読んでほしい一冊だ。 -
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ネタバレとても面白かった。
小説の中で島田が小説を読んでいるという構造。
その小説の中で起こる殺された作家たちが書いた小説を準えた連続殺人。
『迷路館の殺人』の犯人は誰なのか。
そして、『迷路館の殺人』の作者鹿谷門実は誰なのか。
色々な次元が入れ子構造になっていて複雑なように見えるけど、読んでいくとちゃんと明確に謎が解けてきて最後はとても読んでいてすっきりする。
今回は館のからくりをふんだんに使って犯行を行っていて、ミステリーのトリックとしては微妙なのかもしれないけれど、それが今までの館シリーズで中村青司のからくり癖がよく作中に活きていて自分はワクワクした。
しかも、この物語の肝はそこではなく、犯人は宮垣、と思わせての、鮫島という点。
鮫島はずっと男性と思わされていたが実は女性だったという点。
最初に鹿谷門実から送られてきた本を読み始めた"島田"は島田潔ではなく、その兄島田勉だったという点。
そして、鹿谷門実は島田潔だったという点。
もう全てが予想外で本当に綺麗に騙された。
本当に綺麗な叙述トリックだったなと思う。
キャラはそこまですごく魅力的かと言われたら十角館ほどは魅力的でなかったけれど、宇多山という編集者視点固定で語られるのはとてもわかりやすくて良かった。
犯人の意外性、そして冒頭にあとがきがあるという物語の構造のワクワク感、実際に事件が起こる時系列で物語が進んでいく臨場感がとてもよかった。
十角館よりも満足感が高かったので5をつけた。 -
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誰もが「あの人こそスターだ」と認める存在がスターだった時代から、誰しもがスターになれる時代へ。本書はそんな今を生きる二人の若者を描いている。
主人公の尚吾は、細部へのこだわりを大切にし、長い時間をかけて作品を仕上げ、対価を払った人にだけ届ける映画の世界へ。一方の紘は、生産から消費までのサイクルが速く、瞬く間に拡散されていくYouTubeやネット配信の世界へ。それぞれの道を進みながらも、互いを羨み、もがき、葛藤し、自分が本当に成し遂げたいことを模索していく二人の姿に、深く心を動かされた。
主人公以外の人物の言葉にも、まるで今の自分に向けられているかのような、はっとさせられるものがあった。30代を目前にした今、自分の生き方を見つめ直すきっかけになった。
また、夜空の星が実際には星型をしていないように、現代のスターのあり方も、誰もが思い描く形とは限らない。星を用いたこの表現も秀逸だと感じた。
何を大事にするのか。誰の姿を思って行動するのか。それを考えながら、自分が何を成し遂げたいのかを見つけていきたいと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本当に面白かった。
ミカの思考と口調があまりにも大人びていて3歳の発言とは到底思えないので、亡くなっているんだろうなとは思っていた。ただ、それを受け入れられない母親のことを思いミチオも妹を存在しているかのように振舞っているんだなと思っていたけれど、ミチオが誰よりも狂っていたとは…(登場人物全員狂気を感じるけど群を抜いてミチオがやばい)
どんでん返しが1回で終わらなかったのも面白かった。色んな人の視点で物語が進んでいくので、語り手の主観が入り、辻褄が合わない部分が出てくるところで一気に話に引き込まれたし、登場人物たちの言動に完全に騙されてしまったのが悔しいし痛快だった。
道尾秀介大好きになりました。
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