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どうしても料理をしたくない新婚のアラサー、過度なダイエットに励む姉を見守る受験生、東京に家出し、一人時間を満喫する主婦……。偏食なオーナーが開いた「カフェ・オヴィ」には食と人生に悩む人が訪れ、自分の心と向き合う。女性の内面を繊細に捉えた、温かな連作短編集! 〈目次〉阪本弥子/枦元海/濱浦盟子/桐野由季子
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Posted by ブクログ
音訳7冊目 ほっこり系の連作小説。料理が嫌いな人、食べたくない人、退屈な料理に嫌気がさした人、好き嫌いが多くて食事が大変な人など…、食べ物にまつわる様々な人が描かれている。 ハートウォーミングな話が好きな人におすすめ
僕は自分が書く小説に奇妙な人はだせるけど、「おまえ変だよな」「おまえバカだな」と笑い合うような、ふつうの変な人やバカな人を、そういう性質をちゃんと成立させてだせたことってなかったなあ。出したとしてもかする程度の扱い。本作品の第二章目、そこが上手だった。 初めての作家の文体とはなかなかこちらと周波数...続きを読むが合わなかったりするし、第一章なんてとくにわずらわしい論理やスパッと言い切らずに何度も言及される部分があると入り込みにくくなるから、少しわざとらしく簡便な形から入ったほうがエンタメなのかもしれないなあ、という疑問めいた気づきもあった。ここはよみはじめ、文章のほうがぶれているのではないかと思えたのですが、考えるとどうもそういうわけでもなかった。 要するに、第一章では次の文章が順接なのか逆説なのかに何度か戸惑った、ということ。それは、読み手である僕が語り手の性質がつかめていないから起こったこと。主人公は素直に言っているっぽいけど、皮肉で言ってるんじゃないかと勘繰ってしまい、その可能性をキープしたまま読み進めてまた同じような箇所に出合いさらに留保をしていく、という読書過程になったことがこの作品への「ひっかかり」となったのだった。 僕の読みのピントが合わなかっただけのことなのだけど、一般的に考えてみると、読み手からどう見えるかを意識した表現が、読みやすさや伝達がうまくいくかなどのところを磨きあげる。つまりは他者の心理を考えることになる。巧みな書き手は、書く文章の中に読み手の心理の動線をつくっちゃうと思う。 それはそれとして、本作にはコロナ禍での黙食に慣れてしまった中学生が出てくる。まさに今の時代だ、と黙食などどこ吹く風の生活をしてきた僕は、現代を生きているはずなのに、もっと生々しい現代に呼び込まれる思いにされた。こういう気持ちになれることも、小説のよいところだ。 また、第三章では、子どもができると子供中心の生活になる、とある。そこで思い出したのは、両親が「(僕が)大人になるまでの辛抱だから」などと、僕の前でもはばからず親父が母に言っていた子ども時代のことだ。邪魔もののような見られ方で育ったことをすこし寂しく思い出すことになった。 まとめると、登場人物たちはさまざまな問題を抱えているけれど、まだ健全なサイドに立って生きていた。そこが、読んで難しくならないで楽しめるエンタメとして、あたたかく清々しく、そしてやわらかさを感じながら読み進めるものとして成り立っている理由の気がした。 よかったです。締めくくり方のアイデアがすばらしかったし、ひらがなに開く文章の書き方やリズム、テンポ感などには、最後の章になると心地よく乗せられながら読むことを楽しめた。 最後、引用をひとつして終わります。他にもよい箇所があるのだけど、そこは読む方のお楽しみに(p194-195あたりですけどね)。 ____ 暗いキッチンはつめたいままで、電気のスイッチを押すことで生命(いのち)が生まれるような感じがする。シンクはまだ少し濡れていた。昼の名残。冷蔵庫から米を取り出し、二合。未だに米を研ぐのをやめるタイミングがわからないが、それでも大体水が白っぽい気がする透明に変わったあたりで終わりにした。(p29) __________ →ユーミンの歌「翳りゆく部屋」に「ランプを灯せば街は沈み」という歌詞がある。こういった、灯りをともすことでがらりとその空間が変わることの表現が、ユーミンと同様に本作品でも巧みだなと思った。また、最初の一文の読点の前後でのカタカナを使うリズムがキリっとして好いし、そのあとも「シンク」「タイミング」というカタカナ言葉を使うことで最初の一文のキレが角を立てないようにフォローしているし言語感覚のセンスのよさだよなあと思った。
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