小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
時間軸が同じ様々な家庭でそれぞれ「その日」に向き合う短編集。
1つ1つ考えさせられるお話だったけれど、特に「ヒア・カムズ・ザ・サン」にとても感情移入してしまい、最初の数ページは電車で読んでいたけど泣きそうになってしまって結局閉じることに…
今過ごしている日常や元気で身近に居てくれる周りの人たち。全部当たり前じゃないんだなと改めて考えさせられました。
この本を勧めてくれた人が居るのですが、その人は若くして大切な家族を亡くしていて……当時はどんな気持ちで、そしてどんな気持ちでこの本を読んだのかなと考えると更に胸がぎゅっとなりました。
家族、友達、自分、環境をもっともっと大切にして、後悔を全く残さない!というのは難しいけれど、それでもできるだけ後悔のない選択をして
生きていきたい。
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Posted by ブクログ
月にまつわるちょっとした話でつながる、現状に少しツキがない人たちを描く連作短編集。5章からなる。
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確かに、不調なときは眩い太陽よりも控えめで清浄な月に惹かれるというのはよくわかります。
だから、月に関するトリビアを各章のポイントに据えた構成は、とてもすばらしいと思いました。( もう敬服するばかりです。)
ポッドキャストの「ツキない話」という月に関するコンテンツが、そのポイントになっていました。ストーリーの2本の柱が、このコンテンツから作られているからです。
(「ツキのない」人たちを惹きつける「ツキない」話。こんな言葉遊びめいた符号もいいですね。)
柱の1つめは、各章の主人公たちについての物語です。
うまくいかない状況にあり、そこからなかなか抜け出せない。そんな現状に苦しみつつも、何とかしたいと模索する5人の主人公たち。
彼らが「ツキない話」の呟きを聴き、それを咀嚼するうちに自ら出口を見つけていく、そんな展開がとても心地よいと感じました。
そして2つめが、「タケトリ・オキナ」と「かぐや姫」の関係とその正体。
エンディングまでに正体が明かされることも神城父子と深く関わりがあることも予想はしていたけれど、期待以上のストーリーが用意されていてグッと感動してしまいます。
幻想的な月を扱いながらもファンタジーというよりヒューマンドラマとしての色が濃い作品でした。
青山美智子さんの多彩さが実感できてうれしかった。他の作品も早く読みたいと思いました。 -
Posted by ブクログ
特にナチズムに対して傾倒していない平均的な人々がユダヤ人を「ストレスなく」殺害するためには、以下の要素が必要。
・殺害に対する直接的な関与度が低い(被害者と会話しなくていい、十分な距離がある、流れ作業、個人的な知り合いではない、など)
・政治的な裏付けが上司から綿密に提供されており、自分の行動に関係なくその人々が殺されると思うことができる
・任務に参加した者が酒以外の文化的生活に触れ、心労を癒すことができる体制が組織から提供されている
・孤立化の脅威がある(撃たないことで周りに迷惑をかけてしまう)
・脅迫の推定(断ったら上司から嫌われたり、処分されたりするだろうという予想)がされており、断る選択肢が与えられていない
・殺害の対象が生活から隔離されており、我々・奴ら的思考が定着している
日本人なら多分ほとんどの人がリアリティを持って共感することができるはず。この環境において孤立することを恐れずに殺害を断る、しかも耳障りの良い言い訳ではなく、「これは間違っているからやるべきではない」と豪語できる人は一握りしかいない。戦後80年経った今も、日本人はこの環境で反抗できる精神を獲得していない。 -
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定時で帰る結衣に大共感。仕事と私生活のバランスって大切。でも途中、絶対に変わらないと思っていた結衣の仕事の向き合い方やマインドがこんなにも変わって(背景にあった晃太郎のこともあって)もうこんなに頑張ってて読んでて苦しくなったけど、「会社のために自分があるんじゃない、自分のために会社があるんです。」って言葉に救われた。
今の部署はできなかったことや優先順位が低くて後回しにしてたことは後の勤務の人が全然やるよー!と言ってくれる。前の部署は優先順位がクッソ低い細かいことでも何でやってないの?って言われて泣きながら残業してたことを思い出した。まだ帰れないの?って待っててなんて言ってない同期に言われて、こうなった理由も知らないくせに顔見るだけでイライラするから黙って帰ってくれない?って思ったことも。(かなりな乱文失礼しました汗)今はそんなストレスないしみんな優しくて助け合い精神に溢れてて、本当に働く場所でこんなに変わるんだなぁってしみじみ。でもこの人やる気が本当にあるのか?って思ってモヤモヤしちゃうことも。だから登場人物ほとんどみんなに共感できました。結衣も思っているように人を変えるのは難しい。だから環境を変えたり向き合い方を変えたりして、自分が変わっていくしかないのかな。(でも福永さんはめちゃくちゃ嫌でした!)
また仕事頑張ろうって思える最高のお仕事小説でした。
仕事を頑張りながら周りの人と助け合って、私生活も充実させて人生楽しまないとですね!
私も、定時で帰ります!、 -
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ネタバレ岡嶋二人さんの作品は初めて。(井上夢人さんは読んだが)
なんとなく面白そうかな、ぐらいの軽い気持ちで手に取ったら期待以上だった。
バーチャルリアリティを題材としているが、ミステリ寄りの作品だからかSFは苦手な私でもどっぷり世界観に浸れて楽しめた。
いつの間にか現実と仮想世界との境目が曖昧になり、それに気付いたときの不安と恐怖、落ち着かない感じがすごく怖いのに、でも真実を知りたくて物語に一気に引き込まれた。
最後、えっ結局どっちなの…というオチまで含めて完璧。
ミステリだとすっきり解決してほしい派だが、この本はこの終わり方がめちゃくちゃしっくりきた。
タイトルの「クラインの壺」も初めて聞いたが、この物語を表す一語としてはぴったり。
1989年の作品というのにも驚いた。
この時代ってバーチャルリアリティとか流行ってたのかな?
かなり未来を先取りしていると思うのだが、なんか妙にリアルさもあるというか、40年近くも前の作品とは思えなかった。 -
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極上のエンターテイメント。Audibleで聞いたがとても1人で読んでくれているとは思えない臨場感。外崎友亮さん、プロの仕事すぎる。
そして、営業マンなら間違いなく刺さる、そして自分もこのテクニックは習得したいと感じるポイントが多々ある一冊。できる営業マンは裏社会に行ってもここまで道を切り拓けるのかという諦めのなさ、胆力の強さ、盤面を支配するための先読みの深さと布石の多さ。一手一手に明確な理由がある。強い。
「私、ノルマを達成できなかったことが今まで一度もないんですよ」。かっこよすぎ。
聞き終わってすぐにまた読み返したい(聞き返したい)と思った極上のエンターテイメント兼営業術バイブル。
いつか映像化されるのも楽しみ。絶対に見たい。 -
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大人になりたてだった文庫刊行時に「高校生の話か」と手が伸びなかった本作。
まだ記憶に新しいからこそ「子どもっぽいもの」として距離を置きたくなったり、少し冷めた目線で見てしまってた。
自分が大人になろうと背伸びしている最中だからこそ、少し下の世代を軽視してしまってたのだと思う。
40歳手前になった今、本屋大賞受賞作品全制覇への一環として、秋が舞台の本作のページをようやく開いた。
結果、「今」読むことができて良かったと心から思える、最高の読書体験になった。
主人公の1人の融に、友達の忍が読書を例にして「タイミングを逃すな」と説教するシーンは、読書好きとして深く共感したけれど、読み終えた今ならわかる。
そんなの読まない言い訳にならないほどに良い。
読むのに遅すぎることなんて、絶対にない。
タイミングを逃して後悔すること、逃してしまったこともすっかり忘れて後悔すらできないこともある。
そんな経験をしてきた大人の今だからこそ、響くものもあった。
主人公2人の和解というメインストーリーだが、周辺人物とのエピソードも絶妙。
お互いを大事に思い合う友人たちの視点や関わりがあるからこそ、2人の輪郭がより立体的になり、変化していく様が深く腑に落ちる。
夜の空気感、道中の景色、そして足の疲労。
五感に訴えかける丁寧な描写が、語られる内容と見事にシンクロし、まるで自分も一緒に80キロを歩いているかのような感覚に陥った。
そうして拗らせていた複雑な感情を、夜を徹して歩き、自身と相手と対話することで、シンプルで素直なものに変えていく。
あの夜明けとともに訪れる解放感と爽快感は、まさにこの作品にしか出せない青春の輝き。
悲しいからでもなく感動したからでもなく、胸がいっぱいになって泣けるという経験を、この作品で初めて知った。
大人の今だからこそ出会えてよかった、間違いなく最高の青春小説。 -
Posted by ブクログ
なぜかは忘れたけれど「禽獣」を読みたくて買った。川端康成は大抵表題作より併録作の方が好み。
表題作「伊豆の踊り子」もあまりにも有名なのに初読。
「伊豆の踊り子」
淡い恋の青春小説とするにはあまりにもその心情は多層的で複雑だ。
恋情があり、自己憐憫があり、階級的な見下しがあり、拒絶への過敏さがあり、それでも思いがけず受容されたという感覚があり、自己陶酔、承認欲求、その全部を主人公自身が言語化できずに終わる、という感じでしょうか。未整理で過敏な自意識の若者が踊り子を鏡にして自分を見つめているという構造で、触れると壊れる砂糖細工のような繊細さです。その組み立ては芸術的で、組み上げられた細工品が音もなく崩れるようなラストが美しい。
「禽獣」
たまらなく良かった。
女を見つめ、犬を飼い、鳥を選び、死なせ、ある一羽だけを大切にする。その具体だけで、人間の愛、支配、選別、美意識、残酷さ、孤独まで描いてしまう。
動物の飼育やその死に対するぞんざいさ、菊戴を無条件に大切にする不合理さ、千花子への説明できない執着や自己嫌悪と虚無を通して、人間という矛盾した存在の不安定感を描き出している。
たったこれだけの文量でここまでできるものなのか。
川端康成は風景を書いてるよりこうした嫌なものを書いている方が冴えている気がします。
川端康成らしい、渇望しながらも傍観する視線を堪能できる短編。
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