小説・文芸の高評価レビュー
-
-
Posted by ブクログ
お父さんは道化師、お母さんは髪で高いところにぶら下がる曲芸師、お姉ちゃんはフリークス。ルーマニアから西ドイツへ亡命したサーカス団一家の末っ子の目から見た世界を感覚まるごと体験させられるような、痛く苦しいジュヴナイル。
正直に言って、読むのが辛かった。一章一章は断章的かつぷつんぷつんと途切れがちな文体で、文字量でみれば短く軽い作品なのだけれど、読みながら、そして読み終えてから心に溜まるものはとても重い。それから解説を読み、この重みを受け止め苦みを噛み締めていくのが読者の使命だと思った。
サーカスは非日常の象徴だ。私も子どものころから『ダレン・シャン』にはじまり、アンジェラ・カーターの『夜ごと -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書に限らず、伊坂幸太郎さんが描く会話が本当に大好き。やけに遠回しな伝え方や、皮肉めいた表現。会話を紡ぐ登場人物同士の関係性を読者に想像させ、小説の素晴らしさをしみじみと感じる。
それだけが伊坂幸太郎さんの魅力ではないのだけれどするすると文字を浴びせられ、どんどんページを捲らされるのが気持ちいい。
「現在」の時間軸で頑なに河崎の名前を出していないことや、容姿の端麗さに関する記述が乏しいことから、「二年前」の河崎とは別の人間なんだろうなとは思っていたけれど、本当にそうだとそれはそれでびっくりするし、納得する。
これは自分の解釈だけど、はじめに椎名と河崎が会話した場面で、
「実は、俺は死から、復 -
Posted by ブクログ
ネタバレモーリー可愛い!とちょっと変わった主人公を読み始めから好ましく思った。
祖母以外の人間とはあまり良好な人間関係を築けないでいたモーリーだが、理解してくれる宿泊客に大富豪夫人との友情関係を素敵だと思っていたのに、事件後何やら怪しい展開に…
事件を解決するまでにこれまでの人間関係がふるいにかけられ、結果本当の友人ができる結末には心からホッとした。
殺人事件が起こるものの、推理小説ではなく、コージーと言えるほどのコージー要素もない。
ミステリというよりは、殺人事件を通して、1人の女性の心理描写や経験からの成長を描いたヒューマンストーリーといえるのではないかと思った。
大事なものの基準が違う、要 -
Posted by ブクログ
麻也子の自分以外の人を道具のように扱う表現がとても嫌だったが、元より不倫など自分の都合でしかないものであることを作者が表現しているのだと感じた。初心な不倫など求めること自体が可笑しい。どこまで行っても決して満たされることのない劣情の原因に気づくことはないだろう。自分もそうならないように戒めたい。
自己中心的な欲望の先に幸せはないことを、冷徹に突きつけられた。不快な読後感こそが、人間の業の深さと向き合うための鏡なのだろう。他者を尊重することの大切さ、自分の欲望に溺れることの虚しさを、反面教師として学んだ。ただし、それを実践できるかは別である。