小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
ネタバレとても引き込まれるお話だった。
夢のような綺麗な物語かと思えば、人間の弱さや悪さが見えてくる。誰もがどこかで間違えているのだけれど、この人が全て悪いと言い切れる人間はいない。
人の数だけ物語がある。同じ物事への見方も、人によって全く違う。人は見たいようにしか見ないし、信じたいものしか信じられない。正しいとか、正しくないとか、何の根拠もない自分だけの基準で世の中を判断する。正しい人間なんていなくて、誰かを責められる人間も存在しないと思っている。
自分とは違う人の気持ちを理解したいと心から思う、だけど、だからこそ自分の気持ちだけは見失わないようにしたい。誰も傷つけずに生きていくことなんてできないし、世の中の全てに対して善となる行動はできない。
でも、大切な人が自ら過ちに気づかないふりをして自ら進んでいくのであれば、止められる人間でいたい。自分から道を外れることはしたくない。自分で考えること、何かと向き合うことから逃げず、本気で生きていきたい。 -
Posted by ブクログ
テクニカルライターという職業と仕事を初めて知り、
新しい世界が拓けたようなワクワク感!これぞお仕事小説の醍醐味~♪
取扱説明書…誰にとっても身近な冊子製作の裏側に、テクニカルライターのプロとしての視点がたくさん詰め込まれているなんて考えもしなかった。
一番伝えなきゃいけないことはなに?
どう書いたらちゃんと伝わるか?
どうしたら読んでもらえるか?
そして、
たくさん収集した情報を整理して、
最終的には発想を転換させる…。
どんな職業のどんな仕事にも通じるようなヒントもあって、読んでいて気持ちがよい。
それに、
それぞれヒトクセある登場人物像も魅力的で、会話のテンポもこきみよい。
これはぜひ続編が読みたい!
あー楽しかった!
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Posted by ブクログ
この本は私に今足りなかった栄養
あなたの好きなものは何ですか?
人によって、好きなものは違う。
でも、みんな共通して食事はする。
そんな食事を今、あなたはどれだけ味わっているのだろうか?
授業に間に合わせるためコンビニで目についた物をパッと買う。スーパーで安かった野菜を適当に炒める。課題をしながら片手間に食べやすいという理由で選んだサンドイッチ。タンパク質を取るために機械的に口に運ぶサラダチキン。
私はこんな食事が多い。
最後に、自分の好きな物を選んで口にしたのはいつだろうか?
そもそも、私は、今、自分の食べたいものがちゃんと分かっているんだろうか?
そして、それは、食事だけではない。
「自分の」好きな物を選ぶ。
難しい事だ。
今年22歳になった私にとって、それは難しいというよりは、忘れてしまっていたことにも気づかない。そんな感覚だ。
服も食事も体型も振る舞いも。
社会に好まれる物を選ぶ。強制されているというより、それが私にとっても楽で最適。誰かのためにも私のためにも、その程度の好みを貫くことに何にも意味はない。そんなセルフネグレクトは、他人の目から見ると「正しい努力」として評価される。
そんなふうに考えて生きているうちに、好きな物や好み、何かが欲しいという感覚さえ忘れてしまう。
この本は、そんな風に自分の欲望に鈍感に生きていた主人公が、常に貪欲に他者を顧みず生きてきたカジマリと関わり変わっていく話である。
私は主人公の感覚に非常に共鳴した。
誰よりも自分を認めて許すカジマリに強く憧れ、彼女を受け入れない社会に首を傾げる。
でも、我を貫くカジマリが、社会から弾かれるのを見ると、ほらな。ざまぁみろ。とどこかで胸のすくような安心も覚える。
私はこの本に影響されて、ひっさしぶりに手の込んだ自炊(当社比)(親子丼、パリパリおつまみキャベツ、鶏皮の甘焼き)をした。でも、食べにくる友達に何を出すかとか、安いお野菜、肉。という考えを排除して、自分が何を食べたいのかを考えると、意外と難しくて、この思考回路はしばらく使っていなかったんだと今更ながら実感した。
私も主人公も、自分の反対側にいるカジマリを通して、鏡越しに自分の生き方、欲望を見つめた。
私達とカジマリ、どちらが正しいんですか?
この普遍的な疑問に対して、答えは一見、つまらない。
結局、程度が大事。
「適量」が重要。
ただし、この「適量」とは程々がいい。そんな意味ではない。
必要な量が必要。
つまり、食事も友情も愛情も、時には莫大に必要なのだ。
程々の量を摂取してお利口さんにしていましょうねー。という、ありきたりなお話とは全く逆なのである。
そして、そんな自分の「適量」を知るためには、自分の心の声、「欲望」に耳を傾ける必要があるのだ。
私たちは、「欲望」を満たすために、別の「欲望」を我慢する時がある。それを続けるうちに、「欲望」に標準が合わなくなっているのに、目標に走り続けてしまう時もあるだろう。しかし、最終的に、私たちの生活を豊かにするのは、私たちの「欲望」なのだ。
この小説のテーマの一つには、明らかにジェンダーがある。
それは、ジェンダーにまつわるバイアスや、ロールが私達の「欲望」を押さえつける事に特化しすぎているからだろう。
でも、男性、女性として(社会が望むように)立派になる。仕事と家庭を両立した女になる。
こんな事は、そもそも出来ないし、出来ても幸福ではない。
生意気、身の程知らず、効率的でない、似合わない、年齢に合わない、高い、無駄、私が選ばれるのか
ジェンダーや現代社会の生活は私にこうした欲望を否定する事ばかり教え込んでいないだろうか。(私がそっちばっかり吸収してるだけかもしれない笑)
あえて男女で分けるとすれば、、、
女性は、自分が「選ぶ側」であるという感覚を失っていないか?
残り物を美味しくいただく。選ばれるショートケーキである。献立は家族に合わせて考える。
男性は、自らにも、欲望を叶える力があると知らないのではないか?
温かい家庭料理、片付いた部屋、人や社会とのコミュニケーション。
こうした物は、提供する「女性」がいなくても、自分で拵える事もできる。
(とはいえ、私も自分の面倒を見切れてないので、完璧にするのは、マジでいい奥さんがいないと難しいのはよく分かります)
私は、自分の心の声に耳を傾けて、欲望を否定しない訓練が必要だ。
そのためには、1番身近で思い出しやすい欲望。食事が大事なキーワードだ。
毎食、フルコースでなくていい。私の気分、舌、気力、体調。
丁寧に耳を澄ませて私のための食卓を作るところから始めたいと思った。
一つだけ、納得がいかないとしたら。
この小説には、自分の欲望に素直になって、「自分で叶える」。他者に押し付けない、依存しない。そういうニュアンスがあると思う。
でも、私は人に押し付けたっていいと思う。そういう図々しさこそ、私には必要なんじゃないかな。
男女ともに、人の手料理でしか満腹になれない、そんな瞬間だってあると思う。
「私は私の求める物を作れる、選べる、整えられる」こんな自負は、1人で立っていく支えにはなるかもしれない。
でも、多くの人にとって1番豊かな人生は、1人では作れない、自立した関係性の人間とも作れない。そういう物なのではないか?
3食バターだけを食べていたら死んでしまうけど、でも、私の豊かさは、そこにしかないのではないか?
今の私はそう思う。
また、本当に文章が素晴らしい!
素晴らしい比喩や、美味しそうな表現、人物の描写も具体ではなく、主人公の目を通した雰囲気が伝わってくる。
人物に関しては、これにより主人公の認知の歪み(言い方は悪いけど)を一緒に味わえるため、彼女の考え方が揺れ動くのを体感できて楽しかった。
本当にセリフも地の文もお気に入りの文章が多くて、たくさん線を引いた小説。
おすすめです。
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Posted by ブクログ
香田も悪いやつじゃなかったな。
自分なりの信念を貫いて、今までのイメージが払拭された気分だ。
これから、いい意味での付き合いが増えていったりするんだろうか。
今後が楽しみだ。
今回は、今までで一番終わり方が良かったように思う。
逃げられて終わり、うやむやにされて終わり、というのではなかった。
それなりにいい感じに収まって終わった感じ。
大きな組織の上層部が関わってくると、下っ端はどうしても身動きが取りづらくなる。
さすが、失うものがない鮫島だ。
色々と立場を考えて動けなくなるわけがない。
簡単に丸め込まれたりもせず、自分の信じる警察官像を貫いていた。
周りに何を言われようと、どんなことをされようと、貫けるものがあるってカッコいい。
新宿鮫シリーズで、今のところ一番好きな回かもしれない。 -
Posted by ブクログ
介護者による被介護者の殺人について、当事者や関係者へのヒアリング、同様の立場の人達へのアンケートなどをまとめたもの
どんな事件だったのか?
どんな状況で起こったのか?
どんな判決を受けたのか?
介護者のその後を追ったケースもあるが、どこを切り取っても胸が痛くなる事ばかり
介護を長年続けて来たことによる疲弊
しかし……
預けられる施設がない
あったとしても高額
預けたとしても、被介護者が「いやがる」「かわいそう」という感情から自宅介護に戻ってしまう
真面目な人だから様々なケアをせざるを得ない
施設のケアが自分よりも充分ではないと思ってしまう側面もあるのではかなろうか
介護をしている人へのアンケート結果も生々しい
「介護している家族を殺してしまいたいと思ったり、一緒に死のうと考えたりしたことがありますか」という極めてセンシティブな設問に対し、「はい」と答えた人が20%にも及ぶ
どんな時にそのように考えたかについては「介護に疲れ果てた時」「将来への不安を感じた時」という回答が多い
そしてやはり、不眠状態が「続いている」と「時々ある」を合わせると60%
介護殺人に至ってしまう状況としては
睡眠不足
判断力の低下
介護者の社会的孤立 などが考えられる
周囲のサポートがあれば防げたかも知れないけれども
どこまで踏み込んでよいか、そんな余裕があるかも難しい
今後、被介護者の人口が増え続けるであろう日本では、施設の設置が間に合うわけもなく
国は在宅介護を推奨せざるを得ない
一人の被介護者にはかならず一人以上の介護者がいる
だとしたら、その人の社会的な生活はどうなるのか?
介護保険の適用項目を増やしたところで、それをするのもまた人手が足りなくなるだろうし
暴れたり徘徊などを行う被介護者は施設としても受け入れがたい
となると、やはり「家族」という単位で負担が増す事になる
重松清による解説で、「介護」「殺人」という不釣り合いな単語を結びつけるのは「愛」
という言葉が重く響いた
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僕が言いたいのは、介護殺人は、ずうっとさかのぼっていけば家族愛に至ってしまう、ということ。つまり、介護殺人とは「愛する人を自分一人で愛さなければいけないと追いつめられてしまった果てに起きてしまった殺人」おそらく、真の意味での被害者は、殺された人と殺してしまった人の二人なのだ。いや、両親が殺人事件の加害者と被害者に分かれてしまった子どもたちの悲しみと葛藤を思うと、介護殺人には被害者しかいないのだと言ってもいいのではないか?
最後にいま一度、念を押して申し上げる。
僕は本書を、社会に警鐘を鳴らす優れたノンフィクション作品として読む一方で、愛が人を殺してしまう深いジレンマを描いた文学作品としても(取材班はそんなものを望んではいないかもしれないけれど、勝手に)味読したのである。
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世間にはそうではないものもあるかもしれないが、この本の中で言及されているケースはそうであると思った
愛ゆえに介護し、愛ゆえに追い詰められて、愛ゆえに終わらせてしまう
2006年に京都市伏見区の河川敷で起こった事件が介護殺人を有名にした
裁判で吐露した言葉
「母の命を奪ってしまいましたが、生まれ変わるのであれば、もう一度、母の子として生まれたい」
が有名になった
「できるだけ人に迷惑をかけないように生きようとすれば、自分の持っている何かをそぎ落として生きていかなければならないのです。限界まで来てしまったら、自分の命をそぐしかないのです」
という言葉が重い
ずっと介護をしてきて、疲弊した環境で起こってしまった事件で有罪になる介護者
一方、介護をしてこなかった身内や関係者は罪に問われない
このままでは、社会の風潮として、介護には手を出さないという行動が最適解になってしまう恐れがある
また、介護をしないという選択を選べない人達はずっとそのリスクをずっと負う事になる
この問題に解決策なんてあるのでしょうかね?
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なぜ彼らは最愛の人に手をかけたのか? その時、彼らの何が壊れたのか?
家族の「絆」がなぜ「悲劇」に変わってしまったのか?
全国の要介護認定者数640万人。「夫婦だから」「親子だから当然」と始めた家庭での介護が長期化し、困難を極め、やがて悲劇が起こる――。今、全国で続出する介護を苦にした殺人事件。なぜ最愛の母親を手にかけてしまったのか。家族の絆がなぜ悪夢に変わったのか、当事者の悲痛な叫びに耳を傾けた記者たちが目の当たりにしたのは、在宅介護の切なすぎる現実だった。慟哭と衝撃の最前線ドキュメント。重松清さん推薦。
重松清さん「解説」より
僕が言いたいのは、介護殺人は、ずうっとさかのぼっていけば家族愛に至ってしまう、ということ。つまり、介護殺人とは「愛する人を自分一人で愛さなければいけないと追いつめられてしまった果てに起きてしまった殺人」??おそらく、真の意味での被害者は、殺された人と殺してしまった人の二人なのだ。いや、両親が殺人事件の加害者と被害者に分かれてしまった子どもたちの悲しみと葛藤を思うと、介護殺人には被害者しかいないのだと言ってもいいのではないか?
最後にいま一度、念を押して申し上げる。
僕は本書を、社会に警鐘を鳴らす優れたノンフィクション作品として読む一方で、愛が人を殺してしまう深いジレンマを描いた文学作品としても(取材班はそんなものを望んではいないかもしれないけれど、勝手に)味読したのである。
愛ゆえに家族を殺めてしまった当事者の声なき声
▲絞めたらあかんと繰り返しながら妻を絞殺した夫
▲ごめんなとつぶやいて母親の点滴に睡眠薬を流した娘
▲もう一度、母の子に生まれたいと悔やむ息子
▲なぜ受け入れを拒んだのかと悩むケアマネジャー
目次
第1章 告白
真夜中のドライブの果て
検事さんには私の苦しみは分からん
第2章 先が見えない不安
長期介護という出口のないトンネル
母の愛が絶望に変わる瞬間
第3章 残った者の日々
「もう一度、母の子として生まれたい」
悲劇の連鎖
介護殺人が残す傷跡
第4章 事件は防げたのか
ケアマネジャーの告白
医師が感じていた兆候
「もう二度と孤独にはさせない」
現場の苦悩
介護で追いつめられる男たち
第5章 苦悩と絆
「いないとやっぱり寂しくて」
「ヤングケアラー」の苦悩と奮闘
家族を引き離した「多重介護」
とんがり帽子の屋根の家
第6章 介護家族の現実──支援の限界と急がれる見直し
介護家族アンケートから見えること
支援の現状と望まれる見直し
家族に介護が必要になった時
シリーズへの反響
文庫版あとがき
解説 重松清
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