あらすじ
警視庁公安部が事件を捏造!
前代未聞の国家犯罪の全貌を暴き
権力の闇に迫る
調査報道大賞を2年連続受賞ほか、各賞総なめの
NHKスペシャル「“冤罪”の深層」シリーズ、
ついに書籍化!
軍事転用が可能な精密機器を不正に輸出したとして横浜市の中小企業の社長ら3人が逮捕された大川原化工機事件。
長期勾留ののち異例の起訴取り消しとなり、会社側は国と東京都に賠償を求めて提訴する。
第一審で証人として出廷した現役捜査員は「まあ、(容疑は)捏造ですね」と衝撃の証言。
裁判は、警視庁公安部と東京地検の違法捜査を認め、国と東京都に約1億6600万円の賠償を命じて確定。原告側の全面勝訴となった。
衝撃の冤罪はなぜ起きたのか。警視庁公安部で何が起きていたのか。
NHKディレクターである著者は、早い段階からこの事件を取材。多数の内部文書や音声記録を入手し、警視庁公安部の捜査を徹底検証した。
制作したNHKスペシャル「冤罪の深層」シリーズは大きな反響を呼び、これまでに10個もの賞を受賞している。
本書では、番組未放送の独自取材の内容や新事実を伝えるほか、告発者達との息詰まる接触の過程も明らかにする。前代未聞の国家犯罪を暴き、権力の闇に迫る、渾身のノンフィクション。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ジャーナリズム精神に溢れる本。偏向報道や左翼寄りで批判を受けるNHKにあって、このような本を書ける職員がいることに、まずは脱帽です。最後の文章「本書を、亡き相嶋静夫さんに捧げる。」に触れて、ジーンときました。
本書は、読売新聞の書評を読んですぐに購入して読みました。取調べを担当した警視庁職員の処分は甘いと思わざるを得ません。起訴を決定した東京地検のC女性検事が処分されないのもおかしいです。いずれも、上級国民だからと言っているようなものです。
冤罪が生まれた背景に、経済安全保障の強化があることが分かりました。本事件は、経済安保の取組成果として「警察白書」に紹介までされていたそうです。日本に経済安保の強化を導いたのは、中国の軍備増強があったからであり、この文脈からすると、間接ながら大河原化工機事件は、中国がもたらした冤罪ともいえます。
著者が属しているNHKが本事件をクロ現やETV特集で積極的に取り上げたのは、経済安全保障の弱体化を図りたい中国側の意向がNHKに浸透している、と見立てるのは穿ち過ぎでしょうか?つまり、経済安全保障を強化すると、本事件のような冤罪を産んでしまうから、「冤罪」という国民受けするテーマの番組を流して、経済安保の取締を弱める役割を演じているようにも、捉えることができます?
以下は、残しておきたい本文記述と私の感想です。
○第三章
p.93
「捜査幹部が、自らの出世のために事件を『捏造』した」
→ 大阪地検特捜部に所属していた、前田恒彦元主任検事が郵便不正事件で証拠改竄をしていたのと同じ動機である。同じことは繰り返される。
○ 第四章 告発者たち
読み応えのある第四章。ジャーナリズム精神が表れている。
p.110
「事件が引き起こされた要因として、二つをあげた。
「法廷での証言もあったが係長の欲が第一。自分が出世したいという欲。当初から無理だと何人かは言っていたのに、強引に押し通した。管部から管視になるには実績が必要。係長は、これを欲しがった。そして管理官の組織への過剰な思い入れ。管理官は外事一課が長い。成果を上げ組織を保ちたいという思いが強かった。自分の代で鼈理縮小となれば、先輩達に顔向けできないとかんがえたのではないか」」
○第九章
p.295
「地裁判決後の音察や検察の反省しない姿勢に業を煮やしたことが、資料提供の理由だったということだ。結果として、相嶋静夫さんの命を奪うことになった事件の重みを組線はまだ理解していない、それを正すためならば多少のリスクは厭わないというCの強い意志を感じさせられた。」
→警察組織は軍隊組織と通じるところがあるから、右向け右の雰囲気が強いところだと思っていた。しかし、一般的にそう思われる組織の中にあって、このような正義を果たす人がいるだけでも、逆説的に言えば健全さがあったと言えなくもない。民間会社の組織は千差万別だから、軍隊や警察以上に右向け右の組織もあれば、悪い意味で全くまとまりようがない会社もあるだろう。
Posted by ブクログ
これまで読んできたドキュメンタリー書籍の中でも、極めて完成度の高い一冊であると感じた。できるだけ多くの人に読んでほしいと強く思う。
本書は、冤罪が発生する前後という幅広い時間軸の中で、警察、検察、被害者、告発者、協力者といったそれぞれの立場にある人々の行動や思考を、きわめて丁寧に描き出している。さらに、それを報道する側の葛藤や心情も織り込まれており、多角的な視点から事件の全体像が浮かび上がる。その構成力と取材の緻密さこそが、本書の完成度の高さを支えていると言える。
本件を通じて、警察・検察を中心とする組織が冤罪を生んだ要因を徹底的に検証し、具体的な再発防止策を講じることを強く望む。同時に、多くの市民が本件を知り、公権力の在り方について主体的に考える力を深めることが、同様の過ちを繰り返さないための第一歩となるはずである。