小説・文芸の高評価レビュー
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西加奈子のコミカルさとあたたかさが全開。
一つ一つの短編が素晴らしく、かつ、短編集全体としてのまとまりも素晴らしい。
「長編ほどの読み応えがない」のは当たり前。短編集だからね。
しかし短編集としての魅力がものすごいと思うので星5つ!
6つの短編はすべて「女2人」の物語。
全て良い。「漁港の〜」を思い出させるような母と娘の物語『シャワーキャップ』も最高だし、雌猫2匹の目から飼い主カップルのドラマを描く『しずく』も素晴らしい。
けど、ひとつ選ぶなら、恋人の連れ子マリの相手をする34歳女性の苦闘を描いた『木蓮』を挙げたい。ただただハートの温かくなる物語も良いが、西加奈子の「鋭い毒舌からのハートウォーミング」はクセになるのだ。 -
Posted by ブクログ
『ブレイクショットの軌跡』は、エンタメとしてとても面白い作品でした。さまざまな登場人物の物語が描かれ、一つ一つの章がどう繋がっていくのか、読み進めている間はほとんど予想できませんでした。それぞれ独立した物語のように見えていたものが、少しずつ重なっていく構成がとても面白かったです。
そして何よりすごかったのが、最後のエピローグです。単なる物語の締めくくりだと思っていたら、ここでこれまでの伏線が一気に繋がっていきます。エピローグを読むことで、それまで読んできた物語の見え方まで変わり、このエピローグがあって初めて作品全体が完成するように感じました。読み終えた瞬間の、いや、すごい……という驚きと余韻が忘れられません。577ページという長さを感じさせないほど夢中で読み進められ、最後まで読んだからこその面白さを味わえる作品でした。 -
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ネタバレ自分が習ってきたお茶のことを淡々と語っている。
しかも、けっこう挫折して辞めようともしている。
しかし、その度にお茶の魅力を発見し、踏みとどまり、20年以上続けてきた著者。
著者がお茶の魅力を語るなかに共通していたことに、『自然を感じる』ということがある。
今、私たちは意図的にやらないと、ただぼんやりと雨の音を聞いたりすることがない。
お茶は、様々な作法を通して、自然を感じ、繋がる体験なのかもしれない。
私は山に行って歩いていると、割とぼんやりとしている。
「あの石は踏んだら危なそう」「この声、何の鳥だろう?」「山頂のススキはどんな感じかな?」
色々と、そのばその場で思うまま考えている。
そして山歩きが終わると、なんだかスッキリしている。
町中であれこれ考えているのとは、まるで違う。
思うに、町中で考えていることは、過去や未来のことばかりで、どうにもならないことだ。
しかし自然の中にいると、ただその場で思うことを考える。
だから、安心できるのだと思う。
自然と繋がる感覚。
今の人間には、もっとそれが必要なのだ。 -
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「六人の嘘つきな大学生」が類を見ないほど面白く、朝倉秋成作品の虜になって手に取った本作。
ある日突然、SNSでなりすまし被害に遭い、身に覚えのない冤罪でネット上の「悪者」に仕立て上げられていく主人公。今や誰もが日常的にSNSを使う時代、いつ自分の身に起きてもおかしくないリアルな恐怖に、始終ハラハラしながらページをめくった。
ここまで証拠が揃ってしまったら、もう挽回なんて不可能では…と主人公とともに何度も絶望に叩き落とされる。が、真の凄みはそこからの展開だった。
怒涛の伏線回収とともに明かされる真相。えっ!この人が犯人!?と思いきや、嘘でしょ〜そっち!?と、二転三転する事態に翻弄されっぱなしで、最後まで犯人の目星がまったくつかなかった。
期待を遥かに超える面白さだった。
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児童文学である。
…児童文…学…?と首を傾げたくなるが、レッキとした児童文学である。だって生々しい描写ないし(そういう問題ではない)。
なんとなーく、刑事のように「薄々怪しい」と思いながら読み進めていき、ことの真相が明かされるのである。
私はただの素人読者に過ぎないが、児童文学という点で感想を述べよう。
小学生や中学生でこの本を読んでたら、きっと価値観がひどく揺さぶられたと思う。
特に、タイトルである「幸せな家族」とは何か?について。
この家は新しい家に引っ越してきて傍から見たらまーそれは仲良い幸せな5人家族に見えるが、実際は父はふんぞり返るし兄はしゃしゃり出るし母はNoといえないし姉はいい子過ぎて心配になるし本当に幸せか?と思ってしまう。
そして次々と家族が死んでいくんだけど、、、
読み終えると、多少の歪みはあるものの別に健全な範囲内ではないか?それぞれのコンプレックスはありそうだけど、家族間で何も無い方がむしろ難しいのではないか。むしろ、観天望気のことは特にそうだけど、嫌いなところはありながらも憎んだりはしてないごく普通の家庭だったのではないか?そして愛してるから、正常に狂ったお母さん。これは泣ける。
今は30代も後半になってそう解釈できる。
でもこれを10代で読んだら幸せな家族ってなんだろうってずっと考えてしまう。その先もずっと。
出会わなくてよかったのかはわからないが、ただ、もしこの本に出会えてたら、私の人生は、もしかしたら変わってたかもしれないと思う。 -
Posted by ブクログ
つい最近、昔からお世話になってる内科の先生とひさびさにお話する機会があった時に「わたしは、壊れたものを直すことしかできないから」と言っていたことを今でも覚えている。気の利いた返しができず、もごもごしていた苦い記憶もおまけで付いているのが少々厄介な点。
その時先生は、新しいものを生み出すような職業を素晴らしいことだとも言っていた。その意見にはまさしく同意するが、それと同時に医療のような、当たり前を創る医者という職業も、同時に尊い存在だと私は思う。
当たり前が続くことの幸せに、取り返しのつかない局面になってやっと気付くような私たちを支えてくださる、そんな尊い職業に就く方々の心の内を知れる貴重な本だと思う。本という、誰でも物語の一人称になれるような媒体だからこそ、読んでほしい作品だ。
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