小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
さすが小川洋子さん、と思わせる一冊です。
2025年から建て替えに入った帝国劇場をめぐる七つの物語と、最後にそれらをつなぐエピローグ的な一編からなる短編集です。
私は演劇そのものにあまり関心がなく、舞台を観たこともありません。それでも、帝国劇場に対する小川さんの強い思い入れは、作品の随所から伝わってきます。
小川さんの物語には、暗い水底で演じられる舞台を思わせる、独特の静寂感が漂うものが多いように思います。ところがこの短編集からは、静寂の中にほのかな熱気が感じられます。もちろん、そこは小川さんの作品ですから、熱気といっても決して激しいものではありません。どこか穏やかで、温かく、優しい熱気です。
各編の主人公は、劇場の裏方や、そこを訪れる一般の観客たちです。そうした、劇場の片隅にいる人々の思いを通して描かれるのは、建物としての帝国劇場ではありません。そこには、「人々に幸せを与える」という一つの意志を持った、生き物のような帝国劇場の姿があります。
見事な短編集です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ
354ページの3行目を読んで雷に撃たれたような衝撃を覚えました。こんな感覚を覚えた本は初めてです。
ゴリラが人語を理解して話す、という時点ですごい設定だな〜と思ったのですが、読み進めるとすぐにローズの虜になりました。
ゴリラとして生きるローズも、人間のように生きるローズもどちらも生々しく書かれています。なので、読んでるうちにずっと私の中の蟠りであった、
"ローズは言葉を覚えたことで、ゴリラとしてのアイデンティティも、人間としてのアイデンティティも曖昧になってしまっているのではないか?"
という思いを、最後にちゃんと汲んで払拭してくれる作者が凄過ぎる。
オマリ銃殺を巡っての裁判は、ダニエル・グリーソンというとんでもないトリッキーな弁護士によって大逆転劇となり。
ダニエルがローズの"人権"を主張し、讃え、守ってくれて本当に良かった。
揚げ足取りの詭弁みたいな弁論がこんなに威力をもつことにも衝撃で、読むのが止まらなかったです。
作中いきなり登場し、ローズを断罪しようと躍起になっていたピーターの、厳格で凝り固まった考えを払拭したローズの一言にも最高に痺れました。
親友のリリーですら、ローズのことを"ゴリラ"として認識して無意識に人間のカテゴライズから外していますが、そのことに気付きつつも"言語の限界"と捉えて責めたりしないローズの優しさったらないです。リリーは彼女なりにローズに寄り添っているのでこれまた優しくて温かい気持ちになります。
ジャングルに戻って少しでも疲れたローズの心が休まりますように。
アイザックとの再会も果たせて本当に良かった。
読んでもなお、私はローズのことをゴリラと捉えてしまっているのがちょっと恥ずかしいです。
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Posted by ブクログ
私は、このシリーズを、若返りの薬のように読む。
シリーズの中で、成瀬が周りの人への影響をどう与えて行ったかの答え合わせの回。皆、成瀬との出会いにエネルギーをもらっている。
それは、少女から乙女へのほと走る若さのエネルギーと才能豊かな成瀬だからできたことかもしれない。
いや、私達もそうなのだ。と思った。
私は今51。
読んでいたら、自分の走り続けた乙女時代を懐かしく思うけれど、
子供を育てながら、200歳に向かう私はまだまだエネルギーに溢れたヒヨッコのようなもの。
これからもたくさんの人と出会う。
成瀬のように、相手を品ダメすることなく、直向きに豊かに生きたい。と強く思い直せる。
つい、YouTubeやAIにたより、思考が止まりがちな日々を戒めてくれた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ交換殺人かつ間に仲介人がいるという特大ネタバレを知っていたが、逆にそれ以外は知らなかったので意外と楽しめた。
特に手紙のトリックや香水の意味は流石。
他感想サイトにあった動機の弱さに関しては処女作からなので特に感じず。
マリアの悲劇のヒロインムーブはもう少し鼻につくかと思ったが、逆に面白くなってしまい苛立ちはなかった。マリアだけじゃなく登場人物みんな夢見がちなせいかも。だから余計に犯人の冷徹さが際立つ。
志度は良いキャラだと思ってたが、まさか火村さんの元ネタとは。
総じてロジック重視派の名に恥じない傑作だった。
次は江神さんあたりが失踪するのかな? -
Posted by ブクログ
漫画から入って、小説に。ちょっと順番が原作と漫画で前後するところがあって読み比べるとより面白いです。(原作との読み比べをするのが好きでして…)
聞こえのいい話とか、どうにもならないホラーとかじゃなくて、「悪人は報いを受ける」がテーマとして確立されてるのかな、と。そこがしっかりしているので読んでいてうわぁーっっっってもやもやイライラしないのが本作のとても優れている点だと思います。ホラーなのにね、理不尽さがない(ある程度は仕方ないとして)のはいいですね。
ただ、なんか所々に待ち受ける不穏そうな果てにハラハラしながら読んでます。
あと、夜に読まないほうがいいです。
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