【感想・ネタバレ】ヘヴンのレビュー

あらすじ

「苛められ、暴力をふるわれ、なぜ僕はそれに従うことしかできないのだろう」 善悪の根源を問う、著者初の長編小説。

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Posted by ブクログ

もう少し心の準備してから読めばよかった…と反省。
すごく心が痛いのと自分の人生の一部を見ているようでしんどいのだけど、
やはり文章のプロはそう思わせるだけではなく、細部にまで凝って最後まで読めるように導いてくれる。

これもまた心を落ち着かせて読み直したい。

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2025年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

6章まで読んだ時、ちょっと考える時間が必要になった。

なぜ誰かをいじめること暴力をふるうことがダメなのか。
百瀬の理屈にそった説明で納得させることは、私も難しいと感じてしまった。

それはなぜか。根本的な何かがズレてる感じがある。
「僕」にはあるけど、百瀬は持ってない何かがあるんだということはわかるんだけど。何なのかちゃんと説明できない。
それはモラルと言われる何かのことなのか。

(内田樹さんの本にこんな事が書かれてたように思う)
なんでひとを殺してはいけないんですか?
これは、あらゆる幸運がそろって今自分が恵まれた環境にいることを自覚できない人ができる質問である。
じゃあ、もしあなたがいままさに殺されようとしてる時にそんな質問できるか?、と。それを思い出した。

百瀬は言う。たまたま俺はそれができる側だった。
いじめが嫌なら自分でなんとかすれば。
おれはできることをやる、アンタもそうすればいい。
でもそれができるひととできないひとがいる。
例えば人に暴力を振るうこと、相手を殺すこと。
お前はできない側だろうけど。

もし百瀬に、「僕」の言い分をわからせるには。
百瀬が死を覚悟するかもしくはそれと同等のところまで追い込むしかないのではないか。
恐怖でコントロールするしかないんじゃないのか。
でもそれは暴力でわからせることであり、いじめや暴力が何故いけないかの答にはなっていない。
むしろ同じこと。それを正当化してしまうことになる。

百瀬は、人生には意味がない。
そして弱い奴らはそれに耐えられないと言う。
つまり、意味はないけど力はある。だからやる。

コジマは言う。
「大事なのは、こんなふうな苦しみや悲しみには必ず意味があるってことなのよ…」
つまり、力はないけど意味はある。だから受け入れられる。

ここまで自分なりに考えたけど、わからない。


…そして最後まで読んだ。

もしかしてコジマは強いのか。
側から見ると、コジマはいじめられてるんだけど。

コジマは、従うんじゃなくて受け入れていて、それは正しいことがわかってるからで。
弱さにも意味があるんだとしたら、強さにも意味があって。それも弱い奴が自分を正当化するために作り上げた程度の低い意味ではないと。

それはけっきょくおなじこと、と百瀬は言って。
自分の都合に従って世界を解釈してるってことで。
相手の考え方やルール、価値観をまるごと飲み込んで有無を言わせない圧倒的な力を身につけるしかなくて。

コジマはずっと、できごとには必ず意味があって。
苦しみや悲しみには乗り越える意味があって。
もう私たちだけの問題じゃなくて。
だからその意味にみんなを引きずり込まなくちゃっ、て考えてて。
(もしかして、「意味」は力なんじゃないか)

これは理想じゃなくて真実で。想像力も何も必要じゃない、ただここにある事実なのだと。
「僕」の中でコジマと百瀬の声が共鳴し表情の見分けがつかなくなっていく。

そしてコジマによる何もわかっていない子どもをあやすような、憐れむような行為が続けられ、二ノ宮の暴力によって終わりを迎え、その暴力から解放されたとき、コジマと「僕」は笑い、泣き、涙を流し続けた。

悲しくて泣いたんじゃなくて、コジマと僕は行く場所がなく、このようにしてひとつの世界を生きることしかできないと言うことに対する涙を流していた。

私は、二人からこれ以上ないこの世界へのあきらめのような感情を感じた。
この世界は狂ってるし、こんなに追い込まれてなすすべもなく、あまりに辛すぎると思った。

意味がある、ない
力がある、ない
できる側、できない側
善と悪
弱いと強い
正しいこと、間違ってること
…とか

それぞれ立場もやってる事も違うけど。
コジマも百瀬も言ってる事は根っこのところで同じなんじゃないのか。

そして日常は大小あれど、こういう議論や争いごとに溢れてる。

物語の中の「僕」は、その中で「引きずり込まれたくないし、引きずり込みたくない」って言っていた。
それはコジマにも百瀬にもそうじゃない、とされることだった。

私は、わかりあう努力(ほどほどに)をしても無理なら「もう逃げよう」と思った。
もしそばにたった一人の大切な友達がいたとしても。

逃げた先に何があるかわからないけど、忘れることができるかもしれないし、世界の美しさに気づけるかも知れないから。

そしてできることなら、物語の中の「医者」のように誰かの逃げ場所を作ったりそれを提供できるひとになりたい、と思った。













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2025年09月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いじめの描写を、こんなにも淡々と書くことに驚いた。“いじめられている”という共通点がある僕とコジマだが、その感じ方や捉え方は両者違っており、それぞれの強さがあると感じた。「いじめは絶対悪」という私自身の考えに変化はないけれど、それでも、百瀬の考えには圧倒されたし、説得力があった。他人とそうでない人の境界について、改めて考えさせられた。二ノ宮は本物のカス。

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2025年08月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

しんどくて苦しくて涙が出た。虐められてる側の僕はなぜ同じことを虐めた側にできないのか。できないからできないと僕は言っていたけど、同じことをすることによって虐めた側と同類になってしまうからできないのではないかと思った。相手と僕は違う人間だけど体格も年齢も同じようなものなのに、なぜそれができないのか。生まれ持った性格もあるとは思うけど、虐めてくる相手を心の底から軽蔑しているからだと感じた。コジマがわざと不潔な格好をしている理由が、お父さんと一緒に暮らしていた頃の貧乏だった記憶や繋がりを忘れないためというところに、コジマは本物の強さを持っているなと思った。ひどいいじめをこれから受けるのだと察して恐怖を感じている僕の心情や、鼻が打撲して大出血するほどの怪我を負わされ、その後から眠れなくなってしまい自殺について考えていくところなど、読んでて本当に悲しかった。それでも僕は学校に行って、コジマへの手紙の返事は書けないけれど、同じ教室にいるコジマを見てなんとか救われて、病院でいじめっ子の1人に会ったら話があるんだと声を掛けるところなど、僕も本物の強さを持っていて、すごいな、絶対に報われてほしいなと思った。斜視である君の目が好きだと言ってくれるコジマが傍にいてくれて良かった。

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2025年08月17日

Posted by ブクログ

ちょっと色々衝撃的やな、海外で刺さるのも良くわかるわ。どこから夢でどこから現実なんやろか、小説だからぜんぶ夢なんやろけど。斜視って治るんやな、現代技術は素晴らしいな。俺も白目の黒い部分取ってもらおかな。
自分がされて嫌なことは、他の人にもやってはなりません、というのは綺麗ごとだという百瀬。自分がやられて嫌なことでも、やりたかったらやる、でも自分の身内がされそうになったら全力で防ぐ。それが嫌なら力をつけるしかない、それが現実なんや、という百瀬。
いじめをしてる側の二の宮や百瀬みたいな奴らは、一見外見もよく頭もよく見えるけど、ほとんどの場合家庭環境が悪く、親に問題があって、そのストレスを外に向けているケースが多い印象。グレてる奴らは、親から愛情を受けられていない、一皮剥くと本当は可哀想なやつら。と、いうところまで思いが至ると良いのだが。
いじめられてる側が発達障害とかだと、更にタチが悪く、反抗できずに事態が悪化する、先生何やっとるんや。
いじめって無くならないし、百瀬の言うとおり根源的には人は弱いもの虐めしたいというグロテスクな部分は間違いなくあり、そこからは逃れられない。そこから目を背けるのは問題の本質をとらえる事ができなくなる。せめて虐められる側が、地獄を見ないようなサポートを。
と、いいつつ我が子には、こう言う環境に出会わない様に最大限の配慮とか環境を用意してあげたいなと思う、やっぱりキツイでしょこう言う場面に会うのは。私立の進学校はこう言うレベルの低い虐め無いよ、サンプル数一しかないけど。

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2025年07月12日

c

購入済み

ちょっと理解できるような、、

虐められる側の「受け入れる」と言う考え、たしかにそれは弱者ではなく勝者に感じた。

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2022年09月15日

購入済み

役立たないけれど、役立つこと達

私たちが社会に役に立つものを求めるとき、
私たちも役に立つものであることを求められる。
これはきわめて当然だけれど、
私たちは役に立つものばかりから
できているわけではない。
私は私自身の役に立たない部分を
かえって私のアイデンティティを
表すものとして、「最後まで」
愛することができるだろうか。
また、私は、私だけで私であるわけではない。
私を生み出してくれた者たちも
私の一部である。
私は、私の一部が不完全であっても
かえってそれを愛せるだろうか。

〇〇は、後ろめたくて
自分に大きな穴ができたように感じる行為
かもしれないが、意外と戦略的で
原罪とも呼ばれるものの暴発を回避して
守るべきものを守る強い力になりうるもの
かもしれない。
〇〇が怪我をして血を流すのを読んだとき、
読者としての私は、主人公に復讐や逆襲を
そそのかしたい気持ちを冷まされた。
突発的な凶事も、ないに越したことはないが、
もっと大きな取り返しのつかないことから
自分たちを守ってくれるものとなってくれる
こともあるようだ。
〇〇の凶事や、〇〇に芽生えた強さが、
勇気を持ち始めた主人公のその勇気の、さらに
先にある何かを示しているようだ。

私たちは交流する間に、たとえ
強く幸せに結びつくことができなくても
ばらばらでいるのに、それぞれが成長して
違っているのに、それぞれの成長を
なんとなく感じて安心できることが
あるように感じる。

役に立たなさそうでいて、
役に立つこともあるようですね。

#ハッピー #切ない #ダーク

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2022年04月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この作品における「いじめ」は、テーマというより一つのモチーフとして扱われているように感じた。いじめが許されないのは当然だが、作者が描こうとしたのは、卑劣で非情な環境に置かれた人間がどのように生き延びようとするのかという、もっと根源的な部分だったのではないかと思う。とはいえ、凄惨ないじめの描写はあまりに辛く、一語一句を丁寧に追うことはできなかった。

コジマが父との繋がりを絶やすまいとして風呂に入らず、服も洗わない行為が周りに理解されることはない。しかし中学生の少女にとってそれは、理屈を超えた、自分らしく生きようとする精一杯の自己主張なのではないだろうか。

また、百瀬の無慈悲で過度に冷笑的な世界観には強い嫌悪を覚えた。それでも、彼の言葉にはどこか説得力があり、世に対する希望が揺らぎ、暗い気持ちになった。

いじめが発覚して物語は終わるが、コジマは進んでいじめを受け入れ続けたことで本当に救われたのだろうか。最後に彼女が裸でいたのは、「汚れ」を媒介にしないでも自分自身に価値を見出せたということだったのだろうか。

多くのことを考えさせられたが、辛い思いをした人間だからこそ他者に優しくできることもあると思った。百瀬の言うように善悪は所詮、社会の秩序を保つための絵空事にすぎないとしても、人の心を蔑ろにする者は、他人を救うことは決してできないのだと思いたい。

読み応えがあって素晴らしい作品だった。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

僕が百瀬の言ってることをなかなか理解できない、受け入れたくないみたいな感情の描写がリアルでよかった。

「権利があるから、人ってなにかするわけじゃないだろ。したいからするんだろ」

「欲求が生まれた時点では良いも悪いもない。そして彼らにはその欲求を満たすだけの状況がたまたまあった」

「自分が思うことと世界のあいだにはそもそも関係がないんだよ。それぞれの価値観のなかにお互いで引きずりこみあって、それぞれがそれぞれで完結してるだけなんだよ」

権利とか人の気持ち(罪悪感)で善悪を判断する僕、そういった人それぞれの都合に意味づけするのは弱いからであり、世界はシンプルな仕組みでできているしそこに善悪はないという百瀬。

一方でコジマは「わたしたちはただ従ってるだけじゃないんだよ。受け入れてるのよ。強いか弱いかで言ったら、それはむしろ強さがないとできないことなんだよ」

「君のその方法だけが、今の状況のなかでゆいいつの正しい、正しい方法だと思うの」

「これはね、正しさの証拠なの。悲しいんじゃないの」

私たちを攻撃するのは私たちが恐ろしいからであり、むしろ本当に弱いのは相手であるからこそ、この痛みを受け入れることは、「意味のある弱さ」であり「唯一の正しい方法」だと言った。

僕が目を治すこと、コジマの母が父を最後まで可哀想だと思い続けなかったこと。それはコジマにとって、逃げること。不安や恐ろしさに支配された弱い人間に屈服すること。それは自分自信の痛み、苦しみに耐えることの意味がなくなることであり、それこそがコジマにとって最も恐ろしいことなんだと思う。

百瀬とコジマ、母や医者の言葉の中で揺れ動く僕の気持ちと選択の末、最後に見た景色は今まで見てきた世界とはまったく違ったものだったこと、そして耐え続けなければならないと思い込んでいた世界は、ある一つのきっかけで一変するということ。今見てる世界は、百瀬の考え方でいうとたまたま目の前にある世界なだけであり、たまたまその状況にあるだけかもしれない。善悪、弱さ、正しさ、今自分はどういう世界の見方をしていただろう?善悪とは何か?それは自分が生きていく中でしか考え続けられないものなんだと思った。


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2025年11月09日

Posted by ブクログ

平易でリズム感もあるとても読みやすい文体で、あっという間に読めました。10代の人達に読んでほしい。内面の葛藤や苦悩と世界の理不尽さ。エンタメ小説とは一線を画す小説でした。

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2025年10月26日

Posted by ブクログ

苦しい作品……苦しい!

救いの物語に進んでいくのかと思えば,どんなに踠いても逃げ出せない現実に収斂されていく生き地獄.
感想すら,うまく出てこない…….

いじめられる側の理屈は,感情的に「分かりやすい」.
でも,いじめる側の圧倒的な「屁理屈」は,「分かりたくないけど,分からされてしまう」.

善悪とか関係なく,やりたい事をやるか,やらないか,それだけ.
その時,それが実行できる環境があるか無いか,それだけ,シンプル」――

きっと,現実世界でもひどいいじめをする人たちの心理って,そんなものなのかもしれない.
「いじめているつもりは無かった」って,言い訳でも何でもなくて,本当にそう思っているのかも.

恐ろしい……けど,自分と違う思考回路の人間が「いること」を認めなければ,現実を歪めてしまう.
「戦争も人殺しも悪い.でも,現実として,世界ではそれが絶え間なく繰り返されている」――
そういう視点が,この作品も,いじめの当事者たちも,そして世間も,圧倒的に足りない.
だからみんな,誤解してしまう.

「物事の見方や見え方で解釈が変わるものに対する議論」と,
「絶対的に間違っていること」を,同列に扱ってはいけない.

この大原則が混ぜっ返されると,どこかで分からなくなってしまって,からめ捕られてしまうんだよね.
ひろゆきに騙されちゃうのって,きっと,そういうところなんだ.

「ナチスはいい事もした」とか
「教育勅語にはいい事も書いてある」みたいな,脳ミソからサボテンが生えてる様な戯言を
“両論併記”の片側を担わせてはいけない.
「人殺しはしてもいいか,ダメか?」みたいな問いに対して
「究極的にはどっちもどっち」なんて返すのは,悪意ある撹乱であって,議論じゃない.

この本に登場する人たちも,文庫の帯も,NYTを始めとする名だたる書評コメントも,
そして世間も――
みんな,この「どっちもどっち」の罠に,騙されてる.

違うんだ.「ダメなものは,ダメ」って言わなきゃいけない時があるんだよ.

この本は,穿った見方をすれば,「良心や議論の混ぜっ返し」なんだよな.
そこを分かっていながら,この陰湿さと執拗さにページを捲る手が止まらない.
作者は,それをわかってて,意図的に撹乱を仕掛けて来てるよね,これ?
その“混ぜっ返し”の巧妙さが,有無を言わせぬ恐怖となって迫ってくる.
混ぜっ返されて堂々巡りする現実を擬似体験させてるんだ.
恐ろしい作家さんだー!この奇妙さと恐ろしさが『黄色い家』に繋がっていくのだな,と納得.

ラストシーン,主人公は,たしかに「前を向く」ように見える.
でも,「コジマ」は……どうなってしまったのか?

色んな想像が広がるけど,そのどれもが絶望的で,
読んだ後も抜け出せない息苦しさが続く……昨夜,眠れなかったもん(笑)

いやなものを見てしまったような,
凄いものを見せられてしまったような――

とんでもない一冊だったことは,間違いない.

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2025年10月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いじめの話なので、すごく重いシーンが続く。
でもテーマは深い。

コジマには愛と赦しがある。でも「しるし」という目に見えるものに、ものすごくこだわっているのが印象的だ。

それに対して主人公の僕は、愛も赦しもまだわからない。だからコジマが尊く見える。でも僕は「しるし」にこだわってるわけではない。その共通点がなくなっても気持ちは変わらない。
ここが最後に決定的な違いになった。

目に見えるものにこだわりすぎなかったからこそ、世界が美しいことに気づけた僕。

なんとも奥が深い物語だった。

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2025年10月03日

Posted by ブクログ

一気に読んでしまった。イジメものの中には被害者が実は美少女だったりするものもあるが、本作品では斜視の少年と不潔な少女といきなり苦しい容赦ない設定。
自分なりの解釈と咀嚼が必要な小説と思う。
コジマは殉教者になりたい歪んだ感情を持っている(持たざるを得ない環境だったのかも)のだと思った。その感情に自身も疲弊し、主人公との軋轢も生じてくる。
百瀬とのやり取りはとても読みごたえはあった反面、目新しい議論ではなくどっかから引っ張って来た感があった。中学生でここまで醒めてるヤツいるか?との違和感もあった。小説全体の流れにも大きくは関わっておらず、そこだけ浮いた感じがしたのが残念だった。
主人公にとって重要だったのは義母の存在ではないか?義母の愛情により一歩踏み出した主人公、そこで自身が生まれ変われるのではとの希望と共に見えた美しい景色が彼のヘヴンだったのだろう。

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2025年09月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。読みやすかった。
一つ一つの描写が繊細で純粋で、だからこそ残酷だった。
僕も、コジマのように全てのものに意味があると、声高らかに叫びたくなる時がある。本当にそうなのか確信は掴めなくても。
でも、百瀬のように、全て事実と欲求が存在するだけだと、解釈なんて意味なんてないと、思う時もまたある。
そういう意味では、僕は「ぼく」と近いのかも知れない。

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2025年09月02日

Posted by ブクログ

読んでいてヒリヒリする小説。
痛い、辛い、悲しい、もどかしい。
斜視を治した僕の世界は美しく、未来も明るいものになるようなエンディングだった。
一方、コジマはどうだったのだろう。
コジマの未来も明るいものでありますように。

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2025年08月08日

匿名

購入済み

胸が痛い。体も心も傷つけられて、それでも我慢しなくちゃいけないなんて事はない!虐めを通じて強く結びついた2人。お互いが心の支えになれた時もあっただろうけれど。虐めを耐えてる自分達がとてつもなく強くて優しい人だなんて、そんな考え方は寂し過ぎる。何もかも放り出していいんだよ。と、彼と彼女に何度も語りかけるました。容姿が良くても頭が良くても、人の痛みが分からずに残酷な人間はいる。その行為が醜いとも考えない頭が空っぽの奴ら。そんな奴らの相手になる事なんてない!

#切ない

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2025年08月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

コジマと百瀬それぞれの考えに揺れる僕が印象的。
半ばまでコジマに共感していたが徐々に怖く感じて、何故だか百瀬には安心した。
二ノ宮についてジャイアンのようなイメージが浮かぶたび優等生でモテる人物だったことを思い返したが、彼は本当にモテるのか疑問。

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2025年07月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 コジマは、自分は「いじめられてあげている」くらいの気持ちでいることで、自分を守っていたのかな。だから最後も、自らの意思であるかのように脱いだ。
 変わらないでいることで自分を守っていたから、仲間だと思っていた主人公がひとりで変わっていこうとする姿を見て、自分だけが取り残された気がしていたのかもしれない。でもそれは主人公側も一緒で、お互いがお互いに変わっていってしまうことが怖かったのかも。
 最後の描写は、些細なことで世界は変わるとも捉えられるし、些細なことでは世界は大して変わらないとも捉えられた。結局、百瀬の言っていた通り皆それぞれの都合の世界で生きているのかも。
 いじめっ子たちにされるがままのあの2人は、それで何を守りたかったのかな。

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2025年06月28日

Posted by ブクログ

二、三度読み返してみると新しい発見がある作品だと思います。 「僕たちがこのようにしてひとつの世界を生きることしかできないとゆうことにたいする涙だった」の言葉に、受け入れることしか出来ない、そんな自分が嫌なんだという気持ちが現れていたと思う。 百瀬の「なぜ、君はそれができないんだ」と言う言葉は、その場では屁理屈でしかないが、この言葉はある種では間違いではないと思う。 最後の斜視の手術でもそうだが、どんな状況も変えるのは自分でしかない。

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2025年06月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

意味が無いことの意味

いじめなんていう言葉を使いたくないくらいに暴力のシーンは辛かった。

〈僕〉とコジマは壮絶な苛めに耐えていて、苛められる者同士密かに交流を深めていくが、コジマがある種の強さを身につけるにつれて僕は心細くなっていく。
一方コジマは僕の斜視を治す手術の話を聞いて怒ってしまう。

どうしようもなく追い詰められたとき、人はすがるものを求めるのかもしれない。それが崩れたとき、何かが歪む。

コジマは、強くなったように見えて、ただただ弱っていた。それは食事をせずに痩せていくという身体的なことばかりではなく、僕の目の手術の話で心の拠り所を失ったことによる精神的な衰弱もあったのではないだろうか。

彼らは互いの弱さに頼っていたのかもしれない。僕の方がそのことに自覚的だったように見える。それは母さんや医者のような身近な大人からの影響が大きいと思う。母さんも医者もどこか呑気で、読者としても救われる部分が大きかったから。

〈僕〉をかたちづくる大きな要素である斜視への捉え方は登場人物によって違っている。

百瀬:〈僕〉をいじめるのに斜視なんて関係ない
コジマ:君の目がすき
母さん:目なんて、ただの目だよ。そんなことで大事なものが失われたり損なわれたりなんてしないわよ。
医者:新人がやるような一万五千円の手術で治せる

コジマは最後まで〈意味〉に拘っていた。拘ることが強さだと思っていた。だけどその拘りは彼女を削っていくだけだった。僕の目の手術のように、自分で思っているよりずっと簡単な方法で前に進めることもある。それは逃げることとは全く違う。

ラストでは手術を終えた僕が世界の奥行きとその美しさに感動しているが、それは『誰に伝えることも、誰に知ってもらうこともできない』『ただの美しさ』だった。その美しさに意味なんてなくて、ただただ美しかった。意味が無いことの意味が、ちゃんとあるような気がした。

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2025年06月24日

Posted by ブクログ

イジメの描写と主人公の心理的な動きを
繊細なタッチで淡々と描き、心の微妙な動きを気象や外観に比喩を入れて表現しているため、直情型の文章から来る小説ならではの『作り物』を避けることができ、とても気持ちが伝わってくる小説だった。
自分にとってのHEROは誰だったのか、
自分だけの視野に囚われていた主人公が、加害者達に言葉で触れ合おうと努力しているシーンは
物語上、かなり重要なシーンだなと思った。

コジマは最後どうなったのか、知りたい。


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2025年06月08日

Posted by ブクログ

なんか、うまく言えないんだけど
食べてくれてうれしかったってことなのよ
いまからさ、わたし学校に行ってくるんだけど、そのまえにあなたと話したくてさ
こういうのって、みんなすきなように言うからさ
でもわたしはあなたの話しかきかないから
なんでも言って。でも言いたくないことは言わなくていい

最後のお母さんの言葉が救い
離婚して親子関係じゃなくなっても
この2人はまた時々会ってご飯食べたりするような関係を続けられたらいいなと思った。

コジマのお父さんのことを忘れたくないという気持ちがわからないわけではないけど、お風呂入らなかったり、髪ボサボサだったりしなくても、忘れないでいることはできるんだから、違う方法を見つけてほしい。頑固すぎる。

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2025年09月05日

Posted by ブクログ

すべて真夜中の恋人たちもこの本も暗いなあと思ったけど引き込まれて読まされた。特に最後の方は集中して一気に読んで寝不足、、ロンパリという蔑称を初めて知りました。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

特に誰にも感情移入できなかった。
各人によって受け止めが違う、みんなと一緒の空気の力は考えないといけないな

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前半長いけど後半が興味深い。

特に興味深かったのは百瀬のいじめている人間は悪い良いではなく欲求に従ってるだけ、それができる状況だっただけ。など加害者側の行動心理みたいなものが解像度高く描かれているのが興味深く面白かった。
いじめの加害者と被害者の考え方の乖離みたいなものも理解できてよかった。
百瀬の考え方を読むだけでも私にとって読む価値のあった本だったと思った。

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2025年11月20日

Posted by ブクログ

コジマのヘヴンはどんなだったのか…コジマに突き抜けるようなどこまでも広がる青空が見られる日が来るといいな。

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

65/100

うわぁぁーーん
まじ長かっためちゃくちゃ
しかも言ってることが反復しているから飽きちゃって読み進めるのが大変でした。

でも主人公の子と手紙を送る女の子の対比がそれぞれ顕著に出てるのがすごく面白かった。
あとは思春期の心の動きだったり、加害者側の無邪気さに怖さを感じる。

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2025年10月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

辛い、
虐められている描写が想像できるリアルさで痛かった
最初の手紙のやり取りは私的に凄く素敵だと思った
2人の居場所みたいな
手術した後の景色が主人公にとって綺麗でよかった
幸せになって欲しい

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2025年10月07日

Posted by ブクログ

いじめをテーマにした作品だけあってかなり重い。胸にずしんとくるような重さだ。
凄惨ないじめの描写も生々しく思わず目を背けたくなる。
いじめはいじめとして受け入れて耐え忍ぼうとする思想、自ら行動を起こしいじめを止めるべきとする主張、それぞれについて深く考えさせられた。
結末としてはどこか煮え切らない、歯切れの悪いものと感じてしまった。

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2025年09月25日

Posted by ブクログ

全く共感できなかった。
とにかく終始話が重すぎた。
やっぱり人って思ってる以上に周りを気にしてないし、そのことに関して生きやすさしか感じたことがなかったけど相手を気にしていないが故に傷つけようとする人もいることが恐ろしいとも思った。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初川上未映子さんの作品。
いじめの内容や感情がものすごく辛い。
苦しすぎて読む手が進まず、心が痛かった…
百瀬はどういう立場なのか?
「君の目が好き」と言われた僕だけど、斜視を治す手術をする。
そしいぇラストも美しく終わる。
コジマがよく分からない部分も多かった。
そこをもっと深く追求することできっと物語に込められた意味が分かる気がする。
コジマの未来も明るいかな。

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2025年08月23日

Posted by ブクログ

 血が苦手な人にはおすすめしません。

 川上未映子のすごさは、人間がノンフィクションより生きていること。主人公も、コジマも、百瀬も、それぞれの考えがあって、お母さんや先生などの大人たちもいる。

 コジマの手紙の、言葉がちょっと間違えていたりするのも、上手いなぁと思う。本当に中学生が書きそうな文章。自分の仲間だと思っていたのに裏切られた、って思う気持ちも分からなくはない。

 主人公も、いじめでボロボロになって、眠れなくなって、だんだん精神に異常をきたし始めるところもリアルだなぁと思った。

 百瀬の考えも、ものすごく嫌悪感はあるんだけど、筋は通っているようで、理詰めでは否定できない。そして恐ろしいことに、中学生の時に自分もこんなことを思っていたな…ということも思い出してしまった。子ども特有の危うさと残酷さがよく現れている。
 結局、いじめは大人の介入が必要なのではないか。多数の視点から見る点においても。

 最後、斜視を治して、世界がとにかく輝いていて、向こう側が見えた。斜視もフリだったのか…と思うと、作者の計算には参った。

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2025年06月25日

Posted by ブクログ

とにかくいじめの描写が何度も繰り返されるので、読み進めるのが辛かった。結局、コジマがどうなったのか、いじめ(加害者)がどうなったのかはわからないまま、そこだけ消化不良。


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2025年05月30日

購入済み

醜さの扱いが難しいところ

醜い子を、醜く書く、というアプローチが、個人的には嫌いだし、違和感を持ったし、疑問を感じた。
主人公のお友達がみんなの前で裸になる時とかね。
容姿が劣っている女の子が、ある瞬間にだけたまらなく美しく主人公には見える、という方が、僕は心を動かされます。
ありません? 容姿の作りが悪くても美しい女性のある瞬間。
そういう瞬間は世間的常識を超えてくると思うんだけどなあ。
女性作家が同性を描く時、そうなってしまうのかな。
性差がすごく嫌いな作家さんだし。

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2020年02月14日

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