【感想・ネタバレ】ヘヴンのレビュー

あらすじ

「苛められ、暴力をふるわれ、なぜ僕はそれに従うことしかできないのだろう」 善悪の根源を問う、著者初の長編小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 この作品における「いじめ」は、テーマというより一つのモチーフとして扱われているように感じた。いじめが許されないのは当然だが、作者が描こうとしたのは、卑劣で非情な環境に置かれた人間がどのように生き延びようとするのかという、もっと根源的な部分だったのではないかと思う。とはいえ、凄惨ないじめの描写はあまりに辛く、一語一句を丁寧に追うことはできなかった。

 コジマが父との繋がりを絶やすまいとして風呂に入らず、服も洗わない行為が周りに理解されることはない。しかし中学生の少女にとってそれは、理屈を超えた、自分らしく生きようとする精一杯の自己主張なのではないだろうか。

 また、百瀬の無慈悲で過度に冷笑的な世界観には強い嫌悪を覚えた。それでも、彼の言葉にはどこか説得力があり、世に対する希望が揺らいで暗い気持ちになった。

 いじめが発覚して物語は終わるが、コジマは進んでいじめを受け入れ続けたことで本当に救われたのだろうか。最後に彼女が裸でいたのは、「汚れ」を媒介にしないでも自分自身に価値を見出せたということだったのだろうか。

 多くのことを考えさせられたが、辛い思いをした人間だからこそ他者に優しくできることもあると思う。百瀬の言うように善悪は所詮、社会の秩序を保つための絵空事にすぎないとしても、人の心を蔑ろにする者は、他人を救うことは決してできないのだと思いたい。

 読み応えがあって素晴らしい作品だった。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

コジマが、いじめの状況は変わらないのにどんどん強い印象に変わっていくのが不気味だった。自分の解釈で世界を捉えて、現実の苦しさになんとか耐えるためか?目を逸らすには、より強く世界に没入しないといけなかったのかもしれない。だから自分に言い聞かせるように、汚れをお父さんを忘れないための「しるし」とか、いじめに対抗しないのは「美しい弱さ」と何度も訴えていたのかもしれない。その様子を主人公がなんだか受け入れられないのは、置いて行かれるという焦り?か、自分もコジマの世界観に取り込まれてしまうという怖さ?とかかなと思った。百瀬は最初の描写から、後で主人公側になる?と思ったけど、違った。不思議な人だったけど、私は百瀬の考え方が一番しっくりきた。それぞれの都合で世界を見ているに過ぎない、全てたまたまであって、できることはできるし、できないことはできないというだけ。これはシンプルでブレが無くて好きだと思った。最後、コジマが百瀬の頬に触ろうとしたところで終わってしまったけど、そのまま触られていたらどんな反応をしたのか気になった。斜視を治す手術をした彼が新しく迎えた世界が、今までは地獄へ続いていたはずの並木道を、美しく感じられるようになったことに、ひとまず安心して本を閉じた。人間サッカーからの鬱っぽくなる辺りが一番辛かった、、。

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2026年03月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

重かった………………読むのにとても時間が掛かった。。

ずっと辛いし、希死念慮が膨らんで鬱状態が加速していく描写は本当に生々しくて、新卒期の摩耗しきった己と重なる部分もあって、わかるなあ、と思いながら読んでた。

元々ショッキングな描写には耐性があるつもりでいたけど、それも年々ダメになってて、主人公が二ノ宮たちに人間サッカーとかいう惨たらしい暴力に晒されるところで貧血になって一時中断した。。

ノストラダムスの予言、とかいう、自分が生まれるずっと前に流行ったらしいワードから、この物語が90年代初期?とわかるけど、この位の年代の小説が好きかもしれない。

推しとかスマホとか、そういう露骨に近代的なモチーフを面白おかしく風刺したような物語より、もっと奥底の人間心理とか、人と人とが作用しあって生きることの難しさとかを、スマホが生まれるの前の時代感で読みたいと思う。最近。

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2026年04月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ


斜視でなにもかもがぼんやりと二重に見える。「ロンパリ」と呼ばれ、二ノ宮を中心に、クラスの男子からいじめを受けている。

二ノ宮
クラスの中心的な存在。学年でスポーツが一番できて、成績も優秀で、誰が見てもきれいだと思うような男性な顔つきをしている。僕をいじめるリーダー格。

僕の母

コジマ
僕と同じクラスの女子。女子たちに苛められている。

百瀬
中学で一緒になった生徒。僕と同じクラス。二ノ宮とおなじくらい勉強のできる生徒。二ノ宮と同じグループ。

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2026年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公のもつ斜視は、友人のコジマにとっては、自分たちの世界への拒否のシンボルだったけど、彼にとってはただのスティグマだった。だとしても、全肯定されることで、自分を客観的に見られるようになったことは彼に撮って大きかったと思う。主人公が最後に選んだのは、斜視を治療することだったけど、コジマを失ったからできた選択だったのか、どうなんだろう。視野が矯正されたあとの初めての世界、解像度が上がって、空気まできらめくような描写が美しい。

このあと、彼はどういう人間になるんだろうか。家族と転校して、新しいコミュニティにうまく馴染んでいけるのか、あるいは不登校気味ながら学校に残って少し遠巻きにされながら卒業するのか…

コジマはきっと転校しただろうけど、このまま拒否の姿勢に執着しつづけるのか。それとも、事件をきっかけにいいカウンセラーさんと出会ったりして、世界と和解して行くのかも。

学校という未熟なコミュニティの閉塞感だからこその、苦しさと深いところでつながる喜びを感じた。もう二度と会うことはなくても、強烈に残る記憶。

ちょっと重いので、1年後くらいに再読予定。

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2026年01月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

斜視の主人公と小汚いヒロイン。どちらも虐められていて、弱みを共通点に持っている。
ヒロインの母親は、貧乏で小汚い旦那を哀れんで結婚し、その後借金に耐えられなくなったも無抵抗な旦那に一方的な癇癪を起こす自分に限界を自覚して離婚し、最終的に金持ちの男と結婚した。ヒロインはそれに対して「最後まで憐れむべきだった」といい静かな怒りを見せる。またいじめに対して「分からないものが不安だから自分の価値観にねじ込もうと力で屈服させようとしている臆病者」「私たちは受け入れている」とのべる。

つまり、弱者が強者の「普通」の価値観に合わせることは敗北であり、何も言わず受け入れることが忍耐強さと強者が怖がる「不明」という武器を持ち続けるということ。それに父親へ愛情と母親への失望が加わり、この思想はヒロインの多くを形成するようになる。主人公と文通をし、同士を見つけることによりさらに強化されていくこの思想は、父親との共通の弱点を「痩せこける」「汚くなる」という形でより強めていくことになる。

このヒロインの立場の「加害とは弱者の象徴で、強者は受容するものだ」だとか、百瀬の立場の「人は攻撃することで身を守り自分の価値観を押し通すしかない」とか、読者に対して人の価値観や強弱との結び付きに疑問を投げかける姿勢は面白かったが、終わり方が投げやりさを感じた。

恥をはばからずに裸になったヒロインに、いままで無慈悲ないじめを繰り返してきた共感力のないいじめっ子が恐れおののき逃げる
↑いっきに陰キャの妄想みたいになってしまった。
ヒロインの「弱者は分からないものを支配したがる」という思想を体現させるためだとしても、ちょっと雑すぎないか。主人公が普通を手に入れるのと引き換えにヒロインを失った、という終わらせ方もこの突如始まった安っぽさに影響されて上手く落とし込まれなかった感じがする。


数ヶ月が経過して思ったより頭の片隅にコジマの"許容としての気高さ"という思想が残っていたので評価を改める
それは気高さを守れるからなのか、それも理性的だからなのか、それともマイノリティな共通点を守れるからなのか

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2026年03月06日

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