あらすじ
妻を亡くし、息子の夏樹を一人で育てるフリーライターの海老原。そんな彼に雑誌『月刊クリスタル』編集部から、戦後の殺人鬼が起こした事件をもう一度掘り下げて検証してほしいとの依頼が入った。殺人鬼の名前は北川フサ。彼女は戦後の混乱期に5人の男を立て続けに殺し、死刑となっているという。取材を始めた海老原は、フサが赤の他人である少年とともに行動していたことを知る。そして、その当時の少年は、今も存命だった。単なる週刊誌の連載のはずが、いつしか海老原は、フサに導かれるように、事件に没入していく……。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
戦争が起きると、命の価値が軽くなる。
特に子供の命が。
戦争を肯定している人、国に、改めて読んでもらいたい内容。
実際の戦争はもっともっと悲惨なものだろうけれど。
「子供は近くにいる大人が守らなければならない」との言葉が、重かった。
Posted by ブクログ
読み応えのある素晴らしい一冊でした。昔と言ってもそんなに昔ではないと思います。今後、上野に行くと思い出す一冊になったと思います。いろいろと考えさせられましたが、とても必要なことだと思いました。
Posted by ブクログ
ワタシの初 宇佐美まこと は「羊は安らかに草を食み」で、それはそれは衝撃を受けたのですが、この「月白」も羊と同じ系統です。羊ファンならおススメです。
「戦後の混乱期に5人の男を殺した殺人鬼 北川フサ」について書くフリーライターの話ですが、この物語の主人公は、東京大空襲で親を亡くした13歳の男の子 靖男 です。戦争孤児というのかな、親を亡くした子供が生きていく環境が悲惨すぎる。
読み終えて、表紙を見ると青白い景色の中、ベンチに座る男性一人。
しかし、お姉さんの千代ちゃんや洋パンの清子たちの話もすごい。ワタシは自分が女なのでよく分からないけれど、男っていうのは食うや食わず生きるか死ぬかの状況であっても性欲っていうのはなくならないものなのか。戦後すぐにできた特殊慰安施設協会「両家の子女を守るため・・・」って、偉い方々が本気で考えたと思うと、情けなくて泣けてくる。
最後にフリーライターの話も出てくるけれど、なんだか靖男の話の後には、小さすぎてどうでもよくなるねぇ。(本当はどうでもよくないけど、靖男の話のがすごすぎ)
Posted by ブクログ
インテリアコーディネーターの妻を交通事故で亡くし、小学5年生の息子の夏樹を一人で育てるフリーライターの誠。そんな彼に雑誌『月刊クリスタル』編集部から、戦後の殺人鬼が起こした事件をもう一度掘り下げて検証してほしいとの依頼が入った。殺人鬼の名前は北川フサ。彼女は戦後の混乱期に5人の男を立て続けに殺し、死刑となった人物。取材を始めた誠は、フサが赤の他人である少年とともに行動していたことを知る。そして、その少年は今も生きていた。
戦後の混乱期、東京の上野、新橋、有楽町などには多くの身寄りのない子供たちや大人たちがその日暮らしで必死に生きてきた。
そのことを戦後に生まれた自分も含めて、どれくらい多くの人が知っているのだろうか、帰る家があり、寝る布団があり、美味しいご飯を食べて生活している。これだけで十分贅沢なんだとわかっているのだろうかと、つくづく考えさせられた。
憎しみの人生を送りその一生を終えたフサ。靖男もまた憎しみを糧に生き、激動の長い人生を歩んできた。
誠の心の奥底にある悩みが、靖男の人生に比べたら大したことでないと思えてならなかった。
月白(げっぱく)とは、月の光を思わせる薄い青みを含んだ白色のこと。このような色があることを初めて知った。
寒々とした悲しさを表すような色で、まさに靖男の人生そのもののような気がした。
Posted by ブクログ
もう、宇佐美まことさんはずっとこっち側でいいんじゃないでしょうか
終戦直後の混乱期に5人の男を立て続けに殺害し死刑となった女性の半生を追うことで、同時に当時の東京の闇市の中で消えていった多くの命をも克明に描き出す本作はまたしても戦争の残酷さを突きつける傑作となっております!
いやもう、宇佐美まことさんのホラー側のファンの人たちにはたいへん申し訳ないが、絶対こっちやわ
傑作が続く続く
もうホラーいいです(お前に権限ないわ)
あ!でもホラーで培った表現力がこの戦後の時代の社会不安みたいなんを見事に表現してるのかもしれん
そうか、ならたまにはホラー書いてもいいです(だから権限ないて)
まぁ、今後の方向性については宇佐美まことさんご自身に考えてもらうとして(当たり前や)わいはタイトルの意味について考えてみたい
『月白』である
色の名前ね
AIさんに聞く
「月光を思わせる、ごく薄い青みを含んだ白色の伝統色です。夜明け前や月の出の際に、空が白んで明るくなる様子を表す、冷たさの中に希望を感じさせるような、穏やかで上品な色味を指します」
希望か〜
Posted by ブクログ
宇佐美まことさんの本は、羊は安らかに草を喰みを読んでから衝撃を受けて、今もなお自分にとって忘れられない1冊だが、この本もまた自分にとって大事な本となりました。
戦争の時の描写が非常に生々しく、それら一つ一つも非常に重いのですが、千代の死に様、そしてアゴセンへの復讐の描写はもう胸が苦しくてたまりませんでした。
東京大空襲があったという事実は勿論知っていましたが、正直その言葉だけを知っているに過ぎなかったと思い知らされました。上野駅が戦争孤児や家族を亡くした人たちの唯一の住処としてそんな風に使われていたなんて恥ずかしながら全く知らなかった。
川に身投げする人もいた。という一文は教科書などで見ると正直全く現実味がなかったが、その背景をこの物語を通して知ると、改めてどんなにか苦しかったろうと。なんて今自分は幸せなのだろうと。
現代の主人公誠が、息子の夏樹を自分の子ではないかもしれないと大垣に打ち明けた時、「それがどうした」と一言返す言葉の重みが、凄かった。
今まで色々な小説を読んできて、妻の不貞で夫の不貞で自分の子でない子を育てるとはみたいな話はいっぱいあったが、そのなにをも軽々飛び越えてこちらの心にストレートに突き刺さってくる感じがしました。
殺人者のそばにいた大垣だからこその一言。
綺麗事での自分の子ではなくとも...と言った事ではなく、本当に辛い時代を生き抜いたからこその一言。
自分もすっかり殺人者フサに魅入られてしまったように思う。それは良いとか悪いとかではなく。そういった領域の話ではなく。
現代と当時の話が交互に挟まっていくが、これが非常に緻密な構成で出来ており、どのページも一瞬たりとも気が休まらないし、そんな簡単な気持ちで読んではいけない小説だが、自分の人生において間違いなく必要な一冊となりました。
Posted by ブクログ
戦後の混乱期に5人の男性を相次いで殺害し後に死刑となった北川フサ。
数十年後、フリーライターの海老原誠がその生涯を追う。
行間から伝わるのは深い憎しみだ。
殺人を肯定する意図はない。
だが、時代への怒りや、男たちへの憎悪が彼女をどれほど追い詰めたのかが痛切に伝わり肩入れしたくなった。
戦争が人々の心を蝕む様子は想像できても、一線を平然と踏み越える男たちの姿には憤りが募る。
読んでいる間ずっと「心の殺人」という言葉が頭から離れなかった。
終戦直後の風景描写は圧巻。
人間の業、孤独と哀しみ、愛情と憎しみを重層的に描いた力作。
Posted by ブクログ
面白かった〜。戦後すぐに起きた連続殺人と、妻のことで思い悩む男の人生が交錯する。
全てを水に流すかぁ。。空襲で親を失くして生きなければいけなかった大垣の一生に比べると、私はなんて小さなことに振り回されているのだろうか
Posted by ブクログ
なかなかぐっとくる本でした^_^
絵に描いたような家族かと思いきや、後半は、えっ、そーなん…とまさかのミステリーでした^_^
やっぱりミステリーはやめられないです^_^
Posted by ブクログ
SL 2026.2.1-2026.2.3
作者は戦後の過酷な状況を描き出すのがうまい。
親に死に別れた子どもたちの想像を絶する困難な日々。戦後の混乱期では他人の子どもにかまっていられる余裕など誰にもなかった。子どもでも容赦のない搾取に晒される。
何もかも無くしたもの同士がほんのわずかな縁でまた肩寄せ合って命を繋ぎ、そしてひとりまた一人と無くしていく、その過程は胸が痛くて痛くて。
生きるよすがが憎しみだけとなったことを、恵まれた現代のわたしたちに何が言える。
読み応えのある作品だった。
Posted by ブクログ
刊行は2026年に入っているが、これも戦後80年で戦争の爪痕を後世に残す取り組みのひとつと言える作品。文句なしの傑作であり、登場人物ひとりひとりの血肉が確りと描かれており、時代に翻弄されるしかなかった時代に、阿ることを拒み、方策は違えども抗って生きた人が確実に存在したことをまざまざと見せつけてくれる。宇佐美氏の著作の中でも非常に完成度の高い作品で、広く読まれることを願う。
Posted by ブクログ
★5 敗戦直後の浮浪児、家族の事故で苦しむ現代人… 人間の生き様を力強い筆致で描くミステリ #月白
■あらすじ
妻を亡くし、息子とふたりで暮らしているフリーライターの海老原、彼はかつての知り合いから戦争直後の女性殺人鬼についてルポルタージュ記事を書いてほしいと依頼を受ける。彼女は五人を殺害して死刑になっているらしい。
取材を進めていくうち、事件の背景や彼女の関係者に関係者が浮き彫りになっていく。そして彼女のことを知っているらしき老人に出会うのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 力作、そして完成度高すぎ。そのまま映像化を希望します!
いつもエモさ抜群の作品を提供してくれる宇佐美まこと先生、本作はさらにレイヤーがひとつ上がった感じがしますね~
本作で描くのは人間の生き様。家族の事故を経て、思い通りにいかない人生に苦しんでいる現代のジャーナリスト。敗戦後の動乱期、生死彷徨う中でからくも生き抜く少年少女。真剣な目つきで闘っている姿が目に浮かんできて、読んでると応援せずにはいられなくなっちゃう。
主人公の海老原誠、彼の懊悩がホントよく書けてんのよ。誰しもトントン拍子な人生を送れるわけではなく、色んな壁にぶつかるのが当たり前。それでも今日を生き、明日を迎えなければならないのです。自分自身にも似たような経験があってさー、辛いよね。
妻の事故から回復しつつある父と息子の関係性が素晴らしいんよ。当たり前のようで当たり前でない、微妙な距離感の会話がリアリティが高すぎ、マジ泣いちゃう。
それでも働かなければ食べていけない。当初は思い悩みながら取り組んでいた仕事も、取材を進めるうちに向き合い方や少しずつ変わってくるのです。厳しい世の中だけど、やっぱりいろんなことに挑戦して、失敗して、経験してってのか大事だよな~
精一杯生きている彼の姿をみてると、勇気をもらえるんですよ。生きるって、こういうことだと思い出させてくれる。そして後半に入ると、もうひとりの重要人物が登場する。女性殺人鬼ではない、というところが本作の上手なところ。
敗戦直後の東京、そこに生きる浮浪児たちの現実が描かれるのですが… 相当の覚悟をもって挑んでください。殴る、盗む、奪う、騙す… これらの犯罪行為が当たり前の世界。なぜ犯罪に手を染めるのか、やらないと死んでしまうからです。毎日毎日、死が目の前にあるのです。もはや人間ではなく生き物でしかない。
女性殺人鬼とその人物との関係性はどういうものだったのか、そして何があったのか… 魂の叫びと驚愕の事実に、もはや刮目せずにはいられません。
いやー、素晴らしかった。これまで自分はどんな信念をもって人生を歩んできたのか、振り返りたくなるような作品でした。
■ぜっさん推しポイント
戦争なんてもちろん嫌だけど、もし負けてしまうとどんな現実が待っているのか痛いほどよくわかる。私も戦争を知らない世代だから、このまま平和な生活を送れると思ってしまいがち。
もし戦争が現実になってしまったら、絶対に負けられないすね。子どもたちを守らなきゃ… 何も武装化する必要はないと思うけど、いまのうちに何をしておくかってことは、真剣に考えるべきだと思いました。
Posted by ブクログ
1年前に事故で妻を亡くし、一人息子のために勤務先の新聞社を辞めフリーライターとなった海老原誠。その彼のもとに大きな仕事の依頼が入る。戦後すぐに起きた連続殺人事件。その犯人である北川フサ死刑囚についてのルポルタージュだ。初めのうちはあまり気乗りしない誠だったが、調べを進めるうちにある謎が判明し……。
終戦直後の闇市と現在が交互に描かれていく。巻末に掲げられた参考文献を活かしたリアルな戦後が感じられた。本筋とは関係ないサブストーリーの充実ぶりも特筆ものだ。ちょっと瑕疵の見当たらない秀作だった。
Posted by ブクログ
「憎しみだけを支えに生きてきたんだ」
✎┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
交通事故で 妻を亡くし、息子の夏樹を一人で育てるフリーライターの海老原。
以前勤めていた新聞社の出版局から、 ある事件のルポの連載を依頼される。
それは戦後すぐに起きた連続殺人事件で、北川フサという女性が、戦後の混乱期に五人もの男を次々と殺し 後に逮捕され死刑判決が下されたものであった。
「殺したいから 殺した」
裁判でも明確な動悸は明かされず、死刑は異例の速さで執行された。
フサを「戦後最恐の殺人鬼」と煽る記事も多かった事件に 海老原は乗り気ではなかったが、
当時、フサの事件を冷静な目で誠実に追った道上というライターの存在と その著書「或る女-殺人者北川フサ」を見つけたことにより、海老原はこの事件にのめり込むようになる-。
「北川フサに取り込まれないようにしなさいね」
一体何がフサを連続殺人へと掻き立て行動を起こさせたのか?!
なぜ五人目の殺人だけ、殺害方法が違うのか?!
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
また 道上の取材から フサは殺人を行いながら 一人の少年と行動を共にしていたことを知る。
少年とフサの関係は?!
少年はフサが殺人犯だと知りながらも一緒にいたのか?!
「人を生き長らえさせる一番の感情は憎しみだ」
フサと少年、二人の運命を追ううちに海老原もまた 抑制していた自分の感情と向き合うことになる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
はじめましての宇佐美まことさん。
読み始めから「これは好きなやつ!」と確信!
読み応え抜群の面白さでした。
物語はフサ目線での描写はなく、フサと接点のあった人達の証言のみで語られ、その分 読者である私達もフサという女の人生に興味を持ってのめり込んでしまうと思いました。
とはいえ私は、フサの核心部分にまでたどり着けなかったと思います。というか、こんな平和な世界でぬるい生活を送る私に「わかるわかる」と言われてもフサもたまったもんじゃないでしょう。ただフサの取った最後の行動は、同じ子を持つ親としてグッときました。
また、フサの側にいた少年の章では 「かつての少年」の回顧シーンとして、当時の子どもたちが戦争孤児になり 身よりもなく「浮浪児」として生きていく様が詳細に描かれていて辛すぎます。『月白』の意味を知るには避けては通れない話ですが、子どもが辛い目に合うのは苦手です。(「火垂るの墓」も観られない)
本当はまだ親の元で安心安全に育てられるべき子どもが その日生きるのも精一杯…というよりも その日生きているのは ただ死んでいないだけという状況。 「あの日 自分も家族と一緒に死んでいたほうがよかった」なんて…。
戦争がもたらす利益ってなんなんだ!!
戦争に真の勝者なし!!!
人間として扱われなかった浮浪者や浮浪児、地獄のような毎日を過ごした彼らに「憎しみは何も生まない」なんて言葉はなんの意味も持たないと思うけれど、
それでも憎しみだけでは生きてはいけないし、悲しすぎます。
月白、綺麗だけれど悲しい色と少年は言いました。
少年よ、今日も陽はまたのぼり 子どもたちをあかるく照らしているよ
☆を1個減らしてしまったのは、海老原があまり好きになれなくて…です ( ´•ᴗ•ก )
Posted by ブクログ
妻を事故で失い、小学生の息子を育てるために新聞社を辞めフリーライターとなった海老原誠の元に舞い込んだ、月刊誌での特集記事の執筆依頼。
終戦後の混乱期に連続殺人で死刑となった女性北川フサについてのレポだった。
当時の関係者を辿る中で出会ったのは、フサについて当時独自の視点で記事を書いた道上栄介という記者と、フサと行動を共にした戦争孤児の大垣靖男の存在だ。
誠を舞台回しに使いつつ、大半は靖男の戦争孤児としての過酷な体験が描かれる。
東京大空襲と非道な犯罪に家族全員を失った靖男が抱える憤り。
憤りを売春という形に転化した「ラクチョウのお清」。
憤りを直接相手の体に匕首という形でぶつけたフサ。
3人に隔たりはあったのか。
死んだ妻の不義を知り、息子夏樹の出生の真実に悩む誠に靖男はいう。
「それがどうしたっていうんだ?」「子どもは子どもだ。誰の子かということがそれほど重要かね?」「子どもは守ってやらねばならん。一番近くにいる大人がな」
生き抜くことに精いっぱいだった時代、その中で犯した罪の意識と運よく生き延びてしまった負い目を抱える者の言葉だった。
「月白」とは月の光を思わせる薄い青みを含んだ白のこと。
戦争孤児として靖男が住みついた上野駅の地下道に塗られた色だった。
Posted by ブクログ
好きな著者だったので。
妻を亡くし、シングルファーザーとして一人息子を育てているフリーライターのお話。
依頼されて、戦後すぐの連続殺人犯のことを記事にすることになるが、
犯人は女性であるうえにメッタ刺し。
快楽殺人ではないかという編集者の見立てだったが、
過去に同じ殺人犯について文献を書いた雑誌記者が残した資料を読み、
そうではないと思うに至る。
女と行動を共にしていた少年がいたことが判るが、
その名前には聞き覚えがあった…。
連続殺人のうち1件はその少年の犯行であったこと、
フリーライターが内に抱える憎悪が亡き妻の不貞であったことは、
予想通り過ぎて少々胸焼けがするぐらいだった。
後に塗料会社の社長となった少年が、会社を譲ったのが殺人犯の実の息子だった、
に至っては落胆さえした。
戦後の過酷な社会が描かれていて、それは読みごたえのあるものだったが。
謎解き的には物足りなかった。
タイトルの「月白」が青みがかった白い色のことであるのは初めて知ったが、
その色のかもしだすイメージだけが、
心に残るような作品だった。
Posted by ブクログ
戦後まもなく、五人の男を惨殺したとして死刑になった北川フサ。妻を亡くし息子と二人暮らしになったライターの海老原は、北川フサについてのルポを書くことになった。あまり有名な事件でもなく資料が少ない中、彼は何かに導かれるようにして得難い情報を集めていく。そして彼自身も、北川フサに対して並々ならぬ思いを強めていく。
ルポの進め方だけではなく、私生活に関してもとある悩みを抱える海老原。厳しい戦後の世の中を生き抜いてきた大垣。彼らの視点から北川フサの人物像に迫っていくのですが、しかし北川フサ本人の目線から語られるものはほぼなく、彼女の姿は客観的なものとしてしか見えません。彼女はなぜそのような犯行に走ったのか。彼女を突き動かしたものは何だったのか。彼女は何に戦いを挑んだのか。その解釈は見る人によって違ったものになりそうです。
過酷な人生を送っていた大垣の物語も圧巻です。このような時代があったということ、現代の人には想像もつかないだろうなあ。そして大垣が海老原にかけた言葉があまりに印象的でした。子供が虐げられる時代を生き、彼自身もまた守られなかった子供だったからこその言葉だったのかもしれません。
Posted by ブクログ
「人を生きながらえさせる一番の感情は憎しみだ」
凄まじいほどの憎しみを抱え孤独に生きていた北川フサ。その憎しみを殺人という形で放出する姿に心酔し行動を共にした少年・靖男。そして事件について調べるうちに、取り込まれるようにフサに惹かれていく誠。
三人が持つ憎しみという感情が共鳴していく姿を描いた物語。
たった70年ほど前にあったこれほどの地獄を私たちは忘れてはいけないと思う。戦争の悲惨さはいうまでもなく、そういう極限状態に置かれた人間の弱さや醜さの行き着く先も。
地獄を味わい、いまだに自分を罰するように生き、多くを語らず亡くなっていく靖男のような老人が、せめて長生きして良かったと思える世の中であってほしい。
Posted by ブクログ
妻を事故で亡くし、子どもと2人の生活になった海老原は、新聞社を辞めフリーターになった。
新聞社の出版局から依頼されたルポが、戦後混乱期に男だけを執拗に殺め続けた北川フサだった。
女性の連続殺人犯は珍しいことだったが、5人の男を次々と殺害するという…これは無差別殺人だったのか。
死刑判決を受けて一年も経たないうちに刑が執行されたことで、わからない部分が多かった。
海老原は、この古い事件を詳しく調べるうちに北川フサに…取り込まれていく。
戦後の過酷な様子を知るたびに如何にして生き延びようとしていたのがわかり、読み進めるのも苦しくなる。
男をここまで憎んでいたという、激しい怒りが伝わってくると同時に哀しさを覚えた。
海老原は、なにものにも縛られず、負の感情を隠すことなく、破滅を恐れず露わにすることのできた北川フサに魅入られたひとりだったのかもしれない。
Posted by ブクログ
「憎しみだけを支えに生きてきたんだ」
余りにも辛く寂しい人生ではないか…
戦後80年。戦後を扱った作品の中で一番重たく、忘れかけた真実に気付かされる物語だった。
Posted by ブクログ
美しいタイトル「月白(げっぱく)」の持つ意味がもうひとつの「つきしろ」の情景とは違い、とても深くて激しくて冷たい。妻を亡くしたルポライターの誠が戦後混乱期の女殺人鬼フサの人生と事件を追いながら気付く自分の中にも巣食うもの。フサの傍にいたとされる少年、靖男の回想が1番読んでいてつらかった。家族を亡くし飢えと寒さと孤独の寂しさと病と、これでもかと続く過酷な状況に気が塞ぎながらも先が気になり後半夢中で読んだ。フサはなぜ5人もの男を殺害したのか、真実を知ることは叶わなくても3人に通じるものを誠は感じたはず。最後にやっと少し救われた気持ちになれた。
Posted by ブクログ
戦中から戦後にかけての、人々のリアルが生々しく描写されている。
特に戦争孤児の現実は胸が締め付けられる。
現代のフリーライターが日本が戦争に負けた時代、5人を殺害した罪で逮捕された「北川フサ」を追いかける。
凶行に走った「北川フサ」の憎しみ。
「フサ」と同行していた「大垣靖男」の憎しみ。
ジャーナリスト「海老原誠」の憎しみ。
それぞれが持つ憎しみをテーマに物語は進む。
事故で他界した「誠」の妻は決して悲劇のヒロインではない!!
Posted by ブクログ
私には衝撃でした。戦時下や戦後の人々の暮らしはそれなりに勉強してきたつもりでした。まさか、戦争孤児のその後がこんなにも過酷であったとは⋯戦時中も酷い暮らしであったけれど、親がいたから髪も衣服も清潔にできていたとのくだりには胸が詰まりました。大切に思ってくれ養ってくれる人がいなければ子どもの幸せな暮らしはありえないのだと痛感しました。青白く光る月を見るたびに思い出す作品になりそうです。
Posted by ブクログ
また読み返したい。でも、読み返したくない。
呼んでいる途中から、相反する感情が頭の中をぐるぐると回っているようだった。
昔の話を紐解いていくタイプのミステリかと思っていたが、実際は人間ならば誰しもが持つ『憎しみ』について戦後と現代を舞台に描かれている話だ。
戦争孤児や女性について描かれているシーンは、読んでいると気分が沈んでいくようだった。それだけリアリティ溢れる描き方がされていた。
学習の一環で戦後について学んできたはずだが、まさかこんなに壮絶だったとは……きっと、現実は想像すらできないほどだったのだろう。
親がいたら…そもそも戦争がなければ……
読みながら何度そう思ったか計り知れない。
一方で、自分の置かれた状況下でも抗い、立ち向かおうとする女性たちの姿には同性として惹かれるものがあった。
最後は救われたような、そうでもないような…
ただ、ふぅ、と肩の力が抜けたような感じがした。
Posted by ブクログ
境遇や時代を越える感情のつながり。憎しみという感情と、それを抑える理性。憎しみを持つ人々が選ぶ、それぞれの生き方。
戦後を生きた子供達の生活は想像以上に過酷なものだった。秩序などというものが存在しない世界で、今日を生き抜くためだけに必死に戦う人々。そのためには手段を問わず、他人を切り捨てる人間の惨さがある。戦争は、人の心も何もかもを奪ってしまうのだろう。
戦後の殺人鬼は何を考えたのか。その時代に正しさなんてものはあったのだろうか。全て奪われ、何も持たず、まっとうに生きる術もない人に、誰が善悪を問えるのだろうか。
憎しみという感情が、過去を生きた人間と、今を生きる人間を繋いでいた。全て読んだ後に最初の場面を読み返すと、とてつもなく切ない気持ちになった。非常に読み応えがある一冊だった。
Posted by ブクログ
(良)【戦後、戦争孤児、女性の連続殺人鬼】時代が残酷すぎる。戦後、生きるのもままならない残酷な日常で溢れた。戦後の女連続殺人鬼北川フサについて主人公のライターが記事を書くために取材を進めていき、フサに一時期連れられていた戦争孤児の少年大垣靖男にたどり着く。ヤスが憎きアゴセンに再会したところで予感がはたらきドクンと心臓がなりました。戦後の東京の様子について少し知ることができた。女性(少女)が体を売る、空腹に耐えかねて窃盗する、過去の話のようで、今も世界は変わっていないのではないか。
Posted by ブクログ
作者は実家に戦争を経験したんだろうか。臨場感あふれる描写で読んでいるのが辛かった。でも知っておかないといけないことだと思う。戦後を生き抜くために彼女にとって『憎しみ』は必要不可欠な感情だったんだろう。
Posted by ブクログ
戦後すぐに5人を殺害して逮捕され、死刑判決を受けた北川フサのルポを書くため取材をはじめたフリーライターの海老原。妻を交通事故でなくしシングルファザーとして小学生の子供を育てながらフサについて調べていく。
戦後すぐの混乱がリアルですごく重かった。