あらすじ
妻を亡くし、息子の夏樹を一人で育てるフリーライターの海老原。そんな彼に雑誌『月刊クリスタル』編集部から、戦後の殺人鬼が起こした事件をもう一度掘り下げて検証してほしいとの依頼が入った。殺人鬼の名前は北川フサ。彼女は戦後の混乱期に5人の男を立て続けに殺し、死刑となっているという。取材を始めた海老原は、フサが赤の他人である少年とともに行動していたことを知る。そして、その当時の少年は、今も存命だった。単なる週刊誌の連載のはずが、いつしか海老原は、フサに導かれるように、事件に没入していく……。
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Posted by ブクログ
空襲で突然の家族との別れ、残された孤児は浮浪児となり闇市で必死に命を繋ぐ。弱い立場の者が踏みつけにされ、盗みや体を売ること等、生き抜くためには何でもハードルが下がった時代の描写はなかなかしんどかった。千代とシンジの亡くなり方もあの時代には珍しくなかったかと思うと、繰り返してはいけないと思った。憎しみこそが生き抜くためには一番の感情だという事実を子供が実感する時代。
Posted by ブクログ
『月白』
お久しぶりです( •ᴗ• )
宇佐美まこと さん♪
宇佐美さん を読むのは『展望塔のラプンツェル』 に
次いで2冊目となります。
今回の作品は……
妻を交通事故で亡くした 海老原誠 は息子の
夏樹 と 二人で生活する為に 新聞社を辞め、
フリーライターとして働くことを決意する。
フリーライターとなった誠への最初の仕事は、
戦後すぐに起こった連続殺人事件だった。
犯人は女性で…五人を次々に殺害した後 逮捕され、
死刑判決を受けて一年も経たないうちに刑が
執行されている という事件のルポだった。
……と、いう感じのストーリーです。
戦後81年です。
戦後81年がとても鮮明に描かれていて…
想像したくないくらいの衝撃でした。
戦後すぐの場面 と 現在の場面とを上手く行き来していて、飽きさせないストーリー、読み手を誘う工夫が素晴らしく…読む手がとまらなかったです。
父が息子に…
「お盆はさ、生きている者が死んだ人のことを思う期間なんだ……。」と母親のことを思う息子に父が伝える優しさがいいなぁって感じる一方、
戦後すぐのシーンでは…
「人を生き長らえさせる一番の感情は憎しみだ。」
……と、いうシーンがあります。
81年って長いようですが…戦争を経験した方たちにとっては…きっと 昨日のことの様なんだろうなって…
憎しみだったり いろんな感情が原動力になったりと
考えると辛いなぁ。。
これは…切なくなりました。でも、それだけ悲惨なのも事実であって…この言葉を 大人が 教えるんです。「憎んででも生きろ!」って…
実際に80年前には こういう事が起こっていたんだろう…と、思うと言葉もでなかったです。
『展望塔のラプンツェル』のときは あまり意識しなかったのですが…ひとつひとつの描写や、
情景が手にとるようで……
宇佐美さん…凄いですね!!
ちょっと…驚嘆レベル!
今 こうして本を手にとって読んでいられる事に
感謝しないといけない……と感じるばかりです。
Posted by ブクログ
憎しみという感情を共にするフサと靖男。
北川フサによる終戦直後の連続殺人の深層に迫るフリーライターの海老原誠が主人公だが、物語は途中から、当時戦災孤児だった大垣靖男の回想を中心に進んでいく。
「焼夷弾の落ちた場所が少し違った」ことが運命を分け、路上に放り出された戦災孤児たちの描写がまさに壮絶で言葉を失う。フサの残虐極まる殺人に憧れを見出す靖男。そして靖男も憎しみを爆発させる。社会から存在を否定され、最愛の姉や親友など仲間の孤児たちが次々と(社会から)殺されていく中で、靖男の心も憎しみによって殺されかかっていたのか。とても自分に置き換えて推し量ることができない。
しかし、その靖男の記憶は誠には決して語られず、誠のルポルタージュは大きな反響を得ることはなかった。靖男に限らず、極限状況過ぎるゆえのとても語れない事柄が含まれるために、多くの戦中戦後の記憶は伝えられることなく消えていったのだろう。そういった中で、フィクションとして極限状況に生きた、忘れられた人々をすくい上げるこのような作品の意味は大きいと思う。
間違いなく今年一番衝撃を受けた作品でした。
Posted by ブクログ
戦後の連続殺人犯北川フサのルポを書くにあたって深く調べていくフリーライターの海老原誠。
なぜ5人もの命を奪ったのか。その根底にあるのは。
戦後の話ということで、とても苦しい回想でした。家族を失った子どもたちにとっては、戦中より戦後の方がずっと辛い世の中だったという事は恥ずかしながら初めて知りました。
北川フサ、靖雄、誠、道上、清子。すべてに共通するのは「強い憎しみ」
憎しみに抗わなかったフサに惹きつけられてゆく。
結局大垣氏は全てを語らなかったけれど、最後は良い終わり方だったと思う。
中々フサという人物に迫れなかったからかモヤモヤ長く感じたのかもしれないけれど、面白かったと思う。