あらすじ
妻を亡くし、息子の夏樹を一人で育てるフリーライターの海老原。そんな彼に雑誌『月刊クリスタル』編集部から、戦後の殺人鬼が起こした事件をもう一度掘り下げて検証してほしいとの依頼が入った。殺人鬼の名前は北川フサ。彼女は戦後の混乱期に5人の男を立て続けに殺し、死刑となっているという。取材を始めた海老原は、フサが赤の他人である少年とともに行動していたことを知る。そして、その当時の少年は、今も存命だった。単なる週刊誌の連載のはずが、いつしか海老原は、フサに導かれるように、事件に没入していく……。
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Posted by ブクログ
憎しみという感情を共にするフサと靖男。
北川フサによる終戦直後の連続殺人の深層に迫るフリーライターの海老原誠が主人公だが、物語は途中から、当時戦災孤児だった大垣靖男の回想を中心に進んでいく。
「焼夷弾の落ちた場所が少し違った」ことが運命を分け、路上に放り出された戦災孤児たちの描写がまさに壮絶で言葉を失う。フサの残虐極まる殺人に憧れを見出す靖男。そして靖男も憎しみを爆発させる。社会から存在を否定され、最愛の姉や親友など仲間が次々と(社会から)殺されていく中で、靖男の心も憎しみによって殺されかかっていたのか。とても自分に置き換えて推し量ることができない。
しかし、その靖男の記憶は誠には決して語られず、誠のルポルタージュは大きな反響を得ることはなかった。靖男に限らず、極限状況過ぎるゆえのとても語れない事柄が含まれるために、多くの戦中戦後の記憶は伝えられることなく消えていったのだろう。そういった中で、フィクションとして極限状況に生きた、忘れられた人々をすくい上げることの意味は大きいと思う。
間違いなく今年一番衝撃を受けた作品でした。
Posted by ブクログ
靖男の言葉が
「みんな、川に還るんだ」
「子どもは守ってやらねばならん。一番近くにいる大人がな」
絶望の中でも
助けあって生きてきた人生の重みが
夏樹が自分の子供か?と信じられず苦しんできた誠を
それは大したことでも無いと
気づかせた
Posted by ブクログ
面白かった。
大垣が誠に全て打ち明けるのかと思いきや、違っていた。話せないほど重い辛い過去なんだなと。
仲間だったシンジが川に飛び込んだのは衝撃。2人で生き抜いてほしかった。
戦後、パンパンや慰安婦の話はよくあるけれど、戦争孤児がこんなに厳しい毎日とは。
Posted by ブクログ
好きな著者だったので。
妻を亡くし、シングルファーザーとして一人息子を育てているフリーライターのお話。
依頼されて、戦後すぐの連続殺人犯のことを記事にすることになるが、
犯人は女性であるうえにメッタ刺し。
快楽殺人ではないかという編集者の見立てだったが、
過去に同じ殺人犯について文献を書いた雑誌記者が残した資料を読み、
そうではないと思うに至る。
女と行動を共にしていた少年がいたことが判るが、
その名前には聞き覚えがあった…。
連続殺人のうち1件はその少年の犯行であったこと、
フリーライターが内に抱える憎悪が亡き妻の不貞であったことは、
予想通り過ぎて少々胸焼けがするぐらいだった。
後に塗料会社の社長となった少年が、会社を譲ったのが殺人犯の実の息子だった、
に至っては落胆さえした。
戦後の過酷な社会が描かれていて、それは読みごたえのあるものだったが。
謎解き的には物足りなかった。
タイトルの「月白」が青みがかった白い色のことであるのは初めて知ったが、
その色のかもしだすイメージだけが、
心に残るような作品だった。