あらすじ
妻を亡くし、息子の夏樹を一人で育てるフリーライターの海老原。そんな彼に雑誌『月刊クリスタル』編集部から、戦後の殺人鬼が起こした事件をもう一度掘り下げて検証してほしいとの依頼が入った。殺人鬼の名前は北川フサ。彼女は戦後の混乱期に5人の男を立て続けに殺し、死刑となっているという。取材を始めた海老原は、フサが赤の他人である少年とともに行動していたことを知る。そして、その当時の少年は、今も存命だった。単なる週刊誌の連載のはずが、いつしか海老原は、フサに導かれるように、事件に没入していく……。
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Posted by ブクログ
戦中から戦後にかけての、人々のリアルが生々しく描写されている。
特に戦争孤児の現実は胸が締め付けられる。
現代のフリーライターが日本が戦争に負けた時代、5人を殺害した罪で逮捕された「北川フサ」を追いかける。
凶行に走った「北川フサ」の憎しみ。
「フサ」と同行していた「大垣靖男」の憎しみ。
ジャーナリスト「海老原誠」の憎しみ。
それぞれが持つ憎しみをテーマに物語は進む。
事故で他界した「誠」の妻は決して悲劇のヒロインではない!!
Posted by ブクログ
境遇や時代を越える感情のつながり。憎しみという感情と、それを抑える理性。憎しみを持つ人々が選ぶ、それぞれの生き方。
戦後を生きた子供達の生活は想像以上に過酷なものだった。秩序などというものが存在しない世界で、今日を生き抜くためだけに必死に戦う人々。そのためには手段を問わず、他人を切り捨てる人間の惨さがある。戦争は、人の心も何もかもを奪ってしまうのだろう。
戦後の殺人鬼は何を考えたのか。その時代に正しさなんてものはあったのだろうか。全て奪われ、何も持たず、まっとうに生きる術もない人に、誰が善悪を問えるのだろうか。
憎しみという感情が、過去を生きた人間と、今を生きる人間を繋いでいた。全て読んだ後に最初の場面を読み返すと、とてつもなく切ない気持ちになった。非常に読み応えがある一冊だった。