小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
すっごく面白かった。考えさせられた。ドキュメンタリータッチで描かれているフィクションだ。少年院で過ごした時のグループ5人のそれぞれの想いが描かれている。その中の1人が復讐で殺されたあとの、お話なのだ。子供の時って脳が発達してないから、どうしても自己中心的になって、不運は全部、人のせいにしてしまう。ようやく少し反省しても、いつもいつも白い目で見られるとやはり、後戻り、グルグルと悪い方向へ行っちゃうのかな。自分のしたこと、悪いこと、取り返しのつかないことに対して、どう向き合っていくのか。無邪気すぎて、単細胞?すぎて、少年たちが、とても、かわいそうに感じた。でも、彼らの反対側には、被害者の家族の悲し
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Posted by ブクログ
自分の声をきいてもらい、たすけてもらったキナコが、一度はその恩を返すことはできなくとも、同じように声が届かないと諦めてしまった52の声をきき、応え、52もまたキナコの声をきき助け合う姿に心が温まった。
アンさんの遺書には涙が出た。苦しくて誰かを恨めればまだ楽かもしれないけれど、自分を責めてしまったから、死を選んでしまったのかな。自分を責めることか人を責めることかどっちが楽なんだろう。どっちが正しいことなんだろう。本とはぜんぜん関係ないことだけど、人を責めれば楽だけど自分ではどうしようもできない辛さがあるし、自分を責めればこれからを変えられる希望があるけどやってしまったことを後悔することしかでき -
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また一冊、素敵な本に出会えた。
複雑な環境に育ったまひろ。「運が悪かったのかなって思ったことはあるけれども、不幸なんて思わなかった。」そんなふうに捉えられるなんて、素敵だなと思う。
からさんも、裕子さんも、タロウも柊也もみんな優しくて温かい。
からさんの言葉は心に残るものがたくさんあった。
からさんだけでなく、最後の章に登場する人たちの言葉は重くて、でも温かくて、久しぶりに読みながら目頭が熱くなった。
今を生きているということ、どう生きるかということ、人を想うこと、家族とは、いろんなことが詰まった本だった。
続きの伽羅の章も、味わって読もう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ成瀬の高校3年生〜大学1回生の頃を描く成瀬シリーズ2作目。文庫化を待ちきれず3作目と購入。
1作目と同様直情で正義感が強く独立独歩な成瀬は健在で、初対面で面食らい拒否反応を示す周囲の人々が、次第に成瀬の魅力に感化されていく様が生き生きと描かれている。登場人物の心情の描写がとにかくリアリティがあって共感を覚えたし、最終話で書き置きを残して消えた成瀬を、各話で登場した主人公が集って名古屋まで探しに行くのはさながらグーニーズのようで素晴らしい結末だった。何より読んでてほっこりする。訪問したことない大津の情景を浮かべているうちに大津が好きになっていくし、つい地元に住んでいた頃の自分も懐古していた。読む -
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ネタバレ
この本は、死が波みたいに少しずつ、確実に寄ってくる。それは悲しいことでもないし、嬉しいことでもない。
小説でしか触れられない擬似体験だった。
読み進めるのが勿体無いと感じるほどに、
柔らかい文体と五感の表現が美しくて
お気に入りの一節を見つけると何度も読み返しました。
主人公が施設で過ごしたのはたった1ヶ月。
私が本を読んだのは2時間くらい。
でも、体感ではちゃんと“1ヶ月”だった。
時間の長さって、心が決めるんだなって思った。
そして、どれだけ死を受け入れる必要があっても
私が誰かに“死なないでほしい”と思うのは
生きることへの執着があるからで
それが健全だと思った。
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Posted by ブクログ
下巻(むすびの巻)です。いやいや堪能しました。やはり"児童文学の極北"、傑作でした。最終巻はもはやレビューは不可です(放棄?)。あぁしばらく引きずりそうです。ぜひとも再脚光を浴びてほしい作品でした。
本当の闘いとは? 猫は共同体を作り得るのか? 猫の丘の結末は? ヨゴロウザの記憶は蘇るか? ひげが象徴するものは何? 全てが回収され、驚愕の終焉を迎えます。そしてエピローグの余韻と無情感…。
ぜひ本作を読んでいただき、本作の"凄み"をご自身で確かめていただきたいと思います。きっと深く考えざるを得ない部分が多々あると思います。3冊計36章、1,100