あらすじ
天才調香師は、人の「欲望」を「香り」に変える――。
直木賞受賞第一作。『透明な夜の香り』続編!
「君からはいつも強い怒りの匂いがした」
カフェでアルバイトをしていた朝倉満は、客として来店した小川朔に、自身が暮らす洋館で働かないかと勧誘される。朔は人並外れた嗅覚を持つ調香師で、その洋館では依頼人の望む香りをオーダーメイドで作り出す仕事をしていたのだ。
朔のもとには、香りにまつわるさまざまな執着を持った依頼人が訪れる。その欲望に向き合ううちに、やがて朔が満を仕事に誘った本当の理由が分かり……。
香りを文学へと昇華した、第6回渡辺淳一文学賞受賞作『透明な夜の香り』に続く、ドラマティックな長編小説。
感情タグBEST3
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文字から香りのする「透明な夜の香り」に続き、静謐な色と香りの描写が美しい
新月から満月への月の満ち欠けと並行して少しずつ追い詰められていく主人公に感情移入し、怒りや執着、自分と向き合い赦すことについて考えた
小瓶に永遠に保存したい隠れ家のような本
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朔さんの「正しい執着」に対するアンサーが「赦し」なのであれば、朔さんが一香を傍においておくためには、まず朔さんが母親のことを赦すことが必要なのだろうけれど、『透明な夜の香り』であった通り、朔さんは"忘れられない"ひとだからこそ母を赦せないために一香を遠ざけることでしか大切にできないのがもどかしくて、でも美しい。
あるいは赦さないことで、愛着と執着のちがいすら知らなかった自分が一香を傷つけないようにしているのか、、、どちらにせよ前作に対する朔さんのアンサーが聞けてよかった。
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前作の一香さんと朔の間の、不思議と落ち着く雰囲気、通じ合っている関係性と比べると、今作の主人公と朔さんとの関係はかなりちぐはぐ。
主人公の特徴が強めで自己主張がある。だから、新城や朔さん、屋敷や依頼人だけに注目して見られた前作と比べると、主観的な印象を受けた。
前作とはまた違った朔さんや新城、そして同じ所があって、読んでいて楽しかった。
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p108思い出して欲しかった
p109あんたは一度も傷つけようとしていない。同じ目に遭わせてやろうとか、苦しめてやろうとか言ってない。ただ、思い出してほしいだけだろ。それの、何が悪い。あんたは強いよ。殴り返さない強さを誇るべきだ。
p96 気持ち悪いですね、すみません
いえ、思ったことを謝らなくていいです。
p206 拒絶された怒りだったのか。悲しみや寂しさを感じないように真っ赤な怒りで染めて、そうやって俺は生きてきたのだ。
中略
腹の底にポッカリとした穴が空いて、力や熱が奪われていく気がした。ああ、これが虚しさなのか。
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「透明な夜の香り」が大好きで、続編も読んでみました。やっぱり、世界観が素敵だなと思いました。
「俺のことを過敏と言った人は、俺よりもはるかに孤独な世界を生きている人だった」この言葉にとても考えさせられました。
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めっ
ちゃ
よかったです。
絶対にハードカバーで綺麗な状態の本を本屋で購入したくて
何件もまわってやっと購入することが出来ました。
源さんってこんなに可愛いんですね!
朔さんも男相手だから?前作よりちょっと強くなってていい感じでした笑
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はー、とてもとてもよかった。
前作の主要な登場人物たちも丸っと出てくるし、その後を知ることができる。
今作の主人公、満の怒りの香りが怒りが作品中に漂っているおかげで、不穏なんだけど、日常は穏やかで、その対比が鮮やか。
満の怒りの原因がわかったとき、朔の人間としての優しさとか、成長を感じた気がする。
一香ちゃんとの絡みもっと見たかったな〜〜究極のツンデレカップルなのでは
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前作に続き相変わらず惹き付けられる。
更に続編を期待してしまうそんな1冊。
「隠せば隠すほどにおう。隠すというのは執着だから。執着は濃くただよう」
深く刺さる言葉の中に上品で艶やかな言葉が入り交じっているなんて素敵な世界観なのだろう
Posted by ブクログ
透明な夜の香りの続編ということで期待して読みました!が……
個人的には今回の主人公?の朝倉くんがあまり好きになれなかった……。
話の内容はすごく面白かったし、一香ちゃんが出て来てくれたことも嬉しかったんだけど、朝倉くんが……。
辛い過去があるのも分かるんだけど、わたし怖い男の人が苦手で…それでかな…。
母親がテーマなところもあったからそこも重たかった…。
そして今回も前回と同様、朔さんと一香ちゃん、早くくっつけ〜と念じながら読んでましたが、あの2人はあの距離感がいいんですね…( ᵕ ᵕ̩̩ )
朝倉くんが苦手というだけで本自体はとても良かったです。
Posted by ブクログ
おすすめポイント
・前作「透明な夜の香り」の続編が読みたい人
・透明感のある、上質かつ読みやすい文章に浸りたい人
・源さんの過去とか、朔の過去を知りたい人
残念ポイント
・朔は短髪ブロンドなのが私は受け入れられないんだな〜!無機質で儚げ、涼やかで透明な雰囲気を保つ人だったら、線の細い長髪がテンプレじゃないのかなー。
・前作みたいな朔の強さが見たい人には物足りないかも!今作は朔ではなく満が主役なので、朔推しの人には、「うーん」かも。
・バイの姉さんの登場シーンが寒い。突如深夜アニメのテンションになる、切り替えが突然すぎて寒い。静謐な雰囲気を一貫して欲しかったな。不意打ちでオタク臭を醸し出す行為は、読者に共感性羞恥を覚えさすのでやめて欲しかったwこのシーン提案したの誰?担当なのか作家本人なのか知らないが悪手です
Posted by ブクログ
p.27 言った。「猪だってでるしね」
「ここはまだ敷地内ですか」
「そうだね。凍死されると迷惑だから迎えにきた。下の住宅街をでなければ見失わないよ。
よほどの豪雨でない限り」
「それも、匂いで、ですか」
返事はなかった。薄く微笑んだ気配が伝わってくる。明らかに人の常識を超えたことなのに、なぜだか納得している自分がいた。
なぜ逃げたんだろう、と思う。この人はすべてを見透かしているのに。
ひどい言葉を浴びせられたことは無数にある。でも、この人の言葉が一番遠慮がない。なのに、攻撃されている感じはない。
俺はきっと、俺から、逃げたい。
「方向音痴みたいだけど、覚えてね。ここは果園の外れ。育てている植物はすべて香りの原料にする。橙の果実の皮からはオレンジビターが、花からはネロリ、葉や枝からはプチグレンという精油が採れる。ローズウォーターのように花弁からはオレンジフラワーウォーターもできる。どれも香りが違う。同じ木が違う顔を見せるんだ」頭に入ってこないが、黙って頷く。
「でも、僕にしてみればどの植物だってそうだ。それをひとつひとつ見つけていくのが面白い。君だっていろんな顔があるだろう」
Posted by ブクログ
やはりこのシリーズが好き
主人公が香りに染まっていく、溶け込んでいくという感覚と同じように
私は清々しい透明な香りが私の体の中を通って私自身を浄化してくれているような感覚になる。
神聖な神社に行って鳥居をくぐる時と同じ感覚。
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前作を読んで感じた色は、静かな夜の黒や、空虚さの無色透明だったけど、今作はタイトルにあるとおり赤を感じる内容。
静かで非現実的な香りが漂う空気感は前作と似ているけど、今作では、血の香り、怒りの香り、男臭さやバタ臭さからくる赤を感じます。
表面的には静かで平穏なはずなのに、心の奥でフツフツと赤い何かが沸き続けているような、唯一無二の世界観を堪能しました。
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「透明な夜の香り」を読んで是非続編を読みたいと望んでいたら、続編を見つけて歓喜!
もっと一香に登場してほしかったが、朔の過去の話が読めて良かった
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このシリーズには共感できる人物は出てこないけれど、朔さんの作る香りで救われて欲しいと願ってしまいます
一香と朔さんの関係性も素敵だと思います
2人にしか分からない世界だ…
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前作の『透明な夜の香り』は、静のイメージがありましたが、今回はなんとなく動きを感じ、違った面白さがありました。
満が怒りを内に秘めていて、感情を出す部分に個人的に『動』を感じたのかもしれません。
Posted by ブクログ
続編も面白かった!!!
このシリーズ、ハードカバーで本棚に並べたい…
様々な依頼人たちのエピソード→主人公の抱える胸のうちがだんだん明らかになる→主人公のトラウマをほどいていく構成は「透明な夜の香り」と一緒かな〜と思って読み進めたけれど、主人公が変わったことにより違う視点からの見方・登場人物のその後や明らかになるエピソードもたくさんで本作もとても楽しんで読めた!
P.93のハーブのエピソードは私も同じように仕事をしていたので反省した…
物事を自分の見える側面だけを鵜呑みにせず、きちんと生い立ち等について向き合いたいなと思った…なかなか難しいけれど。
(知ってることと知らないこと、手間をかけるかかけないか、結構大きな違いだよね)
ジャスミンティー飲みたくなった!
柘榴は…食べたいとはあまり思わなかったかな?
メモ:千早茜さん13作目(小説9冊・エッセイ4冊目)
Posted by ブクログ
前作の透明な夜の香りが面白くて続編を読んでみました。
前の作品に比べて「本なのに香りを感じる!」という感動した体験は少なかったけれど、静かな森の中にいるようなイメージは変わらずにありました。隠れ家のように特別な場所にきた、というような体験がまた出来たのは嬉しかったです。
主人公の過去にちなんだ題名として「赤い月の香り」になっていますが、主人公のストーリー性は少し薄いような気がして勿体なかった気もします。
Posted by ブクログ
この作品の現実とはかけ離れたような空気感がすき。
前作同様に香りと記憶、人と人との関わりが繊細に描かれていると思う。
主人公が変わることで洋館に関わる人の違った一面が見れたのもよかった。
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前作のヒロインの輪郭がぼんやり浮かんでは消える、そんな続編。朔さんと新城の相変わらずな絡み、芳しい(だけじゃない)香りと味の鮮やかな描写が魅力的。
Posted by ブクログ
前作の主人公・一香も登場し、今作の主人公・満は一香と小川朔は付き合っているのではないか?と野暮なことを発言したりと、ちょっと空気が読めない。
歯科医院で女性に対して香水を分けてあげようか?と連絡先交換すること自体も同い歳だからとその時点でタメ口を聞く感じも、あ、なんか変なスイッチ入ったな?と感じるも、やっぱり交わり、小川朔に黙って茉莉花に小川朔ブレンドの香水やボディソープやらを貸してあげる。
最後はなぜ小川朔は満を雇ったのか、急な発言で少しドキッとしたが、結局茉莉花と仲直りする形で〆られ、満をどうにも好きになれなかった。
ただ、これも小川朔には黙っているものの持田と友達になったり、以降も源さんが育てる野菜や薬草が消費しきれない量となるとまとめて回収してくれる付き合いが続くなど持田絡みのエピソードはほっこりした。
Posted by ブクログ
透明な夜の香りの続編。
主人公は女性から男性になった。あくまで香りを中心に物語が進んでいき、依頼人に深く焦点が当たることはない。色んな香りを想像しながら読み進めるのは心地よく、前作と同様に穏やかさが感じられた。ただ、主人公への興味が前作ほどは感じられず、過去の話に対しても感情移入ができなかったため少し物足りなさを感じた。
Posted by ブクログ
愛着と執着の差は紙一重で時に入れ替わることもあるのだろう。香りの感じ方は人それぞれで、同じ香りでも同じ気持ちを思い出すことはできず、本当に同じ香りにするなら違う配合になる。繊細で密やかに暴力的な強さも持つ不思議な香りの世界を堪能。
Posted by ブクログ
続編も前作に引き続いて良かった。
香りをイメージしてここまで話を広げられることが本当にすごい。
香りと一概に言っても、そこに含まれる意味やイメージするモノは人それぞれ異なるというのがよく分かる。
千早先生言葉の使い方が好みドンピシャなためか、読んでいて物語の中にドンドン引き込まれていく。
私の頭の中で、登場人物が生きているような感じだ。
他の先生が書かれた作品でも同じようなことは多々あるが、千早先生の作品は言葉にして表現できない不思議な感じがする。
先生が書かれた他の作品もぜひ読んでみたい。
Posted by ブクログ
正しい執着とは"赦し"
この物語の終盤で記されてる1行に全てが詰まっているように捉えれた。
母を赦した満
満を赦した茉莉花、朔
"赦し"で全てが丸く収まることはないだろうけど、複雑な問題だなぁ。
唯一無二の香水わたしもほしい