★5 有栖川有栖35周年!今を時めく人気作家のオマージュアンソロジー #有栖川有栖に捧げる七つの謎
■きっと読みたくなるレビュー
有栖川有栖先生のデビュー35周年企画、脂がのったミステリー作家によるアンソロジーです。ずらりと並んだ錚々たるメンバー、読む前から有栖川先生の功績がわかりますね。
ファンとしては読む前からもう★5なんですが、読んだ後もさすがと唸らざるを得ない。人気シリーズものをコピーして、ちょっとアレンジくらいかなーと思ってたんですがとんでもない。
各先生の個性がバッチシ出てて、むしろ有栖川先生本人には書けないような切り口や読みどころがあるんです。有栖川先生を知らなくても、各先生のファンであれば読みやすいってのもいいですね。本気の作家が本気でふざけると名作になるという良い例、必読。
●縄、綱、ロープ/青崎有吾
マンションの近くで絞殺死体が見つかる、ひも状の凶器が容疑者の特定に関連しそうだが…
作家アリスを見事にコピーした秀作、オチとそこまでのアプローチがらしくて好き。さらに謎解き探偵論が入ってるところに、ファンならではの愛がみられて癒されました。
●クローズド・クローズ/一穂ミチ
女子高生の制服が盗まれる事件が発生、犯行は内部の者らしいが…
おもろい! 本家ではなかなか見られないテーマ性や書きぶり。一穂ミチ先生の強みがしっかり出てる~。作家アリスにシスターフッドを掛け合わせるなど目から鱗ですよ。謎解きも女学生同士の距離感も高品質すぎて、消化するのがもったいないくらいでした。
●火村英生に捧げる怪談/織守きょうや
呑み屋で不思議な怪奇現象を語らう物語。
織守きょうや先生お得意のホラーが切り口、不可思議な現象に対してロジックで挑む火村たち。ホラーや怪奇現象に相対するって、作家アリスではあまりないすよね、新鮮でした。山小屋の謎解きには言葉を失いましたね、考察の糸口すら見えなかった。
●ブラックミラー/白井智之
学生時代の旧友から連絡をもらった主人公、昔話に花を咲かせつつも何か違和感を覚える。その後友人に嫌疑が掛かっていると警察に呼ばれた。どうやらアリバイ工作に使われたようで…
双子をテーマにしたミステリー。マジックミラーか、懐かしいなー、いつ読んだろう。今や本格ミステリー作家の筆頭ともいえる白井先生、まぁ一言でいうと「鬼」ですわ。インスパイアしつつも、最初から最後までらしさ爆発の作品でした。
●有栖川有栖嫌いの謎/夕木春央
ミステリー作家の取材旅行。現地で出会った人から、有栖川有栖が嫌いと言った友人の話を聞き…
おもろい! シンプルかつ切れ味抜群の秀作。こんなん書かせたら夕木先生は日本一かも。セリフ回しが面白くってニヤニヤしちゃうし、謎解きでもハッとさせてくれる。そして終盤に吐かれる身勝手な口上、ファンの願いは同じだなって思いました。
●山伏地蔵坊の狼狽/阿津川辰海
呑み屋で山伏が語る謎とき話、死体の周りに収集した蝶が配置されており…
山伏地蔵坊すか、懐かしい~! というかすみません、ほぼ覚えてません。そしてオマージュが過ぎる。阿津川先生の超綿密な謎解きが光りまくりの作品なんですが、それ以前に地蔵坊のキャラへの愛情がエグイ。
●型取られた死体は語る/今村昌弘
名古屋に就職活動に赴いていた織田、知り合った友人からダイイングメッセージの相談を受けた。EMCのメンバーはいつものとおり喧々諤々と議論を繰り広げる。
みんな大好き学生アリス、今回のテーマはダイイングメッセージ。と言っても本当の殺人現場ではないというのが彼ららしいお話。本トレビュートで最もエモさが光る作品で、EMCひとりひとりの優しさもにじみ出ています。学生アリスらしくて素敵… ラスト一文は間違いなく本家先生へのメッセージだと思うわ。