あらすじ
障害を抱える青年けんちゃん、18歳。
けんちゃんと出会って、みんな変わった――。
特別支援学校高等部に通うダウン症のけんちゃん(18歳)。言葉をスムーズに発することができず、不可解な言動も多い。癇癪を起しては「気持ちを落ち着かせる部屋」に閉じこもる彼に、どの職員も手を焼いている。
そんな彼と出会った人々――特別支援学校の寄宿舎で臨時職員として働く多田野唯子、校内イベントを取材する地方紙記者・水上悠介、学校の生徒たちが立ち寄るコンビニの店員・七尾光、同じ支援学校に通うことになった女子生徒・若山葉月――それぞれの視点でけんちゃんとの交流を描いた連作小説です(全5編)。
著者こだまは、かつて特別支援学校の臨時職員として三年間働いていた。そこでの経験を下敷きに物語を紡ぎ、けんちゃんという障害のある高校生を魅力的に描く。気づけば読者は、“寄り添う”ともまた違う、“あたらしい世界”にいる。
『夫のちんぽが入らない』で衝撃デビューを果たした著者渾身、9年ぶりの初創作小説!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ダウン症のけんちゃんを中心に、その周りの人たちがつながり、励まされ、成長していく物語。
温かで前向きな気持ちをくれる、春に読みたい一冊。
テンポが良く、すっと読みやすい文調で、「障害」とその周りに重苦しくまとわりつく何やらをそっと包み込んでくれる感じがした。
綺麗事だけじゃなくて、障害のある人自身の、そして周りの人間の「障害」を受け入れられない気持ちをも取り上げられているところが好き。特別支援学校で働いた経験があるからこそなのかな、と。
障害を持つ人を支援するような対人援助職を目指す人にとっては、お仕事小説としても読めるのではないかな。
「あしたの君へ」(こちらは家裁調査官補の話)と近い感じ。
Posted by ブクログ
けんちゃんに無性に会いたくなってきた。
遠く寒い大地に行けば会えるのだろうか。
各章に出てくる登場人物にすべて感情移入しすぎて、読み進むのが止まらず(笑)
よい本に巡りあったなあと、3月のこの時に読めてよかったなあと。おかげでともすれば最初の多田野先生のように「なにも起こらない春」に過ぎ去られて行くところだった。
私も仕事柄、先生であったり、障がい者であったり、それに悩んだりすることに携わる人たちと多岐に絡む人たちが多く出てくるお話。
特別だと、思ってはいけないと思いつつ、つい対応を変えてしまう自身にときどき腹がたつ。
だから、七尾くんへの感情移はすごいもんでしが、最後の最後。鹿野先生の言葉が一番すんと降りてきました。自身も気を付けなきゃと思いつつ日常にそんな風景や諸情があるから時折忘れていること。
「障がい者の人の行動をみてパニックになる人もいるということ」
「恐怖を与えてしまった障がい者の人を嫌いになってもいい、でも、その人だけを見て障がい者の全てだと思わないで欲しい」
真理だ。前田敦子〜真理だ(笑)
けんちゃんにありがとうと言いたい。
けんちゃんのプリン食べたいな。
最後に、いろんな人に読んで欲しい。
Posted by ブクログ
けんちゃんに会いたくなりました
どんな姿でどんな行動をしてどんな言葉を発するのか、文字から溢れる魅力を映像で実物で見てみたいと思いました。実写化希望だけど、そんな簡単にはしてほしくない。とてもとても温かい文字がたくさんあって読みやすいしすっと入ってくる。
北海道特有の花とか自然の景色とか想像するには知らない単語とかあったけど、行ってみたいって思った。感じてみたい。みてみたい。のめり込める世界。実際にある世界。とても素敵な世界で素敵な本でした。素敵です。ほんとに。私はその時どう思うのか抵抗を感じるのか、なんとも思わないのか。なんとも思いたくないしでも情をかけたいわけでもない。ただ一人の人間として見て感じて、受け取りたい。会話してみたい。思ってるけどやれないもどかしさとか、偏見とか持ちたくないけど怖さとか。いろんな感情がこみ上げてきて、でも捨てきれなくて。素敵な本に出会いました。いつかけんちゃんに出会いたい。そう強く思いました
Posted by ブクログ
こんなに泣いたり、気持ちが声に出てしまうような文章は初めてでした。(48才adhd障害者手帳2級当事者)ワタシは文章を読むのが好きなので、このカタチが一番ですが、ワタシの母や友人たちはそうではない人が多いので映画化ドラマ化して欲しいです。そんな風に感じた文章も初めてです。ワタシが世の中に伝えたいことが、伝えたいカタチで書いてありました。内容については何も書きたくありません。うまく表現できません。紙とかインクとか運送とか…インフラとか法律とか歴史とか…全てに感謝してしまうほど、うれしい体験でした。ありがとうございます。
Posted by ブクログ
支援学校の寄宿舎に住む「けんちゃん」を通して変わっていく人たちの物語、といえばありきたりな気もするけど、なんか読み心地がいい。不思議だ。
内容にも、書き口にも違和感がない。登場人物から滲み出る”良い人ぶりたくない”という精神が著者の根底にあるのかも。押し付けがましくないって本当に難しいんだなと思った。
読破した!という達成感よりも、心地よさが残ることって私にとっては本当に嬉しいことだから、そういう自分が思う読書の楽しさみたいなものを久しぶりに味わえて嬉しかった。
私もけんちゃんみたいな存在に救われたことがある。
だからか、こういう視点を持って本を書いてくれる人が素晴らしい書き手で嬉しくてたまらない。
Posted by ブクログ
けんちゃんはとてもリアルで、どこかにいそうで。
小説自体は面白くてすらすら読めたし、感情移入もしたりして。
でも3章くらいまでは、けんちゃんがいるからみんなが変わった、みたいな感じはわからなかった。
ただ、登場人物として「けんちゃん」はいるけれど、キーパーソンというには、ただ本当にそのままいるだけ、みたいな感じで。
わかりやすい、気づきみたいな表現?はなかったからかもしれない。
でも、4章を読んだ時に思った。
生きていたらどうしても、いろいろぐちゃぐちゃに悩んで考えてしまうけれど。
けんちゃんは常にただけんちゃんで、けんちゃんの評価基準だけで物事を見ていて、感情の赴くままに真面目に真っ直ぐに生きている。
そんなけんちゃんだからこそ、本当にただ一緒にいるだけで、世界がほんの少し優しく見えてくるのではないかなと。
優しく、という表現が正解なのかはわからないけど。
でも、一緒にいたら、気づかぬうちに、一緒にいる人自身も素直で等身大になれていく。
4章が終わって初めて、けんちゃんの尊さに気付いた。
そして、けんちゃんを読んでる自分自身も、素直で等身大で力が抜けていくような感じだった。
それでもやっぱり、本を読み終わって現実を生きていたら、ごちゃごちゃと考えて悩んでしまうけれど。
けんちゃん、一緒に生きて欲しい。
Posted by ブクログ
特別支援の高校に通うけんちゃんに関わる4人の視点で書かれるストーリーです。
皆それぞれに悩みや障害があって、どのように生きていけば良いのか、どうしたいのかわからず探りながら生きている。正直で素直で、時に野生動物のようなすばしっこさを見せるけんちゃんをみているうちに、その言動に惹かれ、引っ張られていく…。けんちゃんには不思議な力があるようだ。
『障害のある子ども』を描くものはあっても、『特別支援学校の生活』を描いた小説はそんなに多くないのではないかと思う。そこに関わる大人の向き合い方を見て、非常におもしろいと感じた。
けんちゃんのことを応援したくなるし、卒業してしまうのは寂しい…。私もペプシで激怒するけんちゃんを一度は見てみたい!(不謹慎かな)
心温まる素敵な話でした。