ブロンズ
レビュアー
  • 億男

    信仰心

    唯一無二ではないけれど,ないと不安になるものたち。
    お金のあるないに関わらず,日常の些細なこと,どうでもいいことに心を留められる生き方をしたい。

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  • 羊をめぐる冒険

    風化

    やれやれ。

    さすがに吸い過ぎだし,飲み過ぎだろう。

    とんでもない状況なのに,ジョギングしたり,ヒゲを剃ったり,食にこだわったりできるのはなぜ。

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  • ダンス・ダンス・ダンス

    羊男

    『羊をめぐる冒険』のその後。
    不思議なストーリーは悪くないけれど,五反田くんは嫌いだ。
    いくらハンサムでも,有名人でも,動物を虐待する人はみんな大嫌い。
    羊男は結構気に入っている。
    果たして無事なのだろうか。
    謎は解けないままだし,生きているのか死んでいるのかさえわからない。
    「僕」はいろんなものを持て余しすぎている。

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  • ペンギン・ハイウェイ

    小学生の語る比喩が心地良い。

    「海」は子どもにしか見えないトトロみたいなものだと思ったけれど,そう簡単なものじゃなかった。
    生活は取り戻せた。
    お姉さんは行ってしまった。
    謎は解けないままだ。
    なんだか切ない。

    いつの日にか少年の願いが叶いますように。

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  • 猫怪々

    犬派だけれど,猫も愛おしい。
    動物好きな人とは無条件に仲良くなれそう。

    生命の極意は,もっとシンプルなものなのかもしれない。
    動物を見習おう。

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  • 十津川警部「幻覚」

    ただひとつ思ったのは,悪い雪だるまを転がしてはならないということ。

    もう自力では止まることができなくなるから。

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  • 逢魔が時に会いましょう

    冒険

    座敷わらしに河童に天狗。
    小説は,より現実離れしている方が好みだ。
    すぐに自分の世界に入ってしまう布目先生と,映画監督を目指す真矢。
    二人のキャラクターも微笑ましい。
    冒険の続きが気になる。
    妖怪や精霊なんてきっといないんだけど,心のどこかで信じていたい。
    その方が楽しいから。

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  • 天国の郵便ポスト

    逗子にはあまり馴染みがないけれど。
    海のある街で育ったからかな。
    鮮明に想像することができる。
    海風も,潮の匂いも,青空も。

    何もわからなくなってしまった認知症のおばあさんにも,想いはちゃんと届く。
    遺された者たちの想いは,きっと空の上に届いてる。

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  • パラダイス・ロスト

    正体

    魔王の正体がついに暴かれるか?
    結局謎のまま。
    D機関はどこまでも完璧だ。
    圧倒的に人間離れしている。
    でも最後には,人間的な部分が仄めかされるから,ほんの少しだけほっとする。

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  • 優しい死神の飼い方

    友情

    綺麗で,儚くて,優しいお話。

    おとぎ話みたいに完全なるハッピーエンドではないけれど。
    動物が出てくるお話は心が洗われるし,勧善懲悪的な結末はすっきりする。

    人と犬の間にも,友情は成立するんだよね。
    年齢や性別や種類なんて関係ないんだよね。

    優しい死神は,天使だった。
    この世で一番純粋で愛おしいもの。
    ゆれる犬のしっぽ。

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  • マウス

    ざわざわ

    村田沙耶香さんの書く小説は,相変わらず胸がざわざわする。
    けっして言葉にしたくないことを,正確に言葉にされて突き付けられた感じ。
    『コンビニ人間』ほど強烈ではないものの,やはり登場人物にサイコパスみがある。
    少しだけ羨ましくもあるけれど。

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  • 明日の子供たち

    希望

    憧れや正義感だけではけっして務まらない。
    子どもに手を差し伸べるのは大人の役目だけれど,物事の価値まで大人が決め付けてしまうのは言語道断だ。
    人それぞれの生き方があって,居場所があって,いろんな種類の幸せがある。

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  • 雑談力が上がる話し方

    チャンス

    突然訪れる雑談の機会。
    スマートに話せるようになりたくて。
    巷に溢れている自己啓発本とは違ってタメになった。
    そこまで気張る必要はない。
    大事なのは,コミュニケーションを取ろうとする気持ち。

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  • 流星ワゴン

    私にとってのたいせつな場所ってどこだろう。
    人生の分岐点って,どこだったんだろう。
    どこで間違ったんだろう。

    現実は,甘くないから現実だ。
    奇跡なんてそうそう起こらない。
    だからこそ,魔法より強力な何かを見つけるために。
    旅をし続けるんだ。
    ときには流れ星の力を借りて。

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  • 空飛ぶタイヤ 上下合本版

    古くさくて男くさい。
    昭和のにおいがする。
    でも,赤松社長の熱意に心打たれてしまう。

    悪戦苦闘の末,正義が勝って悪者が懲りるお話。
    なんだか晴々とした気持ちになる。

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  • かがみの孤城

    思春期特有の不安や焦り。
    居場所はひとつじゃない。
    価値観もひとつじゃない。
    どこへ行っても嫌なことはある。
    けど,きっと助け合える。

    謎が解けていく度に,良い意味でぞっとした。

    本当に叶えたい願いは,気が付かないうちに叶っているものなのかもしれない。

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  • 羊と鋼の森

    調

    美しく繊細なピアノと調律師の物語。

    これさえあれば生きていける。
    その瞬間の弾けるような気持ち,途切れることのない情熱,味わってみたいなぁ。

    目で読んでいるのに,耳の奥から,頭の中から音楽が流れ出てくる。

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  • 花咲家の人々

    魔法

    緑の匂いがしてくる。
    花や草木に囲まれた生き方。

    魔法や奇跡なんて存在しなかったとしても,それを信じて生きていく方がきっと楽しい。
    こんな簡単なこと,なんで気付けなかったんだろう。

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  • 花咲家の休日

    奇跡に限らず,おばけも悪魔も妖怪も。
    信じてみるのも良いかもしれない。

    わたしだけのかみさまを。

    常識や当たり前のことなんて,もう知り尽くしているから。

    目に見えないものを,誰にもわかりっこないものを,信じられる強さと陽気さを。

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  • 花咲家の旅

    白猫の小雪の話が好きだ。
    いつだって大切な人のことを想って,ただひたすらに歩き続ける。
    あたたかな命。
    人間よりもずっとずっと強くて優しい存在。

    きっと,飛行機に乗って遠出するだけが旅じゃない。

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  • 花咲家の怪

    本当の「豊かさ」とは,花咲家の人たちみたいな生き方のことを言うんじゃないかな。
    これまで植物には興味がなかったけれど,少しだけお花を愛おしく思うようになった。
    お花屋さんに行きたくなった。

    万人を守ってくれる神さまなんていない。
    でも,私だけの神さまはいると信じたい。

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  • サクラダリセット(角川文庫)【全7冊 合本版】

    記憶

    綺麗で正しくて,好ましい物語だった。
    単純な恋物語でも,ありきたりな超能力者の話でもない。
    長いながい時間をかけて,浅井ケイや春埼美空,相馬菫とともに血だらけになって生き抜いた気分だ。

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  • また、同じ夢を見ていた

    活字によって心臓がどきりとしたり,涙が出そうになったのは2回目だ。
    住野よるさんの描くものがたりには,不思議な力がある。

    人それぞれの戦い方。

    私にとっての幸せとは。

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  • ユリゴコロ

    ひどく残酷で,おそろしい話のはずなのに,なぜかラストは綺麗に感じてしまう。

    細谷さんの,無償の愛を超えた,残酷なまでの愛情。
    人を殺してでも,守りたいもの。

    おそろしい「ユリゴコロ」は,歪んではいるものの,唯一無二の「オヤゴコロ」に生まれ変わったのかもしれない。

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  • 羅生門

    本能

    初めて読んだのは,高校一年生のときだっただろうか。
    衝撃的なシーンが目に浮かび,絵の具で羅生門の絵を描いたほどだった。

    大人になった今では,そこまでのショックは受けない。
    あきらめと,少しの同情。

    どうしようもないことを,どうにかしようとするこころ。
    それはやがて,醜い本能となる。

    生きるとは,何かを奪い続けること。
    生きてることこそ,異常事態だ。

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  • 「春と修羅」
    ネタバレ 購入済み

    銀河

    妹の死。
    耐え難い現実。
    重くのしかかる悲しみ。

    自然の脅威と美しさ。
    人間の狡さ,儚さ。

    最終的に賢治が行き着いた場所とは。
    遙か彼方の銀河ステーション。

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  • カラマゾフの兄弟

    登場人物が複雑で,とにかく難解。
    家族内のドロドロした問題。
    女,お金,権力,信仰。
    全体を通して胃がキリキリと痛むような雰囲気。

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  • 蜘蛛の糸
    ネタバレ 購入済み

    せっかく地獄から抜け出せる蜘蛛の糸を見つけたのに,独り占めしようとしたせいで,台無しになってしまった。
    きっと彼は,糸が切れてしまったのは,後から上ってきた多くの罪人のせいだと思っているだろう。
    やはり,地獄にいるべき人である。

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  • 走れメロス

    メロスという人間は,突っ込みどころ満載である。
    確かに正直で誠実な男であり,絶対に真似できない。
    でも,リスク管理ができていないし,常に感情の赴くまま,全部自業自得なところがある。
    ラストのくだりは面白かった。
    セリヌンティウスは繊細な優しさに溢れる男に違いない。

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  • 〔雨ニモマケズ〕

    ただ強くなりたいと願っているだけじゃない。
    誰に何を言われようと,どう思われようと,ひたすらに自分の信じた道を進もうとする心。
    見返りなんて一切求めてない。
    ただ守るべきものを守り続ける。
    それこそが真の強さ。
    それこそが,母というもの。
    なのかもしれない。

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  • 注文の多い料理店
    ネタバレ 購入済み

    教訓

    教訓めいた童話にしては,タイトルが秀逸である。
    人間は,捕食されるという感覚を忘れてしまっているから。
    欲望のあまり,みずから進んで飛び込んでしまう,そんな生きもの。

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  • 銀河鉄道の夜

    天の川

    すごく綺麗で,透き通っていて,どこまでも真っ暗で,真っ赤に燃えていて。
    純真な子どもでありながら,抱えきれないくらいいろんなものを背負っているジョバンニとカンパネルラ。

    死と希望と慈愛に満ちた天の川。

    深々とした切なさと,人知を超えた広大さが,日常の窮屈を塗りつぶしてくれる。

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  • アフターダーク

    視点

    視点とは何者だったのだろうか。
    この空間に漂う素粒子のようなものだろうか。

    彼らに朝は来るのだろうか。
    完全な新しい時間の中に生きることはできるのだろうか。

    答えが出なかった。
    ヒントももらえなかった。
    慎重に歩んできた進路を,鋭利なナイフでさっと切り捨てられてしまったような,そんな終わり方。

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  • 門

    ネタバレ 購入済み

    自分の過去に囚われすぎて,心を閉ざし,社会を遠ざけ,絶体絶命のピンチを目前に寺に籠もってしまう。
    己と向き合うふりをして,逃げ続ける。
    後ろを向いたまま,自分だけの悲しみに酔いしれることは,何の奇跡ももたらさない。

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  • 教団X

    読んでいて罪悪感を覚える程の狂気と恐怖。
    頭がおかしくなりそうだった。

    ただ,松尾さんの話は難しいけれど全うで,非常に興味をそそられた。
    壮絶な経験をしながらも,けっして世界を恨まない。
    科学や歴史に基づいた説明。

    人間の醜い部分を,なんの躊躇もなく目の前に突き付けられる。

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  • 人は見た目が9割

    衝撃的なタイトルで,読む前は抵抗を感じた。
    しかし,想像していたような,容姿の良さを重視する内容ではない。
    大人としてのマナーや身だしなみ,人への配慮について,今一度考えさせられる。

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  • コーヒーが冷めないうちに

    時間

    限りある時間の中で全力で生きる。
    今度こそ後悔しないように。
    逃げたり,強がったりしないように。
    恥ずかしがっている暇はない。
    過去も現実も変えられないけれど,自分の心を変えるために。

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  • 世界から猫が消えたなら

    詩的

    重いテーマを扱っているにもかかわらず,その情景は淡く繊細で,唯一異彩を放つ悪魔でさえ憎むことができなかった。
    未来を恐れて嘆くより,今ある体温を思いきり味わうこと。

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  • 愛犬物語(一)

    幸あれ

    動物の登場するお話は,無条件に頬がほころぶ。
    どこの家庭でも,犬はみんなを笑顔にする神様なんだ。
    犬と過ごせる時間は,一瞬だけど永遠なんだ。

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  • 三四郎

    恋物語

    結ばれても不幸だったり,結ばれないのが幸せだったり。
    昔の人たちの恋愛は,今よりも縛りが多くて,大変な苦労と我慢が必要であっただろう。
    今も昔も,完璧に人を愛することなんて,完璧に人に愛されることなんて,きっと誰にもできない。

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  • それから

    決断

    どんなに頭の切れる冷静な人であっても,恋心によって,理性や道徳心を見失ってしまうことが多々あるらしい。
    そして厄介なことに,やたらと大義をつけたがる。
    千代子の覚悟には,痛々しさと同時に一種の美しさを感じた。
    女性の決断はいつだって重い。

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  • コンビニエンスストア様【文春e-Books】

    異様さ

    常軌を逸している。
    「コンビニエンスストア」は,比喩なのではないか。
    比喩であってほしい。
    でも残念なことに,彼女が恋をしているのは,正真正銘の建造物「コンビニエンスストア」なのだ。
    苦笑の連続。
    非現実世界ならではの異常さに圧倒され続ける。

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  • こころ
    ネタバレ 購入済み

    自白

    鬱蒼とした雰囲気のまま,最後には強烈な衝撃を持って幕を閉じる。
    自殺は,最大の他殺にもなり得る。
    血潮は伝染していく。

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  • 火花

    宿命

    想像していたよりもずっと繊細で,苦しくて,衝撃的。
    自伝ではないものの,又吉さんの人間性がにじみ出ていた。
    命を削って心を削って人を笑わせる,人に笑われる仕事。
    生まれてから死ぬまで,まわりの人を笑顔にし続ける宿命。

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  • ノベライズ この世界の片隅に

    命懸け

    重く,ずしんときた。
    原爆の話は,決して他人事ではない。
    語り継がなくてはいけない。
    幸せな日常が,戦争という残酷な悪魔によって,どんどん奪い取られていく過程に胸が締め付けられた。
    命懸けで時代と戦い,最後まで人間を愛し抜く。
    彼女はなぜ,そんなにも強くいられるのだろう。

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  • 小説 言の葉の庭

    透き通ったラブストーリー

    優しい水の中にいるような,淡い光の中にいるような,繊細で綺麗な二人だけの庭。
    変わらない生きづらさと,どうしようもなく人を好きになる気持ち。
    比喩の使い方,言葉の紡ぎ方が奥ゆかしい。

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  • 嫌われる勇気

    取捨選択

    人間関係に悩んでいるときに読めば,気持ちが救われ,楽になるだろう。
    今後の生き方の指標にもなる。
    ただ,すべてを実践する必要もないのではないかと思う。
    人の痛みを自分の痛みのように感じることが,幸か不幸か。
    それは我々一人ひとりが決めること。

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  • ジョーカー・ゲーム

    極限

    圧倒的なスリルと冷酷さにとらわれ,どんどん読み進めてしまう。
    自分とかけ離れた能力の人達が生きる,非日常の世界。
    決してハッピーなストーリーではないけれど,終わらせ方が,嫌いじゃない。

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  • 小説 秒速5センチメートル

    とにかく描写が綺麗。
    儚く眩い青春の記録。
    人を好きになるということについて,もう一度考えさせられる。
    目に映る景色の多彩さに,もう一度気付かされる。

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  • 屍人荘の殺人

    喪失感

    単なるミステリではなく,青春・ホラー・パニック・死生観など様々な要素が絡み合う。
    まったく予測のつかない展開。
    登場人物のキャラクターが一人ひとり際だっていた。
    主人公の心の動きが細かく描写されていて引き込まれる。

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