小説・文芸の高評価レビュー
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今年読んだ本の中で、間違いなく一番心に残った一冊。
痛みを味わった人だからこそ分かる、他人の痛みがある。
けれどそれでも、人は完璧にはなれない。
弱くて、脆くて、それでも確かに強い――そんな人間の本質を静かに突きつけられる物語だった。
人は人に傷つけられ、そして人に救われる。
その残酷さと希望が、物語の中で何度も交差する。
親から「むし」と呼ばれ、自らをその名前で名乗る少年の存在は、切なすぎて胸が締めつけられる。
優しすぎる主人公は、受け止めきれなかった後悔や、言葉にならない感情を抱えながら、それでも「第三の人生」を選び取る。
その選択が、そして少年の未来が、どうか少しでも明るいもので -
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理不尽に対抗しろ。
子供のときに感じていた、大人への不信感を思い出したいときに読みたい本だった。
この本を読んで、子供という存在は、大人よりも確信をつくことを発するのだと学んだ。
この本を読んで、人としての原点に立ち直れた気がする。他者への先入観を捨てる、失敗したときにも素直に自分の非を認める、など。
読者が子供だったなら、今信じている考え方は間違っていないことを伝えるために勧めたい。大人だったら、いわゆる「綺麗事」と言われる信念を思い出してほしい、捨ててはいけないということを伝えるために勧めたい。
この本に共感できるところは、正直ほとんどなかった。それは、私が大人になって子供たちの純粋な気持 -
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教師を退職して10年以上経つ小野寺徹平は,かつての教え子・萌葱が若女将をつとめるえびす温泉郷――和倉温泉郷がモデル――旅館・翁木屋で,年末年始を迎えていた。小野寺とかつての教え子とその家族たちとの避難生活が始まる。
物語の小見出しを紹介すると,「おかしも」「きのどくな」「ととらく」「おそすぎ」「ぬしや」「あめあめふるな」,そして本書のタイトルである「ここにいるよ」となっている。
「おそすぎ」は,能登の復旧・復興のスピードが遅いことに対する言葉であり,わたしも地元民からも親戚からも聞いたことがある。とくに,奥能登住民じゃない人からの方が多かったような気がする。
物語に戻る。ラポルトすずで開 -
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再読。児童養護施設「七海学園」に伝わる七不思議の噂と、実際に起こった不可思議な出来事の数々を描く連作ミステリ。学園職員の春菜は、子供たちと向き合いながらその謎の数々にも挑むことになる。厳しい世界を描きながらも、優しさが印象的な物語です。
決して児童養護施設の子供たちが不幸なわけでも可哀想なわけでもありませんが、どの子にも並々ならぬ事情があるのは事実。各々の事情を汲み取り事態解決に臨む職員や児童相談所は本当に大変そうで、しかしその分やりがいもあるのだと感じました。ただしそのやりがいをきちんと感じてくれる人でないと、大人も子供も不幸になっちゃいそうですが。
七不思議に絡んだ謎の数々も、怪異なイメー -
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凄惨な事件で家族を喪った少女の物語「ペトリコール」と、娘を喪った男の物語「ゲオスミン」の二章からなる作品。どちらから先に読むかは自由、しかしその読み方によって登場人物の運命が百八十度がらりと変わってしまう、というとんでもない物語です。
ちなみに私が読んだ順番では、とんでもないバッドエンドにたどり着きました。しかしたしかに、逆から読んでいたら救いの物語になるんだこれが……! たった一文字だけが変わることで、物語の構造もがらっと変わってしまいます。実にお見事。ちなみに、バッドエンドルートを読んでから、「ここがこうなれば救いがあったのか」って気づくのは案外としんどくないような気がしました。救いの物語 -
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地域医療を支える『いのちの停車場』シリーズの三作目です。舞台は震災が起きる前の能登。ターミナルケアに向き合う看護師の物語です。
主人公は、金沢のまほろば診療所で勤務している看護師、星野麻世。彼女は終末期医療の研修のため、半年間能登の病院で学びながら勤めることになる。そこで出会うのは、通常時の医療とは考え方も対応の仕方も異なる終末期医療に携わる医師や看護師、そして患者とその家族。よかれと思ったことが裏目に出たり、つい"普通なら"、"一般的には"こういう対応をするべきじゃないか、という、経験があるからこそ思い込んでしまいがちな思考でささいな衝突を繰り返 -
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なんらかの事情で今の暮らしから完全に姿を消したい者を、七つの約定を守れば必ず晦ましてくれるモノ……それが、くらまし屋。
花のお江戸を舞台にさまざまな人間模様を描く「イクサガミ」著者今村翔吾氏のエンタメ時代小説第1巻!→
めちゃくちゃ面白い〜!!!
一巻はヤクザ稼業から足抜けしたい孤児の万次と元武士の喜八が依頼人なんだけど、冒頭に町中の噂話→一章で依頼人の事情→二章からくらまし屋登場、という流れがとても良い。お話に入り込ませるのがうますぎる……スルスル読めたよ……。
万次と喜八がまたいいキャラなんだ
くらまし屋側も強キャラ揃いやし。尚、私は茂吉さんが好き( *´艸`)
おそらくシリーズ通し -
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山崎豊子『大地の子(一〜四)』
現在の日中関係を考えるうえで、本作は中国という国の性質を理解するための格好の教材だと言えます。中国共産党の中枢まで克明に描写できたのは、胡耀邦元総書記による取材協力があったからこそでしょう。これほど深く内情に踏み込んだ著作は、今後二度と現れないのではないでしょうか。
かつてNHKでドラマ化された際や、山崎豊子さんの著作であることは以前から知っていましたが、どこか暗いイメージを抱き、敬遠していました。そんな私が本書を手に取ったきっかけは、2024年7月の日経新聞の記事です。「中国宝山との合弁解消」というニュースに接し、「『大地の子』半世紀に幕」という言葉に強く