あらすじ
[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた──記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。寺尾聰主演の映画原作。
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Posted by ブクログ
第1回本屋大賞を獲得した有名すぎる小説。
ようやく手に取りました。
事故で80分しか記憶が続かなくなってしまった老数学者、そこへ派遣されてきた家政婦、さらにその10歳の息子、3人の単純でない関係が始まった・・・
日常生活を送ることさえ困難な老人を中心に据えていることでハプニングの予感しかしないですが、その通りに何やかんや事故・事件が起きる中でここにしかない3人の繋がりが育まれていく様子は、悲しくも温かい純文学でした。
老人と親子との関係は、人情、友情、家族愛、尊敬、様々な感情が融合した単純な言語化が難しいもので、読者に複雑な思いを抱かせ、独特の余韻が残ります。
私がひねくれているのか、良くできたストーリーの流れにやや出来すぎ感はありましたが、真っ直ぐに向き合って面白い小説ということだと思います。
★4.5
Posted by ブクログ
数字に対する知的好奇心を刺激される素晴らしい作品でした。
日常の中で扱う何気ない数字を調べてみたくなりました。
本誌の発売日である2005年11月27日を構成する数字を考えてみた。
2005=401×5、11は素数、27=3×3×3
あれ、401は素数だろうか?それとも約数があるのだろうか?いや、素数だった。
この本を読むと、こういう遊びが楽しくなる。
文学を読みながら、知らなかった世界を知れたことに感動した作品でした。
Posted by ブクログ
派手な出来事はないのに、静かに心を掴まれる物語。
忘れてしまう記憶より、失われない優しさや敬意のほうが強いのかもしれない…。
数字がまるで人の心を持っているように語られて
読み終えたあと、心に余白ができた感覚になりました。
Posted by ブクログ
80分しか記憶が持たない数学者の博士と家政婦の私とその息子の話。
記憶が続かないながらも、数字の意味を教えてもらう度に友人として距離が縮まる3人にとても温かな気持ちになった。
ところどころで説明される数字や式に、学生時代の懐かしさを覚えながら読みつつも、当時はそんなに深い意味を考えてなかったなと少し後悔。
読めば読むほど深みが増す良い作品。
Posted by ブクログ
博士と少年の純粋な愛を描いたヒューマンドラマ___
博士は数学以外のことには無関心かと思いきや、特に血の繋がっているわけでもない子ども(ルート)に対して、大きな愛情を持って接してくれる。
博士は学校の先生をしていたから、元々子供が好きだったことが窺える。
博士は数式でメッセージを伝える。
今までの家政婦からは、星が10近く(10回)ほども面倒が見れないと突き放されてしまったのに、新しい家政婦(ルートの母)はめげずに博士の数式を解こうとし、寄り添おうとする。
ルートも計算を諦めたと思ったら、違うアプローチで博士を喜ばせようとしているのだ。
私はこのシーンに強く胸を打たれた。
記憶を失くす度に、博士に対して切なさを感じたが、それでも自分の好きなことに全力を注ぐ博士には小さな希望をもらった。
終盤、時が過ぎてルートも大人になったとき、博士に数学の楽しさを教えてもらったルートが、数学の先生になるのも感動的だった。
Posted by ブクログ
泣きたいとき、誰かの優しさに触れたいときにおすすめの本です。
主人公の女性(母親)とその息子と、記憶が80分しかもたない数学に愛情のあるおじいさんのお話。
心がほっこり温まりますし、最後息子が数学の教員になったというのは、穏やかで幸せな(小説としての)結末だなと思いました。
Posted by ブクログ
主人公の家政婦と同じくらい自分が数字に魅了されていくのが心地よかった。これから何か数字を選ぶとき完全数28を選びそう。
博士とルートと主人公が野球を見に行くシーンと、誕生日会のシーンが情景がありありと思い浮かんで好き。
Posted by ブクログ
〜永遠に愛するNへ捧ぐ あなたが忘れてはならない者より〜
N(自然数)は、博士の記憶で永遠に実在するもので、事故以降に出会った私(i=虚数)は存在しないようなものだが、息子ルート(√)は私(i=虚数)を存在させてくれるものではないのかと思いました。永遠の真実は、目に見えない。そこにこそ美しさや愛があるのだと感じました。
心温まる
言わずと知れた名作。
不器用ながら愛に溢れた博士と親子の交流に、心が温かくなります。
博士の過去などを詳しく描かず、匂わせる程度なのも良かったです。
最高の出会い
主人公とルートにとって、博士はかけがえのない存在になっていく過程にほのぼのした気持ちにさせられました。毎日、会うたびに博士は二人のことは覚えていなかったけれど、丁寧に接する博士は温かい心の持ち主なんだなあ。ルートはのびのびと成長したことが窺われ、安心しました。博士と出会っていなかったら、別の人生を歩んでいたでしょう。博士に会えて良かったね。
数学が1番好きなのですごく刺さりした。
数学を入れ込むとどうしても論理的で冷たくなりがちですがこの作品は心が温まる作品です。引き続き数学を勉強したいと思います笑
ずっと気になっていた作品
かなり前から存在は知っていたのですが、なるほどこういうお話だったんですね。
博士と、男の子とそのお母さんと、3人が共に関わり合い成長していく姿に感動しました。
美しい数式
いろいろな数式や定理について調べながら読みました(結構大変)。
記憶が80分しかもたない博士を中心とした心温まる話に感動しました。
良い本に出会いました。
日向坂46の小坂菜緒さんが推していたので読んでみたのですが感動しました
スラスラと読みやすく、情景が頭をよぎります。
昭和生まれの私にはどこか懐かしさを感じる部分もありました。
やさしい
数字を、数式を、数学を美しいと初めて感じられた。私は終始ゆったりとした空気感を感じながら読みすすみましたが、読み終わるのはあっという間でした。
匿名
作者は数学の美しさに対して、心をひかれていて、それを博士を通して表現しています。
博士と家政婦とその子供との交流はとても暖かいものを感じます。
博士は長時間記憶を保つことができません。それは、異形なものであり、そのような不具者を描くところに作者の真骨頂があります。
この作品では不具者を描いてもグロテスクにはならず、それが一般受けしたのだと思います。
Posted by ブクログ
「博士の愛した数式」と過去形になっているように、また"私"が時々回想するように語るのでどこかの時点で博士なる人物がいなくなることは予想していた。でもその消失は心に重く刺さるものではなく、流れの中の必然と受け止めることができた。
日々の彩りをこんなに鮮やかに描けるものかと感嘆してしまう。数字を通したつながりは彩りに満ちたものだった。残念ながら私は数字に弱く、計算なんてもってのほかな人間であるので計算式や数字の関係性について、美しさを見出すことが出来なかった。そしてまた野球に対しての情熱も数字と同じような熱量である。それでも博士と私、ルートのと間にあった偶然の数字達はかけがえのないものだった。
Posted by ブクログ
「数字は世界共通言語」ということを思い出しました。
3人の心温まるヒューマンドラマの種として、数学が輝きます。
数式はたくさん出てきますが、数学に明るくなくても読めます。
ただ、数学に興味がある人の方がより面白い作品であると感じられるかと思います。
Posted by ブクログ
記憶が80分しか持たない、数学を愛した博士と、家政婦として働く女性、その息子であるルートの物語。
特に博士とルートの関係性に心が暖かくなりました。
そして、博士が純粋に、数式が大好きなんだなという気持ちがひしひしと伝わってきて、人生でこんなに愛するものがあるって、すごく幸せだなと感じました。
Posted by ブクログ
物事の本質の重要性に気づかされ、
数式の魅力に惹きつけられた。
オイラーの公式:複雑なことは、+1で静寂になる。自分も扱ってきた数式だが、とても納得する表現であった。大人になりつつある今だからこそ、疑問を抱く気持ちを忘れずに生活していきたい。
Posted by ブクログ
80分の記憶しか保てない博士と家政婦の私、その息子「ルート」が織りなす日常が静謐に描かれていた。会うたび0からリスタートする関係性に毎回胸を締め付けられるけれど、「永遠の真実」である数式が見えない何かを証明し痛みを温かく照らしてくれる。忙しない現実世界でもこういうゆっくりとした繋がりや今この瞬間を大切にしていきたいなと思えた。
Posted by ブクログ
記憶が80分しか持たない数学者とその家政婦とその息子のお話。
博士とルートの関係がとても好き。優しさで溢れている。
記憶が80分しか持たない博士の人生は辛いものがあるかもしれないが、ルートとの出会いは忘れてもなおまた築ける関係性がとてもいい。
数学は苦手なので、定理とか数式の話はよくわからない。数式を見てもそれが美しいとはどういう意味なのか、やっぱりわからない。
でもこのお話は終始優しさでできていて、美しいお話だったなと思える。
第一回本屋大賞受賞作。
Posted by ブクログ
博士と義理の姉がどういう関係だったのかや「ルート」がどういう人間だったのかなど、引っかかったままの部分もあるが、そこは本筋ではなかったのだと思う。
博士が見ていた数字という真理の世界の一端を垣間見ることができて面白かった。
Posted by ブクログ
本屋大賞受賞作。全体を通して、博士の魅力に溢れた一冊でした。80分しか記憶が持たない博士と数学やタイガース(江夏)の話題を通じて交流を深めていくさまが、微笑ましかったです。博士とルートがタイガースファンであり、過去の名選手たちの名前が登場する中で時代を感じました。
Posted by ブクログ
数学。大嫌いだった。学生時代それはもう、本当にひどい成績。
それでもこの小説を読んでいて、数学の美しさに触れた気がする。
しかもそれだけではない。鬱陶しくも愛らしい80分しか記憶を持てない「博士」と、家政婦の「私」、その息子「ルート」が紡ぐ友愛が心の中にジワジワと染み入ってきて、気づけば心がフワフワ軽く柔らかくなったような、そんな感覚になっていた。
とはいえ、数学がテーマ。ドキドキもハラハラも、号泣するようなシーンもない。
それでも読み進める度に静かに、疲れた心が癒えていく。
そんな、とても素晴らしい物語だった。
Posted by ブクログ
帯に、「270万人が泣きました。伝説の第1回本屋大賞受賞作」とある。本屋大賞の最初の受賞作であり、映画化もされ、270万部を売り上げている作品ということは、傑作と言ってもよい。私は映画を観ていないが、博士は寺尾聰、家政婦は深津絵里が演じた。
家政婦はシングルマザーで、博士は、子供の名前に、頭の形が数式の√に似ているからルート君と名付ける。博士は数学博士だが、交通事故で記憶が80分しかもたない。この記憶障害があることから、家政婦は色々と難しい対応を迫られる。しかし、この家政婦がとても優しいので博士は幸せに生活できる。この作品の特徴として、博士の専門分野である数学が物語を引き締めている。博士は家政婦の子供ともプロ野球の阪神タイガースを通じて仲良くなる。
物語に馴染むのが難しそうな数学という博士の専門分野が、物語を豊かにしている。数学と文学という相容れなさそうな分野を融合し、博士の記憶障害という大きな特徴が、作者小川洋子という優しい文学者の筆致で表現されて初めて、物語として素晴らしい出来栄えになっている。
Posted by ブクログ
小川洋子さんらしい、静かで少し哀しくて、優しい物語。
ページ数が少ない本なんだけど、博士との温かい交流が細やかに描かれていてとても良かった。
ラストシーンにジーンとくる。
Posted by ブクログ
美しさ 理系ではありましたが数学は得意ではなく、生物が好きでした。特に分類学、植物と動物の境界線なんかに興味を持っていました。そういった内容に数学は必要ないように感じますが、数学が関係しない領域がないこともうすうす感じています。
私には愛した数式はありませんでした。なかなか面白いタイトルだと思います。「博士の愛した数式」、とても美しい作品だと思いました。小川洋子さんの他の作品も読んでみたいと思いました。
80分しか記憶がもたない博士と、家政婦とその息子のお話です。記憶がもたない絶望や儚さが前面に出てくるのではなく、それを補い支え合う美しさを感じました。数学や音楽は緻密な計算のなかに美しさが存在しています。その、美しさが人間の美しさにも共鳴し昇華されていった結びの数ページには涙しました。とても良い作品でした。
匿名
あたたかいの一言
博士の切なさと家政婦さんのあたたかさを感じられるお話。読み終わった後に温かくなりたい人はこの本を読むべき。読み終わりまでルートと書いているところが個人的に好きだった。
Posted by ブクログ
数学や算数が苦手だった方も楽しめる一冊です。おもわず、一緒に計算をしたくなる、その数式本当か??と気づいたら手元にあった紙で数字を書いてします!
私は感動というより、心が温かなる話しでした。
Posted by ブクログ
期待をし過ぎたかな。
数の世界をそこまで楽しめなかったのが理由か。
ストーリーもほとんど登場人物も多くないので意外性がないように感じる。
みんなはどこを読んで高評価だったのか気になる。
どこか僕の理解できていない部分で興味深い部分が他にあったのだろうか。
決して面白くなくはないのだが、世紀の傑作と呼ばれるほどではなかった。
理系の人ならもっと楽しめたのかも。
Posted by ブクログ
80分しか記憶がもたない数学者と、家政婦とその息子の絆を描いた物語。派手さはないけど、3人がそれぞれを自分の方法で愛し思いやる姿は心うつものがありました。数の話も面白かったけど、オイラーの公式だけ何を伝えたかったのか読み取れず。。読み飛ばしたかしら。。笑
Posted by ブクログ
家政婦をなりわいとしながら、シングルマザーとして10歳の子供を育てている。派遣された先で出会ったのは、80分しか記憶がもたない数学の博士。だから、毎日の挨拶は初めましてで、博士はきまって、数字のことを訊ねる。「君の靴のサイズはいくつかね」「電話番号は」「誕生日は」「生まれた時の体重は」そして、返ってきた数字の秘密を語る。「4の階乗だ」「一億までの間に存在する素数の数に等しい」「友愛数」「完全数」……。80分ごとに記憶がリセットされる博士と、博士にルート(どんな数字でも嫌がらず自分の中にかくまってやる。実に寛大な記号)という愛称で呼ばれる子供とともに、博士の家で過ごす日々。野球観戦にゆき、病気の看病をし、誕生日を祝う。困難なことの多い日々の中、ささやかな幸せを感じている間に、博士の病気は進行する。
博士は、47歳の時の事故がなければ、数学者として栄誉ある地位についていたかもしれず、また、母屋に住む義姉への恋も成就させていたかもしれない。家政婦もまた、かつて自分を捨てた男(息子の父親)が、なんらかの賞を取ったことを知るところから、たとえばノーベル賞受賞者の妻という地位になった未来も、あったのかもしれない。が、現在の二人は、ぼろぼろの離れで暮らす、ふけだらけの、数学の懸賞に応募することぐらいしかしていない非生産者であり、子供を育てるために、派遣され、雇い主の気分をそこねぬよう働く家政婦である。そんなところで、博士は目をキラキラさせて数字のことを語り、そんな博士を母子は尊敬し、大切に思っている。人を思いやるというとても崇高で、美しい気持ち。博士にプレゼントするため、野球カードを探す母子と、それを受け取ったときの博士の様子。今さらだが、この世でもっとも尊いものを、見せていただいた。そして、映画は見ていないけれど、寺尾聰の博士が目に浮かんだ(はまり役!)。
Posted by ブクログ
本屋大賞をとり、SNSでも高評価で口を揃えて号泣ものだと書かれていましたが私は全くでした。
私が数学が苦手でも物語の素材の一つだろうと読み始めたのですが、野球にも興味がない私にはマイナスからの出発で感動までには行きつきませんでした。
Posted by ブクログ
短時間しか記憶を留めることができない老いた数学者(博士)と、彼の身辺のお手伝いとして雇われた女性、そしてその子供の交流を描いた小説。お手伝いの女性を語り手として話が綴られている。
過度に伏線を張ったり、ドラマチックな演出をすることなく、淡々と物語が進行する。印象に残ったのは、博士がオイラーの等式が書かれたメモで、語り手の女性と博士の義姉の口論を収めるシーンである。この解釈は読者に委ねられているが、様々な分野の数学が一つの式の中に調和していることを示して、互いを尊重するように諭したのだろうか。我ながら、ちょっと安易すぎる解釈な気もする。。
数学者の岡潔氏は、「春宵十話」という本で、数学には情緒が重要と説いていたが、その情緒を描こうとした作品なのだと思う。
Posted by ブクログ
家政婦として訪れた先で出会ったのは曲者の老人。私は数学者である彼を「博士」と呼んだ。かつての事故の影響で記憶に障がいを抱える彼と次第に距離を縮めるが…
これはそんな博士と私たち親子の心温まる物語
第一回本屋大賞受賞作という事で気になり読み始めました。
数学者が生涯を捧げるほど魅了される数の世界。その中に点在する美しさは自分からは縁遠いかけ離れた世界のもので一回読んで理解できるものではなかったですが、物語を通して博士が人生の中でどれほどまでに数の世界を愛し没頭したのか、そして彼が培ってきた子供への無償の愛の形を知ることができました。
博士と私とルートの3人。互いが互いを思いやる気持ちに心を温められると同時に博士のような先生に算数や数学の面白さを教わりたかったと月並みに思いました。
問題の難易度に関わらずフェルマーの最終定理が証明できた時ほどの賞賛をくれる先生、子供にとっても大人にとっても理想の指導者です!