あらすじ
[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた──記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。寺尾聰主演の映画原作。
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Posted by ブクログ
静かに、穏やかに、琴線に響く物語だった。
「私」とルートと博士との間に流れる時間と情景が読書中の私自身を癒してくれました。
ルートをおんぶしての帰り道の場面で、
幼いころ、お祭りの夜店で大はしゃぎしすぎて疲れて眠くなった私をおんぶしてくれた亡き父を思い出した。
父におんぶされた記憶は後にも先にもあの時だけ。嬉しくて、ずっとこのままでいたくて起きていたけど寝たふりをしていた私。
あったかくて大きな父の背中。
博士が父と重なって泣いてしまった。
博士が走らせる鉛筆の音、ルートがチラシの裏を使おうとめくる音、夕飯の支度の音、かすかに流れるラジオの音声、優しく長く差し込む夕陽。幸せってこういう事なんだろうと心から思った。
博士が施設で暮らすようになってからの、「私」とルートの面会の描写もまるで自分がその場にいるようで、心穏やかになっていった。
読後、溢れかえる情報を絶って
この幸せな感覚にただ浸っていたいと思った作品でした。
Posted by ブクログ
博士とルートの間の愛情、家政婦の博士への恋愛とはまた違う愛の形がなけました
数学は全く好きじゃないけど、数の面白さを少し理解できました
Posted by ブクログ
博士と少年の純粋な愛を描いたヒューマンドラマ。
博士は数学以外のことには無関心かと思いきや、特に血の繋がっているわけでもない子ども(ルート)に対して、大きな愛情を持って接してくれる。
博士は学校の先生をしていたから、元々子供が好きだったことが窺える。
博士は数式でメッセージを伝える。
今までの家政婦からは、星が10近く(10回)ほども面倒が見れないと突き放されてしまったのに、新しい家政婦(ルートの母)はめげずに博士の数式を解こうとし、寄り添おうとする。
ルートも計算を諦めたと思ったら、違うアプローチで博士を喜ばせようとしているのだ。
私はこのシーンに強く胸を打たれた。
記憶を失くす度に、博士に対して切なさを感じたが、それでも自分の好きなことに全力を注ぐ博士には小さな希望をもらった。
終盤、時が過ぎてルートも大人になったとき、博士に数学の楽しさを教えてもらったルートが、数学の先生になるのも感動的だった。
やさしい
数字を、数式を、数学を美しいと初めて感じられた。私は終始ゆったりとした空気感を感じながら読みすすみましたが、読み終わるのはあっという間でした。
匿名
作者は数学の美しさに対して、心をひかれていて、それを博士を通して表現しています。
博士と家政婦とその子供との交流はとても暖かいものを感じます。
博士は長時間記憶を保つことができません。それは、異形なものであり、そのような不具者を描くところに作者の真骨頂があります。
この作品では不具者を描いてもグロテスクにはならず、それが一般受けしたのだと思います。
Posted by ブクログ
文章と物語の運びが丁寧で読みやすい。
内容もほっこりして心あたたまるお話!
数学も野球も全然興味ないけど楽しんで読めた。
ルートが素直ですごく可愛い。
ただ、ハートフルな内容だが…家政婦の主人公が公私混同し博士に世話を焼きまくっているけれど、結局それはどうしてなの?
っていうのは少し思っていた。
博士が子ども好きで、ルートをとにかく可愛がったから主人公もルートも彼を信頼できたっていうことかな…。
博士を野球の試合に連れてったり、一緒にパーティーを開いたり、江夏の野球カードをめちゃくちゃ探しまわったり。
フィクションだからもちろん有りなんだろうけど、そこまで主人公とルートが彼に惹かれる決定的な理由とか印象的なエピソードがあったら個人的には納得できたかもしれない。
まあでも、そういう決定的な理由がないのは逆に小説の醍醐味な感じもするし、この物語のふんわりとした雰囲気に合っているのかも。
未亡人が最終的に協力的になってくれるのは個人的にちょっと好きなところ。
Posted by ブクログ
大変心温まる物語でした。博士はただただ純粋に子供を慈しみ、数学を愛しており、主人公の私もただひたすら優しい穏やかな心をお持ちで、ルートも小学生に似つかわしくないほどの利口っぷり。三者がおりなす尊くも儚い美しい物語は、全ての読者の琴線に触れること間違いなしだと思います。その尊さを担保したまま、最後までその雰囲気を貫き、その後を書かれなかったのがとても良かったです。読後感は非常に快いものになりました。
匿名
あたたかいの一言
博士の切なさと家政婦さんのあたたかさを感じられるお話。読み終わった後に温かくなりたい人はこの本を読むべき。読み終わりまでルートと書いているところが個人的に好きだった。
Posted by ブクログ
柔らかい小説、という感じ。
何かを強く訴えかけるテーマというより物語という感じだったので、感想を言語化するのが難しいが、最後の解説を見てヒントとしたい。
記憶が80分しか持たない、数学者、シングルマザーの家政婦、秘密のありそうな未亡人、阪神タイガースという様々な要素が上手くまとまって物語になっている。
昔の阪神タイガースのことがわかればもっと楽しめそうかも。
終わり方の余韻の残し方が上手いのは好きだと思った。