あらすじ
[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた──記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。寺尾聰主演の映画原作。
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Posted by ブクログ
数学で結ばれる、記憶を保持できない博士と家政婦と息子の温かい日常の日々。
数字は見方を変えて、隠れた法則に気づくことで、有機的で意味のある詞となる。そして、それを愛しそうに教えてくれる博士が好きになった。
まるで自分も4人目として博士と机を並べている気分になる。
博士の日々が幸せで本当に良かった。
Posted by ブクログ
数学はよくわからないから、博士が丁寧に説明してくれるからありがたかった。
220と284は友愛数という、じっくり説明を読み理解して、なんかわからないけど、わぁー素敵と感じた。
✳︎自分自身を除いた約数の和が、互いにもう一方の数になる最小の「友愛数(親和数)」のペア✳︎
博士もルートも家政婦さんも、優しくて、素敵な話。
ずっと心があたたかくなる話でした。
義理のお姉さんは義弟をうとましく思っているのかと思ってたけど、そうではなかったことがわかり、切ない気持ちと、よかったという気持ちが両方。
Posted by ブクログ
帯に300万人が泣いた!とデカデカと下品に書かれており、なんだこれと思ったのが最初の印象。
見事に覆された。
あまりにも儚くて、脆くて、切なくて美しいお話しだった。それでも確かに存在していた関係に、静かに心を打たれた。
記憶が80分しかもたない博士。
シングルマザーの家政婦と、その息子・ルート。
三人が、数学と阪神を通して、静かに関係を結んでいく物語。
小川洋子さんの描く「数学の美しさ」に心酔していく登場人物たち。そのまなざしや、ふとした仕草に宿る感情の揺らぎ。ものや人の機微を、ここまでやさしく、繊細にすくい取れるのかと、ただ圧倒され続けた。
博士は子どもに対して決して上から教えない。大人の権威を振り翳さない。しゃがんで、同じ目線で、同じ世界に立とうとする。理解させるのではなく、共有しようとする姿勢。だからこそ、数学は教えられるものではなく「一緒に見つける美しさ」になる。
家政婦は物語の中心で光を浴びる存在ではない。名前も最後まで明かされないし、見た目の描写も無い。けれども、博士の繰り返される言葉でさえも大事に受け止め、博士の出題する数学の問いに対し必死に向き合い、美しさに気づいたときの素直な反応が、博士の世界にやわらかな陰影を与えている。その家政婦の純粋なかわいらしさは素敵だなあと思った。
博士、家政婦、ルートの3名の関係は、家族愛、恋慕の愛、友愛でもどちらにも当てはまらないのに、こんなにも美しい関係があるのかと思った。
博士は初めから息子ルートに対してはとっても優しいが、家政婦に対してあまり興味が湧いているように見えない。
しかしながら、家政婦の二度目の雇用でふいに訪れるあの場面。
これまで数学にしか関心がないかのように、常に思索の中にいた博士が、料理をする家政婦の姿をただ静かにじっと見つめている。
そして告げられる。
「君が料理をしている姿が好きなんだ」と。
記憶に残っているはずもないのに。
それでもなお滲み出る想いに触れた瞬間、張りつめていたものがほどけ、涙が溢れた。
理由もわからず、記憶にも残らないのに、ただ見惚れてしまういう。その純度の高さに、少し怖くなるほどだった。
一つ、物語の中で好きな表現として、「犯したミスの小ささと博士の背負ってる罪の重さがいかに不釣り合いか」とあった。測れないものを無理やり測ろうとする美しさと怖さ。人の認知の難しさ。
そして最後。理由は説明できないが、ただ涙が溢れた。理解されなくてもいい、覚えていなくてもいい。ただその瞬間、寄り添えたことに意味があるのか。
また藤原正彦さんの解説も素晴らしく、物語に深みを更に感じさせるのである。是非皆様一読あれ。
Posted by ブクログ
とても気持ちの良い終わり方だった。言い方がうまく見つからないけれど、余分な涙を流す必要がなかった。
本名や、未亡人と何があったのか明かされないところなどからも、この物語はこの厚みで、この文字数で100%なんだなって勝手に感じた。愛情、寛容、数学の面白さ、など、たくさんの喜びを感じる読書体験でした。
Posted by ブクログ
阪神ファン必読。作中に出てくる選手の中で、現役時代を知らない選手もいるものの、作中に阪神の話がたくさん出てくるので特に興味を持って読むことができた。逆に言うと、私は学生時代数学に苦手意識を持っていた。そんな私でも、数学というものの面白さの一端を垣間見ることができた。映画の宣伝などで「80分しか記憶の持たない博士」の要素が強調されていたが、それはこの温かい話のための一要素であり、親子とこの博士の数学を通じての温かいやりとりに心がほっこりするそんな話だった。決して悲しい話でなかったのが良かった。
やさしい
数字を、数式を、数学を美しいと初めて感じられた。私は終始ゆったりとした空気感を感じながら読みすすみましたが、読み終わるのはあっという間でした。
匿名
作者は数学の美しさに対して、心をひかれていて、それを博士を通して表現しています。
博士と家政婦とその子供との交流はとても暖かいものを感じます。
博士は長時間記憶を保つことができません。それは、異形なものであり、そのような不具者を描くところに作者の真骨頂があります。
この作品では不具者を描いてもグロテスクにはならず、それが一般受けしたのだと思います。
Posted by ブクログ
記憶が持たない博士と家政婦とその息子の話。
数学と阪神タイガースで繋がった3人は家族ではないが、優しい愛に包まれていた。
純粋なルート君や、2人から貰ったカードをぶら下げている博士が可愛かった。
最後にはその数学に魅せられたルート君が数学の教師になったのも良かった。
江夏の背番号が完全数であるというのがこの物語をより一層面白くしているテーマである気がした。