小説・文芸の高評価レビュー
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ネタバレ①むむむ、難しい⋯長岡さんのセリフが⋯私は頭の回転が遅いから、会話をしたら長岡さんに見下されるんだろうな、と、苦手意識を抱きながら読んだ。社会問題に強い憤りを持ち、怯まず世間にそれを訴える。恋人や家族という最も親しい人とへの熱量と、被害者やマイノリティ等の不利益を被っている人たちへの熱量が同じで、そういう人たちを助けることに労力を惜しまない。その必死さがなんだか痛々しくなってきて、憧れや尊敬と同時に、疎ましさの感情も沸き起こる。私は横山さん寄りの人間だけど、長岡さんのような人とは付き合いたくはないな⋯と。遠くで、あの人スゲーと言ってるくらいがちょうどいい。
②長岡さんがムエタイに惹かれ、五松に -
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ネタバレ面白いというか、楽しかった!
最初は重たい始まり方だったけど、ジャバウォックという架空のちょっとモンスター的要素と愉快なキャラ達が物語を和らげミステリーがだんだんユーモア溢れるファンタジーになっていって、ほぼ一気読みしてしまった〜後半の亀がルーシー夫妻に送られてきた時のスイッチが入る感じ、たまらん!桂凍郎の思惑がわかった瞬間、でもその上をいくラスト、面白い作品が多いからこそ厳しいレビューが多いけど、私は大満足でした。
あと、物語の展開だけじゃなくてちゃんと考えさせられる部分もあって今の時代にも則していた気がする。桂凍郎の「人が難しいのは、種と同じぐらい個も重要に感じているからです」っていうセリ -
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「今から10年後くらい先の話」ではじまる。
自分の事務所に帰れなくなった探偵の話。
仕事、生活が淡々と語られていく。
滞在先の事務所もだけど、自分の国にもある事情から帰れていない。
よくある「探偵モノ」とはちょっと違う。
依頼任務や生活が描かれているが
探偵の仕事である秘匿性から、どこの国の仕事なのかなどが明記はされておらず断片から想像するしかない。
探偵連盟から任務を課され淡々とこなしていく、探偵は一箇所にとどまることはなくどこにいっても異物として存在する自分、帰れない国、自分が帰りたいのかもわからず、仕事も何故今ここで自分がこの仕事をしてるのかも揺らぐ
ずっと旅をしている。漂っている。 -
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やはりツナグは、辻村さんらしい作品だ。
大切な人の死というショッキングな出来事について語りつつも、最後は温かく希望の見える終わり方で締められている。読者も含めて誰もが経験する出来事だからかもしれない。
毎回尊敬するのは、連作短編という短さで登場人物それぞれのケースについて深く掘り下げて、しっかりと着地していること。
時々うまく行き過ぎてご都合主義的な展開に感じることもあるが、すべて使者に繋がることと同じ「ご縁」によるものだと思えば、本作においては不思議な力が働いたのかもと納得してしまう。
前作の7年後、使者としても社会人としても成長した歩美。
本作を読み終えてから前作を思い出すと、あの頃 -
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前作の『星くずの殺人』から帰ってきた女子高生にスポットを当てたストーリー。今回は金閣寺を皮切りに京都が大大大炎上し、周(あまね)がその事件を追いかけていく。
本作のスポットライト…テーマも重めだった。
マイノリティを叩くマジョリティという構図。マジョリティはマイノリティを助けるべきだという構図。マイノリティはマジョリティに迷惑をかけないようにすべきだという構図。
この世界は多数派に合わせて成り立っている。
読んでいて、痛いほど感情移入ができたし、有数の観光地でもある京都が炎上する場面は応仁の乱さながらだった。
次回作が出るとしたら周が大学生になった後になるのかな?楽しみ! -
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ネタバレ戦争やテロ、災害などでたくさんの人が亡くなる悲しい出来事が起きたとき、私たちはつい、その出来事の大きさを「量」で測ろうとしてしまう。十万人が亡くなった、数百万人が被害にあった――そんな数字のインパクトで、悲劇の大きさを捉えようとしてしまう。
『人質の朗読会』は、冒頭で「テロによって人質に取られていた8名は全員亡くなった」と告げられるところから始まる。彼らの死後に発見された、朗読会の様子を収めた記録テープがラジオで放送されることになり……という導入で、読者は最初から「登場人物のいく末」を知らされたまま、物語を読み進めていくことになる。
そこで強く感じるのは、「彼らは確かに生きていた」という、 -
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ネタバレ伊藤計劃の長編の素晴らしいところは、「人間を人間たらしめるのはなにか」という本質を突きながら、常に“社会的生物としての人間”という集団にフォーカスしている点だと思っています。
長編第一作『虐殺器官』では、「言葉」が虐殺のための臓器として描かれていました。デマ、欺瞞、対立──それらは言葉によってもたらされ、人間は集団の中でいかに安易に誘導されうるか、その危うさが描かれていたように感じます。
今作『ハーモニー』では、大災厄を経た後の社会が、WatchMe に代表される総監視社会・究極の合理社会として描かれ、その中に生きることについての思考実験のような要素を強く感じました。WatchMe による