あらすじ
【2024年本屋大賞翻訳小説部門第1位】
完璧な人生なんてないけれど、「これでいい」と思える今日はある。
ネットで人気を博し韓国で累計25万部(2023年9月26日現在)を突破した、心温まるベストセラー小説!
ソウル市内の住宅街にできた「ヒュナム洞書店」。会社を辞めたヨンジュは、追いつめられたかのようにその店を立ち上げた。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコーヒー業者のジミ、無気力な高校生ミンチョルとその母ミンチョルオンマ、ネットでブログが炎上した作家のスンウ……。
それぞれに悩みを抱えたふつうの人々が、今日もヒュナム洞書店で出会う。
新米女性書店主と店に集う人々の、本とささやかな毎日を描く。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
本屋を題材にした本を初めて読んだ
文章が優しくゆっくりで、読んでいる時間が癒しになるくらい素敵な本だった。
本屋に関わるいろんな人物が悩みを抱えていて、韓国の社会的背景とも関わりが深い。そんな中で独立系書店を始めた主人公は、周りの人にとって癒しとなり希望となる存在になったのではないか。
自分も本屋を営みたいと思い本屋の構想を始める。開店は夢の中で…
Posted by ブクログ
繊細な心を持つ優しい人たちが、お互いを思いやって前に進んでいく様子に、私の心もほぐされて、前向きになれる。独立系書店を開いて育てていくというのも、本好きとしてはたまらない。作中で言及される作品たちも気になって、読みたい本リストがまた増えていく。
Posted by ブクログ
仕事で疲れ果て、毎日涙が止まらず社会生活を少しお休みしていた時に読みました。
とにかく共感できるんです。好きなことが見つからない高校生から一度も正社員になったことのないおじさんまで、ヒュナム洞書店で巡り会う人達それぞれの悩みや感情の変化に、私自身も同じものを感じました。「これでいいんだ」と心の落ち着く場所を見つけたような感覚です。
著者は勿論、訳者の筆力もあってこそ、言語の壁を超えて響くものがあるのだと思います。実際に読んでいて、今の自分を肯定してくれるような表現が沢山あり、この一冊で付箋を沢山消費しました。
またいつか、どうしようもなく疲れてしまった夜に何度でも読み返せるよう、ベッドのすぐ傍に置いておこうと思います。
Posted by ブクログ
国としてみる韓国やメディアに出る韓国の人たちは正直好きになれない部分が多いのに、本だとどうして素敵なものを作る人が多いのだろう。起承転結があるわけでもなく、淡々とでも温かな空気を纏って進む物語は疲れた自分にじんわりと沁みた。絶対的な正解があるわけではないけれど、自分で考えて、心が出した答えて進む素敵さ、読み終わるとよい余韻が響く。
Posted by ブクログ
もし中学生になった子どもに推薦したい本をいくつか選ぶ機会があったら、そのうちの1冊に選ぶかな。
人生に弱気になった時、そっと寄り添って読み終わったころには大丈夫と思える本。
心地の良い居場所があるということが人生において本当に大事なんでしょう。
登場人物がみんな誠実で、メモしておきたい言葉がいくつかあり、親子の距離感もある程度は大事だと再確認。
日本の本なのかな?と思うほど韓国と日本の状況や感性に違和感がなかった。
あえて言うなら登場人物の名前になかなか馴染みが持てず、しばらく時間があくと、この人だれだっけ?と前に戻ることがあったのでもう少し登場人物の説明文が充実しているとよかったかな。
心地の良い読書時間でした。
Posted by ブクログ
一度しかない人生を、どうやって過ごすか
今の自分をどのように見るか、評価するか
怒涛のエネルギーと時間が渦巻く日々の中で、
少しだけでも自分のために穏やかな時間を使う時があっても良いのではないか
スタート地点から少し前へ進めれば、その位置が他の人と比べてかなり進んでいるのか、少し進んでいるのかなんて、どうでもいい。
スタート地点から離れていることが大事。
この本は、自分の人生への価値観や、これからやってくる人生の様々な壁への向き合い方を教えてくれた気がする
Posted by ブクログ
暖かくて優しい作品。今の自分と重なってる部分が多すぎて、何回もびっくりしました。まるで自分に話してるみたい。
忙しすぎて休むことを忘れた人に、「休んでいいよ」を言う。好きを見つからない人に、「焦らなくてもいい」を言う。過去に囚われ、前に進むのを怯えてる人に、「一歩進んでみない」を言う。
今でもいいんじゃない?
今日は眠れなかった夜、だからずっと積んでいるこの本をもう一度読み始めた。読んでよかったです。
Posted by ブクログ
物語の前半はヒュナム洞書店を始めたヨンジュの日常が淡々と語られ、特に大きな出来事は起こらない。登場人物は店主のヨンジュ、バリスタのアルバイトのミンジュン、常連客のジョンソ、高校生のミンチョル、ミンチョルの母、コーヒー焙煎士のジミなど。次第にそれぞれの過去が少しずつわかってくると、会話の言葉が意味を持ってくる。
後半、作家のスンウが登場すると物語は展開し始め、それぞれの関係も深まっていく。
この小説には、人が自分の人生を生きるとはどういうことか、幸せって何なんだろうとか、幸せに生きるには何が必要かとか、何かとても大事なことが書かれているような気がする。
韓ドラもよく見るのだけれど、時々見ていて涙が止まらなくなることがある。それはセリフがあまりに真に迫っていて、私が普段心の中で思っていることや感じていることをはっきりした言葉にしているから。
この小説では(韓ドラの激しい言葉とは違って)何げない言葉で表現しているけど、人間の本質みたいな面をついているような気がした。
自分の気持ちにきちんと向き合うこと、それが大事。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ良かった。
これからも折に触れて読み返すような1冊になりそう。
面白い本ではなく良い本。
人生への向き合い方、自分を受け入れ肯定するということ、礼儀を持って人に接し信頼し合える関係を作ること。
そんな大事なことが詰まってる。
本屋が舞台で、本を読む人なら共感できる描写が多いのも良かった。
作中で読んだ本の内容を忘れることについて、“記憶を超えたところに残る”というような表現をしていて、私も忘れてしまう人間だからわかるという共感と同時に安心もした。
働くことのしんどさと楽しさのバランスや、期待を寄せてくる家族との距離感などに主人公たちが悩みつつ“今の”正解を見つける過程が、その心の動きの描写がとても丁寧で秀逸で共感の嵐だった。
自分の“これでいい”を私も探したい。
そしてそれを大事にしたいと思う。
Posted by ブクログ
最初は日常の変化のない話でしたが、読み進めていくと、仕事の事や経済のこと、韓国の文化…生活圏が変わっても、同じような紆余曲折や、人としての気遣いやプライド、謙虚さなどが見れて新鮮でした。
この本を読んで、自分を大切にすることを真剣に考えさせられました。自分が傷つく事も受け入れた中に、他人との関係性があるんですね。
書店のオーナーのヨンジュの「根を下ろす」事ができたら、とても豊かになれると思うけど、蛇行してる道があるから、幸せの感動も日常に感じるんだなと思わせられた本です。ジワジワっと「違っても良いんだな」と温かい気持ちにさせられました。
Posted by ブクログ
どこか懐かしい街並みの町。そこに新しくできた書店に、世間の考える「理想像」から外れてしまった人たちが、ひとり、ひとりと次第に集まってくる。
脱落、挫折、失敗、後悔、自己嫌悪、怒り、無気力。
生きづらさはそれぞれの心の中に充満している。
でも、自分が自分でいるだけで認められるような雰囲気が心地よくて、みんながなんとなく集まっているうちに、自分も自分を許容できるようになる。
私もヒュナム洞書店で過ごすうちに、心がすこし解けたような気がした。真心を持って現在を過ごし続けたいな。
Posted by ブクログ
去年買った本。積みに積んでた本。たくさんの言葉が刺さった。自分の人生に、自分の居場所に答えなんか出さなくていい。今読んで本当によかった。素敵な本でした。
Posted by ブクログ
ようこそ、ヒュナム洞書店へ
韓国の作家の方が書かれて本をはじめて読んだ気がします。
ヒュナム洞書店は郊外の住宅地にあります。通りすがりに入るような書店ではなく、ここに行くことを目的とした人しか来ない書店です。あることがきっかけでこの書店を開くことになった店主のヨンジュが、ひょんなことからそこでコーヒーを淹れる仕事を引き受けることになったミンジュンをはじめ個性的な人たちと交流しつつ、書店を独り立ちできるようにするための過程を描いた小説です。
韓国ドラマを見たり、仕事で関係した人たちの話をきいたりすると、韓国が通貨危機によりIMFから支援を受けた時期に人々受けたダメージはとても大きかったことは知っていましたが、この本を読んで今でも尾をひいているのだということがわかりました。
日本の社会もどんどんと生きづらい社会になってきていますが、日本よりも儒教思想が強い韓国ではとても生きづらい状況なのだろうな、特に女性は・・・と実感できました。
そんな状況の中でも、自分なりの幸せを求めて努力しつづける登場人物たちに共感しながら、少しでも幸あれと願わずにはいられませんでした。
村上春樹氏のエッセイにある「小確幸」を大切に日々を暮らそうと改めて思った竹蔵でした。
竹蔵
Posted by ブクログ
とっても良かった!
1冊の本の中に日々の読書術や本を読む余裕がない社会についての問題提起、人生哲学や家庭内のモヤモヤなどが凝縮されていました。
初めて韓国の小説を読みましたが、作中人物の悩みや考え方の癖など共感できるところが多くて、名前以外で「外国」を感じませんでした。
翻訳者さんのおかげで文章にもひっかかることなく読みやすかったです。
Posted by ブクログ
読んでいると、心の中でゆったりと穏やかな時間が流れるようで、とても好きな本になりました。
休んで、ゆっくり時間をかけて人生を歩んでいいんだよって思わせてくれる。
今の自分にぴったりの優しい本だった。
また読みたい。ちょっと疲れてしまった時、また絶対に読みたい。
・たとえ愚直に見えても慎重に一歩一歩歩んでいけば良いのだ
・本を読むと、誰かのそばに立てるようにしてくれる
・自分は未熟な人間だという思いにばかりとらわれないようにしよう。
未熟な自分もまだ、善い行動をとったり、善い言葉を口にしたりできるんじゃないか。
情けない自分も、ごく、ごくたまには良い人になれるんじゃないかって。
・各自の人生を引っ張っていくのは、
各自の選択なのではないか。
・自分がこうやって生きているのはどうしようもないこと。
堂々とすること。
自分にとっていいように考える力。
自己正当化する!
・どんな展望もほんの些細なことから始まるの。そしてついには、それが全てを変える。たとえば、毎朝あなたが飲むリンゴジュースとかね
・信じようと思う人の言葉を信じたら良い
・本の中の人の座右の銘
「すべてのことは一長一短」
・幸せはすぐ目の前にある。その日のビールのように。
・人生の中心で仕事は非常に重要な役割をするけれど、だからといって人生の幸不幸を決めるわけではない。
・目標をなくす。今日自分がやることに最善を尽くす。
→「日日是好日」にも、今ちゃんとここにいること。っていう言葉があったけど同じだな。
今、目の前のことをやればいい。
それより先の未来なんて誰にも分からない。
今この瞬間を大切に。
・いい人が周りにたくさんいる人生が、成功した人生なんだって。
→そうかもしれない。
私もいつも人に恵まれている気がする。
成功してるな。感謝しなければ。
・1日を豊かに過ごすことは人生を豊かに過ごすこと
Posted by ブクログ
これは、
繊細で優しい、
家族の問題に悩む、
何度も些細なことで迷い立ち止まる、
そんなどこにでもいる私たちのような人たちのお話だった。
韓国の小説はもしかしたら初めて読んだかもしれない。翻訳が上手いのだと思うけど、とても読みやすかった。美しい文章。
呼称の使い分けとか親子関係とか韓国ならではと思った部分もあったけど、大部分において、私たちのように悩んだり人を想ったりしているなぁと日本の小説と同じように共感して読めた。
文化が近いからなのか、そもそも現代社会の人類普遍の感覚なのかはわからない。英語翻訳も出てるから、欧米での書評が気になる。
この本を読んで、
(日本では本当に少なくなった)個人経営の書店に行きたくなりました。
ハンドドリップでコーヒーを淹れたくなりました。
自分でも何か文章を書きたくなりました。
Posted by ブクログ
エッセイだと思っていたら小説だった。
いろいろ考えながら読みました。
印象に残ったとこ。
・本は記憶に残るものではなく、身体に残るものというアルムさんの話。
そうであってほしい、そうでないと困ると思った。ヨンジュさんと一緒で安心しました。
・ミンジュン 「何かの準備をすることをやめたかった」
自分もそういう思いをしたことがあるなと。
・和音と不協和音の話。
ヨンジュとミンジュンの会話がよかった。自分を受け入れること。そっか自己正当化だ。
・ジョンソの安堵感の話。
「自分が礼儀を守っている限り、誰も私に無礼な態度をとったりはしないだろう」
・ヨンジとミンチョルの会話。風の話。
なんとなくでもよかった~って思える時間、大切。
・スンウとミンチョルの会話。ちゃんと書いた文章。
好きなことがないというのはとてもよくわかるな。 先回りして未来を決めちゃダメという言葉もいい。
・ソンチョル 「好きだからに決まってんだろ。ほかに理由なんてあるか?」
自分的にはソンチョル(とミンジュンの関係)が一番よかったかも。
毎日楽しく過ごせたらそれはとてもいいことだけど、なかなかそうもいかない。
悩む日も考え込む日も落ち込む日もある。そういう日もちゃんと良き未来に
つなげられるような日にできたらいいなと、そんなことを考えました。
Posted by ブクログ
オーバーワークによる体の不調、就職難、
不安定な非正規雇用、無気力な高校生、
そしてその息子を心配するオンマなど、
ヒュナム洞書店に集まってくる登場人物は、
それぞれに悩みを抱えている。
韓国の厳しい競争社会の中での生きづらさや
息苦しさは、日本も似ていて、登場人物に
自分を重ねる人も多いのだろう。
立ち止まって考えるきっかけになったり、
自己肯定感を持ち、周りにいる大切な人を
ありのままに受け入れ、そっと見守ること。
数々のセリフが胸に響き、前向きになれる
読書だった。
Posted by ブクログ
コーヒーを入れるときはコーヒーの事だけを考えると言う章すごく良かった。現在過去未来を考えてしまうけれど、コーヒーを入れる時だけは目の前の、今のコーヒーに集中する。
よく聞くフレーズだけど、コーヒー1杯が現実と未来の間の人生をつなぐものなんだという意識で集中していったら、周りがみんなそのコーヒーの味を褒めてくれて、今度はコーヒーを入れながらこれからの何かを願い始めたと言う流れがとっても哲学的で美しかった。
韓国人の名前を常に聞いてて慣れてる自分でさえも、読みながら登場人物の名前や特徴がわからなくなってしまうけど、キャラクター紹介(相関図まではいかない)が巻頭に載っているのがすごく親切だった。
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・小説は、自分だけの感情から抜け出して他人の感情に寄り添えるところが良い。
・気持ちがすっきりするのだけが良いことじゃない。複雑なら複雑なまま、モヤモヤするならモヤモヤしたまま、その状態に耐えながら考えつづけないといけないときもある。
・本は、なんというか、記憶に残るものではなくて、身体に残るものだとよく思うんです。あるいは、記憶を超えたところにある記憶に残るのかもしれません。(略)何かを選択するとき、その根底にはたいてい自分がそれまでに読んだ本があるということです。
・なんか、あのときは、自分に起きたことが自分にとってどういう意味を持つのか、急いで結論を出さないでおこうって思ったんだ。
・いい人が周りにたくさんいる人生が、成功した人生なんだって。社会的には成功できなかったとしても、一日一日、充実した毎日を送ることができるんだ、その人たちのおかげで。
・個性を作り上げていくのに必要なのは勇気だった。店主の勇気を客に届けるのに必要なのは真心だった。つまり、勇気と真心。
・しばらくはまた泣くことになるかもしれないけれど、それでも仕方ない。そうやって過去を解き放ちつづけて、やがて、もう過去を思い出しても涙は出ないという時がきたら、ヨンジュは軽やかに手を上げて、晴れやかに自分の「現在」をその手につかむのだろう。
-あとがき-
・思い描いていた雰囲気はあった。(略)もっと有能になれ、もっとスピードを上げろと急き立てる社会の声から逃れた空間。その空間で穏やかにたゆたう一日。それはわたしたちからエネルギーを奪っていく一日ではなく、満たしてくれる一日だ。期待感で始まり、充足感で終わる一日だ。
・世にいう大成功につながる行動ではないかもしれないが、彼らは何かを続けながら変化し、成長していく。(略)彼らの立っているその場所が、他人の目に高く見えるか低く見えるか、良く見えるか見えないかはどうでもいい。彼らがみずから動いたということ、そして今立っているその場所を気に入っているということ、それだけで充分だ。
Posted by ブクログ
2024年本屋大賞翻訳小説部門第一位を受賞した小説。会社を辞めた書店主であるヨンジュがソウル市内の住宅地ヒュナム洞に書店を立ち上げて、一緒に働くバリスタのミンジョンや友人兼コーヒー業者のジミ、書店にやってくる方々との交流を描く。前書きにもある通り、登場人物のみなが、「どこか自分と重なる」存在として描かれていて読者に寄り添う温かさを感じる。こうして本を読んだ感想を書くときに、書店主ヨンジュのように、自分が好きな本ではなく、「客観的な目で本を見てみよう」という視点は忘れないように自戒できた。本が好きな方ならヒュナム洞書店のような場が欲しいと思うことは少なくないはずなので気になった方はぜひ。
Posted by ブクログ
ヒュナム洞書店の日常が淡々と語られるところから始まり、登場人物の心情や生活が深く語られていく。
韓国の労働事情も日本と似たり寄ったりで、非正規職員の問題や夫婦のあり方など考えてしまう描写が中盤以降続いていた。
書店の物語として想像していたものとは違っていたけれど、考えさせられる本だった。
Posted by ブクログ
本とコーヒーがあって、心地よい場所があって、あとは適度な自己肯定感があれば、人生を生きて行ける。
冒頭、主人公ヨンジュの心と書店との関係が、心地よい文章とともに頭の中に入ってくる。
「ヨンジュは中に入る(自分が経営している書店)。心地よい感覚。彼女の心が仕事場を喜んで迎え入れる。自分の身体のすべてがこの場所に安らぎを得ていると感じる。彼女はもう、意思や情熱といった言葉に意味を求めないことにした。自分が頼るべきは、みずからを駆り立てるために繰り返してきたそういう意味ではなく、身体の感覚だということを知っていたからだ。」
毎年、年末年始の休みには、とっておきの単行本買っておき、ゆっくり読むことを楽しみにしている。
2025年の年末はこの本にした。
この本の出会いはブックファースト新宿店。
もともとは、キム・ヨチョプの「本と偶然」を買うつもりだった。同じコーナーにあったのがファン・ボルムの「毎日読みます」と本書。ジャケ買いした。
最近、自分の中で本を読むことに少しばかり違和感を感じていた。
読んだ本を思い出せない。
惰性で読んでるだけではないか。
本を読む速度が落ちている。
集中力が続かない。明らかに他のことを考えている。
なんのために読んでいるのか。
還暦に近い年齢になり、本を読んで楽しむ、感動する心が衰えてきているのではないか。
そんな違和感と折り合いをつけたくて、本を読んでいる人のエッセイを探していた。
そこで出会ったのが、「本と偶然」であり、「毎日読みます」だった。
「毎日読みます」の、「ゆっくり読む」という章の中で「わたしたちは、もっと早く読むために、ではなく、もっと多くのことを感じるために本を読むのだ。」とファンさんは言う。それは、歩いているときと同じで、風を感じ、光を感じ、木々や小鳥の存在を感じ、その中で自分のペースで歩く。毎日同じことだ。ただ歩けばいい。
本を読むことは歩くのと同じ。そして感じるために読む。
どうやら、私は本を読むことで何かしらの対価を得ようとしていたらしい。
忘れてもいい、わからなくてもいい、時間がかかってもいい。
何かを感じられれば、それでいい。
そんな余韻の中で本書を読み、心穏やかに年末が迎えられることに幸せを感じる。
Posted by ブクログ
名前に馴染みがなく、途中誰だっけとなることもあったが、一章説が短く、飽きさせない工夫がされていて、読みやすかった。
登場人物たちの居心地の良さがこちらにも伝わってきて、読んでいて気持ちが良い本だと思う。
胸キュンポイントもあって、本についての考察なども考えさせるポイントがあって楽しかったのだけれど、ただ、もう少し深みがほしかった。
難しいけど、なんとなく分かるなぁと思うあのちょっとだけ興奮する感覚が今ひとつだったな。
本能的に斜めから見てしまうとキレイにまとまりすぎて、不自然な印象を受けた。
Posted by ブクログ
淡々とした日常の中、主人公や周辺の人々の胸に抱える思いが静かに紡がれている。著者のエッセイを読んだときに感じた穏やかなリズムのようなものが同じく流れている。
Posted by ブクログ
読みながら居心地いい~と思った小説だった。競争社会で燃え尽きて独立書店を開いた人と、書店を営むうちに出会った人々の群像劇。人と人の関わりの中で仕事や結婚観等のトピックがあり、要所要所で引用される名言や考え方がある。小説だけどセラピーにもなりうる作品だった。離婚関連の話題では共感できなかったりした部分もあるけど、読み終えると総じて優しい空気感で良かったと思えた。
Posted by ブクログ
「ヒュナム洞書店」はカフェスペースを有するブックカフェ。どうやら本を購入するか、コーヒーを注文すると最低限3時間くらいはテーブル席で寛いでいてもよく、それ以上居たければコーヒーを追加注文した方が良いみたい。但し常連客も多く、カウンター席或いはテーブル席の1画を独占している場合もある。コーヒーは結構旨いらしいが、ベストセラーはあまり置いてなく店長の良し悪しの主観、好みで本を陳列、販売しているらしい。店長が売りたい本、読んで欲しい本は、店長の感想などが書かれたメモが張ってあるので、その本を購入するかどうかはそれを目安にすればいい。
またその書店には結構興味深いイベントが行われることがあり、「たわしイベント」と言うちょっと変わったイベントもあったが、本を出しているけど「作家ではなく会社員だ」と主張する人を招いてのトークイベントも何回かあったようだ。最近ではライティング講座も始めたようだ。
客筋は真面目な人が多いようで、だからなのか生きることに不器用な人、人生に疲れている人、悩んでいる人、夢を諦めた人、相談出来る人がいない人など、色々な問題を抱えている人たちも多く、でも少しづつ互いに会話を重ね、丁度良い距離感で付き合っている。
静かな空間、少ない会話、旨いコーヒーの香りと本を捲るカサカサという音。そこに何か人生を達観したような、もう「おばさん」と言われそうなお歳の店長と、予定していた人生のレールから外れ、別の視点から人生を見直そうとしている「若きバリスタ」がいる書店。
なんか日本には無さそうな、少なくとも我が田舎には見当たらない書店。
あったら行ってみたいような、行っても会話の輪に入れなかったら、と思うとちょっと怖いような。
人生の辛さ切なさをそれほど深刻でなく、と言って軽く扱うのでもない、普通の人がそれぞれの悩みを持って生きているというお話。大人の苦さがちょっぴり効いた、プチケーキのようなショートショート的な小説集。