小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
平成という時代ならではの生きづらさをテーマにした作品。初めは章ごとに全然関係ない話のように見えて、徐々にいろんな繋がりが見えてくる構成は見事。全部読み終わってから初めの章を読み返すと、見え方が全然違ってこわいくらい。
競争や順位づけをやめ、ナンバーワンではなくオンリーワンであることの良さが押し出されるようになった平成。むしろそれは「自己責任社会」の始まりで、自分らしさや夢中になれるものが見つけられない人は自己否定に苦しむようになる。
自分も人生の大半を平成で過ごしてきて、好きなことで生きる人が社会的に目立つようになってきたり、生き方の多様さもどんどん増していったりする中で、「自分の好きなこと -
Posted by ブクログ
夏川草介『本を守ろうとする猫の話』を読んで、まず感じたのは物語の“直球さ”だった。
まっすぐで、時に少し照れくさくなるほど率直なメッセージが込められていて、「本とは何か」「読むとはどういうことか」といった、大切だけれどつい流してしまいがちな問いを真正面から突きつけてくる。
でも、その直球さこそが心地よく、読み終える頃には胸の奥に確かに残るものがあった。
押しつけがましくない形で、本を愛する気持ちや物語への敬意が詰まっていて、読んでよかったと思える一冊だった。
きっと、いつかまた読み返したくなる本だと思う。
そのときには、今回気づけなかったオマージュや引用の意味がもっと拾えるようになっていたらい -
Posted by ブクログ
今年の読書の中で、辻村深月に再び出会えたことが一番嬉しい。
心を揺さぶられてガードが下がった剥き出しの心に仕掛けられたギミックが発動するのが堪らない。「うおおおおお!」って思いながらスッと物語が終わる。言語化できない。僕を「うおおおおお!」ってさせる力がてきめんにあるんだ。
かつて7年前にタバコくさい喫茶店で貪るように読んだ『かがみの孤城』もこの感覚だった。
3作全て面白かった。題材のチョイスも秀逸で、伏線を巻いておいて、人間関係の仄暗いところを見せつつ、最後は感情にガツンとくる。癖になっちまうよ...
2025年も残りわずかだけど、年内は彼女の深い沼にハマろうと思う。