無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
火星のコロニーに暮らす盲目の少女リリ-E1102は、厳しい試験にようやく合格し、母が待つ地球へ旅立とうとする直前に何者かに誘拐される。
火星で地球外生物の証拠を探索する生物学者リキ・カワナベは、3種の結晶構造を持つ物質スピラメンの構造間の変異が、距離に関係なくグループ内で同期することを発見する。
周囲からエネルギーを吸収し、自律的に変異するスピラメンは地球外で初めて発見された生命体ともいえ、その発見の報は地球と火星両方に小さくない衝撃を与える。
当初計画した自給自足ができず、地球からの物資に依存する火星住民らは、地球人に見下され、抑圧される状況に不満を溜め、スピラメンの発見をきっかけに独立運動を起こす。
火星での利権を独占するホエール社のCEOルーク・マディソンの行動も混乱に拍車をかける。
リリの母タキマの命を受け地球側で事態の収拾に当たるリリの友人白石アオトや、火星でリリを捜索するマルとミト。
さまざまな人々の事情や思惑を呑み込み、事態は進展していく。
「光が遅すぎる」ために片道300秒かかる地球・火星間の通信。
マルに開放され、マディソンから「火星の女王」に祀り上げられたリリは、往復10分の通信の間隙を縫って地球からの駐留部隊を制圧する。
盲目ながら肝の据わったリリをはじめ、日常に追われながらもどこか達観した、または開き直った登場人物たちに、本編には全編を通して乾いたユーモアが漂う。
人々のドタバタ劇を中心に書かれた本書は、ハードSF的でありながらむしろ読みやすい。
スピラメンの遠隔同期の性質は、巨視的な量子もつれを連想させ、本書のテーマ「faster than light」を具現化する。
NHKドラマの原作だが、重苦しかったドラマよりも本書の方が好もしい。
Posted by ブクログ
およそ今から100年後の時代を描いたお話。
人類は地球だけでなく火星にも住み文明を築いていた。
地球外知的生命の探究のため、
人生をかけて火星にやってきた生物学者のリキ・カワナベは
スピラミンという物質の結晶構造の変化を発見する。
一方、火星生まれの学生リリ-E1102は、
地球に観光に行くことを夢見て遠心型人工重力施設に通っていた。
地球で種子島在住の白石アオトは、ISDA職員として働きながら
リリとの約束を思い出していた。
カワナベの発見が世界を揺るがすとき、リリの身にも危機が迫る。
地球と火星、遠く離れた二つの星を巡って人々の心が交錯していく物語。
案外評価がそこまで高くないということにまず驚いた。
非常にエンタメとしても成立しているし、面白い作品だった。
ただ、カワナベが発見したスピラミンという物質に隠された性質。
この辺が最後までよくわからないということと、
物理・天文学的用語や設定が数多く出てくるので
その辺でわりと最初は置いて行かれる感は確かにあった。
頭の中で画として思い浮かべるのに苦労するので、
文字情報だけ追っててもどこかイメージが掴みにくいというのはある。
とは言え、キチンと事件が起き、ワチャワチャしていく感は嫌いじゃない。
むしろ個人的に好きな部類の展開が続いていき、最後まで飽きさせない。
地球と火星という気が遠くなるほど離れた二つの星に住む人達の啀み合いが、
ある種、この物語の下敷きとなって進んで行くのだが
この対立構造って我々の身近な存在に当てはめても成立するし、
決して想像のできない問題では無いはずだ。誤解はいつだって距離が生む。
終わり方も個人的には好みな締めくくり方。
小川作品にしてはクセの少ない読みやすいストーリーだった。
何よりSF作品として想像の産物だけで練り固められているのではなく、
非常にロジカルに、そしてあり得そうな未来がこの物語には詰まっている。
Posted by ブクログ
光は遅すぎる。世界で一番速いはずの光に対するこの評価。この言は以前にも聞いたことがあり印象に残っていたが、今回、物語の中でより実感させてくれたように思う。人々の活動領域が外へ外へと宇宙に広がって行くのは良いとしても、宇宙は広すぎ、移動や通信にこんなに時間がかかっては分断を生んでしまうのも無理はないと感じられた。現実では未踏の地である火星。そこへ向かうのは人類の夢だしワクワクすることのようにも思えるが、本作のように火星で生活することが根付いて、地球依存から脱却出来ない状態が現実として横たわってしまうと、火星もただの僻地なんだなと妙に色褪せて見えてしまった。
本筋ではカワナベの存在が良かった。地球で夢破れて火星に移り、何十年と何かを探し続けるその様子は最早諦念の色が濃いのに、でも諦めきれずにあれこれ考え続ける姿には誰よりも人間味を覚える。だから何だと言いながら捨て置かない。とても好ましかった。
リリについてはマーティンが大統領として持ち上げたい理由には納得したが、民衆が女王と持ち上げて盛り上がっていた経緯はよく分からなかった。女王という強い言葉を選ぶには説得力が弱いかなと思う。ただいつでも勇気を持って立ち向かう姿は良かった。盲目なのに宇宙で船外活動をしようなんて試みにはとても驚かされた。
Posted by ブクログ
物理的にも政治的にも経済的にも遠く隔たっている火星と地球。火星ではごくありふれた物質「スピラミン」の新たな性質が発見されたことを機に(?)、長年の燻りが勢いを増して……。
NHKのTVドラマ版(吉田玲子, 2025)から知った本作。「未知の物体」の代わりに「スピラミン」がキーアイテムで、マルは勤勉なISDA警察捜査官ではなく地球に帰りたがっている火星自治警察の非常勤捜査員で、キーパーソンであったタキマ・スズキやファン事務総長はほとんど登場せず……。両者の差異に少し驚いた。
ナショナリズムや異文化交流といったテーマはTVドラマ版と共通。また、小説版では“火星の女王”の意味に触れられている点が好ましい。
結末までとんとん進む展開は読みやすくもあり、物足りなくもあり。個人的には火星・地球間、地球住民/火星住民同士間、そして盲目のリリ-E1102と彼女以外の人々との間の物理的・精神的隔絶の描写はTVドラマ版のほうが好き。
Posted by ブクログ
火星と地球との間の光の速度を超えられないタイムラグのあるやり取り。同じ地球人なのに、物理的な距離が離れていて、リアルタイムで会話を成立させることがかなわない。両者の間に少しずつ溝ができ、広がり、あわや戦争か、という深刻な状況に。これって、いま地球上で起きていることと変わらないよね。私たちはタイムラグなく顔を突き合わせて対話ができるはずなのに…。
以前見たテレビドラマは私としてはイマイチで、原作である本書もあんまり期待していなかったんだけど、本書はストーリーもドラマよりずっと分かりやすかったし、登場人物も変にキャラ立ちせず、いい感じに個性があってよかった。おもしろかったです。
Posted by ブクログ
小川哲こんな宇宙SFも書けちゃうのか!作品の幅広さに改めて驚き。すごい人だなあ。
火星居住が進む近未来が舞台で、テクノロジーというよりは地球居住者と火星居住者の政治的な問題を主に扱っている小川哲らしい視点のSF。
地球と火星の間の通信には往復8分ほどの時差が生じてしまい、意思疎通が難しく、コミュニケーションの摩擦が生じてしまう。
SFは夢のある内容が多いけれど、本作は火星に夢を見て冒険するものの、現実問題としてはなかなか上手くいかず、摩擦が起き...という個人的に好みな展開のSFだった。技術が進んでいるとはいえ、策略が飛び交う外交、統制システムの不備、政治に不信感を覚え抵抗する市民など、共同体を構成する上での根本的な課題は変わらないもんだよなあと思った。
説得力があって、SFとして完成度が高いと感じた。
一方、展開がちょっと都合良すぎたところもあったのが気になった。あと、もう少しテクノロジーのところ広がってたら面白かっただろうなと、世界観はとっても良かったので、楽しめましたが。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。