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Posted by ブクログ
・魔術師
これだけでも★5 小川哲、凄い!
一回読んだだけでは理解しきれず、二回読んだ。
マジックがテーマということもあり泡坂妻夫を読んでいるようだった。
・ひとすじの光
競馬の話。どんな性格の馬が競走馬に向いているかを考察したりしていて着眼点が独特だ。
・ムジカ・ムンダーナ
ダイヤモンドや金、絵画や彫刻などに価値があるように、音楽作品に金銭や資産と同等の価値を与えるという作品。
発想もいいが、そのアイデアを小説にしてしまう筆力に脱帽。
・嘘と正典
二重スパイと歴史を変えた出来事は、実際の歴史を学んでいるようだった。
そこに、タイムマシン的な時間を操る要素が入り込んでくる。
宗教的要素もあり、歴史と科学と哲学で遊んでいるような小説でもあった。
Posted by ブクログ
この本を読んで小川哲の脳は宇宙だと思った。
その複雑な論理的なパズルに創り上げる創造力は圧巻だった。
気を抜くと落ちてしまうような綱渡りをしているような気分でこの本を読んだ。
ここに載っている作品はどれもわたしの心を鷲掴みするような内容だった。
収録作は全て素晴らしい短編小説だったが『嘘と正典』はやはり素晴らしかった。
歴史を構成する上で代替可能なピースとなる存在と代替不可能なピースの存在という考え方がとても面白いと思った。
時空間通信技術を使って、未来を変えようとする存在に対し、正しい歴史に戻そうとする未来人。
そもそも、正しい歴史とは何なのか?未来人がなぜ正しい歴史がわかるのか?正しい歴史とはその未来人にとって都合の良い歴史ではないのか?
この本の最初に載っている『魔術師』のテーマは「真実と完璧な嘘の境界は、客観的には存在しても、人間がそれを認識できるとは限らない」というものだった。
この世は真実なのか、嘘なのか、判断ができないことがたくさんある。
誰かの都合の良い歴史が今もなお築かれているのではないだろうかと感じた。
Posted by ブクログ
1.SFっぽくない感じが良かった。
全編通してSFっぽさは少なかったが、それ以外の良さがあった。完全なSF世界ではないからこそのリアリティがあるような気がする。「魔術師」で言えば、タイムマシンが本物であるかどうかわからないまま物語が終わるのが良かった。これについては「読者に任せる」書き方が効果的に感じた。 「ひとすじの光」はSF要素がなかったが、馬と自分とを重ね合わせて父親との関係性や自身のアイデンティティに思いを馳せる姿に感動した。「ムジカ・ムンダーナ」はSFというよりファンタジーかな。
2.嘘と正典が一番良かった。
前半はSF的な要素がないまま話が進んでいき、後半から過去との通信が出てきて一気に話が進んでいく展開に引き込まれた。そして冒頭のエンゲルスの裁判につながっていくところはもはや感動的でもあった。過去に干渉することができる機械によって、世界が分岐する場合は「正典」にあたるものはなにに該当するのだろうか。ニュートンがいなくても万有引力の法則が見つかっただろう。これは完全に同意する。しかし、エンゲルスがいなかったら共産主義は存在しなかったのだろうか。歴史を改変するものを妨害するために歴史を改変していないだろうか。少なくとも中継者や守護者の人生には大きく干渉していると思うし、それによってバタフライエフェクトが発生していないだろうか。なにをもって正典としているのだろう。
「嘘と正典」の過去に送れる電気信号は「Steins;Gate」のDメールに近いような感じがした。一度行った改変を取り消すことで元の世界を目指すのも同じかな。そのなかで、計算量を減らしたいという「嘘と正典」の動機は「Steins;Gate」よりも弱く感じた。「Steins;Gate」の独善的で身勝手でも仲間との絆を大切にする感じが大好き。
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