Posted by ブクログ
2022年04月22日
凄まじいの一言。読後は呆然自失となる。
太宰にとって、世界とは無意味にすぎなかった。印象的な文言に「世間とは、個人ではないか」というのがある。
これは一種の思慮深い真理のように感じられる。皆が抽象的に感じていることを見事に言葉として表現しているのでなはいか。
圧倒的なニヒリズム。彼はもしかすると...続きを読む、重度の対人恐怖、社交不安障害であったのかもしれない。現在、心療内科、精神内科などは簡単に予約が取れないほど通う人間が多いらしい。そんな生きづらい世の中の内に、太宰が今も読まれている理由があるのだろう。
自己破壊を繰り返すことでしか、生きる価値を見出せないような、文学を語る資格がないのだというような悲痛な叫びが聞こえてくるようだ。
ひたすら世界に恐怖し、逃げ続けつつも懸命に生きた太宰と、考えることを拒否し、本能のみで生きながら、群れることでしか自己を実感することができず、世界の半分がスマートフォンの中にあるような人間が蔓延る現在の世の中において、人間失格なのはどちらだろうか。