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「恥の多い生涯を送って来ました」。そんな身もふたもない告白から男の手記は始まる。男は自分を偽り、ひとを欺き、取り返しようのない過ちを犯し、「失格」の判定を自らにくだす。でも、男が不在になると、彼を懐かしんで、ある女性は語るのだ。「とても素直で、よく気がきいて(中略)神様みたいないい子でした」と。だれもが自分のことだと思わせられる、太宰治、捨て身の問題作。
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Posted by ブクログ
人と違うことを考える主人公に対して、共感する部分が多々あった。 自分の中の幸せを1つ持てるようにしたい。
初めての太宰さん、初めての『人間失格』。 こんなに読みやすかったんだ! これについて多く語る必要があるのか?!ってのはあるけど、語れるだけ語らせていただきたい。(自分のために) 主人公には自分というものがなく、空腹もあまり感じず、食べ物を美味しいとも思えず、人間が怖いが故に、人にどう見られるかを...続きを読む気にするが故に、幼い時からずっと道化を演じて、何とか世渡りしてきたというところで、「これ、村田沙耶香さんの作品の主人公たちに通じるものがある!」とびっくりしました。 少しずつ違ってくるのは、『人間失格』の方の主人公は、画家になってやるって願望を抱いてみたり、人を愛したいと切望したり、人に図々しくなっていき迷惑をかけたりし始めてしまうところ。そして村田沙耶香さんの主人公たちは周りにいっさい迷惑をかけず、初めから終わりまで「無」を通そうとしているところで、違うんです。でも自分の殻に閉じこもって、外では人間を演じているというところがそっくりだし、自分の空の姿がバレてしまうのが怖いというところとかが本当によく似ているし、村田沙耶香の作品には『人間失格』の影響が何かしらあるのかなと思った。(勝手な素人の解釈) これが太宰治か…と胸が締め付けられるのは、色んなところに沢山ある、美しい文章。とにかく風情が深くて心に響く。「趣深い」とはこのことなんですよ! ちょっと付箋も貼らずにどんどん読んでしまったので、もっと他にも素晴らしい文があったと思うけど、とりあえず以下の文を書き留めておきたい。 ー「水底の岩に落ち附く枯葉」のように、わが身は、恐怖からも不安からも、離れる事が出来るのでした。ー この隠喩よ!!!「水底の岩に落ち附く枯葉」って!!!綺麗だし、寂しいし、胸がギュとなります。 ー背後の高い窓から夕焼けの空が見え、鴎が、「女」という時見たいな形で飛んでいました。ー 「女」から逃れたいのに、鴎が女になってるって。この描写よ。表されていることをどんどん深読みしたくなる。 155ページで、こんなにも、人の価値観とかを揺るがすような、人生に影響を与えるような作品を書けるなんて。新潮文庫で令和7年5月の時点で217刷になる意味が分かる。 そして解説も含め、読み応えがこんなにもあるのに400円の文庫。 やっぱり本ってなんて素晴らしいんだろうって、本が、小説が、さらにもっと大好きになりますね。この文庫はずっと手放しません!!!また読む!! 最後に、美術への関心もある私にとってはサプライズな一面を書いて終わにします。 この本の初めの方に、19世紀末の巨匠画家たち(ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ルノアール)とかの名前と、彼らの動向の素晴らしい描写が出てきて、「え?!太宰治って美術史家なの?!なんでそんな上手く表現できるの?」とびっくり。『人間失格』にこんな美術に関する表現が出てくるとは思わず、早速美術も好きな私は引き込まれました。 ーああ、この一群の画家たちは、人間という化け物に傷めつけられ、おびやかされた揚句の果、ついに幻想を信じ、白昼の自然の中に、ありありと妖怪を見たのだ、しかも彼等は、それを道化などでごまかさず、見えたままの表現に努力したのだ、ー ー自分のそれまでの絵画に対する心構えが、まるで間違っていた事に気が附きました。美しいと感じたものを、そのまま美しく表現しようと努力する甘さ、おろかしさ。マイスターたちは、何でも無いものを、主観に依って美しく創造し、或いは醜いものに嘔吐をもよおしながらも、それに対する興味を隠さず、表現のよろこびにひたっている、つまり、人の思惑に少しもたよっていないらしいという、ー この表現ができるだけで、まずもう優勝なんですよ。太宰治さん、他の作品ももちろん読みます!!!大好きです!! まずはこの勢いに乗ってドスト氏(作中でそう呼ばれている)の『地下室の手記』を読みます!
読むのは3、4回目。 やっぱり面白い。内縁の妻が犯されて、主人公が感じたものが恐怖だったというのは太宰治のことをよく表していると思った
自殺した後に続きが発表されるその渦中を生きた人になってみたかった。 死ぬかもしれなと予想して、死なないかもしれないと予想して、死んでしまったとき。 続きを読んだ時の興奮。 そういうものを味わってみたかった。 年々、葉蔵要素が強くなっていっている自分と向き合わなくてはならず辛かった。なんてあ...続きを読むほなんだと思える人になりたいのに。
彼にとって人間として生きるにはこの世は窮屈すぎたのかもしれない。目を瞑り心に蓋をして惰性で生きている人間にとって、内情の全てを露わにして書かれたこの作品は刺さるはず。 読み進んでいくにつれ主人公に重ねてしまい、胸の奥が苦しくなった。それと同時にその苦しみの言語化による快感もあり特別な読後感。私は好き...続きを読むな内容。
自意識過剰で臆病、死にたがりな主人公なのに、ユニークな会話や思考がおもしろくて読みやすい。 彼の人生観、死生観が垣間見えて、彼とは違う生き方をしているはずなのに、時々共感したり気づかされたりする。
走れメロスを除いて、太宰治の作品は初めて読んだ。太宰治の自叙伝であり、おそらく自戒を込めた反省文でもあり、日記でもある。主人公は、いわゆる「世間」とは真には溶け込めず、ペルソナを被った道化を演じることでなんとか暮らしている。本音を殺し、世間が求める答えを感じ取る生活を続けることで自身を見失ってしまう...続きを読むことは誰にでも往々にしてあることだと思う。なんとなく主人公に共感するところもあった。自分を客観視して、誰でもない標準化された他人、つまり世間と比較して、違うところだけ目について嫌気がさすことは誰だって経験があると思う。誰であっても彼と同じ人生を歩む可能性は孕んでいると思う。
この作品の凄みはどこからくるのか?人生の節々の何気ないやり取り、他愛のないイベント事を切り取り、人間を突き付けてくるところだと思う。自らを道化と語る葉蔵は、どこまでも正直で、誤魔化しがない。卑しさ、欺き、侮蔑、傲慢を自分の中に認め、開き直ったり苦悶したりするから、他者に対して外面も内面も誠実でないの...続きを読むに、人間として誠実であると感じてしまう。 世間は己だ。世間が許さないのではなく、己が許さないの言葉がグサリと胸に突き刺さる。世間の反応を恐れて当たり障りないことしか言えなくなったと言っても共感を得られそうな現代だが、世間とはまさに自分が作った虚像であることに気付かされる。思った以上に私達は、虚像の世間に縛られ、縛られていないものを許せない。 生き易しを選び、道化を演じても自分は誤魔化せないものだか、演じているうちに、考えないようにしているうちに、自分というものが鈍磨になり、蝕まれていく。
大庭葉蔵が、父の機嫌を取るために東京土産に獅子舞が欲しいように振舞ったのは、私が祖父母から真珠のネックレスを買ってもらった時の感情を思い出した。 ちょっと考えすぎじゃないかとおもっていたけれど、途中葉蔵が小さなことを気にしすぎていたことに気づいていた。私も時折色んなことが不安になって、考えすぎてしま...続きを読むう時があるけど彼の場合はそれが通常だったんだと思う。
言わずと知れた太宰治の怪作である。 もちろん小説としての創作であるにせよ、太宰自身の生涯とあまりに重なる部分が多く、半ば自叙伝とも言える作品だろう。 読む者によって心に残る箇所は異なるだろうが、この小説を手に取って何も感じない人間は、おそらくいないのではないか。 私にとって特に印象深いのは、葉蔵の...続きを読む「世間とは個人ではないか」という持論である。 これは現代のSNS社会にそのまま当てはまる言葉のようにも感じられる。 今や一人の「私はこう思う」が、あっという間に「世間はこうだ」へと変換されてしまう。 いわゆる「主語のでかさ」が氾濫する世界に生きていると、葉蔵の視点は予言のようであり、同時に皮肉でもある。 世間とは確かに個人の集合体だが、個人の言葉がそのまま世間を代表してしまう危うさを、私たちは日々目の当たりにしているのだ。 この作品は人の心を容赦なく抉る。 だからこそ読む価値があるのだが、精神が不安定な時に触れるのはあまり勧められない。 心が落ち着いている時にこそ向き合うべき一冊だと思う。
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