あらすじ
優等生でしっかり者だけど天の邪鬼な凪沙と、おバカだけど素直で凪沙のことが大好きな優海は、幼馴染で恋人同士。お互いを理解し合い、強い絆で結ばれているふたりだけれど、ある日を境に、凪沙は優海への態度を一変させる。甘えを許さず、厳しく優海を鍛える日々。そこには悲しすぎる秘密が隠されていた――。互いを想う心に、あたたかい愛に、そして予想もしなかった結末に、あふれる涙が止まらない!!
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ泣いた。ティッシュ30枚くらい消費した。もう途中から読むのを辞めてしまいたいくらい辛かった。何とか読み切ったが、今年一面白かった作品と言っても過言では無い。こんな本を書いてくれてありがとう汐見夏衛さん。受験生の心がまた豊かになりました。もっと勉強頑張れそうです。
Posted by ブクログ
人によっては途中で後の事が想像できちゃう人もいるかもしてなかったけど私は本とかを読んでるときは一切途中になにかはさんだりせず動きもしないので没頭していたので気になりませんでした
もともと友達に借りた本でこのお話に続きがあると聞いて貸してもらったんですが最高でした!
続きも読むことをオススメします!
Posted by ブクログ
美しさをとても感じる小説です。青春だな〜と思いながらにこにこした気持ちで読めました。
明るく有限の儚い青春が美しく描かれており、切なさがトッピングされたこの小説は、短くも満足感がとてもありました。
小説を普段読まない人や、おすすめの小説を聞かれたら迷わず一番にこの小説をオススメしたいです。
田舎の雰囲気や海の潮風を感じる描写は、小説に入り込みやすく、映像がなくとも心の底から青春の美しさを感じれました。
私は作者が込めた想いよりも、小説の美しさや私が楽しめるかどうかを重視してしまいこのような感想になってしまいましたが、とても素敵な作品です。
是非たくさんの人に手に取っていただきたい。
Posted by ブクログ
二回目読む楽しみがあります。これは私が読んだ本で一番良かったです。ところどころに出てくるなぎちゃんの行動と言葉に、たくましさとユウへの愛情を感じます。15歳とは思えないほど立派です。
Posted by ブクログ
大切な人の幸せを願う少女と少年の物語です。
優等生でしっかり者でちょっとひねくれたところのある主人公の凪沙は、幼馴染の優海と恋人同士。同級生からもラブラブのお似合いカップルと言われるくらい、二人は仲が良くていつも一緒だった。ちょっとおバカなところがあって、能天気に見えて、でも素直で明るくて誰よりも凪沙のことが大好きな優海は、大らかで温かくて、自分の気持ちを隠さない。そんな優海のことが凪沙も大好きで、けれど大好きだからこそ、とあることから彼女は決意した。運命の日が来る、その時のために。
最終盤、ボロボロと泣きながら読み終わって、またループして初めに戻って読みました。とても切なく、苦しく、愛しい物語でした。
初読の時から、色々なことが確定した未来のことのように書かれていたりして、もしや、と思うところが多くありましたが、種明かしはどこなのだろうと思っていたので、随分と終盤まで真実が凪沙から語られないことで、凪沙の頑固で意固地になりやすい性格が見て取れるようでした。
優海の、あまりに大きく深い愛情に、読んでいるこちらが気恥ずかしくなったり、羨ましくなったりしました。こんなにも自分のことを大好きになってくれた人を、こんなにも自分がいなければ生きていけないくらい深い愛情を注いでくれた人を、けれど自分は置いていかなければならないと知った凪沙は、どれほど苦しかっただろうと思うと胸が苦しいです。
自分がいなくなっても大丈夫なように、嫌いになってもらわなくては。そう思ったとしても、幼馴染の効力が強すぎたことに笑ってしまいます。嘘も、ごまかしも、本当の本心ではないことも、自分ではうまくやれたと思っても全く信じてもらえていない辺りに、一緒に育って、何もかも分かってしまうし分かられてしまう、恋人とは違う種類の関係性を見た気がします。
ここまで誰かを好きになれて、ここまで誰かに愛情をもらえて、それが深いから深いだけ、苦しくて。けれど、こんな一世一代のような恋を、してみたいとも思ってしまいます。
Posted by ブクログ
ラストが衝撃過ぎて何回読み直しても泣けます。
絶対に2周はして欲しい作品です。
凪沙が息を吹き返したところで自分も心がホッとしたのと同時にどん底へ落としてくる汐見先生がとてもすきです。
Posted by ブクログ
初めてこんなに号泣しました。あまりにもピュアな恋。こちらが楽しくなってしまうほど可愛い恋愛の裏に隠された事、最後の展開全てに心を奪われて読んでしまいました。辛いことがある人が読むと少し救われるような描写もあります。ぜひ読んでみてください。
Posted by ブクログ
読み初めから凪沙が何かを決意してて
何か様子が違うなぁとは思ってたけど
まさか凪沙の決意は
優海が独りでも生きていけるように
厳しく鍛えることだったなんて。
凪沙は高校1年生の夏
灯籠流しの前日に海で亡くなった。
凪沙を亡くした優海は
何も出来なくなってしまった。
そんな優海を心配して後悔して
優海のために死に直すチャンスをもらった。
つまりある時期からやり直して
もう一度同じ場所で同じ事故で死ぬ。
想像しただけで恐ろしいのに
凪沙はそんな恐怖よりも
優海のために心を鬼にすることを決断した。
本当に凪沙は強いと思った。
同じ高校1年生の頃に同じ状況になったら
私だったら凪沙と同じ決断できないと思うから。
そして
優海は凪沙の決断を知らないけど
凪沙の言葉に素直に応えて努力してて
いつまでも素直なままでいて欲しいし
優海と凪沙の様子が微笑ましい。
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凪沙と優海は幼馴染みで恋人。
青春小説でよくある展開って思ってたけど
凪沙と優海はただの幼馴染みじゃない。
凪沙が周囲から親に捨てられた子と言われて
傷ついていた時に優海が側で支えた。
優海が1度に家族を亡くして
苦しんでいた時に凪沙が支えた。
ふたりだから凪沙と優海だから
高校生になるまで成長できたんだと思う。
これからも凪沙と優海には
辛い過去を支え合いながらも
仲良く楽しく大人になって
幸せになって欲しかったなぁ。
ふたりの状況を考えたら涙止まらなかった。
だけど
お互いのことを想いあっているのが伝わるから
涙が流れているのに心が温かくなった。
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汐見夏衛さんの物語は
とっても大切なメッセージが込められていて
読み終えたあとは心が温かくなって好きです。
最近はこんな純粋な物語を読む機会も無くなっていたのか、読み進めていく内に「何かトリックが」や「何処でどんでん返しが」とか考えてしまって、本来感じるべきだった感情を逸らす事となってしまい我ながら反省です。
時間を置いて読み直してみたいのと、続刊がある様なので、そちらは変な先入観を持たずに読んでみようかと…。
Posted by ブクログ
優海くん、いい彼女もったねえ。
泣きました。
運命の日とか、思い出とか優しさとか。
いろんな気持ちがごっちゃでした。
でも、これ読む前に「明日の世界が君に優しくありますように」を読んだ方が感動大きいと思いました。
Posted by ブクログ
汐見夏衛さん!最高でした。後から思いあたるページをぱらぱらめくってみると伏線がたくさんはられていることに驚きました。面白すぎたので星5です!二度読み絶対します!
Posted by ブクログ
★読み終わった日:2023年7月10日(月)
★あらすじ★
優等生でしっかり者だけど天邪鬼な凪沙と、おバカだけど素直な優海は、幼なじみで高校生カップル。
高校1年生の夏、凪沙は優海に勉強を教えたり家事や日常の事を少し厳しく教えたり、、そこに秘められた秘密とは、、
★感想★
恋愛系の小説は久々だった。
一時期TikTokで流行ってた漫画(小説)「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら」を求めて本屋へ行った際、目に付いたので買って読んでみた。
ハッピーエンドとは言い難いお話だが、凪沙と優海の深い絆や愛情が感じられて、良かった。
ここからネタバレ↓↓↓
正直、凪沙が死んでしまうのは悲しすぎた。けど、死ぬまでの約1ヶ月間、優海の為にを思って過ごしてて、すごい愛と絆を感じた。最後、優海にほんとに死んじゃう日と時間教えたらきっと、優海が助けて凪沙の代わりに死んじゃうんだろうなと思ったし、同時にそれも考えて、偽の日にちを伝えて運命に抗うことなく、死んでしまった凪沙は強いなと思った。
Posted by ブクログ
泣いた。泣きました。これは名作‼️
はじめのほうはねぇ…仲がいいカップルやなぁって思ってましたが…だんだんね、凪ちゃんと優海がね、ふつうにめっちゃ好きなキャラになっておりまして…ああああああーーー!最後とかもうヤバイよぉ!
Posted by ブクログ
小4娘オススメ
自分の死ぬ日がわかってたら…?
恋人に対する、母親のような深く優しい愛情。男の子の優しさと強さに感動する。
大人で、本を読みなれてる私ははじめのうちから、伏線に気づいてしまってたけど、それだけ思わせぶりな伏線が多く、読み返しも楽しいかも!
Posted by ブクログ
凪沙と優海の二人の深い絆ある関係が温かくて
読みながら凄く心打たれた。
凪沙の愛情深い優しさは勿論、
優海の温かい愛情も文章から伝わるものがあった。
"凪沙が死んだなんて、頭では認めたくないのに、
俺の心と身体に空いた穴が、凪沙を失ったことは事実なんだと訴えてくる"
この感覚は大事な人を亡くした人間でないとわからない感覚だと思うのと同時に 私自身が大切な祖母を13歳の時に亡くした時のことを思い出して涙が出てきた。
この作品を読んで思ったことは
私も凪沙みたいに遺された人のことを考えて
私がもし何かの関係で死んでしまった時に
遺族が悲しまないように出来る限りの私の跡を残してあげたいな、と思った。
死に急ごうとしている訳ではなく、
やっぱり大切な人が亡くなった時のあのどうしようもない絶望感や孤独感、様々な感情がぐちゃぐちゃになってしまう感覚は実際に体験したことのある私には凄くよくわかるから。
今回の作品は、そんな新しいひらめきを私に与えてくれたものだった。
Posted by ブクログ
青春学園ストーリー。優海と凪沙の初々しいような幼馴染でほっこりする懐かしい心温かい日常。かと思うと、一転。最後の最後で感動の涙。後悔しない生き方の小さなきっかけをもらえた物語。最後まで読むことをオススメします。
Posted by ブクログ
正直、途中まではちょっと文体が子供っぽすぎるかなとか思っていたのですが、(「運命の日」という表現もちょっと安直すぎるかなと感じてしまいました、すみません…)最後まで読み切ってみて、とても心震えた作品だと感じました。読んでよかったです。
序盤のほうの、日常の描写のところは、最初あまり劇的な展開がなくてあまり面白くないかもしれないとか思っていたのですが、そんな私が愚かでした…
最後まで読んでやっと、主人公が丁寧に生き直していたことを表現していたのだなと気づきました。再読してみると、そういった気づきが色々とあるかもとか思いました。
Posted by ブクログ
中2の娘に勧められて読みました。切ない話で、おもしろかったけど、アラフォーの私にとっては高校生の恋愛がキラキラして眩し過ぎる感はありました(笑)
Posted by ブクログ
今までの読んだ汐見夏衛さんの本で一番泣きました。感動恋愛で切ないです。読んだ後の余韻がすごいです。これは本当に読んだほうがいいと思います。ぜひ読んでない人は読んでみてください!
Posted by ブクログ
あなたには異性の『幼馴染』がいるでしょうか?
人と人との繋がり、それは私たちが生きていく中では欠かせないものです。そんな繋がりの起点のひとつは友達になることだと思います。私たちは人生のステージを上がっていく中に新たな友達を見つけていきます。しかし、なんと言っても幼き日々に関係を築いた友達との関係性は特別なものだと思います。
そう、『幼馴染』です。家が近かった、幼稚園や保育園で一緒に遊んだ、そんな起点の先に結びついた関係性は特別なものがあると思います。そして、幼き日々に起点を持つ関係性は異性の間を飛び越えてもいくものです。兄弟姉妹に通ずるような関係性もそこには生まれていくのだと思います。
さてここに、『幼稚園の頃に友達になってからずっと一緒にいて、中一の半ばからはいちおう付き合っている』という一組の高校生を描く物語があります。その関係性の強さに少し引いてもしまうこの作品。そんな関係性の先に深い思いを見るこの作品。そしてそれは、『優海を鍛える計画は、なにがなんでも遂行しないといけない』と密かに思う一人の女子高生の深い愛のかたちを見る物語です。
『深い深い海の底から、青い青い闇の中をゆっくりと浮かび上がってきた透明な泡が、光をはらんだ海面に触れてぱちんと弾けた』という中に『はっと目が覚め』たのは主人公の日下凪沙(くさか なぎさ)。『しばらく布団の上に横たわったまま』でいた凪沙は『頭がはっきりしてきて、”すべて”を思い出し』ます。『布団から出』ると、『壁かけカレンダーの前まで移動』し、『赤いマジック』で”その日”に『大きな星印をつけ』た凪沙は、『これが、私の「運命の日」だ』、『私には、この日までに、どうしてもやらなくてはいけないことがある』と思います。『なにもかも捧げたって、少しも惜しくなんかない。だって、私はそれだけのものを与えてもらったのだから』と思う凪沙は、『胸の中に芽生えた密やかな決意は誰にも知られないように、”いつもどおりの一日”を送るのだ』と覚悟を決めます。
場面は変わり、『おばあちゃん、行ってくるねー』と『門を出て扉を閉め、振り向』いたなぎさは、『母親に連れられてやって来た五歳の頃から、高校一年生になった今まで、ずっとおばあちゃんとふたりで住んでいる家』を改めて見つめます。そんな時、『なーぎさーっ!』と『バカみたいに明るい声が飛んでき』ました。『凪沙、おっはよー!』と『背後からぎゅうっと抱きつ』いてきたのは『幼馴染の優海(ユウ)』。『俺の愛の熱さを思い知れー、あはは』と『楽しそうに笑う彼は』凪沙が『どんなに迷惑そうな顔をして見せても、いつもどこ吹く風』です。『幼稚園の頃に友達になってからずっと一緒』という二人は『中一の半ばからはいちおう付き合ってい』ます。『いい彼氏なんだけれど、私のことを好きすぎて時々すごく面倒くさいのが玉に瑕』という優海。そんな『優海の腕をほどいて、自転車のハンドルに手をかけた』凪沙はさっと自転車を走らせます。『私たちが住んでいる鳥浦町は、小さな港町だ』という漁村の中を走る先に、『ここに住む漁師たちの船出の安全や人々の生活を守ってくれるありがたい神様の力が宿った石』という『龍神様の石』へとお参りにきた二人。『神様なんていないことはわかりきっているはずなのに』と今まで思ってきた凪沙は、『手を合わせて、龍神様の石に向かって深く頭を下げ』ました。そして、再び自転車を走らせ二人が通う『水津高校』へと向かう二人。やがて学校に着くと、『同じクラスの黒田龍くんが微笑みながら軽く手を振ってい』ます。『優海、今日英語の長文読解の宿題提出日だけど、持ってきたか?』と訊く黒田に『あったりめーだろ!』と返す優海。そんな優海に『宿題あったこと忘れてたじゃん。昨日電話で私が言わなかったら、また先生に怒られてたでしょ』と叱る凪沙は、『…優海のことよろしくね、黒田くん』と『ぽつりと言』います。それに『どうしたの日下さん、改まって』と返す黒田。『これからはいちいち宿題のこととか確認してあげないから、自分でちゃんと提出期限把握しなよ?』と優海に言う凪沙に『えっ、凪沙、冷たい!』と『口をとがらせながら言う優海』。そんな優海を見て『…だって、いつまでも私が優海の面倒見られるとは限らないじゃん…』と呟く凪沙ですが、『ちょうどその時、後ろから声をかけられて優海の注意はそちらに向いたので、たぶん私の言葉は耳に入らなかっただろう』と思う凪沙。『優海を鍛える計画は、なにがなんでも遂行しないといけないのだ』と思い、『よし、やるぞ、と』『自分に気合いを入れ』る凪沙。『幼馴染になってから十年、そのうち三年は恋人同士』という凪沙と優海。そんな二人の関係性を思う中に、『時間はたくさんあるようで、でもあっという間に過ぎ去ってしまうから、急がないといけない』と思いを秘める凪沙。そんな凪沙の深い思いを感じる物語が描かれていきます。
“優等生でしっかり者だけど天の邪鬼な凪沙と、おバカだけど素直で凪沙のことが大好きな優海は、幼馴染で恋人同士。お互いを理解し合い、強い絆で結ばれているふたりだけれど、ある日を境に、凪沙は優海への態度を一変させる。甘えを許さず、厳しく優海を鍛える日々。そこには悲しすぎる秘密が隠されていた ー”と内容紹介にうたわれるこの作品。”第一子が誕生”、”出産後初めて執筆した作品になります”と〈あとがき〉で報告される作者の汐見夏衛さん。そんな汐見さんは”我が子が大きくなった時に読んでほしいものというイメージ”が”作品づくり”に加わったとおっしゃいます。
そんなこの作品は、翌年に発表された「明日の世界が君に優しくありますように」に繋がる作品でもあります。作品の舞台と登場人物に極めて濃い繋がりを持つ両作は、二冊でワンセットと捉えて良いくらいに深く結びついているのです。しかし、そのことは全く異なる書名からは推測できませんし、内容紹介にも一切触れられていません。それもあって私は、「明日の世界が…」→ 「海に願いを…」の順で読んでしまいました。「明日の世界が…」のレビューにも触れたとおり、まさしく”やっちまった”というのが正直なところです。そんな私は同作の〈あとがき〉で汐見さんが書いてくださった言葉に従いこの作品をすぐに手にしました。
“前作を読んでくださった方には是非そのつながりを感じながら読んでいただけましたら、そして本作を先に読んでくださった方もよろしければ前作を手にとってみて、優海と凪沙の物語に込めた私の精一杯の願いと祈りを感じていただけましたら幸いです”。
この汐見さんの言葉からも両作が並々ならぬ結びつきを持った作品であることが分かります。順番を間違えて読んだ私ですが、そこには汐見さんが作品を超えて込められた登場人物たちへの優しい眼差しを感じる読書の時間がありました。「明日の世界が…」を先に読んだ身には、「海に願いを…」の結末はある意味わかってしまっています。しかし、そこには「明日の世界が…」だけでは予想だにできなかった物語が展開します。「明日の世界が…」には登場することのないこの作品の主人公の凪沙という一人の女子高生の崇高な思いを感じる「海の願いを…」の物語は、また違う読み味を提供してくれます。とは言え、これから読まれる方には、やはり、順番どおりに、「海に願いを…」→ 「明日の世界が…」と読み進んでいただいた方が良いと思います。
さて、そんなこの作品を読むに当たって外せないのが『海』の描写です。「明日の世界が…」のレビューでもこの点は取り上げましたが、作品の舞台が『海』を身近に見る『鳥浦』である以上、この作品においても『海』が重要な位置を占めるのは必然だと思います。
『窓の向こうには、真っ青な海が広がっている。私たちが育った町を包み込む大きな大きな海。いつだって私たちの近くにあった、日常の一部。たくさんの命を生み育んだ優しい海、そしてたくさんの命を奪った恐ろしい海』。
作品冒頭、『運命の日』に『大きな星印』を付けた凪沙がカーテンを開けた先に見る景色を描写したのがこの表現です。『私たちの近くにあった、日常の一部』という『海』。美しい『海』が『窓の向こう』に広がっている光景が思い浮かびますが、一方でそこに何かを暗示するかのように『たくさんの命を奪った恐ろしい海』という記述が暗い影を落としています。
『春のぼんやり霞んだ空を映すおぼろげな海、秋の透明な空気に映える海、冬の荒く厳しい海。どれも美しいけれど、私はやっぱり夏の海がいちばん好きだ』。
『海』の四季を単的に言い表していくこの表現。物語が後半に差し掛かり、凪沙がある重要な決断をした場面で登場する表現です。四季それぞれに印象的な姿を見せてくれた『海』を振り返っていく凪沙。とても印象的な場面です。
『一日の命を終えようとしている太陽は、最後にありったけの力を振り絞るかのようにまばゆく輝いている。まるでこの世界のすべてを燃やしつくしてしまいそうなほどの鮮烈な光。それを受けて、海も空も雲も砂も、なにもかもが、目も眩むような鮮やかなオレンジ色に染まっていた』。
夕陽を描く表現の登場です。『海』と『太陽』となると『夕陽』の描写は欠かせませんが、そのダイナミックな光景は物語に大きな起伏を生んでいきます。「明日の世界が…」でも夕陽の光景がやはり用いられていますが、この作品の描写の方がよりダイナミックに伝わって来るように思いました。
以上のように、この作品では『海』の描写が作品全般に渡って登場します。そこには、その描写を持って凪沙の心情が上手く落とし込まれていきます。物語を”絵”として読者の前に浮かび上がらせ、それによって強い説得力で物語を描いていかれる汐見さんの上手さを感じる素晴らしい表現だと思いました。
そんな物語は、『幼馴染になってから十年、そのうち三年は恋人同士』という凪沙と優海の二人の関係性が主軸になって展開していきます。冒頭から優海の凪沙への思いの強さに引いてしまう読者も数多いるのではないかと思われるくらいに、これでもかと凪沙にベタベタしていく優海の姿が続きます。流石にそれはないだろうと思われるくらいに場所関係なく、凪沙にくっつく優海に対して、お母さん的立ち位置から優海に接していく凪沙の姿は痛々しさを幾分軽減してはくれるものの読者によっては、やってられないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この優海のキャラクターの理由もやがて明らかになっていきます。一方で、どこまでも気になるのは何かを秘めていると思わせる凪沙の胸の内です。
『これが、私の「運命の日」だ』、『私には、この日までに、どうしてもやらなくてはいけないことがある』
そんな風に冒頭で何かを匂わせる様が描かれていく凪沙は、
『私に与えられた時間をすべて使って、なんとしてでもやりとおしてみせる』。
…と何かを決意している様が描かれていきます。凪沙の全ての行動は、この決意の下にあるものです。一方で、そんな凪沙の思いを知る由もない優海は極めて能天気に凪沙に接していきます。その二人のあまりに極端な対比は次第に優海の能天気さに対するイライラよりも凪沙の秘めた思いの強さが優っていきます。
『どうして神様はこんなに残酷なんだろう。優海はもうたくさんのものを失ったのに、どうしてさらに失わなくてはいけないんだろう』。
そんな風に優海のことをどこまでも思う凪沙は、
『女の子なんて星の数ほどいるのに、なんで優海の特別になったのが私なんだろう。なんで優海は、私を選んでしまったんだろう』。
そんな思いに囚われていきます。そして、
『「運命の日」はもう、すぐそこにまで迫っていた』。
結末へと向けて物語は大きく動き出します。まさかの真実が明らかになる瞬間。そんな中に凪沙の優海への思いと優海の凪沙への思いが交錯もしていきます。そして迎えるまさかの、そして運命の結末。
上記したとおり、私はこの作品の続編となる「明日の世界が…」を先に読みましたので、この作品の結末に続く未来を知っていることになります。そこには、続編を先に読んだからこそ、優海のその後の姿に思いを馳せる瞬間がありました。もしかすると、「明日の世界が…」→ 「海に願いを…」の順もあり得るかもしれない、そんなことも思いながら本を置きました。
『「運命の日」までの間、私は私にできるすべてのことを、ありったけの力を注いで、私に与えられた時間をすべて使って、なんとしてでもやりとおしてみせる』。
胸の奥に秘めた思いの先に、一日一日をひたむきに生きていく主人公の凪沙。そこには、作品に隠されたまさかの物語が描かれていました。優海の能天気な姿に少し呆れるこの作品。その一方で何か秘密を抱える凪沙のひたむきな思いに気持ちが囚われてもいくこの作品。
この作品を読まれたかたは、「明日の世界が…」を是非続けてお読みいただきたい、そこにこの作品は真の結末を迎えます!そうお伝えしたい、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
本当、私、こういう物語(スターツ)が好きなんですよね……!
とても感動しました。
美しい海の町を舞台に、前半は恋人の仲睦まじい日常が続いて"凪沙が優海に厳しく接する理由"はしばらく明かされませんが、後半からの予想にもない切なくもロマンチックな展開にグッときました。
優海はとても心が温かく清らかな男の子だし、凪沙は最高の優しいツンデレヒロインです!
あとがきで、著者の汐見夏衛先生がこれまでの作品に込めている想いを知れたことも含めて大満足です^_^
大ヒット作のあの花と夜きみを含めた汐見先生の小説、もっと読みたい!
Posted by ブクログ
最初は凪沙に奇跡が起こったから神様なんてって思っていたけど神様を信じていた優海を助けるために奇跡が起こったんだなと思うとまた理解の仕方が変わった。なんとなく結末は分かっていたはずなのに泣いた。2人とも強いなって思った。
Posted by ブクログ
高校1年で同じクラスの凪沙と優海は幼なじみで恋人同士です。地方の港町におばあちゃんと暮らす凪沙と家族みんなを事故で失った優海は、お互いに支え合い、理解し合っています。そんなある日、凪沙は優海に対する態度を変え、勉強や生活が自立してできるようにがんばり始めます。自らの運命を受け入れ、恋人へのあたたかい愛が溢れる、とても切ない恋のお話です。
Posted by ブクログ
先にこの後の話を読んでしまって結末がわかってしまっていたからこそ凪沙の想いに共感しながら読めた。もう一度これを読んだあとに次の話も読みたいなと思った。
Posted by ブクログ
なんとなくそうなんだろうなと思いながらも運命は変えられないってことでしょうか。こんなにも辛い経験をこの子だけに与えなくても…ってくらい辛すぎてあまり好みではないです。
Posted by ブクログ
結末が悲しくて、最後は涙腺が緩みまくった
年代が自分と近かったから後悔しないために大切な人に想いを伝えておくことの大事さを再確認できた。本来は一度死んだらやり直すことなんてできないのだから今から悔いのない選択をし続けていきたいと教えてもらえたので読んでよかった。
途中までの話が、特に印象的な内容ではなかったかなと思う!読みやすかった
Posted by ブクログ
JKが今まで一番感動しました!と勧めてくれた本。
汐見さん人気だよね~。
汐見さんの本は、若すぎる、、、って思っていたけれど読んでみよっと♪
そして、ちょこっとウルッとしながら読み終わって(10代だったら号泣!だったな)あとがきを読んでビックリ!!
勝手に男性の作者だと思っていたけれど、産後に初めて書きました、って呼んで女性だったのか!!と。主人公の女子の感じが男性から見た描写の様に思っていたけれど、違ったんですねー。と一人で納得。
いつか子どもが成長して、何か悩んだり、つらい思いをしたり、壁にぶつかったりした時に読んで欲しいと思って書いた作品らしい。
“そんな時、何とか悩みを乗り越え泣きわめきながらでも苦しみを吞み込んで生き抜く強さを、人は身に付けていかなきゃいけないんだと、この頃よく思います。”
親の想いだなぁ~。
なんだかんだで汐見さん4冊目。
純粋な彼女のような本デシタ。