小説・文芸 のおすすめレビュー
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ブックライブ書店員
不朽の名作「風の谷のナウシカ」に出てくる飛行具「メーヴェ」を作る!本作はその製作過程を綴るノンフィクション作品です。
完成までにかかった年月はなんと10年!最終的にはエンジン付きの、本当に乗れる飛行具を作ってしまいます!実現可能かというところから始まり、資金調達の厳しさなどさまざまな障害を乗り越えて実現していく過程は、もう感心したり憧れたりですね~。
見所は多々ございますが、あえて多くは語りますまい。百聞は一見に如かず!実際の飛行動画がYouTubeなどでアップされていますので、まずそちらからでもご視聴を!(検索ワードは「OpenSky3.0 trailer」)
動画を見て「うおおっ!?」と胸高鳴りましたら、是非とも本書を手に取りご覧ください。空を飛ぶことは難しいですが、何より大きな夢がありますね!2022年07月20日 -
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映画も公開され話題となっているこの作品。90歳を越えて詩作を始めた柴田トヨさんが98歳のときに出版し、詩集としては異例の168万部もの売上を記録したそうです。
詩の内容は、ひとり暮らしのトヨさんの日常や普段考えていることなど。決して大それたことは言ってません。でも読んでいるといつのまにか、じんわりと涙が出てきます。長い年月を生きてきたトヨさんの言葉は読者を包み込むようにやさしくて温かくて…。20年や30年の人生で弱音を吐いちゃいかんな、という気にさせられます。
かと思えば、息子さんの横顔にふと亡くなったご主人の面影を感じて「得した気分」なんて、なんとも可愛らしい一面も…。読んでいるうちに、私はすっかりトヨさんのファンになってしまいました。
まだ読んだことないという方、やさしくて力強くて、ちょっぴりお茶目なところもあるトヨさんの言葉たちに、ぜひぜひ触れてみてください!2022年07月20日 -
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藩主の側室との密通の罪で幽閉されている主人公・戸田秋谷(とだしゅうこく)。彼は10年という期限付きで、藩譜の編纂を命じられています。なぜ10年という期限付きなのか?10年後には、切腹することが決まっているのです。
物語は、秋谷が家族と暮らす山村の家に編纂補助(お目付)として送り込まれた若き藩士・檀野 庄三郎の視点で、秋谷の生き様を描いていきます。庄三郎もまた不始末を犯して、この役目を押し付けられているのですが、秋谷を師として成長していく中で、自分がやるべきことを見出していきます。
農民との交流で明らかにされる藩の実情や秋谷の心情が、季節の移り変わりを交えながら細やかに描写され、読者は庄三郎に気持ちを同化させることになるでしょう。2022年07月20日 -
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「同期」とは不思議なもの。私には十数名の同期入社がいます。助け合い、張り合ったり、時には呆れもしますが、根っこには常に信頼と感謝の気持ちがあります。友達や家族や恋人とは違う、いわば運命共同体。同時に入社しただけで、「同期」という関係は会社を出ても年をとっても変わらず、血脈のように続くのです。
「沖で待つ」は同期の絆の物語。入社直後に福岡配属になったふとっちょの「太っちゃん」とバリバリ女子「及川」が、社会人として助け合い成長する中である約束をします。
「先に死んだ方のパソコンのHDDを、後に残ったやつが破壊するのさ。」
人に見られたくない自分の趣味嗜好の塊を託せる人、というのは同期という距離感の信頼関係があってこそ。それからしばらくして、太っちゃんは事故によって死んでしまい、及川は一人で約束を実行に移すべく彼の家へ向かうのですが…。
死によって消えるものと消えないものがそっと見えてきて、周りの人に優しくなれます。少し照れくさいけど、同期に薦めてみたい一冊。2022年07月20日 -
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両親からの仕送りを頼りに東京の大学に通う主人公・時枝 修。が、ある時、両親が事業に失敗し行方不明に。仕送りも無くなり大学は除籍。住んでいたマンションも強制退去となり日雇いの危ないバイトを転々としながらネットカフェ中心の生活に陥っていきます。
自分に弱く、そして優しすぎるがゆえに底なし沼にはまっていく姿はとてもはがゆい。しかし同時に必死に生き抜こうとする姿を応援したくなります。
ちょっとしたボタンの掛け違いで坂道を転がり落ちるように落ちていく。フィクションなのにまるでノンフィクションかと錯覚してしまうマンガ『闇金ウシジマくん』を彷彿とさせるリアルなストーリー。現在の日本社会のひずみを鋭く描き切った傑作です。2022年07月20日 -
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「掏摸」という言葉は、「獏」の文字に似ているからか、まるで動物の名前のように見える。この小説は、生活のための掏摸ではなく、掏摸という行為そのものに生きる男の話だ。無意識に取り、変装資金のために取り、愛する人が死んだ悲しさで手当り次第に取る。これはいわば「掏摸」という動物ではないか。
まず興味を惹かれるのは、華麗なる掏摸の技術の数々。標的探しから証拠隠滅まで、ルポルタージュのように闇の世界が描かれる。一般市民は身近に潜む危険にぞっとし、思わず財布の所在を確認してしまうだろう。
また、感情を排除した淡々とした描写が、読者を物語の深みへ引きずり込んでいく。財布を抜き取る手先の微細な緊張まで伝わってきて、その手を相手につかまれた瞬間は本当に身の毛がよだった。主人公の行いは、善か悪かで言えば間違いなく悪である。それでも読み進めるうち、彼のミッションの成功を我がことのように手に汗握って祈るようになってしまう。もちろん、自分の財布は鞄の底へ押し込みながらだけれど。2022年07月20日 -
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花火大会が混雑するように、岡本太郎が「芸術は爆発だ!」と言ったように、爆発とは人を惹きつけてやまないもの。近年の綿矢りさ作品は、穏やかな日常から、突如爆発する。例えば、心優しい幼馴染が変貌する「トイレの懺悔室」(『憤死』収録)、想い人の恋人に嫉妬するあまり衝撃の行動に出る『ひらいて』など。確かに、かつての芥川賞受賞作『蹴りたい背中』も「蹴りたい」という欲求がテーマだった。そこから年月を経て描かれている作品群は、いわば「背中を蹴り飛ばし踏みにじってやる!」だなと思う。
この作品は主人公の恋人が、未練たらたらのだらしない元カノを居候させるところから始まる。とんでもないようで、恋愛に関してのとんでもない出来事というのは意外と世の中に溢れているわけで。理性的に考えれば、「別れる」以外の選択肢はないはずだが、主人公はとにかく耐え続ける。しかし溜まりゆくフラストレーションの先にはもちろん…。さあ、とっておきの爆発とその先の解放感を召し上がれ。2022年07月20日 -
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男が本作品を読み終えた時、その感想は2つしかない。
1.こういうオトナになりたい(30歳未満)
2.こういうオトナになりたかった(30歳以上)
自らのモラルのみに従い、強く生きる。
まさにハードボイルドの王道ともいえる本作品の魅力は、やはり主人公フィリップ・マーロウのカッコよさにつきるでしょう。ストイックな生き方と、物憂げで感傷的な描写が絶妙にかけあわされ、忘れられないシーンとセリフが目白押しです。
「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ」
「ギムレットには早すぎる」
くーっ、カッコよすぎる。人生で一度くらいは使ってみたいセリフです。
NHKドラマ「ロング・グッドバイ」の放送で今一度注目を集めそうな本作品。
戦後復興時の日本を舞台にフィリップ・マーロウがどう演じられるか、多くの方が興味津々だとは思いますが、個人的にはギムレットの扱いが気になります。
まさか焼酎になったりしないよね。2022年07月20日 -
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新年度が始まりました。新入社員の皆様はいかがお過ごしでしょうか。たくさんの変化に、きっとまだついていけない日々でしょう。私も昨年までは新入社員で、「働く」ことにくじけそうになった日も何度かありました。けれど、諦めずに働き続けていれば何とかなるものです。お陰様で、今日も社会人2年目として元気に働いています。
さて、そんな新入社員のリアルが満載なこの作品。入社から毎月の出来事が章ごとに描かれています。4月は人の名前も覚えられずにシュレッダーと戦っていた主人公が、毎月少しずつ成長し、最後には一人で決断できるまでに。素晴らしい能力を得るわけではないけれど、折り重ねてきた風景があるからこそ成長できる。失敗したり、怠けたり、キュンとしたり…という経験も含めてリアル。読みながら何度「あるあるー」と呟いて励まされたことか。
もちろん新入社員だけではなく、教育にあたる先輩社員や、就職活動に励む学生にも、新入社員の目線で仕事というものを改めて考えられる良い作品です。2022年07月20日 -
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やさぐれキャラが好き、本作はそんな貴方にぜひお勧めしたいバトルファンタジー。やたらと口汚く正義のヒーローから掛け離れた性格の主人公ですが、むしろそれがいい!マンガ作品で言えば『ブラック・ラグーン』、映画なら『ダイ・ハード』などが好きな方はきっとお気に召すハズ。
ふと気づけば大通りで銃撃、「おっ、降ってきた?」と小雨のようなノリで日常的に弾丸が飛び交う退廃的な街が舞台。カテゴリーとしてはファンタジーですが、ハードボイルドな色合いがやけに濃密です。
そんな主人公もドラゴンの力を持った人間兵器ドラゴンキラーの少女と出会ったことで生き方が変わり…ません(笑)。生まれ持った性格はそうそう変わらないものです。しかしそれが妙に魅力的なのが本作の面白い所!力の差がありまくる相手でも自分のスタンスを変えず、常にやさぐれたまま降り掛かる理不尽を乗り越える生き様は見ていて非常に楽しい!
本作は3巻完結、読み切るにもちょうど良いボリュームです。理不尽と出会う1巻、不幸と苦労が加速する2巻、もうやってらんねー!と叫びたくなる完結3巻…。どうぞ駆け抜けるようにお読みくださいませ!2022年07月20日 -
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舞台は第二次世界大戦下のドイツ。ナチや人体実験、ゲーテの「ファウスト」、北欧神話をはじめ、芸術に狂う医者の倒錯的な愛、精神不安定となった母親の幻想的な悪夢、去勢された男性ソプラノ歌手(カストラート)の美声etc…、ありとあらゆる耽美要素でお腹いっぱいの一冊だ。
さらに本書がギュンター・フォン・フュルステンベルクなる劇中作家によって著され、野上晶という人物に翻訳されたというメタ構成になっている点も見所。これにより、最終的に物語中の人物関係は二転三転し、真実も嘘も曖昧となって、読者をさらなる悪夢へと突き落す。これぞ幻想小説の醍醐味!私は読後しばらく脳内麻薬の分泌が止まらなかった。
また、本書は1997年の「週刊文春ミステリー・ベスト10」の第1位、第32回吉川英治文学賞受賞などミステリーとしても極上。皆川博子の目くるめく幻想の世界をぜひご堪能あれ!2022年07月20日 -
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「妖怪」じゃなくて「妖人」。
見た目は人間と同じ。人間の亜種として近年発見され、DNA検査でしかわからない。いじめや差別が増え、警察も対応の部署を新設、妖人と人間が共存する世界。毎度妖人がらみの事件で行き詰る刑事達は、洞察力の鋭い美貌の妖人・洗足伊織(せんぞくいおり)を訪ねる…。
本格的なミステリーに、魅力的な男性キャラたち、妖人設定の美味しいミックス。
千里眼、管狐(くだぎつね)、小豆洗い、座敷童、河童…等、なじみ深い妖怪の性質を持った(見た目は人間と同じ)妖人たちの物語。だが実は妖人たちよりも一番怖いのは人間のほうかもしれない。女の友情の笑顔の裏にある悪意に恐怖する事件。
あとは…座敷童の健気さに泣き、小豆洗いの可愛さに萌え、伊織の理詰め毒舌に降参し、脇坂刑事の天然っぷりに呆れ、そして女をそそのかして生きる恐ろしく色気のある悪い男・青目に恐怖してくださいませ!2022年07月20日 -
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突然ですが皆様、尊敬する偉人はいますか?私はといえば真っ先に浮かぶのが上杉鷹山!かのジョン・F・ケネディ大統領も尊敬する日本人として挙げた凄い人です。
江戸時代、面子と体裁を何よりも重んじる武士の振る舞いが財政破綻を引き起こした米沢藩。主人公 治憲(後の鷹山)は傾いた財政を立て直すべく、改革に乗り出します。民の幸せのため、その一念で自ら率先して節約したり新たな産業に投資したり企画したりと、時代小説としても楽しめますがビジネスの教訓として見ても非常に面白い!見習うべきは人を思いやり、反対する人々に対しても誠心誠意で向き合うその姿勢でしょう。汚い妨害工作に遭いながらも、その人柄に惚れた人々の助けで改革が進んでいく様子は、涙無しには語れません。
優れたリーダーとは「この人のために働きたい」「この人は自分が支えてあげなければ」と思わせる仁徳を持つ人、という話を聞いたことがあります。それをここまで体現した人物もかなり珍しいのではないでしょうか。まさに老若男女を問わず、誰でも一度は読んで欲しい一冊!「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も。成らぬは人の、為さぬなりけり」…そんな言葉を残した名君の改革を是非ご覧ください。2022年07月20日 -
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マンガ家・西原理恵子が「カネ」と自らの人生について、赤裸々に語った本。
「カネ」で家族が崩壊するという壮絶な経験をしたのち、高知から上京。貧乏生活を続けながら美大の予備校に通うも、成績は最下位…。そんな状況で「絵でお金を稼ぐ」という信念を持ち続けるのは容易ではなかったはずですが、彼女は自分のやり方で道を切り拓き、徐々に「絵を描くこと」でお金をもらえるようになっていきます。やがてマンガ家になった西原さんは、またしても「カネ」に翻弄されてしまうのですが…。
才能がある人と自分を比べて落ち込む暇があったら、自分が戦える場所を探し、そこで勝負する…そんな生き方を選択できたのも、お金を得ることの厳しさを幼い頃から身に染みてわかっていたからこそ。逆境から這い上がり成功した西原さんの生き方には敬服。お金や仕事への向き合い方を改めて考えさせられました。2022年07月20日 -
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2007年に直木賞を受賞し、2014年6月に待望の映画化となった本作。
大地震で家族を失くした10歳の花を、25歳の淳悟が引き取り、やがて二人は二人だけの幾つもの「秘密」を重ねていく。
この物語は、主人公の花の結婚から、徐々に過去へと遡っていきます。
パズルのピースをはめるように、お互いを求め続け、「父と娘」を超えた感情が渦巻いていく。
親子・恋人・究極の愛・殺人・渇き・匂い・グロテスク…
私は読みながらそんな言葉を思い浮かべました。
決して明るい作品ではありませんが、冒頭の数ページで、作品の世界観にすっと引き込まれます。
人によって、違った感想を持つ作品だと思います。気になった方は是非。2022年07月20日 -
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作家というのは嘘つきなものですが、皆川博子ほど上手に嘘をつく作家も珍しいのでは。
本作の舞台は18世紀ロンドン。解剖学に命を捧げる外科医・ダニエルの前に、突如としてあらわれた2つの異様な屍体。治安判事の捜査に協力するうち、浮かび上がってきた犯人は──という、いわゆる本格ミステリ小説ですが、そこは皆川博子、一筋縄ではいきません。
解剖学、墓暴き、稀覯本、同性愛、男装の令嬢など、ゴシックなアイテムを散りばめつつも、どこかコミカルに、ユーモラスに進んでいくストーリーに引き込まれること必至。また、登場人物がみんな魅力的なんです。天才細密画家のナイジェルと美男子エドの友情+αな関係は、乙女な読者のアンテナにもひっかかるのでは。
第12回本格ミステリ大賞に選ばれただけあって、ミステリとしても一級品。2022年07月20日 -
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新宿・ハードボイルドといえばご存じ『新宿鮫』ですが、「鮫」だけでなく「狩人」もいたのです。本当に恐ろしいところです、魔都新宿。
「狩人」の名は梶雪人。秋田からやってきた彼は一見、純朴な田舎者。物語は彼があっさりとボッタくりバーに連れられていくところからスタートします。「やめとけ!」とつい声が出そうになりますが、彼には虎穴に入る理由があったのです。それは新宿の闇に葬られた12年前のある事件に関わる、決してほじくり返してはいけないものでした…。
続巻の『砂の狩人』『黒の狩人』はそれぞれ主人公が違うので、本作の「狩人」にもう出会えないのが少し残念なくらい、読み応えのある作品です。コミカライズ版『雪人 YUKITO』は若干ストーリーが異なりますので、続巻もコミックもぜひ合わせてお楽しみ下さい。2022年07月20日 -
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これまでは自身の体験をもとに旅行記を執筆していた著者が、小説に初挑戦!
探偵もので想像するものと言えば、殺人事件…そしてそれを解決する超頭脳派で、かっこいい主人公たち。この作品はそんなイメージを吹き飛ばす、軽快コメディタッチの新感覚探偵小説。
主人公は、愚痴る時だけは口が達者な25歳の無職のニート・伊藤たけし。彼の情けなさと言ったら、悪徳商法にひっかかり、そのお金を父親に肩代わりさせるほど!
ついに父親にも見放されたたけしは仕事を探し、面接に臨むのだが、あえなく玉砕…そんな彼が脱ニートしたきっかけは、笹塚にある探偵事務所だった。
難解事件ではないけれど、緻密に練りこまれたストーリー展開と文章のテンポの良さに、思わず引き込まれてしまいます。特におすすめしたいポイントは、たけしの心の声!情けなくてぶん殴りたくなる時もあるけれど、その情けなさに共感し、ちょっと吹き出しちゃう微笑ましさもあるセリフに注目です!2022年07月20日 -
ブックライブ書店員
「好きな小説は?」と聞かれたら真っ先に思い浮かぶのが、この本。初めて読んだのは10年以上も前なのに、何度読み返しても引き込まれてしまいます。
高校生のマオと、やがて遠い地へ旅立ってしまうハチ。おばあちゃんの予言通り、やっと出会えたのに、別れの日は刻々と近づいて…お互いを好きなまま、もう一生会えなくなってしまう二人。あまりに辛すぎる展開ですが、最後の日まで恋人としっかり向き合い、全身で別れを受け止める主人公の姿はとても美しく、鮮烈な印象を残します。
恋愛中の人には、愛する人が側にいる幸せを。失恋した人には前を向いて歩く勇気を与えてくれる、そんな力強い小説です。2022年07月20日 -
ブックライブ書店員
寝る前に読んではならない本といえば、続きが気になるミステリー、背筋の凍るホラーが定番だろう。しかし、美味しそうな食べ物がたくさん出てくる本も要注意!私は夜中に『あまからカルテット』を読み始め、冒頭の「お揚げから美味しいおつゆがジュワッ」というお稲荷さんの描写があまりにも美味しそうで、空腹の胃を抱えて悶絶したことがある。
この作品の登場人物は女子校出身の仲良し四人組。しかしただの美しい友情小説ではなく、仲間割れもたびたび。劣等感や嫉妬など答えの無い問題は女同士のコミュニティにつきものだけど、そのたびに美味しい食べ物が仲直りの勇気をくれるのがこの作品の魅力。
それにしても、作中に登場する手作りの食べ物たちを実際にぜひ味わってみたいものだ。物語の鍵となるお稲荷さんの表紙写真に思わず、よだれが…。満腹の時に読むことをおすすめしたいが、お腹が空いているときにこそ染みわたる本かも。2022年07月20日
