【感想・ネタバレ】掏摸のレビュー

あらすじ

東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎、かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」――運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは……。その男、悪を超えた悪――絶対悪VS天才スリ師の戦いが、いま、始まる!!

...続きを読む

「掏摸」という言葉は、「獏」の文字に似ているからか、まるで動物の名前のように見える。この小説は、生活のための掏摸ではなく、掏摸という行為そのものに生きる男の話だ。無意識に取り、変装資金のために取り、愛する人が死んだ悲しさで手当り次第に取る。これはいわば「掏摸」という動物ではないか。
まず興味を惹かれるのは、華麗なる掏摸の技術の数々。標的探しから証拠隠滅まで、ルポルタージュのように闇の世界が描かれる。一般市民は身近に潜む危険にぞっとし、思わず財布の所在を確認してしまうだろう。
また、感情を排除した淡々とした描写が、読者を物語の深みへ引きずり込んでいく。財布を抜き取る手先の微細な緊張まで伝わってきて、その手を相手につかまれた瞬間は本当に身の毛がよだった。主人公の行いは、善か悪かで言えば間違いなく悪である。それでも読み進めるうち、彼のミッションの成功を我がことのように手に汗握って祈るようになってしまう。もちろん、自分の財布は鞄の底へ押し込みながらだけれど。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

とにかく読みやすい。情景が浮かび掏摸の緊迫した様子が浮かぶ。淡白な文が続くが闇社会を表現するにはちょうどいい気もする。中村文則作品を初めて読んで他の作品も気になった。

0
2025年10月23日

Posted by ブクログ

天才スリ師である主人公の事を書いた一作。
どう感想を書けば良いのか分からないので、作中に出てくる塔について、少し話そうと思う。
彼がスリに失敗する度に見えていた塔。
未熟な時には見えていたその塔は、いつしか見えなくなっていたらしい。なぜか?失敗しないからだろう。失敗すれば、その塔に見られる。成功すれば、塔は見えない。
現状、僕には塔が見えない。しかし、いつか見える様になるのだろうか。

0
2025年06月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

うーん、何とも言い難い読後感。結局、語り手の「僕」は、いい人だった。最後に投げた血だらけの五百円玉が、彼の命を救ってくれることを願わずにはいられない。

「……お前、ボール投げるの得意か」
「……わかんない」
「あのつまらないガキより速く投げろ」(p164)

「俺は、遠くに行かなければならないから、もう会えない。……でも、つまらん人間になるな。もし惨めになっても、いつか見返せ」
僕がそう言うと、子供は頷いた。子供は僕の手を握ることはなかったが、帰る途中、コートの端をもう一度つかんだ。
「取りあえず、服を買え。……ちゃんとした服を」(p165)

「僕」は、スリという行為を「あらゆる価値を否定し、あらゆる縛りを虐げる行為(p158)」だと言い、「入ってはいけない領域」に指を伸ばすことに快楽を感じる。その一方で、自分のやっているスリが、ただの犯罪であることをよく分かっている。だから、母親に万引きをさせられる子供を見て、真っ当に生きろと言う。

子供にスリの技術を教えるとき、無意識に物を盗んでしまう「ピック症」という病気があることを「僕」は教える。

「若年認知症の一種とか、色々言われてるが、謎が多くて不思議だ。なんでそうやって無意識になった脳が、物を盗む行為に出るのか。なぜ盗みでなくちゃいけないのか。……何か根本的なことがあると思わないか」(p82)

「僕」は、知らない間にスった記憶のない財布がポケットに入っていることがある。彼自身がまさしく、無意識のうちに物を盗んでしまう「ピック症」なのである。
彼が思った「根本的なこと」が何なのかは分からないけれども、意識にのぼることもなく人から物をスれることが、彼を危険な世界に導いて、最後に殺されるという運命に至る。そういう意味では、彼の人生にとってスリは、たしかに「根本的な」何かだった。

スリという形でしか生きられなかった男は、そのようにしか生きられなかったからこそ、その生き方がいかに暗い生き方なのかを知っている。だからこそ、「まだやり直せる」子供には、「万引きや盗みは忘れろ」と語る(p163)。
とっても、「僕」は、どんな真っ当な大人よりも、本当に教育者だと思う。

0
2025年06月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

木崎のような権力者、命令に従うしかない主人公、そして守られなければ生きられない子供。作中に並ぶ三者は、世界に埋め込まれた見えない階層を象徴しているように感じられた。生まれた場所で人生の輪郭が決まり、抗う術も与えられない世界。その冷たさの中で、人はどこまで「自分の意思」を保ち、貫けるのか──という物語だと思った。
あの子供には良い人生を送って欲しいな、、

0
2025年11月29日

Posted by ブクログ

大きな物語の途中からの話を読んでいるようだった。しきりに女の人の名前(忘れちゃった)のことを思い浮かべながら自分の現在の言動について向き合ってる描写があった。あとがきにあったように16章が物語の中核になっていたみたい。あの「塔」の存在は大人になってからはその女の人と照らし合わせていたのかな。「光が目に入って仕方ないなら、それとは反対へ降りていけばいい」割り切った生き方、だけど生きることへの強い渇望を感じた。掏摸に特化しているが、この主人公はきっと頭が切れるし器用で非常に優秀な人なんだと思う。その方向性が「反対へ降りていけばいい」にとことんなんだと思う。木崎?が言っていたように、強盗にも位があってバカじゃできない。悪いこととわかっているし、罪悪感もない、「子供」のような環境や育ちだったらその道に足を踏み入れ兼ねない。情が働いていた。終わりには希望の光が差すような、主人公らしくないのからしさ全開なのか、絶望的な状況だが、まだやり残したことがあるかのような生きることへの希望。

0
2025年11月15日

Posted by ブクログ

スリをしながら生きる主人公が、過去に、ある男達の強盗の補助をする 
その時の元締め木崎に3つの仕事をするよう脅される

孤独な主人公が行くつく先はー破滅か

主人公にとって生きている世界は硬く強固で、縛りのあるもののようで、他人の物を盗む行為だけが周囲を流れるあらゆるものから自由になれる、暖かで確かな温度をもったものだった

スリをしながら退廃的に生き、自分の人生において消えてほしくないものがあり、消えてほしくない人間のことを想っている

主人公の心の中に現れていた塔
あらゆる価値を否定し、あらゆる縛りを虐げる行為の象徴

「全身の力を使い、コインを指で挟んだ。遠くには、高く立つ、霞んだ塔があった。」

私には、主人公が硬く強固だった世界に抵抗し、挑んだように感じた

⋯生きていてほしい、と願わずにはいられない

0
2025年11月05日

Posted by ブクログ

テスカトリポカを読んだ時も感じたけど、残虐な行いの背景に「神」だとか「運命」だとか書かれていると、不思議と神秘的な思いにとらわれ、善悪の境界があいまいになる。
今回も木崎のセリフでそのように思った。
スリは犯罪と重々承知だが、スリの技法の部分がとてもスリルがあって楽しかった。
失敗するかもしれない時、「僕」がとっさの判断で相手にスキを与え、結果スリに成功する描写がとてもワクワクした。「僕」は天才スリ。土壇場にどう切り抜けるかの引き出しを沢山持っているのだろう。
そもそもの主題「運命とは?」に関しては、全くピンとこない。あの少年を守りたくて木崎の要求を飲まざるを得ず、木崎が想定以上のワルで単に騙されただけの話に思う。
最後に、500円硬貨を放って通行人に気づいてもらい、どうか「僕」の命が助かって
あの少年と再会してほしい。そして、少年の母にこれっぽっちの同情はない。
続編のような形で「王国」という小説があるのをあとがきで知ったが、読んでみたいけど木崎がむかつきすぎてどうしようか迷っている。
以下印象に残ったセリフを記録しておく。

「その後に自分が死ぬのは明らかで、僕はなぜか、そうなりたくないという、強い思いに囚われていた。何が自分を引き止めるのはわからなかったが、失敗を避けて動いたこと自体、自分がこの世界の何かに、執着しているのを意味した。」

0
2025年10月25日

Posted by ブクログ

「銃」に続いて中村文則
これも一気読み

やはり好きな文体ではあるので、もう少し他の作品にも手を出さざるを得なくなった

主人公の過去はもう少し掘り下げて欲しかった
貴族と運命、のあたりは既読感があった
点をマイナスして星4つ

0
2025年09月27日

Posted by ブクログ

掏摸か…漢字読めんかったけど(^◇^;)

ほぼ両利きとは、掏摸の為に生まれたような…
しかし…
そんな世界にずっと生きてきて、なにを思うんやろうな…
それも、モロに一匹狼みたいな。
仲間いた時代もあるにせよ。
どこにも、属さないのは、どこからも、左右されないことで、自由なんかなぁ…

でも、属さないのは、利用もされやすい。
この人の人生は、何やったんかな?
一匹狼みたいで、結局、属さない世界からの掌コロコロみたいな。

もっと生への執着ないかと思ってだけど、やはり、人との繋がりが…

最後の500円の効果(硬貨やない)が、あったらええかな…

これ描く前に、「旧約聖書」読んでたみたい。それから、どうヒント得たのか分からんけど、芥川賞の作家さんは、理解不能な事多いから、その辺は考えんとこ!

前に、読んだヤツよりは、良かった!前のよく分からんかったし!(^◇^;)

******************

今週は、久々の邦画!映画館へ!

「フロントライン」

そう言えばあったな。
こんな未知のウィルス相手にしてんのに、外野うるさ過ぎる!

風評被害が怖い!
畑違いの医師達が救助に向かうんやから、感染の専門家からしたら、あかん事してるんかもしれん。
なら、なんで、すぐ船降りて、動画なんてアップするんやろうな…
冷遇されて嫌なのは分かるけど、船におる人の命を助ける事を最優先に考えて、どうすれば良いかを考えて欲しかった!
その方法が動画アップって考えてたのなら、何も言うことないわ!( *`ω´)

DMATの方々及び、関係者、クルーの皆さんお疲れ様でした!

0
2025年06月15日

Posted by ブクログ

何だったんだろう。
最近読んだ本も。
終わりがあんまり好きじゃない
死んだかどうかも不明。
モヤモヤしますね。
ただ、途中途中はスリルがあって良かった。     

追記:読んでからだいぶ経って、ふと思い出すとやっぱり怖い。最後が特に。

0
2025年05月01日

Posted by ブクログ

192ページというコンパクトな分量ながら、長編を読んだかのような重厚感のあるストーリーだった。スリ師の話で犯罪に関わっている人たちしかほとんど出てこないため、終始ダークな雰囲気が醸し出されている。主人公は世間からはみ出てしまって自分の人生に希望も持てずにいて、ある日最悪な男と再会して犯罪に加担していくことになる。心の中の葛藤もよく描かれていて、ストーリーもテンポよく展開されているため飽きずに最後まで読むことが出来た。

0
2025年04月30日

Posted by ブクログ

主人公の心の動きや内面の世界。光がいやなら、光が当たらないところにいくしかないという考えが面白かった。この筆者の心理描写が大好きです。

0
2025年04月17日

Posted by ブクログ

中村文則の長篇。
2009年刊行。大江健三郎賞受賞作。

東京を拠点に活動するスリ師の西村は、街行く金持ちから気まぐれに財布を盗む生活を続けていた。
彼は天才的な技術を持ちながら、行為にも人生にも目的がなく、ただ日々を消費していた。

ある日、西村はスーパーで万引きする親子を見掛ける。母親が幼い息子に万引きをさせていて、それをGメンに見つかっていたところだった。
気まぐれで親子を助けた西村は、以降二人と関わっていくことになる。

そんな中、西村にとって最悪の過去をもたらした謎の男、木崎と遭遇する。
木崎は、西村にある3つの仕事をこなすように依頼する。さらに仕事を断っても、失敗しても西村とあの親子を殺すと脅迫する。
西村は迷いながらも、仕事に取り掛かる。

以上があらすじ。

スリという古典的な犯罪をテーマにした小説だが、リアリティとスリルに満ちた描写になっており、序盤から一気に引き込まれた。

作者のデビュー作『銃』と似た構成になっており、主人公が退廃的で情緒が乏しいところも似ている。

西村は幼少期の孤独な経験から、自分を受け入れてくれた人たちに強い執着を持つ。木崎に殺された仕事仲間の石川や、自殺した昔の恋人である佐江子への執着を捨てられない。
これは彼の反社会的な生き方やクールな性格とは相反する性質である。
作中でも木崎から「社会に背を向ける生き方をしていながら、他人と関係を作るなんてバカのすることだ」と指摘されている。

また、「こんな生き方をしている自分が最期どうやって死ぬのかを見てみたい」と気取ってみながらも、実際に死に直面すると「こんな死に方はしたくない」と言うなど、矛盾する描写をしている。

この主人公の葛藤・揺れを味わうことができるのも本作の魅力だと感じる。

また、西村自身が「病気」と称していた、無自覚に他人の物を盗むクセによって、最終盤に自身が助かるかもしれない可能性を得るという演出も良かった。

一方で、木崎の描写には違和感があった。
木崎が何をしているのかは言及されないが、反社会組織の元締めのように描かれており、サイコパシーと残虐さが目立つキャラとされている。

実際にキャラは立っており、魅力はある。しかし、立たせようとしてリアリティのない設定や突っ込みどころの多い行動が多いので、本作では浮いてしまっているように感じた。
(そんな裏社会の大物が西村や石川のような何者でもないチンピラに時間を割くわけがない、とか)

本作のひとつのテーマである「運命とは何か?」についても、薄っぺらい上に説教臭くてマイナスポイント。取ってつけたような印象を受けた。
これなら、「悪」と「ドラマツルギー」の二軸を貫いた『銃』の方が圧倒的に読後感が良かった。

良くなかったところも書いたが、全体としては展開にスピード感があって面白かった。
エンタメとして優れた作品だと思う。

0
2025年04月16日

Posted by ブクログ

【全体の感想】
中村文則さんの作品においては共通だが全体的に暗い。しかし人生の影に目を向けることによって、より光が際立つ。本作を読み終えた後、「他人に人生を支配される≒定められた運命に従って生きるしかない」といった理不尽がこの世に確かに存在していること、そしてそれを自覚したうえでどう生きるか。そういったことを考えた。自分の人生の行先が既に決まっているのだとしたら、これからの生き方は変わるのだろうか。積極的ニヒリズムという考え方があり自分はそれが好きなのだが、この場合で考えると「人生の行先が決まっていても決まっていなくても、無価値であることに変わりは無い。ただそこに自分なりの価値を創り出すことはできる。」となる。たとえ決まっているのだとしても、自分の感情や思想だけは唯一自由なのものだと信じて生きていきたい。

【印象に残った場面】
主人公が少年に小さな箱を渡す場面。”俺には元々、必要なかった。もう駄目だ死ぬしかないとか、力がいるとか、何かやばいことになったら、開けてみろ。こういうのも面白いだろ”P163 この箱は一体何だったのだろうか。「俺には元々必要なかった」「少年には真っ当に生きて欲しい」そう思っている主人公が渡すのだから、裏世界に関連するものではないのだろう。自分は「家族」が入っているのではないかな?と考えた。例えば主人公が少年の父親になることが証明されている養子縁組の書類とか。いやでも、少年には真っ当に生きて欲しいと考えるなら、裏世界に生きる自分との繋がりをわざわざ作らないか。じゃあなんだろう。わからん。

最後にコインを投げる場面。運よく女性が通りかかるのだが、私はこれすらも木崎が仕込んだことなのではないかと疑った。しかし巻末の-文庫解説にかえて-を読むとそうではないらしい。自分の選択で他人の支配から逃れられる道が見つかるかもしれない、そんな希望の残るラストで良かった。

0
2025年04月06日

Posted by ブクログ

これは、現実に裏社会でもありそうで、とてもリアルな話でした。掏摸の生活ってこういう感じなんだろう……

0
2025年04月05日

Posted by ブクログ

常に緊迫感を想像させる文章だが、文体は冷たく、そのリズムが読みやすく、心地よいとさえ感じれる。
中村先生の本はぎゅっと詰まった文字数にも関わらず、本当に読み易い。

掏摸。どちらかといえば、陳腐な犯罪。
『銃』では、1つの結末を予測しながらも、その物語の構成を楽しんだ。
『掏摸』では、構成はイメージしつつも、結末が予測できずに楽しめた。

言語化せずにいくと

わちゃわちゃどきどき…はっ!
どきどき、ぴきぴき…はっ!

ってな感じで、はっ!にあたる文章が好きすぎる。

人の畏怖、木崎の異質さ、親子という鎖

はやく『王国』を読まなければ…!

0
2025年03月15日

Posted by ブクログ

単なるスリを超える恐ろしい裏の世界。
怖くて読みながら体調が悪くなりそうで、それでも先が気になって読むのが止められず、ものすごい緊迫感でした。
おかげて怖い夢みました‥
それほど闇世界に引き込まれました。

0
2025年02月27日

Posted by ブクログ

4.2/5.0

天才スリ師の男が闇社会の男、木崎と再会し事件に巻き込まれていく。
クライムサスペンスとして充分読み応えがあるけど、
この男がスリをするようになった幼少期の心情表現がものすごく印象的だった。

0
2025年02月03日

Posted by ブクログ

アメトーク読書芸人をみて中村文則を知る。早速、こちらを手にして読んでみた。全編に渡る緊張感がたまらなくよい、平成の村上春樹と呼ばれていると下記レビューにあるったが今後、注目して読んでいこう。それと、もう一人、西加奈子もおすすめらしい。

0
2025年11月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今までの自分の読者傾向をもとに、チャットgpt から強烈におすすめされて本だったが、微妙だった。確かに、木嶋とその組織の正体が謎である終わり方もいいと思うし、むしろこの小説にミステリー要素を求めるのはナンセンスなのだろうが、それは読んだ後にわかることで、若くて刺激を求めてしまう自分にはどうしても物足りなかった。やっぱり、主人公の過去、組織の正体、社会体制、構造反転など壮大なものを期待してしまった。この小説の冒頭の私小説的な件も「しゃべり始めたな」と正直思ってしまった。あとがきも真っ直ぐな言い訳を聞かされているようで惹かれなかった。自分は寡黙の美学のようなものを作者や芸術に求めてしまうのかもしれない。

0
2025年11月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

普通に面白かった。
スリを覚えて実行して、結局は木崎に刺されてどうなったのかな?助かった?あの子供は施設に行けたのかな??
続きがあるみたいなので読まなければ。

0
2025年10月18日

Posted by ブクログ

中村文則の作品の中では物足りない感覚。『遮光』や『何もかも憂鬱な夜に』の方が、考えさせられるものや、心にくる衝撃が多かった。
中村文則は、闇の底を体験させることで、日常の光の部分に気づかせようとしているのだと思う。

0
2025年09月20日

Posted by ブクログ

木崎という男に運命を握られた天才スリ師である西村のストーリー。

快感を求めてスリを実行し、命を奪われないために犯罪の駒となった西村。
他人の人生を動かすことを最上の快楽と捉え、ゲームのように犯罪を計画立案していく木崎。
どちらも犯罪者という面では同じだが、圧倒的な本質の差を感じた。

奪われるものが何もない人を「最強の人」というが、命を奪うことを何とも思わない木崎も最強の人である。

他人を暴力で支配してコントロールし、それを「運命」という木崎に対して、西村の最後の抵抗は爽快。
登場人物が掏摸、恐喝、殺人などの犯罪者とネグレクトの親子なのに対して、読後感は良かった。

兄妹篇の『王国』も読んでみたい。

0
2025年08月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どんよりした雲が漂ってそうな雰囲気があった。
読後感が良かったのと、文章量も多くないし読みやすかった。
主人公の生活を遠いところからに盗み見しているような感覚。淡々と物語が進んでいき、あっけなく終わる(死んだかわからないが)のが妙に現実味があって面白かった。
スリの描写が上手かった。
最後のところも気になるけど明かされないのも良いと思った

0
2025年07月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文庫本の後書きでも作者が書いていたように、小説の構図はシンプルながら、随所に表現される「塔」の存在が物語の奥行きを表現しているように感じた。

自分が生きる社会との距離を感じる世界観ではありつつ、主人公の反社会的な行動と、子供に向ける優しさのようなものは、誰しもが抱える矛盾を上手く表現している。

個人が大きな運命に抵抗する姿と、人の心の矛盾を表現しているそんな物語だった。

0
2025年05月29日

Posted by ブクログ

久しぶりの中村文則作品。
こんなに読みやすかったっけ?と思うほどすんなり読めたけど、内容はやはり難解。
塔の意味するところ、運命とは結局なんなんだとか答えは読む人の数だけあるのかも。

最悪の男・木崎のような男がいる闇社会は現実に存在するんだろうけど、絶対に関わりになりたくないな〜。
それでもラストには少しの希望があって救われた。兄妹編の「王国」を読めば彼のその後もわかるんだろうけど、闇社会はしばらくいいかな…。

0
2025年05月19日

Posted by ブクログ

裏社会で生きる人々、道から外れた人から漂ってくる諦念のような感情が印象強く、陰鬱な雰囲気もありながら掏摸というスリリングな行いから生じる緊張感も読んでいて伝わってきました。運命とは何か、人を支配する支配される関係など短い文章の中に濃厚な要素がたくさん詰まっていて読み応えがありました。

0
2025年05月09日

Posted by ブクログ

中村文則さんの作品は全体のイメージが陰鬱で読んでいるとドヨーンとします
この作品のスリの描写はイメージしにくかった。ストーリーの大筋には関係がないので問題はないのですが。
所々文章に違和感を覚えつつも興味深く読み進めていけたので結局は面白かったのだと思います
王国も読もうと思います

0
2025年04月29日

Posted by ブクログ

ハードボイルド。紙数は少ないが、ボリュームを感じる。非社会で生きる主人公の境遇、見捨てられず面倒を見てしまう不遇な子ども。運命に少し抵抗することが生きる価値と言えるだろうか。目の離せない展開でわくわくした。2025.3.24

0
2025年03月24日

Posted by ブクログ

【列】を読んで他の作品も読んでみたくなりました。
中村さんの代表作という事で期待したんですが個人的にちょっと違うなぁと感じました。

スリをする描写や木崎という男と再開してからの緊張感はさすが!と思ったし、面白かったのですが。。。

単純に主人公の考え方、行動に???
なんか、スッキリしない感想になりました。


0
2025年03月22日

「小説」ランキング