ブックライブの書店員おすすめレビュー

小説・文芸 のおすすめレビュー

  • ブックライブ書店員

    当時、私は都内某所のビル18階におりました。大きく長い揺れ、徒歩で数時間かけて帰宅したこと、実家や友達となかなか連絡が取れなかったこと、その後、流通マヒにより業務が大混乱になったこと…冒頭のシーンで記憶が蘇ります。きっと一生忘れられないでしょう。
    この作品は、現地の有力新聞「河北新報」が百年以上続いた「無休刊」を守りぬいた激闘の記録です。1日1日の記者・スタッフ・被災者の様々な困難・葛藤を振り返り、その結晶として章末に翌日の紙面が来る構成となっており、紙面を見ると自然と泣けてきます。想像を絶する被害状況をセンセーショナルに伝える全国紙とは一線を画した「被災者目線」で伝えていく。その結果、地方紙としての存在意義を見出していく。ただ感動した、では終われません。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    良いですよーコレ! と、何はともあれ、まずオススメの言葉をお送りします!
    少女と騎士の話から始まる儚くも美しい幻想譚。全3巻+外伝という構成ですが、本当に読んで良かったと感じる作品でした。複数の視点で構成されるストーリーは、それぞれの登場人物が歩んだ夢と想いを描きつつ、最終章へ収束していくこととなります。どのエピソードも胸にジンとくる描写に溢れ、しかもテンポよく進んでいくのでページを捲る手が本当に止まらない……おかげで帰宅中の電車で何度か降り損ねてしまいました。初めて本作を手に取る方はとってもラッキー!発売日を待たず一気に完結まで読めるのですから!
    著者のデビュー作『煌夜祭』も非常に心に残る傑作でしたが、『夢の上』ではボリュームが更にアップ、より長くじっくりと楽しむ事ができます。悲劇や理不尽な状況に置かれながらも懸命に前へ進む人々の意志や心の動き、そういった描写が本当に巧い。本作はその真骨頂と言えるでしょう。絶対に読んで損はありません!カートボタン、どうぞ!

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    運命の出会い、というものがある。
    夢生にとって漱太郎との出会いがそうだ。ハンサムで誰にでもやさしくてクラスの人気者──最初は、その「ジェントルマン」っぷりに違和感をおぼえていた夢生だが、漱太郎の秘密(彼は悪魔である!)を知ることで、激しい恋に落ちてしまう。漱太郎は誰のことも愛さないが、夢生だけは「特別だ」と言う。それは、愛ではなく呪縛である。
    最低な、本当に最低な人間だと思うのに、いつの間にか漱太郎に惹かれている。人は相手が「善人」だから恋をするのではない。それをまざまざと思い知らされる。
    男が男に命がけの恋をする…という意味では、BL好きの淑女方にもオススメだが、パステルカラーの甘い菓子ではなく、毒がたっぷり入ったブラックコーヒーだと認識したうえで読まれたし。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    昔の刑事ドラマで凝り固まった警察像の崩壊!
    実際に警視庁公安部で勤務した著者が、最新かつリアルな警察を描きます。主人公の青山望を中心に、ノンキャリアだけど大卒(体育会出身)でキレキレの同期4人が、ヤクザ・政治家・IT長者・半グレ・芸能界・宗教団体が複雑に絡む難事件を、様々なIT技術で解決。ビッグデータの解析力と分析力は圧巻で、地道な職務質問(もちろん重要だと本書に書いてあります)やパンを食べながらの張り込みといった旧来のものとは全く異なる捜査方法に感動。
    1巻は日韓利権、2巻は病院経営と選挙違反、3巻は半グレと中国マフィア、4巻は原発とカジノ、5巻は仮想通貨ビットコイン…まるでニュースを見ているかのようなリアルタイム感。一般教養書としても使えます。次巻のテーマは何でしょうか?

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    突然の不幸が次々と家族を襲うさなか、実家の押入れから発見された「ユリゴコロ」というタイトルの奇妙なノート。そこに書かれた「殺人鬼の半生」は一体誰のものなのか。それが判明する時、彼の現実も動き出す…!
    「ユリゴコロ」というノートに綴られた殺人の記憶は、目を覆いたくなるほど残酷で、全くもって共感しがたい。しかしその柔らかな文体からは、どことなく人間に対する不器用な愛情らしきものを感じてしまう。
    作品自体が小説であるのに、作中でも「書かれていることが真実だという直観から逃れらなかった」と述べられているように、このノートの内容はフィクションの類ではなく、本物の手記なのでは?と思えてしまう。その表現力は圧巻。
    後味の悪いミステリー「イヤミス」に挙げられる作品だが、不思議と人間の暖かさが余韻に残る作品です。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    一流マジシャンを目指していたはずが、ずるずると場末のマジックバーで働く轟晴夫(とどろきはるお)。晴夫の母親は、晴夫を産んだ直後に亡くなり、父親とは何年も顔を合わせていない。
    ある日父親の訃報を受けたあと、両親が生きている過去へ突然タイムスリップする。過去へ行って初めて知った、父と母の出会い、そしてその二人の晴夫へのまっすぐな愛。
    お笑い芸人の劇団ひとりさんの『陰日向に咲く』に続く二作目の作品。複雑なことはなく、深く考え込むこともなく、ただただ素直なストーリーに涙が出ます。親から注がれる愛は本当に美しくて、まっすぐで、偉大だなって必ず感じさせられます。
    すっと心の中に入ってくる物語で、素直に感動できる作品。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    取引銀行から送り込まれたサラリーマンロボット。社内ではあらゆる武器を駆使して立ち回り、ライバル企業には鉄の心で立ち向かう。そんな矢先に、ライバル企業が開発した高性能ロボットが現れ最大のピンチを迎えるが……。ロボットアクション×企業小説というジャンルレスなスペクタクルエンターテイメント小説ここに誕生!!(ウソ)
    本当は、売り上げの上がらない老舗商社に送り込まれたロボットと一緒に新規事業を任された道明課長の物語。そう、ロボットじゃなかったら普通の企業小説なのに何故ロボット!?
    しかも外見は電球みたいな目にバケツをひっくり返したような頭とブリキのおもちゃ的なアレです。経営や複雑な投資の話などを体からデータをウィーンと出しながら道明課長を導くロボット。
    事業の成功。そして最後はロボットなのにホロリ。
    いやー、ていうかもうロボットでいいか。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    シスターズ・ブラザーズが荒野をいく。ゴールドラッシュに沸くサンフランシスコをめざして。彼らは金を探しにいくわけではない、殺し屋としてある男を消すために旅をするのだ。
    ずいぶんと変なタイトルだと思ったが「シスターズ」は彼らの苗字だった。
    粗暴で狡猾な兄と、内気だがキレると凶暴な弟の危険なコンビ。またビビットでダークな表紙からも、ついついバイオレンスな盛り上がりを期待しがちだがそういう方向には進まない。ろくでもない兄弟がだらだらと旅をし、ダメな連中と出会い、飲んで、もめて、勢いで殺しちゃったりする。
    殺伐とした話だが、時にしみじみとあったかい感じが伝わってくるのはなぜだろう。
    それはおそらくこの兄弟がつながっているから。ダメな生き方でつながり、戦うためにつながり、成功と失敗でつながっている。そして、つながりは二人の人生を良い方にも悪い方にも変えてしまう。
    ラストに登場するおっかさんがいい味だしてます。だらだらしみじみ、でもちょっとハラハラしたい方に。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    正直なところ、短編小説というと、長編に成り得なかったテーマというイメージがありました。
    全くのアホな思い込みでした。申し訳ございません。
    本のタイトルになった『第三の時効』だけでなく六編全てが映画にできるレベルで、中でもおススメは『ペルソナの微笑』。8歳の子供を巧みに誘導し、青酸カリ殺人を実行させた未解決事件。13年を経てに隣県で青酸カリ殺人が発生、あの事件と関連はあるのか。まず背景から鷲掴み。今回の主役、班最年少のお調子者である矢代刑事にも実は・・・とこれ以上は書けませんが、取調べ室のやりとりは痺れました。恐れ入りました。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    こんな女性が近くにいたら…と想像しただけでゾッとしてしまうほど女の怖さが描かれた短編集です。この作品の特徴は、読み終わってから読者にその先のストーリーを想像させてるところです。全てを描き切らず、あくまで読者にゆだねる。ゆだねられた読者のほとんどは同じ想像をするのだと思いますが、こんなにも想像する力を必要としなくとも推知出来てしまう面白い作品です。短編作品の中で「無邪気な怖さ」は、どんな女性でも一度は経験があるのではないでしょうか。ストーリー中にその「無邪気な怖さ」をこれでもか!というくらいのゾッとする展開で描かれて言います。自分が同じ立場に立たされたら・・・作品の終わりがわかってきたとき、読み進める度胸がなかったらその箇所だけ目をつぶってしまいます。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    唯川恵作品の中でも、ストーリー展開にこれほどまでに引き込まれて読み進めていってしまうほど、面白い作品です。将来設計を考え始めなければいけない年頃の女性心理や行動は、自身の中にある本質的な欲望を知った時に変わっていく…。読み始めは、いつもの唯川作品らしく柔らかですが、終盤に近付くにつれ読む速度が速くなってしまうくらい話の先が気になります。結末まで読んで余韻に浸りながら、自分は主人公と同じ選択をできるだろうか。と考えてたり、自身の中になる本質的な欲望を受け入れたとき、自分自身はどうなっていくのだろうと考えてしまう、女性にとっては、自分自身に置き換えて楽しめる作品です。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    「西尾維新」の原点がここに。
    メフィスト賞受賞作である「クビキリサイクル」から始まる「戯言シリーズ」。ミステリーという分類ながら、「物語」シリーズに通ずる超常っぷりもある、変格に近い作品群。
    主人公・いーちゃんは冴えない大学生。友人に天才技師・玖渚友や人類最強・哀川潤を持つものの、本人は至って普通(だと思っている)。
    シリーズを全部レビューすると長くなってしまうので割愛しますが、まずは「クビキリサイクル」を。
    いーちゃんの一人称で語られる、孤島で起こった事件とその結末を是非お確かめください。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    女性として生き方をしていくための教訓とか、子供が自立へ向かってもがいているときに取る行動とか、子供を大事に思っているからこその言葉、行動が心にしみます。自分もそうありたいと思う。読み終わったら、西原さんいいかあちゃんだな。って思えます。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    「日本三大名探偵」といえば明智小五郎、金田一耕介、そして神津恭介。他二名と比べ若干影が薄い、この神津恭介。実は容姿端麗、頭脳明晰の一度見たら忘れようがない、超絶イケメン名探偵なのです!中学を飛び級、6カ国語を操り、論文も認められた数学の天才。現在は東大医学部の法医学教室助教授。資産家で生活に困る心配なし。ラノベでよく見る「最強系主人公」でもここまでやらないだろう、まさに完璧超人!
    そんな彼を激賞するワトソン役は神津の友人、松下研三。ワトソンというより、ドラえもんに泣きつくのび太のような…。物語によっては事件の真相以上に松下君の言動にひっくり返ることも!?
    戦後間もない時期が舞台のため、設定や表現に古さを感じることはありますが、それもこの作品の味の一つ。日本が誇る「完璧系名探偵」の活躍。ぜひご一読下さい!

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    恥ずかしながら初めて読みました。昔から有名な作品ということは知っていましたが「どうせ竜馬は死ぬんだろ…」と手をつけなかったのです。何ともったいない!
    沢山のビジネス書や自己啓発書がありますが、若人たち、まずは『竜馬がゆく』を読みましょう!物語を通して自由闊達な発想・先を読む力・間の取り方・人脈などの大切さを実感することができます。また、そのためにいろいろと勉強したくなります。100年以上前の話ですが新鮮に感じます。
    さらに竜馬以外の登場人物もみな魅力的。若かりし木戸孝允や板垣退助など、日本史の授業に興味がなかった私でも知ってる人物や、三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎など、様々な人物が登場します。一粒で2度3度とおいしい作品。とにかく出来るだけ若いうちに1度は読んでおきたい作品です。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    ミステリを読みたいけど、殺人のような重い事件はちょっと…と言うあなたに。素敵な料理と「日常の謎」を楽しめる、こちらの一冊はいかがですか?
    舞台は下町にある小さなフレンチレストラン。ここに持ち込まれる様々な謎に挑むのは、無精ひげを生やした店長兼料理長の三舟シェフ。フランス修業時代、その名前と風貌からサムライの子孫と呼ばれた強面シェフが、美味しい料理と気の利いた名推理を披露してくれるんです。
    作中、聞き慣れない料理の名前も出てきますが、そこは語り手、新人ギャルソンの高築君がお腹の空く描写と共に解説してくれるのでご安心を。なかでもシェフ自慢のヴァン・ショー(ホットワイン)は絶対に飲んでみたくなるはず!
    なじみの店に来たかのような雰囲気と、穏やかな結末に「ほっ」とできるステキな短編集。さぁ、どうぞ召し上がれ。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    日本SFの金字塔という評判と萩尾望都さんの表紙に惹かれ、休む間もなく一気に読み終えてしまった本。凄まじいまでのスケールの大きさ!これは面白い!…しかし、どこまで理解できたか一抹の不安も。
    物語は「阿修羅王、ブッダ、プラトンが、世界が滅ぶ原因を探し、戦いを挑もうとする」というもの。映画『マトリックス』のような町や『エヴァンゲリオン』などで聞いたような単語が散りばめられ、これが元ネタだったの?と邪推してしまうほど複雑な世界観は本当に独特。科学的内容が描かれたかと思えば、仏教を中心とした東洋哲学、新約・旧約聖書といった宗教観が幾重にも織り込まれ、読むたびに様々な側面が見えてくる。何度も読み返し最後の一文を読み終えた後は、無限の宇宙を前に立ち尽くしている気分に…。
    軽い読み物に飽きた時、哲学的な気分に浸りたい時など、じっくり腰を据えて読みたい一冊。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    2015年4月の映画化作品!映画と本筋は同じですが、それ以外はだいぶ異なるようなので安心してこちらもお楽しみ下さい。
    倒産寸前の旅行代理店が、起死回生の策として講じたダブルブッキングツアーが舞台。150万円の高級組と20万円の格安組を、お互いにバレないよう同日・同部屋に宿泊させて費用を浮かせるっていくら小説だからって無理でしょ。
    ツアコン二人の四苦八苦(一人がドジ過ぎて泣ける)と、両ツアー客の絶妙なすれ違い、散りばめられたオヤジギャグで、読む手が止まりません。
    合間に、水谷豊さん演じるベストセラー作家「北白川右京」(あの右京さんとは違います)の劇中作が織り交ぜられ、物語を二重に楽しめるお得な作品です。
    ちなみに、『王妃の館』はパリに実在する歴史的ホテルがモデルですが、普通にネット予約できます。お金と時間があれば・・・

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    池波正太郎が歴史上の偉人たちを語り明かす!
    戦国の織田信長から幕末維新の西郷隆盛まで、彼らがどんな思いで時代を生き抜いたのか?著者だからこその男の生き方を、現代日本との対比で描く傑作エッセイ。
    とはいえ、昭和60年出版の本なので、著者の考え方や表現は古くさい部分もあります。それが気にならないくらい、偉人たちの心の内を読み解く著者の洞察は鋭く、なるほどと思わせてくれます。激動の時代を生き抜いた偉人たちは、今日、明日いつ死ぬかわからない状況において、どう決断してきたのか?ビジネスのヒントにもなり得る良者です。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    あなたにとっての家族とは何か?
    「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズの村山由佳さんが、とある家族を描く短編集です。「おいしい~」シリーズのようなさわやかな恋愛とは異なり、描かれる話は、近親相姦、レイプ、不倫、いじめ、戦争体験と、どれも重く、苦しい。短編は家族の一人を主人公としていて、それぞれリンクしており、全体として一つの物語という構成です。
    特に長女・沙恵の視点で描かれる「ひとりしずか」では、忘れられない人(長男のことだが)との、甘く切なく苦しい恋模様は、過去の村山作品を想起させます。内容は重いですが…。
    家族という一番身近にいるのに、どこまでいっても孤独なのだと、それでも前に進むしかないのだと、家族を乗せた小さな舟に例えています。読む年代によって捉え方が異なると思います。きっとこの先も読み返すだろう一冊です。第129回直木賞受賞作。

    2022年07月20日