【感想・ネタバレ】星々の舟のレビュー

あらすじ

家族だからさびしい。他人だからせつない──禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末っ子、居場所を探す団塊世代の長兄と、いじめの過去から脱却できないその娘。厳格な父は戦争の傷痕を抱いて──平凡な家庭像を保ちながらも、突然訪れる残酷な破綻。性別、世代、価値観のちがう人間同士が、夜空の星々のようにそれぞれ瞬き、輝きながら「家」というひとつの舟に乗り、時の海を渡っていく。愛とは、家族とはなにか。03年直木賞受賞の、心ふるえる感動の物語。

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あなたにとっての家族とは何か?
「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズの村山由佳さんが、とある家族を描く短編集です。「おいしい~」シリーズのようなさわやかな恋愛とは異なり、描かれる話は、近親相姦、レイプ、不倫、いじめ、戦争体験と、どれも重く、苦しい。短編は家族の一人を主人公としていて、それぞれリンクしており、全体として一つの物語という構成です。
特に長女・沙恵の視点で描かれる「ひとりしずか」では、忘れられない人(長男のことだが)との、甘く切なく苦しい恋模様は、過去の村山作品を想起させます。内容は重いですが…。
家族という一番身近にいるのに、どこまでいっても孤独なのだと、それでも前に進むしかないのだと、家族を乗せた小さな舟に例えています。読む年代によって捉え方が異なると思います。きっとこの先も読み返すだろう一冊です。第129回直木賞受賞作。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

 暴力をふるう父親であったり、許されない関係の恋であったり、あまり普通ではない一家のそれぞれに焦点を当てた連作短編。両親も子供も、一般論でいえば普通の幸せな人々ではないのかもしれない。ただそれぞれに自分の感情を大切にしていれば、幸せの形はいろいろあるんだ、ということを肯定してもらえる気がする小説。それぞれの章ごとに読みごたえがあって、そして手放しに幸せな話ばかりではないが、ちょっとほっとすることができるような物語だった。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

わかってはいるけれど。
振り返れば、何度そう思いながらもしてしまった、あるいはせずにやりすごしてしまったことか。

もどかしさや孤独感をふくめ、それでも過ぎてゆく日常。
家族それぞれの感情が、すうっと入ってきた。たとえば自分とは違った感じ方、受け止め方であったとしても、近くを流れるようななめらかさで
これはどういうジャンルと説明すればいいのだろうと思っていたけれど、「あとがきにかえて」を読んで、ああなるほどと納得がいった。
もし、兄妹の恋という部分だけで刺激的でスキャンダラスな恋愛小説かと通り過ぎてる人があるなら「ちょっと」と呼び止めてみたい。
父の「名の木散る」でぐんと深みと重みが増す。

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2024年05月13日

Posted by ブクログ

叶わない恋、叶わなかった恋、人の倫から外れた恋…と、恋愛小説がメインテーマのアンソロジーでありつつ、最終話、父・重之の戦争の話が出てきたところで思わず涙してしまった。
恋愛模様だけではなく、家族愛や母親の無償の愛がそこかしこに感じられて、そしてどのストーリーにもさりげなく出てくる花々の描写が美しくて、あっという間に読み進められる内容だった。

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2024年01月16日

Posted by ブクログ

水島という家族、それぞれ6人の視点から描かれた連作。重いし辛い、最後まで読めるかなと。
内々のことは、なかなか他の人には伝わらないものだが、ある事情を除けばよくありがちな家族だと思う。ゆっくりと年月を隔て、父、母、息子たち、娘たち、息子の娘が内に抱え込んでいる悩み苦しみを主人公をかえながら綴られていく。
兎に角、ひとりひとり丁寧に描かれていて
一章読むごとにずしりと響く。目頭が熱くなった章もあった。生まれ育った環境のせいにしているとしても、時には道を反れることってあるのでは。特に、長男貢の章が気に入ってしまった。郊外での野菜作りに生き甲斐を見いだす。重い話の中、畑仕事の描写はほっとするひとときだった。
いま、ここに生きているという圧倒的なまでの実感それだけでいいのだった。貢の言葉から、正直な人間臭さを感じる。
親が有耶無耶にしてきたことで、我が子の幸せに影響を与えた。そこが気になった。最後は沙恵と寄り添ってるように見えるが、何があっても親子、ということだろうか。
戦争体験、慰安婦の話は辛く、ずしんときました。これを持ってこられた理由があとがきにかえて、でわかりました。ひとつの家族の在り方はそれぞれ違う。登場人物の生き方に自分自身を投影させたり、何があっても生きてる意味があると、そう感じた作品でした。

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2023年09月06日

Posted by ブクログ

雪虫
子どもの神様
ひとりしずか
青葉闇
雲の澪
名の木散る

の6章立て。
家族6人それぞれのお話になってます。

「幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない。」
両想いなのに決して報われぬ恋もある。
人から見たら、幸福ではないかもしれない、不毛な恋かもしれない。
その恋で自分は、苦しんで苦しんで苦しんだ。

でもどうしても、そこから進めない、そこからどこにもいけない、その恋から逃げられない…
だから、せめて好きでいることだけは、自分で認めてあげたい。許してあげたい。
決して報われなくても。その恋を否定したら、その恋を適当に扱ってしまったら自分ではなくなってしまうのだから。
自分の宿命は自分で背負い、河を舟で流れていこう。
夜空に輝く星々のように。

第129回直木賞受賞作。
とても良い作品です。

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2023年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「幸福とは呼べぬ幸せもあるのかもしれない」
衝撃。
人に幸せねって言ってもらえる人生でなくていいし
だからって幸せじゃないわけじゃない。
言葉にすると強がって見えるし心もとないけど
読めばストンと落ちてくる。
好きで好きでやめられない、仕方ない人がいる。
その人が生きている同じ世界で自分も生きていて
だからこそ心を通わせ合い、なんなら触れ合い、
添い遂げられなくてもいつも心を満たす。
その人にも自分だけ。そうお互いになんとなくわかっている。
それだけでそこに存在する価値がある。生きる価値がある。
片割れだからお互いに。生きないと。
そりゃそんな二人が一緒にいられるともっと幸せに違いない。
でも、一緒にいられなくても、触れられなくてもいい。
だから私を消さないで。私からその人を消さないで。
それ以上何も望まないから。

ところで、私は人生において結婚や子育ては情熱を、命を燃やすための必要アイテムなのではないかと思うときがある。
妬みやひがみなのかもしれないけど、「結婚」や「子育て」は、「暇な人生」への解決策、「人生を全うできないような手持無沙汰感」を紛らわすための手っ取り早い方法にすぎないのではないかと。
人は生まれたときからライフポイントを持っていて、生きることにともなう精力の使用量でそれは減り、使い切ることが使命なのだとすると、打ち込む仕事や趣味がない多くの一般的な人はなかなかそのライフポイントが減らない。だからどうしたって神経や精神力、体力をすり減らす結婚や子育てをしようとする。それはライフポイントの半分以上を稼ぐとこができるボーナスタイムだから。
恋愛においてひとりの人を愛すると決めて貫くことは、同じくらいのポイントになると私は思う。自らをひとり孤独に耐え、守り、大事にするということ、そして愛す一人をどんな形であれ守り抜くということがどれだけライフポイントを削るか。
そんな相手に出会えた幸運は奇跡で尊く、辛く、幸せだ。
どちらかと言えばむしろそういう唯一無二の人に出会うということはむしろ、「人生の全う」を約束された勝ち組の人生なのかもしれない。そうであればいいと思う。

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2023年01月25日

購入済み

今から

今から読みます。

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2018年02月18日

Posted by ブクログ

すごかった。最初は禁断の恋かあううんと思ったけど、早い段階で早計だったなと思った。重之のエピソードがだいぶ頭にズーンとくる。

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2025年11月18日

Posted by ブクログ

75歳父、65歳母、50歳長男、35歳次男、34歳長女、30歳次女。上二人は前妻の子。長女は母の連れ子で、父は違うと思っていたら、前妻が存命中に父とデキて、できた子。それを知らないまま次男と長女は愛し合ってしまったという過去があった。母が急死した、その後を描く連作短編。

『雪虫』愛し合った妹と血がつながっていたことを知り、勢いで家を出、北海道に住みついて15年の次男。アンティークショップを営み、妻と二人の子供がいるが、飲み屋の女の子と寝るような生活。母の死の連絡をもらい、帰って過去と対峙。母の秘密を知る。

『子どもの神様』もともと不倫関係だった父と母、隠れて愛し合っていた兄妹。そんな家族を見てきた次女は、普通の恋愛が出来ず、妻子ある男を愛するようになっている。割り切っていたつもりが、ある出来事により、男の頼る先が自分ではないということを突き付けられ、動揺する。

『ひとりしずか』兄の消えた喪失感を抱えて生きる長女は、幼馴染と婚約するも、結婚に踏み切れないでいる。。性的いたずらを受けていた過去を振り返る。

『青葉闇』公務員の長男は、息子よりも若い部下に言いよられ、定期的に抱くようになる。学生運動に参加していたという過去があり、かつての自分がなりたくなかった大人に、今なっていること、このまま定年まで勤め上げるしかないという未来に抗うかのように、家庭菜園に精を出す。

『雲の澪』高校三年生になる長男の娘。親友に紹介した幼馴染のことが本当は好きで、しかし親友も大好きで、そして、親が受験受験と口うるさく言ってくる中、漫画家になりたいという夢を温めている。小学校時代のいじめっ子と再会し、自分の身を守るため、親友を売ってしまい、傷つく。

『名の木散る』戦争中、中国へ送られていた父。死んでしまった忘れられない慰安婦に、許しを請う自分を、今も責めている。

ああー、やっぱ自分の年齢があれだからか、50歳長男のモノローグが一番刺さったし、光も見えた気がした。中年クライシスなんだろう。

「〈何のために〉ではないのだった。いまここに生きているという圧倒的なまでの実感――それだけでいいのだった。
 もしも自分に若いころと同じような生命力がみなぎっていたなら、そんな境地にたとりつくことはなかっただろうと思う。光の中では見えず、日が陰って初めて見えるものもあるのだ。」

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2025年10月04日

Posted by ブクログ

家族がテーマの連作短篇集でした。
一つの家族について、それぞれの立場で語られます。
愛とは、家族とは、幸せとは。
色々考えさせられました。

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2025年09月18日

Posted by ブクログ

家族一人一人の6つの短編集(?)
1話ごとに人も変われば時代背景が変わることもあって、内容がそれぞれに重い内容であるにも関わらずスラスラ読めたのは美しい文章であったり、短編集になっているからかもしれませんね。
1つの家族でそれぞれに違う世界で生きていることが当たり前だけど不思議で、でも納得したり。自分の場合は、自分の家族はどうなんだろう?と家族について考えさせらる作品でした。

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2025年04月09日

Posted by ブクログ

感想
家族それぞれに事情、人生、経験や思い出があるんだなぁ。

バラバラに見えても切っても切り離せない関係がある。


あらすじ
暁は後妻の母親が死にそうとのことで帰省する。後妻の母親が連れてきた妹の沙恵と父親と後妻の子供の美希、兄の貢という家族構成だった。

暁は家を飛び出して、久しぶりの帰省だったが、その飛び出した原因が沙恵との恋で、沙恵が実は父親と後妻の子供だったことが分かりショックを受けてのことだった。

末妹の美希は、パートナーがいる相手との恋しか出来なくなっていた。それは暁と沙恵がそのような関係になったことに起因していた自分のそのような性癖を嫌ってもいた。

沙恵は、レイプ同然で処女を失い、その後、暁との本気の恋をして、今の誠実な婚約者との営みも上手くいっていなかった。大勢の前に出ることも苦手になり、人生に苦しんでいた。暁との関係が婚約者に知られたこともあり、婚約を解消する。

貢は50代半ばの市役所勤め。家や妻に不満はないが、家に帰りたくない。30歳も下の部下と不倫をしている。そのうちどちらからも逃げるように農業にのめり込む。

貢の娘の聡美は幼馴染との関係やイジメられていた女との関係に悩む。

父親の重之は、戦争時のツラい体験を思い出す。

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2025年01月25日

Posted by ブクログ

 ★4つと半分。限りなく5つ★に近い。圧倒的読後感。6章からなる短編がつながってゆく長編小説。
 1章めを読んで村山さん流の不倫恋愛ものかと思ったけれども、確かにそういうキライはどの章にもある。けれど、どんどん深みを増し、6章はかなり重厚だった。あらためて日本と隣国との歴史観を見直したくなった。若い頃この本を読んだらどれほどの衝撃を受けただろうか。
 すこし、どすんと暗くなる話もあるが、畑仕事の話などはほのぼのとしてしかも興味深かった。
 それにしても読後感はどっしりとして暫らく余韻に浸っている。
 あっ?!なんだ!直木賞受賞作だった。納得!

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2024年09月28日

Posted by ブクログ

主人公が変わっていくスタイル。
毎主人公に感情移入してしまい、まだまだ続きが読みたくなるくらい濃い。
でも終わり方が絶妙で、それぞれの幸せへの指針を見つけた終わり方。色々考える。
毎回そこ?っていう語り手になってくけど終盤にはそんな気持ちがひっくり返されていることが面白かった。

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2024年03月23日

Posted by ブクログ

これは凄い!
家族ひとりひとりが抱える何かしらの不幸、問題、しがらみ、トラウマ、わだかまりの中に見つけたほんのささやかな幸せ。
それを村山さんは、なぜこんなにすんなりと読ませる?
今のところ、村山さんのいちばん。

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2024年03月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

死後5分後くらいに「生きるとは何か?」と聞かれている感じ。壮大な読後感。

あらすじを読んで、直木賞受賞作が兄妹愛だけで書き切れることある?と思ってたけど、とんでもなかった。言葉に溺れた。

恋愛を含む、人生。もはや恋愛を死と並ぶほど、大きなものとして捉えられていた。恋愛小説というか、人生本というか、歴史書。

村山さんは戦争小説ではないと言っていたけれど、どうしてもその印象は強い。自分が生まれるのが少しずれていたら、と考えさせられた。

この時代でできることできないこと、メリットデメリット、たくさん享受してたくさん味わって死にたいな。

・言葉なんかにこだわるより心が大事だろうという者もいるが、言葉ってのは案外正確に、使う人間の内面を映し出すものだよ。いわば心の鏡みたいなものだ。


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2024年03月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久々にこれ、と思える作家に出会えたかもしれない。1つの家族のメンバーそれぞれを主人公にして書かれた6つの短編は、どれも不幸に満ち満ちているようで、希望の光を感じずにはいられない。そんな雰囲気を感じた。文体も硬すぎず、柔らかすぎずの絶妙なバランス。人の世って基本的に不幸の割合が多めだけど、希望も確実に日常に転がっているよね、そんなふうに思わせてくれる一冊。

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2024年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

禁断の恋に悩む兄妹、他人の恋人ばかりを好きになってしまう末妹、自身の居場所に悩む長兄、幼馴染への恋慕、親友に対しての劣情を抱えていた孫、戦争の傷を抱える父、それぞれの視点から語られる彼らのこれまでの人生を通して星々を繋ぐように見えてくるひとつの家族の形、彼らの在り方。

「足を踏んだほうはすぐ忘れるけど、踏まれたほうはそう簡単に忘れられないもの」
家族間で互いに様々な感情を向けていたけど、彼ら、特に子供たちの劣情は作中のこの言葉に尽きるなと思った。
読み進めてそれぞれの見てきた世界を知れば知るほど、登場人物の見方が変わる。表面的な情報、断片的な状況で捉えられるものなんてない。わたし達は自分のことすら完全にわかることはできない。だからこそ語り合うこと、自分自身で触れ、確かめていくことが大切なのだと漠然と思った。

途中読み進めるのが辛くなってしまう描写もあったが筆者のあとがきにもあるように、一筋の光があるような構成ではあったのでそこは救いだったなと思う。

印象的だったというか良いなと思ったのは最後まで志津子の語りがなかったこと。後悔も思い出も、これまでの人生に意味を持たせるのも、抱えている気持ちを語るのもあくまで生者だなと思った。

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2023年10月28日

Posted by ブクログ

兄妹は禁じられた恋にはまり、末の妹は不倫にはまり、初登場の時は常識人と思っていた長兄も実は不倫にはまり、そんな兄弟達の父は妻がいるのにお手伝いさんとの不倫にはまり。

家族として成立しそうもない状況なのに、家族であることを取り繕っているように思えて、正直不快な作品だと思っていました。

しかし、最終章を読むうちに評価は反転。一人一人の事情や想いが掴めた途端に、一気に作品に色彩を感じました。

最終章までの鬱展開が辛かったので星4つですが、その不快感を綺麗に洗い流してくれるラストに感動させて貰いました。

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2023年06月25日

Posted by ブクログ

【フレーズメモ帳】
「「誰のお陰で食えると思ってるんだ」そんな貧しい問いを繰り返し、女房子どもの答えをいちいち確かめなければ立っていられないほど、あの頃の父は拠り所を失っていたのかもしれない。」
「どうして人は、つらいことがあると北を目指すのだろう」
「「あの頃はよかった」などと遠い目をする中年親父にだけはなりたくない、絶対なるものか、昔は俺だってそう思ってたのに。」
「ねぇ聡美、その「私なんか」って言う癖やめな?自分で自分のことを、そういう風に思ってると、ほんとにそうなってっちゃうよ。」
「詫びることでいささかでも楽になれたのは自分だけではなかった。自分で自分を責め続けてみせ、その実結局は、ただ赦されたかっただけではないのか。赦されるのを前提に謝ることを、詫びとは言わない。」
「足を踏んだ方はすぐ忘れるけど、踏まれた方はそう簡単に忘れられないもんだ。」
「幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない。」

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2025年01月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

戦争時代の心の傷を引きずり家族に怒鳴り散らす父、生真面目ながら流されて不倫する長兄、血がつながっていると知らず恋に落ちてしまった兄と妹、不倫でしか恋愛できない末妹、そして彼らを優しく見守り亡くなった母。彼ら一人一人の明るく寂しい日常を順に描いた短編集。
作者にしては珍しく青少年以外が主人公で、テーマも「叶わぬ恋」と少し重い。本筋以外にもどす黒く生々しい描写が多く、文体や作品の雰囲気からはかけ離れて暗い。読んでいてどうしても沈んだ気分になるが、なんとなく気になって最後まで読めてしまい、読後感はほんわかして意外に悪くない不思議な作品。

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2025年06月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

−幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない

全てはこの言葉に凝縮される物語

自分にはまだ理解が及ばない
いつかわかる日が来るのだろうか

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2025年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

雪虫
水島暁
産みの母は幼い頃に亡くなった。育ての母がくも膜下出血で亡くなる。小樽港に近い古い倉庫を利用した西洋骨董の店の経営を任されている。

涼子

志津子
暁の育ての母。後妻。

水島重之
暁の父。大工。

晴代
暁の産みの母。暁を産んだ翌々年に亡くなった。


暁の兄。

沙恵
志津子の娘

美希
重之と志津子の子。暁の妹。

奈緒子
暁の妻。

堂本
奈緒子の父。暁の義父。

和夫

昌子
西洋骨董店の学生アルバイト。

頼子
貢の妻。

政和

清太郎
暁と同い年。

清水
電気屋。

河村
酒屋。

寺沢
タイル屋。

加代子
寺沢の妻。


子どもの神様
美希

相原
美希と不倫関係。

岡田
営業。

沙恵




ひとりしずか
沙恵

チョウさん
年輩の大工。沙恵に性的虐待をしていた。

重之

志津子

田辺孝一
沙恵が一日付き合った浪人生。

清太郎

聡美


青葉闇


北村真奈美
貢が課長補佐を務める広報課に移ってきた。貢と不倫関係。

頼子

政和

聡美
貢の娘。高校生。

久保田
貢の部下。

重田
課長。

樋口


雲の澪
聡美
祖父・重之の家で沙恵と住んでいる。

深津健介
聡美の幼馴染。

頼子
中学校の教頭。

楡崎可奈子
高二の二学期に転入。三年にわたるアメリカ生活に加え、絵に描いたような美少女。

重之

政和

美希

横田珠代
小学生時代から聡美をいじめていた。


名の木散る
重之

沙恵

曾根原光夫
重之とは徴兵の同期の中で一番親しくなった男。

頼子

聡美

晴代

志津子

ヤエ子
慰安婦。姜美珠。

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2025年02月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

家族の一人ひとりに焦点をあてた連作。
義母兄妹の恋愛や部下との浮気や不倫、慰安婦への想い…叶わないのに焦がれる心情とか、それぞれ内に荒々しく激しい情動をもちながらも、刻々と過ぎていく時の流れにたゆたうような、深く静かな話だった。
胸に秘めた鮮やかな感情を、歳を重ねて静かに奥深く沈ませながら、送る日常。じれったくもどかしいような、でもそれがリアルで、読んでて苦しくなった。
一人の章だけでもいいくらい、どの章も恋愛部分だけではなく、何に葛藤を抱えて、その想いをどう昇華させるのか、変化の過程を丁寧に描いていて、読み応えがあった。

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2024年10月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

美しい女性と恋焦がれる男性とどうしようもない運命による悲恋を書いたら天下一品
どの話もどろりとしているのに透明感があるのが作者の凄いところ
読ませる力があります。

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2024年07月28日

Posted by ブクログ

正しくても間違いでも人間には自分を奮い立たせてくれる思い出や体験があって、それはどれだけ時代が変わっても変わらないものなんだと戦争の体験を通して感じた。

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2024年07月15日

Posted by ブクログ

ある家族それぞれの視点で、過去や現在の心境を中心に描かれている。家族だから分かり合える事もあるけれど、やっぱり個の人間であって、家族でも理解し合えない事もある。ちょっとした言い争いでも人によって感じ方が違うというのは、家族内でもよくある事なのかも。それでも、過去のキラキラした想い出や辛かった事を共有することで、家族の絆って強くなるのかもしれない。家族という形を改めて考えさせられた。

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2024年05月19日

Posted by ブクログ

感想
言葉と心。人は心がわからない。何を思って言っているのか。だから言葉を受け止めるしかない。一度出た言葉は引っ込められない。だから慎重に。

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2024年04月30日

Posted by ブクログ

人の記憶というのは、楽しい事は断片的であまり残らないが、悲しいこと、辛いことは始終記憶に残る。過去の苦い思い出も「いいもの」に映る、身も心も過去には戻らないがその記憶だけはそのままそっとしておきたいのが人かもしれない。一方、人は寂しい、侘しい時、過去の思いにふけがちだが恋愛、愛で人は変わり、変わる必要がある、思い通りにいかないのが人生というものかもしれない。

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2023年10月25日

Posted by ブクログ

大工の父親、病気で亡くなった先妻との長男と次男、後妻の連れ子の長女と夫婦の子の次女。6章からなり、それぞれを主人公としながら家族を描く連作短編集の形式をとった一作品です。

母親が亡くなった事で、家族が今までの気持ちを整理し始める。
「雪虫」連れ子の少女に恋をしてしまう次男。二人は、互いの気持ちを認め合う。しかし、父親が同じである事を知らされる。次男は家族から離れて生きる。
「子供の神様」次女は自分が家族の交差点となるように振る舞ってきた。姉も父も子と知った後の喪失感。彼女のその後の恋愛観に影を落とす。
「ひとりしずか」兄への気持ちが残る長女。善良な男との結婚にも踏み切れない。
「青葉闇」早くから父親の不倫を知り家を出ていた長男。公務員となりしっかりした家族があるが帰宅拒否気味。50にして初不倫。
「雲の澪」長男の娘の夏の厳しめの経験。
家族は、なんらかの諍いがあろうと、生き違う時間があろうと、一つの舟に乗ったり降りたりしながら生きていく。各章の主人公の性別や年齢が変わるので、共感できる章があるのではと思います。


「名の木散る」が最終章で父親の戦争体験から家族を得ていく章なのですが、作者さんここに力を入れています。ですが、書きたいことは読めたつもりですが、どんな経験をしたとしても、この父親の不倫隠蔽や暴力が認められる根拠に思えず。
幸福とは呼べない幸せ が村山さんのたどりついた感慨との事です。

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2023年09月04日

Posted by ブクログ

2007年09月20日 19:18
直木賞受賞作。

一つの家族のそれぞれの人物の視点が6つの章に分けて書いてある。

ただ、話が過去に行ったり現在に行ったり、過去の過去に行ったりして最初のうちは戸惑ったが括弧の工夫がなされていたので助かった。

有り触れた内容と言えば有り触れた内容かもしれないが、

文章力・表現力で読ませると思う。

最後の父親の章は、実際に話を聞いて書いただけあってリアルだと思う。

戦争体験について、あまり知らない人は読んだ方が良い。

しかしながら、帯にもある「こころふるえる感動の物語」とまではいかなかった。

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2023年06月25日

購入済み

自由とは

さらっと、読めました。内容も読み手を引き込むものがあります。

が、物語事態はあまり、好きではないかも(笑)

できたら、兄妹の禁断の愛、父重之と妻たちの話だけで、良かったような、気も・・・します。

不倫と苛めは、内容が、些か急ぎすぎる。し、表現もありふれてる様な。。

でも、さすが、直木賞作品?ですかねー。

やっぱり、文章構成が、うまいものが多いかな。

読了後の、後味がわるいものが、あまりないかも。

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2013年06月29日

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