あらすじ
眉目秀麗、文武両道にして完璧な優しさを持つ青年、漱太郎。しかしある嵐の日、同級生の夢生はその悪魔のような本性を垣間見る――。天性のエゴイストの善悪も弁えぬ振る舞いに魅入られた夢生は、漱太郎の罪を知るただ一人の存在として、彼を愛し守り抜くと誓う。切なくも残酷な究極のピカレスク恋愛小説。
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運命の出会い、というものがある。
夢生にとって漱太郎との出会いがそうだ。ハンサムで誰にでもやさしくてクラスの人気者──最初は、その「ジェントルマン」っぷりに違和感をおぼえていた夢生だが、漱太郎の秘密(彼は悪魔である!)を知ることで、激しい恋に落ちてしまう。漱太郎は誰のことも愛さないが、夢生だけは「特別だ」と言う。それは、愛ではなく呪縛である。
最低な、本当に最低な人間だと思うのに、いつの間にか漱太郎に惹かれている。人は相手が「善人」だから恋をするのではない。それをまざまざと思い知らされる。
男が男に命がけの恋をする…という意味では、BL好きの淑女方にもオススメだが、パステルカラーの甘い菓子ではなく、毒がたっぷり入ったブラックコーヒーだと認識したうえで読まれたし。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
夢生は、漱太郎の悪魔のような一面に惹かれ、彼を愛し守り抜くと心に誓う。彼の罪を聞く自室を「懺悔室」と表現した。暗闇と罪の間にある美しさがとても良かった。山田詠美の文体でBLが読める幸せよ。
匿名
読むのやめられない!
まず、韓国人なので日本語がとても下手な点、ご了承ください。 学生時代から山田詠美さんのすごいファンです。韓国で出版された本はすべて購入して読んできました。 まだ出版されていない本まで、このように原書で購入して読むほど、熱烈なファンです。
(いや、ただのファンよりも、もうマニアに近いだと思います!!)
彼女の影響を受けて、今、文章を書く仕事をしているのだから、これ以上言うまでもないでしょう。
本作品の「ジェントルマン」のオノ·ヨーコとジョン·レノンの写真は私も普段から大好きでしたので、本を開いてすぐに「あっ!」と嬉しかったです。もう、その瞬間から完全に気が浮かれて、すらすらと読み進めました。
それで、何時間もじっと座ってすっかり没入して読んだ後、最後のページを閉じる時、全身に鳥肌が立ちました。
個人的に山田詠美さんの他の作品である「姫子」の収録短編「メニュー」がすごく好きなんですけど、あの主人公のような、山田詠美さんが描くどこか歪んだ男キャラが、私、ずっと前から大好きなので、本作品の漱太郎にもすっかり惚れ込んで、とても楽しく読みました。
(もちろん、夢生のことも、圭子のことも、シゲのことも、その他の全キャラのことが好きなんです。)
余韻が長く残りそうですね。
紙の本も所蔵したいです。
この本のすべてが好きでした。
ありがとうございました。
Posted by ブクログ
残酷なまでに美しい悪魔のような男と、その悪魔に魅せられて愛し従属した男の話。震えました。あの衝撃のラストは彼らにとったらメリーバッドエンドなのだろうか。漱太郎もユメなら仕方ないねって笑いそうな気もする。笑って犯した罪を告白する漱太郎と、それを許して受け入れるユメはある意味共犯者であり、そこで二人は唯一無二の相手として分かり合える、それは遥かに肉体関係を持つ事よりも深く結ばれている事なのだ。 殆どプラトニックでありながら、どんな関係よりも狂っていて歪んでいて背徳的。 これでおまえ、俺の奴隷だな、ユメ?という漱太郎の言葉が淫美な悪魔の囁きのようで恐ろしい(けど個人的に大好き)。
Posted by ブクログ
大好きな山田詠美。
美しい文章。美しすぎて、溜め息が出る。
なのに、こんな終わり方はいやだ。
私は、このお話に出てくる人がきらい。圭子のことも、夢生のことも、路美のことも。
漱太郎のことは、もっときらい。
いやだ、いやだと思いつつ、私は多分、この本が好きだ。
好きよりも嫌いの方が、人を強く惹き付けるのかもね。
「欲しがれば欲しがるほど逃げて行くものが、この世の中にはたくさんある。」
本当にその通りで。
欲しがるのを辞めれたら、もっと簡単になるのに。
私が欲しくて欲しくてたまらないものは、いつの間にか遠くに行ってて、もう絶対に手に入らない。
匿名
悪人、人でなし、最悪の男を愛してしまった。こんな男が周りにいたらと思うとゾッとする。
ユメオは可哀想な男だ、でも人でなしの男しか愛せないんだとしたら共犯であるユメオを悪人だと思う。
Posted by ブクログ
ラストの方は、なんだかホラー小説
からのメリバ、、、。
とはいえ、巧みな文章で、ぐーーーっと引き込まれての一気読み。
実際にだれからもジェントルマンと言われる友人がいるが、そういう彼もどうしようもなく弱いところや、醜い部分がある。
『紳士と呼ばれる奴もどこかにシミがあるものさ』と自論を持っているが、漱太郎のイカれっぷりは衝撃。それに寄り添うように生きるユメもイカれてる。
その2人に関わる女性もやっぱり壊れてて、終盤は衝撃の人怖展開で驚愕した。
ユメが華道・フラワーアーティストをやっていたのは、ラストの展開で納得。
夢に生きるでユメ。名前も最後に納得。
Posted by ブクログ
美しく妖しかった。
最初の写真の話がもうインパクトあるので、山田さん自らが挿絵をつけたような感じがした。
倫理観も良心もないのに、表面上完璧に見えるなんて怖すぎる。怪物。
殺したことは誤算だったのか、もしくは殺した結果殺されることまで含めて希望通りだったのか、どうだろう。
いつかもう一度読もう。
Posted by ブクログ
ジェントルマンのタイトルと裏表紙の解説だけでは到底予想できない内容でした。
ジェントルマンと言う響きをどこか胡散臭く、違和感を覚える主人公たち。ジェントルマンは紳士を示すが、ジェントルとは確か優しいという意味もあったと思う。
そうちゃん、は表面上優しくて、誰にでも好かれる人気者だが、裏の顔はとても醜い。。。表で振る舞う善人の反動か、ユメの前では本来の悪の顔を見せる。
主人公とその周りには同性愛や恋する者もいて切なさもあるが不快感や違和感もある。
ラストはとても悲しい。。。人間性。モラル。愛の形。色々と読みごたえのある作品でした。
Posted by ブクログ
漱太郎の数々の卑劣な行為は女として到底受け入れがたく、嫌悪感だけが残った。彼を愛する男、夢生も翻弄され終には破綻してしまう。そして彼らに深くかかわる二人の女は一見脇役であるように思えたが、終盤クライマックスでその存在の凄みを知ることになる。哀しくて残酷で、滑稽で、まぎれもない悪夢なのだけど、沈美的で永遠の夢のようでもあって。。どちらかというと嫌な読後感の類。ただ、ここまで登場人物たちに感情移入できたのは、やはり作者の持つ魅力なんだと思う。例えば「人の行動に伏線なんかない。衝動しかないんだ。あと、運命しか…」こんな風にさらっと主人公に言わせる詠美節。相変わらず、洗練された文体は読み手の心と脳を大いに刺激してくれる。
Posted by ブクログ
完璧な漱太郎の本性を唯一知るユメ。そしてユメの漱太郎への究極愛。同性愛、レイプとハードな中に純愛がしっかり全編に感じられる。
シゲの恋に落ちた感情や、ユメの漱太郎への「自分だけに優しい人がいい」「そして、自分だけに冷たい人がいい」思い。
ラストの圭子の大事にしてきた思いも…。
誰にも言えない想い。切ない。
Posted by ブクログ
再読。この小説を表すのにどの言葉を選ぶかによって、印象がガラリと変わるなあとみんなのレビューを読みながら考えた。裏扉の「切なくも残酷なピカレスク恋愛小説」がピッタリでしょう。BLとかヤオイとかヤンデレとかサイコパスとか、そういうことじゃないから。山田詠美さんの描く恋愛の苦しさを長年愛でてきたが、またひとつ違う世界に足を踏み入れた気がする。表現も、以前の粘性の高い皮膚感覚的なものから、原色あふれる視覚的な要素が増えたと思う。まだまだ恋愛モノを書き続けてほしいです。
Posted by ブクログ
なるほど、漱太郎のやばさとはそうゆうことか、と納得する場面も束の間、なんとBL展開。
いや、私は女だしレイプ魔は許しちゃいけない存在だけど、漱太郎に恋する夢生のこともわからないでもなく。落ちのおかげでスッキリ。
Posted by ブクログ
息つく暇もなく一気に読んでしまった。途中でやめることがなぜか出来なかった。
漱太郎は人の姿をした悪魔だ。究極のエゴイスト。無邪気に残酷なことをする。けれども普段は世間体を身につけて、眉目秀麗、文武両道、誰にでも優しく親切なのだ。
そんなある時、彼の悪事を目の当たりにしたゲイの夢生は恋に落ちる。彼に惹かれ共犯者となり、圧倒的な支配下に身を置くことになる。
何十年も恋心を残酷に扱われていた夢生も気の毒(でもそれは自らそうしているので)だけど、シゲのことがほんとうに可哀想でショックで。
今は、すごい小説読んでしまったと改めて思っている。
Posted by ブクログ
同性愛、不毛で究極の片想い。
山田詠美さんの今まで読んだ数作品はすごくダイナミックで繊細で形容しがたい感情にさせられたけど…。うーん、私が年をとったせいか、これは響かなかった。
レイプをはじめ、サイコパス瀬太郎氏の犯した罪らが陳腐なファンタジーに読めてしまって…。完全犯罪みたいな流れだがいやいや痕跡残しまくりやろ。
しかし、ユメの罪の象徴である鋏が、罪をおかした最愛の男へのギロチンになるとは…
Posted by ブクログ
言葉を失うほど焦がれている相手を、殺すことで、永遠に結ばれると信じて疑わない夢生こそ罪の意識がなく、傲慢だ。
自分ではない他の男を抱いたという事実に腹を立てたのか。それにしてもラストの夢生の行動がとても飛躍しすぎている気がして、冷めてしまった。血の海が小説の最後にふさわしいとは思えなかったからだ。
主人公の誰にも感情移入ができなかったけれど、夢生や漱太郎の名前はしばらく頭から消えないだろう。そこがやはり山田詠美の凄いところだなと思う。
Posted by ブクログ
過去に何冊かこの作家の作品を読んだ事がある。
文章が何の違和感も無く気持ちに入ってくるという印象がある。この作品は従来の文章力に加えて、人の気持ちを何とも官能的に表現をしている。上手いな〜。
もう少し書き込んでもらいたい所もあるが、多少ぼかした方が良いのか、、、、