ブックライブの書店員おすすめレビュー

小説・文芸 のおすすめレビュー

  • ブックライブ書店員

    ノワール小説で知られる著者が、夫人と愛犬2匹との日々を、愛情豊かに描いています。
    マージは、著者が飼っていた、バーニーズマウンテンドッグという犬種の大型犬。
    原産国のスイスでは、大型犬について「3歳までは幼犬、6歳までは良犬、9歳までは老犬、10歳からは神様の贈り物」という言葉があるそう。マージは11歳で亡くなっています。
    老化・病気により、食事・排せつなど、普段当たり前にしている行為ができなくなること。看取るまでの、マージと家族の苦しみを読むと胸が詰まります。
    この本を読むことで、哀しみが癒されたり、いつか来る別れに向けて心構えができるかもしれません。
    人が犬を想うこと、犬が人を想うこと、人が人を想うこと、愛情の素晴らしさを感じさせてくれる作品です。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    時代も場所も形式も異なる6つのお話。19世紀の若きアメリカ人公証人が書く航海日誌、第一次世界大戦後のベルギーからイギリス人作曲家が親しい友に宛てて書く手紙、1970年代のアメリカで一人の女性ジャーナリストが追うスキャンダル、現代イギリスの老編集者が綴る回顧録、近未来のアジアで交わされるファブリカントと記録官の対話、口伝される遠い未来のハワイの物語。過去から未来に進み、未来から過去に戻っていくという、入れ子のような順序で綴られたこの作品は、上下巻で非常に長い上に、どのお話にも身体のどこかに彗星のあざを持つ人が現れたり、少しずつリンクしていたり、文体が全く異なっていたりと非常に複雑ですが、読み終えた後にもう一度読み返したらまた違う発見がありそうで、気に入ったお話だけを読み返してみたくなるような「読書の楽しみ」を感じさせてくれます。ちなみに、もし「読みにくいな」と感じたら、映画で観てから読んでみるのもオススメです。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    2014年新潮ドキュメント賞候補作。なぜ、タクシードライバーという職業を選んだのか、夢破れた先の終着点として、職場の人間関係になじめず、気楽さを求めて敢えて選択した人など、実に様々な人生が語られています。乗客との心温まる話から、死ぬかと思った壮絶な話まで、タクシーという個室で日々繰り広げられるエピソードには、タクシードライバーという特殊な職業だからこそ得られる、厳しい人生を生き抜くヒントがあるような気がします。特に著者のあとがきはぜひ読んでほしい。この著者だからこそ描けた、「生きていて良いんだ。」という実感を得られる作品です。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    日々の、嬉しい出来事、悲しい出来事。登場人物達は、様々なハードルを乗り越えていく。結婚、離婚による家族の形。両親、子供、犬、友人、職場の同僚との関係。生き方や働き方について、子供も大人も、みなそれぞれの悩みを抱えている。人との距離感を測りかねたり、口論になったり、これからの人生をどう過ごしていくかなど思い悩むことも。そんな主人公達は関わる人たちの優しさに助けられて、次のステップに進むことができる。人が人を想う心は連鎖していき、その関係が切れることはない。8つの家族の物語は、どこかで繋がっていて、それを読み解くのも楽しみの一つ。迷っているとき、勇気が出ない時、そっと背中を押してもらえるような作品です。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    吉川英治文学新人賞受賞作。このシリーズは日本SF大賞を受賞し、「このミス」でも上位入選常連なのに、もっと世の中の認知が上がって良いはずだということを強く言いたい!決してライトな作品ではないため、この価格帯、文量に躊躇してしまう文芸初心者の方もいるかもしれません。でも是非、シリーズ1作目『機龍警察〔完全版〕』から挑戦してみてください。1作目、2作目と来てこの3作目を読むと、「読書の喜び」が感じられるはずです。
    著者によると映像化はしないそうですが、それもそのはず活字を読むだけで情景が目に浮かんでくるのです。必要ありません。特に、エヴァンゲリオン、攻殻機動隊などSFアニメにハマった人には絶対刺さるということを保証します。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    「贈りもの」をコンセプトに、人気スタイリストが選ぶ56の逸品。あのブランドの文房具、あのショップの珍しい商品、こんなグッズあるんだ!と驚かされるものも。大切な人に、愛する人に、「私」という人に。
    相手が大切であればあるほど、贈り物には悩むものです。そんなときに、ヒントをくれる一冊。贈るのも嬉しい、贈られるのも嬉しい。物を選ぶ気持ちそのものが、贈り物なのだとも思うのです。あなたは大切な人に何を贈りますか?

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    歌舞伎が大好きな主人公が、入学した高校で歌舞伎の部活動を始めようと奮闘するところから物語は始まります。もちろんその過程は山あり谷あり。部ってどうやって作るの? 部員は? 顧問の先生は? 誰が教えてくれるの?っていうかそもそも歌舞伎って、高校生になってから誰でも突然始められるようなものだっけ?でも、まったくあきらめない主人公は元気な子犬のようでとにかくカワイイ!そして、主人公を取り巻く人々も、のっぽで無口なデジタルオタクの親友、音痴のビジュアル系バンドボーカル、学内にファンクラブまである演劇部のプリンス(?)、格闘家にしか見えない元日本舞踊の名取、そしてホンモノの梨園の御曹司…と、ひとくせもふたくせもある個性的な面々ばかり。歌舞伎の知識があればより楽しめますが、古典芸能としての歌舞伎を全然知らなくても、ストーリーの中で自然に解説してもらえて、どんどん歌舞伎の世界に引き込まれていきます。高校生の部活とその周辺を描きながら、ときどきホロっともさせてくれる、そんな青春小説です。2017年4月にはアニメ化も。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    もしこの世と「アメリカ」が完全に断ち切られたら、あなたはどうしますか?映画・音楽・ディズニー・スポーツ・ジャンクフードといった文化的なものから、米軍や莫大な投資など、全部が断ち切られたら、どうしますか?あるいは、世界はどうなると思いますか?逆に、「アメリカ」はどうなると思いますか?
    意外と彼らは困らないんじゃないですか?
    日本SF界の巨匠、小松左京が30年以上前に描いた傑作。当時からこのような思想があったのかわかりませんが、ザラっとしたリアリティにグイグイ引き込まれます。トランプ大統領、きっとこの作品読んでたと思います。
    私はハワイ旅行中に読んでいたわけですが、もしこの作品の出来事が現実になったら・・・それはそれで幸せかもしれないと思ってしまいました。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    幸せな四人家族の長女として、何不自由なく育った主人公・弥生には、幼い頃の記憶が欠けている。
    彼女は何かに導かれるようにして、叔母ゆきのの家を訪ねる。そこで見つける、懐かしく切ない想い出。雨の日、木が生い茂る森のような庭の中に建つ家、ゆきのがパジャマで床に座っているというシーンが印象的。弥生の周囲で人が死んだり、そのことで悲しんだりするのですが、その思い出を乗り越えるというよりは、思い出と一緒に前に進んでいきます。弥生と哲夫、ゆきのと正彦。恋愛をしている二人の関係性と、恋する気持ちの描写が可愛らしいです。この本が最初に出版されたのは1980年代なのですが、全く古い感じがしません。ただ、現在と違う軽井沢の風景には、おおと思いました。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    15の物語が収められた、SF短編集。
    いかにもSFらしい話もあれば、純文学っぽい話もあり。でも、どれもすごくいい!
    中国移民の二世である息子と母との心の隔たりと悔恨を、「動く紙の動物」というファンタジックなギミックを使って、素晴らしい物語へと織り上げている「紙の動物園」。
    縄文字(縄の結び目で文字を表したもの)を知る部族の長と、それを遺伝子ビジネスに利用しようとするアメリカ人との騙し合いが描かれ、文化人類学SFとでもいうような独特の世界観が楽しめる「結縄(けつじょう)」など、どれも粒揃い。読み終えたあと、しばし空想にふけりたくなる、そんな話がたくさん詰まっている。

    しみじみとした叙情性とともに、孤独や諦念のようなムードを感じるのは、ケン・リュウという作家自身が中国からの移民であるというところが大きいのかもしれません。
    SF好きにはもちろん、物語を愛するすべての人に勧めたい良作です。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    ノーベル医学生理学賞を受賞した東工大栄誉教授の大隅良典さんが学者を目指す契機となった良書

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    特に目立つわけでもないけれど、なぜかモテる男性っていますよね。ニシノユキヒコはまさにそんな男。モテすぎるがゆえに、交際~浮気~別れをエンドレスで繰り返す。そんなニシノユキヒコの人生を、彼に恋したりされたりした女たちの目線から語り継ぐ物語。しかし、ニシノユキヒコは読み終わってもどこかふわふわした存在のままだ。ただ、確実にわかるのは「本気で誰かを愛すること」を理解していないという部分だけ。モテまくってはいるけれど、彼の人生に本気の愛があったのか。そもそも恋とか愛ってなんだろう。考え出すと不毛なテーマだからこそ、考えずに身を委ねて読んでみてほしい。
    モテすぎる男の一生なんて、さぞスキャンダラスな物語になるんじゃないかと思いきや、川上弘美にかかればまるで深夜のお茶漬けのようにさらさらと心地よく、そしてどこか寂しく描かれる。さすが、くまと散歩にいったり、女になった蛇と暮らす話を描いてきた小説家。非日常をあっさり自然に日常へ流し込む技術にうっとりしてしまう。
    竹野内豊さん主演の映画もかなり気になるところです。(書店員・えい子)

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    藤原竜也・綾瀬はるか他、豪華キャスト出演の映画「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」原作小説としてご存知の方も多いのではないでしょうか。作者である米澤穂信といえば、TVアニメ「氷菓」の原作シリーズ「古典部シリーズ」をはじめとした“小市民シリーズ”など、人の死なない日常系ミステリを得意とするイメージがあります。しかし、本作ではそれらと全く雰囲気を異にする命がけの犯人当てゲームが繰り広げられます。
    舞台はクローズド・サークル「暗鬼館」。12体のネイティブアメリカン人形やノックスの十戒など、作中に散りばめられた本格推理小説へのオマージュも満載。一見すると“館もの”要素を取り入れたフーダニット(殺人者は誰だ?)の正統派ミステリかと思いきや、ロボットが登場したり主人公や名探偵キャラがまさかの展開に!ウルトラCに脱帽です!(書店員・こしあん)

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    2012年の本屋大賞を受賞し、松田龍平さんと宮﨑あおいさん主演の実写映画でも話題となった本作。
    いつもなにげなーく使っている辞書の裏側に、こんなドラマが潜んでいたとは…!
    「辞書」の持つ、愛想のなさやお堅いイメージのせいか、エライ先生たちが事務的にクールに作っていると思っていたのは、どうやら間違いだったようです。
    熱い、熱いよ…!
    辞書作りに携わる人たちの、なんといきいきとしていることか!
    興味のない人間にしてみれば、「あがる」と「のぼる」の違いなんてどうでもいいことだけど、主人公の馬締くんにとっては大問題。融通がきかなくて、クソ真面目で不器用……でも、そこが逆に愛おしい。こういう男はいい女を捕まえるものである…と思ったら、ほらやっぱり。
    そう、これは仕事小説としても、ラブストーリーとしても楽しめる、おいしい一冊なのです。
    ちなみに、2016年秋にはノイタミナ枠でアニメ化も予定されているそう(キャラデザはなんと雲田はるこ先生!)。(書店員・水玉)

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    上野千鶴子が世に介在する男女観を記号論的に分析し、我々の中で無意識的に培われた性差にまつわる自意識の存在を公にしたとき、日本はバブルムード最高潮で「モテ」が支配する世界にいて、そんな中一部の対極に『オリーブ』が位置していて、彼らはカウンターカルチャー的に「モテ」を内在化していた、そんな80年代。
    それから20年、いまや草食男子と非恋愛価値観が幅を広げ、肌感としては「モテ」を受け入れられる者と受け入れられない者が50:50くらいかも。
    鈴木涼美は前者で、「女子」たるアイコンを積極的に活用する(マジ笑える)。ジェーン・スーは後者で、「女子」たるアイコンへ疑問のナイフを投げ続ける(抱腹絶倒)。湯山玲子は越境的存在で、後者を理解し2つの世界を行き来する前者(むしろ尊敬すら覚える)。マツコ・デラックスはもはや性差を超越しているゆえ、(そしてポジション的には中村うさぎも同じく)、はなから客観的。
    つまり、これらは現代若者の精神史をカジュアルに理解する著作たちなのである。
    要は、こんな人たちもいるのねカタログ的な、ダイバーシティ促進の参考書として活用するか……もしくは、人生気楽にいこうよってことじゃない?(書店員・エイミー)

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    【2014年本屋大賞2位受賞作品!!】
    病で夫<一樹>を亡くしたテツコと、一樹の父親<ギフ>の、奇妙だけど切ない、悲しいけどどこかあたたかい、二人暮らしの物語。
    この物語は、この三人の話だけでなく、一樹の幼馴染や従兄弟、テツコと結婚したい<岩井さん>、ギフの亡き妻<夕子>などそれぞれの人物にスポットをあてた短編が、連作となってひとつの物語を作っています。

    「自分には、この人間関係しかないとか、この場所しかないとか、この仕事しかないとかそう思い込んでしまったら、たとえ、ひどい目にあわされても、そこから逃げるという発想を持てない。呪いにかけられたようなものだ。」
    「逃げられないようにする呪文があるのなら、それを解き放つ呪文も、この世には同じ数だけある。」
    「悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ。」

    心に沁みるコトバ、丁寧な暮らし、切ないけれど前向きに生きる力が、この本につまっています。
    2015年に仲里依紗さん主演で実写ドラマ化され、また、渡辺ペコさんによるコミカライズ作品も発売されています。(書店員・あんにん)

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    同じキャリア警察官の主人公「竜崎」と、幼馴染「伊丹」の物語。
    とにかく「竜崎」のキャラ設定が秀逸!万事の『原理原則』に忠実で、しがらみの多い警察機構の中、ただひたすら『正論』『理屈』を武器に超合理的に全てを進めていく姿が痛快になってくると、あなたは立派な「竜崎」ファンです。堅物過ぎてヤな奴なのは否めませんが、対照キャラの「伊丹」が、それだけじゃないことを読者に説明してくれます。
    的確な判断と部下への指示。こんな上司なら一生ついていきたいっす(かなり堅苦しいけど)。
    ドラマ出演者が形容したのは「警察版 半沢直樹」。主人公のキャラは全く違えど、組織内の権力争いとスッキリする読後感は確かに似ているかも。1巻ごとの完結ですが、続巻も読みたくなること必至!そして続巻も期待以上です。(書店員・ラーダニーバ)

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    1日経ったらどんな記憶も忘れてしまう特異体質の探偵・今日子さんと、いつもトラブルに巻き込まれるフリーター隠館くんの物語。設定自体はもっとも探偵には不向きと思われるのに、それが逆に物語をスピーディーな展開にしていて…凄いです!

    隠館くんが今日子さんとどんなに仲良くなっても、今日子さんは絶対に忘れてしまう…
    でも、何だか会うたびに距離が縮まっていく(ように見える )今日子さんに萌え要素あり!!!

    明らかにされていない伏線も、今日子さんの忘却の謎も、二人の関係性も含めて次回作が待ち通しい新作ミステリー !
    (書店員・DO)

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    2009年に満34歳でこの世を去った伊藤計劃先生。普段SFを読まないため、縁遠かったのですが、シンプルかつ恐ろしい表紙とタイトルに惹かれ…。
    何をするにも本人認証が必要となり、いつ、どこで、何をしたかが全て記録・管理されるようになった近未来。それにより全世界が平和になるのでは決してなく、「ジェノサイドが頻発する後進諸国」と、「テロを一掃した先進諸国」に二分されている。
    いずれ、そんな世界になっても不思議でないと思ってしまう自分がいます。 ひょっとすると、いま私たちがお茶を飲みながらぼんやりと享受している「平和」も、「誰かに仕向けられた何か」によって作られた錯覚なのかもしれません。それが良いのか悪いのか、読み終わってからも考えてしまいます。
    『ハーモニー』『屍者の帝国』に続き、劇場アニメ化も決定しました。(書店員・ラーダニーバ)

    2022年07月20日