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Posted by ブクログ
4.5 -
ディストピア小説と聞いていたので勝手に1984のような世界観を想定していたが、全然違った。
平和・幸福を追求しようとした先の世界として生命至上主義(一人一人が社会や共同体の共有リソースとして重要であるという価値観のもと、人の健康・安全・生が社会にとっての至上命題とする考え方。そのためにそれぞれの人々の健康をモニターする分子を体内に入れ、健康に良いものだけを取捨選択するように勧め、また人々が可能な限り互いに情報を可視化して信頼関係を作るという社会)が勃興→その中で人々はより幸福・健康的な生活を送っているはずなのに、その社会での閉塞感を感じ始め、それに違和感を持つ主人公達が社会に反旗を翻すというものだった。
面白かったのは最後は死生観に繋がり、科学が発展し、自然をコントロールしてきた人類は、感情や意識という人の自然までコントロールすべきか、人の尊厳として意識・感情を残しておくべきかという問いまで昇華した点。そして最後は…
最初からプログラミング言語のような特徴的な文体が目についたが、まさかそれすら伏線になっているとは思わず、読後に気づき、はっとさせられた。
対となる虐殺器官という小説も読んでみようと思った。
Posted by ブクログ
「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」そんなことを考える必要はあるのだろうか。読み終わってよぎったのはゴーギャンの絵の題目だった。
欲しいものランキングのトップにくる「健康」。その健康が保証されている世界のなかで私たちは果たして正常に生きていけるのか。そもそも生きるとは何をもって生きるというのか。
私の体が私の支配下にあることか、将来を自由に選ぶことができることか、私という自己意識が存在していることか。
自然、死、生、精神、これらの意味を根本から問うている作品だと思う。
設定は難解だが読み進めて行く分にはそこまで苦ではない。決して分かりやすくはないが、重要な部分はかなり丁寧に説明されているように思う。
最後の怒涛の作者からの問いを味わうために私はきっとまたこの本を読むだろう。
Posted by ブクログ
虐殺器官とハーモニーどちらも読むことが良い。とても良かった。
精神(質的)と肉体(物質的)について。
何となく自分がさも当然のように精神が肉体より、大切な概念であると思っていたことに気づかされた。そもそもその前提自体、私が勝手に思っていたことだったなぁ、と。
解析されてしまっていろんなことが分かってしまった。
私たちは「ただの生物」なのに。
そこにあるものは何も意味がなくって、意味とはそもそもあるものではないのに。意味は主観でつくるもの。
だから、そのままでいいのだけれど、なかなかそうもいかないエゴとか欲とかそういうものが、なんだかねぇ、と。
正解もないしそういう風に考えるものでもないんだけど、考えてしまう人間という生き物がいて、それで本当にOKであることを凪のように理解したとき、うーん。なんといったらいいかしら。
それでも私は生きていくので、ずっとずっとまどうのですかね。
Posted by ブクログ
虐殺器官の直後に読みました。空っぽに吹き抜けている中を涙を流しながらただ歩いているような。その時々にできる最善の選択をし続けた結果が人類の進化であるなら、人間は動物と何が違い、何が我々を人間たらしめるのか。
こうして感想を書いていて、ああ、あそこのあのフレーズはそういうことか…と走馬灯のように文字が浮かんでくるのが、伊藤計劃さんの文章と表現の素敵なところですね。ちりばめられている。
文庫版巻末の佐々木敦さんの解説もぜひ読んでいただきたいです。
以下、早々に17ページ目で心ごと引きずり込まれた好きなやり取りを。ネタバレではありませんが、すべて自分の目で読みたい方はご注意ください。
「誰かが孤独になりたいとしたら、デッドメディアに頼るのがいちばんなの。メディアと、わたしと、ふたりっきり」
とミァハは答えた。あの冷たくなめらかで、ヒトを眠りに誘うような声でさらに続ける。
「映画とか、絵画とか。でも、持久力という点では本が一番頑丈よ」
「持久力、って何の」
「孤独の持久力」
Posted by ブクログ
場面設定の理解に苦戦しつつも読み始めればやはりSFというものは面白く奥深いと心底思います。
ハーモニーは近未来で、だれも病気やケガでは死ななくなった世界、でも若年層の自殺だけは増えているという状況が舞台である。福祉社会に完璧に近づき優しさで包み込まれるようなはずなのになぜか虚しい、寂しい、辛いのである。優しさというものがここまで鋭い刃になることをこの作品で改めて突き付けられた気がする。
誰も死なないこと、だれも体調を崩さないこと、健康的な毎日を送れることというのはこの上ないことだと思っていた。だが、「死」ということを老衰、事故、または自殺でしか達成できないとなった場合、我々はこのような結末をたどってしまうのだろうか。
悩み、苦しみ、もがき、常に不安が付きまとうことが生への実感ということなのだろうか。生死というものが神の采配のように不条理に感じる今の世界だからこそ味わう苦痛なのであって、それがなくなっても結局は苦しいままなんじゃないか。人生自分次第なんて何百回も言われてきている。ハーモニーのように意思のない世界にちょっとでもあこがれてしまう自分はもう終わってしまったのだろうか。
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