感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2024年04月29日
人生ベスト3に入るSF作品。数年ぶりに再読しましたが、世界観もキャラクターも好みすぎて何度読んでも面白い。最高の作品です。
「健康であるとは何なのか」「他者を思いやることはどこまで正しいのか」といったテーマが、ハーモニーでは常に提示されます。もちろん健康である、他者を思いやること自体は悪いことでは...続きを読むありません。むしろ推奨すべきことだと思います。しかし、そのためにあれもダメ、これもダメとルール付けし、個人の自由を縛っていくことは本当に良いことなのか。互いに支え合うためという名目で、我慢し続けることは正しいことなのか。もしそれを正しいとすると、「わたし」という個々の意識は必要なのだろうか…。
なんて、考え出すと止まらなくなってしまうんですが、読み返すたびにそんな思考に至るのが、ハーモニーの魅力の一つかもしれません。このテーマに対する正解はないと思いつつ、だからこそ議論したらとても楽しいと思うので、ぜひ誰かと感想を語り合いたいですね。
Posted by ブクログ 2024年01月14日
・こちらのほうがなんとも残ってる
・重い本を持つことは社会的正義に反する
・ワッチミーによる完全監視社会
・こどもは守られなければならない
・スコアリング ドミネーターみたいな社会感
・キアン、ミァハ、
・ひところしのほんは良くない
・リソース意識
・さよなら、わたし、さよなら、たましい。
Posted by ブクログ 2023年12月16日
ユートピア感のあるディストピアの話は個人的にとても大好き。終わり方も最高に好き。
戦争や暴力、疫病や無秩序は間違いなく人の不幸を招くけれども、逆に振り切れば(完全な健康と秩序)人類は幸せになれるのか。「病気にならないこと」と「病気になることが許されないこと」は似て非なるものではあるけれど、じゃあどう...続きを読むすれば人類は幸福になれるのかと言われると難しい。社会性とプライベートを両立させるためには、人は傷つきながら進むしかないんだろうな、と思う。
Posted by ブクログ 2023年10月17日
何度読んでも面白い!優しさに殺される世界の少女たちの話。
世界を巻き込む規模の話で、最終的に世界は大きく変わってしまうけど物語の形としてはひたすら主人公の個人的な話で、セカイ系だな〜としみじみ
トァンが良いキャラしてる。好き。
なんのために考えて生きてるんだろうってたまに思考するけど、そういうものを...続きを読むロジカルに突き詰めたSFでとても引き込まれる。
最後は世界が幸福で満ち溢れる「ハッピーエンド」だけど、意志をもつ私たちからしたら素直にそう受け取れないのも良い。
Posted by ブクログ 2023年06月17日
人が病気にならない世界。
身体は社会皆の共有物で大切にしなければいけない、ボランティアにも倫理活動にも出ないと可視化された評価が上がらず信用を得られない世界。1984みたい、と思った。
高度過ぎるシステムが人の意思を自在に制御でき、好きに自殺させられるようになり、社会的大混乱を起こす。これを避解決...続きを読むするには、合理的判断を最大化し結果無用の長物となった意識を排除するしかない。
意識を残したい主人公が勝利?するかと思ったが、結果意識は無くなった。敵?のやり方はともかく、目的には納得する形。まぁ、、、そっか、なるほどって感じ。
リアリティーもあって、展開も早くとても面白い!
満足です。
Posted by ブクログ 2023年06月06日
・SF長編と聞いて難しそうに思っていたが、主人公の一人称視点と、あくまで僕らが住む世界のifの延長線上として描かた世界観で、すんなり読み進めることができた。
・ヒトの幸福や意志についての堅苦しい内容ばかりかと思いきや、少年漫画のようなハラハラドキドキする展開もあって、ワクワクしながら読めた。
・変に...続きを読む希望的展開にはせず、この世界のこの状況で成るべくして成った。といったラストだったので、個人的には満足。
・この作者の作品は初めてだったが、以前に出版された「虐殺器官」が、本作で登場する大災禍に至る物語らしいので、ぜひ読んでみたいと思えた。
Posted by ブクログ 2023年04月25日
詳しくは収まらなかったので自分のメモにて
不思議と、これを読んだあとに何カ国か旅をして日本に帰ってきた時、清潔感がある整ったインフラや健康志向の色々なものに対して、既視感のある息苦しさみたいなものを感じた。トァンが言っていた感覚に少し近かったのかもしれない。
Posted by ブクログ 2022年08月30日
伊藤計劃。その人は、デビューしてからわずか2年で34年の人生を終えた。
本作は彼が亡くなった後に日本SF大賞を受賞した作品。
私はSFには疎く普段は手に取らないのだが、書店に平積みされた真っ白な文庫が目を惹いたのと、帯に書かれた「人間は、なぜ人間なのか。」「病床で遺した最後の長編」にその場でショック...続きを読むを受け、チラリとページを開いた。
飛び込んできたのはプログラミングのような文字の羅列。
すぐさま購入した。
理想郷ユートピアをめぐる少女たちの戦い。
まだ無垢で、純粋に懸命で、それでいて妙に冷めた大人の一面も持つ少女達の危なっかしさが、悲しくも美しい。
そして怖い。
ユートピアとは名ばかりの、見せかけの「善」。
人間として健康な身体で生きていくとは、どんなことなのか。
人間が持つ欲望、個々の意思、行きすぎたそれらは悪なのか。
では行きすぎるとは?
絶対的な統制の方こそ、悪なのではないか。
全てを善悪では片付けられない。
今この現在に生きている私達でさえ、どこまで統制を目指すのが正しい社会なのか判断するに難しい状況に出くわす。
秩序とは時に強制にならないか。
いやしかし「自由」は歯止めが効かなくなる恐ろしさも孕んでいる。
本書は、読み進めている間も、読後も、私達に疑問を投げ掛け続ける。
そしてプログラミングのような文体の意味が分かった時にやってくる、深い納得と、悲しさと、違和感。
そして文學界から既に失われてしまっている、伊藤計劃という才能に想いを馳せずに居られない。
病と生が共にあったのであろう彼にしか書けない作品だ。
小説の奥の奥に、彼自身の人間としての戦いや答えのない疑問が渦巻いているようで、
読み終えてからも暫くは、ハーモニーの世界から抜け出せない私が居た。
Posted by ブクログ 2022年04月24日
SFってひたすら未来的な世界のイメージだったけど、こんな『意識』と『意志』についてのSFは新鮮だった
『ハーモニー』によって得られたものと失ったものの物語
伊藤計劃さんの新作がもう読めないのが残念すぎる
Posted by ブクログ 2023年10月26日
ユートピアとディストピアは表裏一体。
精神と肉体と本能の関係性。
「わたしは逆のことを思うんです。精神は、肉体を生き延びさせるための単なる機能であり手段に過ぎないかも、って。」pp173
「みんなは決めつけてくれる人間が好きなんだよ。何かを決めてくれる、決断してくれる人間の周りには「空気」が生ま...続きを読むれる。科学者はそれが苦手なんだ。だって、正しいことっていうのはいつだって凡庸で、曖昧で、繰り返し検証に耐えうる、つまらないことなんだから。」pp209
「人間は絶えず「自然」を抑え込んできた。都市を築き、社会を築き、システムを築いた。全ては自然という予測困難な要素の集合を、予測し統御する枠組みへと抑え込もうとする人間の意志の現れだ。(中略)そして、脳もまた肉体の一部である以上、それを制御してはならない根拠など、どこにあるだろうか。」pp256
「我々の魂とは、進化後その場その場で継ぎを当ててきた双曲線的な価値評価の産物でしかない。完璧な人間には、魂そのものが不要なのだ。」pp264
Posted by ブクログ 2022年01月19日
例えば私が考えようとしている公共性、公共圏といったものがすべて満たされるようになった社会を推し進めて行った先がこの世界だったら。私も彼女たちと同様に死を望む気がする。
「わたし」というものが大切にされない社会。あくまで「わたし」が大事なのは公共的リソースだからという意識。
人権は守られなければいけな...続きを読むいが、「わたし」に国家が(いや政府ではなく生府が)介入することのえぐさを感じた。
突拍子もない設定のSFというより、今ある社会を基盤に
発展させた、あるかもしれない世界観、というのが心地よい。
なぜ、「あなた」が大切にされなければいけないのか、迷っている人におすすめ。
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⚠️ネタバレ含む⚠️
文中の「わたし」は意思を持たない者へ向けたコード上の「わたし」で、一体なんだったんだろう。読者はトァンの目、脳が文字化(コード化)された羅列を読んでいたようだ。奇妙な感覚。
また、最後老人らによってコードを入力され、この世界には意思が消滅した人間ばかりのような終わり方であるが、WatchMeをインストールしていない子どもは、あるいは紛争地域の人々はどこへ?かれらは「意思」を持つ「最後の人間」になったはずだ。終章を読む限り、トァンらの世界は随分と昔の話で、時代がくだった世界の読者に宛てられたコードを読んでいたことが分かる。でも、その世界の「われわれ」にどうやら意思を、感情を持つ人々は存在しないらしい。
すべてがシステム化され、相互扶助が高められた社会において、「意志を持つ人間」
はもはや人間ではないのか。
面白かった。
伊藤計劃さんの描く世界観はとても好きだ。
虐殺器官との関連性もあって読んでで彼の世界を体感できた。
Posted by ブクログ 2021年04月10日
2010年に書かれたとは思えない本。これからこの本に書かれたようなことが起こっても決しておかしくないと思った。この本を読んでから電子決済が怖くなってしまった笑
Posted by ブクログ 2021年04月08日
虐殺器官もそうですが、世界観の完成度が高すぎる。
設定や起こる事件はなかなかぶっ飛んでいるのに、今の世界から地続きであり得そうな違和感の無さがすごい。
Posted by ブクログ 2023年10月20日
SFは設定が9割だと思ってるけど、前作『虐殺器官』同様、こちらも斬新な設定でとても良い。WatchMeというプログラムを脳内に組み込み、あらゆる病気は排除された超健康福祉社会が、ユートピアの姿をしたディストピアとして描かれてる。
最初からなんの説明もなく、文章全体がhtmlっぽい文法で書かれてて、...続きを読むなんだこれ、と思ってたら最後に物語の中でetml=emotion in text markup languageが登場するという…。
読み手である自分自身もタグから感情を想起していたということか。
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大災禍の後、ユートピアと化した社会。全ての成人は体内にWatchMeが埋め込まれ、健康管理されている。見せかけの優しさに嫌気がさしたカリスマ・ミァハは、わたし(トァン)とキアンと共に成人前に自殺を図る。ミァハは死亡、トァンとキアンは自殺に失敗する。
数年後、戦地から日本に戻されたトァンの目の前でキアンが自殺。世界中で同時に6,000人が自殺を図るという怪事件が起こる。キアンは死ぬ直前、脳に組み込まれた電話でミァハと会話をしていたことが判明。(ミァハは生きていて、健康管理社会に反対するグループにいた)
ミァハがテレビに音声を送りつけ、全ての人類に対して誰か一人を殺さないとWatchMeを通じて自殺させると宣言する。
トァンはミァハに会いに行く。ミァハはもともと産まれながらにして意識を持たない民族だった。人類は意識を放棄したほうがよいと考えるに至った。人類が二度と大災禍を起こさぬよう、WatchMeには人間から意識を奪うコマンドが組み込まれていた。
ミァハの宣言後、やがて世界は混乱し、暴動に溢れ、コマンドのスイッチは押された。トァンはミァハを銃で撃ち、ミァハは理想の世界に戻ることはなかった。
Posted by ブクログ 2024年05月03日
虐殺器官とはまた違った趣。より哲学に振り切った内容になっていた。管理社会だったり、人間の意識の必要性など、十年以上前の作品とは思えない斬新さ。SF苦手って人でも読めると思う。
Posted by ブクログ 2024年03月27日
人間に意識や意志は必要か、そうでないか。最後まで読んでも自分の中で答えが出せなかった。
争いもなく自死もない世界は望ましいのだけれど、「わたし」というものが無くなったら、それは生きている意味があるのだろうかと悩んでしまう。時には自らを傷つけもするこの自我を、どれだけ厄介であっても、持ってしまった以上...続きを読むは捨て去る勇気は出ないだろうなと思う。
読んでいる最中、病気や体調不良をなくしたいという気持ちと、空気を読むなんて真っ平御免、何にも指示されたくないという気持ちが拮抗してつらかった。
ユートピアでありながらディストピア。少女が夢見た世界を、少女自身は見られなかったのが切なくて、でもその決断をしたトァンのことも嫌いになれなかった。私の印象では、終盤でトァンがどんどん魅力的になっていった。真実を知ることでシンプルになっていったのかもしれない。大人になったとも言える。ミァハを神格化する向きが無くなったからかもしれない。
最終的に色んな要素が削ぎ落とされ、ミァハとトァンの個人的な話になっていくところが良かった。世界を元少女たちが動かしているという、すべてはあの、本気かどうかも分からないたわいもない会話から生まれたのだと思うと感慨深かった。
Posted by ブクログ 2023年10月22日
勧められなかったら読まなかった本。
すごい完成度の高い未来の世界に次々と予測出来ない事が起こる。
この世界ならではの少女達の自殺の動機。
なかなか斬新な一冊。
Posted by ブクログ 2023年03月06日
超厚生社会、生命主義など新たなステージの人間社会をSFチック、ミステリアスに描かれている。
主人公トァン、カリスマなミァハ、突然自死するキアン、この3人の少女たちが感じる生きづらい空気、これは現代にもある空気と思った。
平和世界のストレス、とても面白い。
また、プログラムのように書かれた文章が、意識...続きを読むのない世界を表現しているのかとも思った。
読んでいて、登場人物たちは相当頭が良いし、それを書く著者の頭の良さ(?)を感じた。
伊藤計劃の違う著書も読んでみたい。
Posted by ブクログ 2023年02月23日
映画が発表され、原作があると知って手を出しました。
(……と記憶していますが、いかんせん、だいぶ昔の話なもので)
映画版はEGOISTさんの曲がとても良かった。とても。『Ghost of a smile』は、この作品にとてもとても合っていました。
漫画版は、読み返すたびに、最終巻で、なんでだか...続きを読む、泣いてしまいます。
ふたりの、おんなのこの、おはなしなのです。
おんなのこ、と形骸化させてしまうことは良くない、と思うのですが、そう、あらわしたい、ものがたりだと思っています。
『生きる』とは何か、というおはなし。
血潮にまみれても、愛するひとが遠くにいってしまっても、先を見据えるのか。
たくさんの血と、たくさんの死とがあふれている、ちいさくておおきいものがたり。
「『生きる』ために『誰かを殺せ』」と言われたら、あなたはどうしますか?
→ じさつする
→ ひとをころす
→ ほかのみちをえらぶ
『虐殺器官』から色々読んできましたが、この『ハーモニー』が、伊藤計劃さんの作品の中では一番好きです。読みやすいというのもあるかもしれませんが。
Posted by ブクログ 2022年08月12日
おもしろかった。
個人としての尊さが消え去ってひとつの全体になってゆくことがディストピアではなくユートピアのようなものとしておとされ(一応は)この物語が閉じられることに妙な違和感と妙な心地よさの入り交じりをおぼえた。
あとこれは本当にわたしが言ったってしょうがない要求ですが、ウーヴェ、もっと前から登...続きを読む場しててほしかった!!とおもった。
Posted by ブクログ 2022年07月21日
「作家刑事毒島」に作者の名前が出て来たので。
「虐殺器官」の方が先に書かれた本のようだが、
こちらの方が先に入手できたので。
正直、難しいところはよくわからなかったが、
現代の平和な、だが、閉塞的な空気感をよく表している世界だった。
もちろん、子供が怪我をしないようにジャングルジムがぐにゃぐにゃ...続きを読むと曲がる、
人体にはメディカルポートが埋まっている、
未来のお話なのだが。
しかし、そこに違和感はない。
食べものからの栄養を拒否する薬を作り飲んで自殺した友だちと、
大人になって久しぶりに会って食事をしている最中に、
ステーキナイフで自殺をした友だちと、
かつて三人で死のうとした主人公。
人びとの健康と命が管理され、痛みも不快感もない平穏な世界に、
突如として、自分が殺されないために人を殺せとメッセージが出回る。
「自由意志」を示せと。
はるかに進んだ医療を持つ未来のSFでありながら、
行方知れずの父親を追うミステリーでありながら、
印象に残るのは、共感というか、好感というか。
この空気感を表現する力は、自分には無い。
Posted by ブクログ 2022年01月14日
冒頭からHTMLをもじったETMLに面食らう。
感情を修飾する言語とは一体なんだろう?と分からないまま読み進めて、終盤でようやく理解できた。
『わたし』であることを捨てられたら、感情や記憶に苦しむこともないし幸せかもしれないけど、それがユートピアだとは認めづらいなとも思った。だからトァンの選択には賛...続きを読む同できたが、キアンとヌァザに対する感傷がそれほど感じられなかったので、復讐する動機は弱い気がする。
ミァハの境遇は、ひどく耐えがたかった。身体の尊厳を守るために意識を生み出さざるを得なかった…というのは自分の実感としては逆ではないか?という気もするが、このへんは著者自身のことと肉薄しているように思う。
Posted by ブクログ 2021年05月30日
10年も前に書かれたとは思えない。いま人類が直面している問題を乗り越え実現しそうな未来の話という感じ。
トァンを中心とした人物相関図は結構複雑で、それゆえに彼女の感じた喜怒哀楽以上のたくさんの感情は非常によい教材となっただろう。意識•意思•感情というものがなくなって、平和になったとして、人間は人間で...続きを読むいる意味があるのだろうか。
Posted by ブクログ 2021年04月22日
キアンが実はただの腰巾着ではなく、誰よりも大人だったことに気づいたトァンがそこから真相に迫りつつ、復讐心を抱いていたこと、真相に迫りながら意識、意志の存在を理屈として否定しながらも復讐心という意識の産物を抱えている姿が、どうしようもなく人間らしい
と感じることが、ハーモニーであることを妨げる
人...続きを読むは一体であることを望んでいるんだろうか?
少なくとも一体感は大事にされている?
だが意識があれば一体となることはできない
そして意識を失うことは耐え難い
故に人は一体になれず、一体感を目指して苦しい思いを抱いている
ということを切実に描いた小説だと受け止めています
Posted by ブクログ 2021年03月21日
細かい部分は読み飛ばしたから完全に理解したとは言えないんだけど、ストーリーの大筋はとても興味深くて面白かった。私はこういう、人間の心理とか、生きることの意味とか難しさとか、考えても答えが出ないような、正解がないような、哲学者たちが考えていたような問いについて思いを巡らすのが好き。ある一つの考え方があ...続きを読むって、それに対して反対する人も賛成する人もいて、また、ある一点までは同じ道だったのに途中から分岐することもある。ずうっと昔から変わらないんだろうなと思う。意識が奪われたら生きる意味はないのでは、って、反射的に思ってしまうけど、「意識をもって」「苦しみや喜びを感じながら」生きることにだって意味があるのかと問われたら、どう答えて良いかわからない。その時々で生きるために必要な機能をインストールしながら生存してきた。不要なものはアンインストールされるべきなのかもしれない。進化って不思議で面白い。
Posted by ブクログ 2021年02月21日
21世紀後半、大災禍により従来の政府は
生府となり生命主義の健康社会を保つために、
人は大人になると個人用医療薬精製システム
(メディケア)を使用し『公共物としての身体』を
大切に扱うというルールの下で生活している。
「ただの人間には興味がないの」(P22)と言い放つ
御冷ミァハ、ミァハに心酔する...続きを読む主人公・霧慧トァン、
2人の友人の零下堂キアンは、自殺を試み、
結果、ミァハだけ自殺は成功する。
大人になったトァンはWHOの螺旋監察官となり、
僻地で世界のルールを犯しつつ働いているが、
日本に戻されてしまう。そして、彼女の目の前で
大事件が起こる。
最後に人類は何を得て何を失うのか。
SFは苦手分野ですが、もともと存在するWHOの
人間が主人公ということもありとても
読みやすかったです。
三人の少女もそれぞれ個性的で全員厨二病かな?と
思わせつつ、それぞれのバックボーンもしっかり
描かれていました。10代なら御冷ミァハのことを
好きになっただろうなー。
スイーツを好きなように食べられず、
やせた人も太った人もいない世界はさぞ
味気ないでしょうね。私には無理だ。
Posted by ブクログ 2021年02月14日
選択する必要すらない理路整然とした世界、世界全てが一つとなり、調和した世界。
それは究極の幸せなのか。何もかも「全」となったとき、「個」とはなんなのか。それは「死」とどう違うのだろうか?
感情メタ言語etml記述が、ラストで効いてくる構造がすごい。
HTMLがわかる人なら、感情という概念がない世界で...続きを読む、タグ付けでで感情を指定すると言う表現が実感をもってわかって、とても面白いと思う。
Posted by ブクログ 2021年12月11日
意識というのは、「昔は必要だったが、現代では糖尿病の原因となってしまった人体のメカニズム」のように、人類にとって一時的に必要だったが今は邪魔なものなのではないか・・・。分量は少ないのに、面白かったです。
Posted by ブクログ 2023年01月05日
【結末のネタバレあり】
巻末インタビューで著者が「敗北宣言」と述べているように、結論部分については、正直物足りなさが残るラストとなった。
個人的に一番気になったのが、ミァハという人物が、本当にこのような結論にいたるのだろうかという疑問である。
ストーリーではミァハは、生まれつき「意識」を持たない...続きを読む民族だったと明かされる。
そのため、全人類がミァハの民族のようになるだけと考えれば納得はできるのであろう。
しかし本当にそうと言えるのだろうか。
父のヌァザは、「社会と完璧なハーモニーを描くように価値体系が設定されている」と述べている。
つまり多様性の失われた、ひとつに価値観が統一された上での、意識の喪失ということになる。
このようなプログラムをミァハは肯定するのだろうか?
例えば、ミァハの一族がこの都市に住むか?と問われたとする。
はたして、全ての一族がここに住むことを選択するだろうか。
中には合理的な思考を経て、住まないという選択をする者が出る可能性も否めないはずだ。
人々から「迷い」を取り除いても、正解はひとつではないのだから。
他の例で考えると、無我の境地に達し、悟りを開いた僧侶たちが、この世界に訪れたとして、仏界(浄土)に辿り着いたと感じるのだろうか。
その場合も、ただロボットのようにプログラミングされた人々が暮らす都市を見て、憐れみとともに静かに通り過ぎるだけではないかと私は思う。
意識を失うということは、生き続ける意味も失うともいえるはずだ。
本来であれば(価値体系の設計がなければ)、食事を摂る意志を無くしそのまま餓死するものが現れる可能性だってあるのだ。
(WatcMeに感知されるだけだろうが)
そのような観点から、この結末はミァハがたどり着くべき結論ではなかったような気がしてならない。
インターポールのヴァシロフは死の間際にこう言う「こいつが痛みってヤツなんだな。WatcMeとメディケアめ、人間の体にこんな感覚があるなんて、よく隠しおおせたもんだ。腹の立つ話だとは思えんかね。」
このような発想を持つ集団が、このような結末を望むのだろうか。
恐らく、もし著者に時間があれば、もっと時間をかけて結論を探すことができたのであろう。
しかし残念ながら著者に時間は残されていなかった。
著者による「敗北宣言」という言葉を聞くと、どうしても他の結末というものを考えてみたくなってしまう。
大変身勝手なこととは思いながらも、僭越ながら異なる結末というものを私なりに考えてみた。
以下が私個人としての結論案である。
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ミァハは、自ら書いたプログラムにある細工を施していた。
プログラムが歌い出した瞬間、全ての人類に選択肢が示される。
社会とひとつになれば、全ての苦しみや恐怖から解放されます。
あなたは、あなたという意識を捨て、生命主義社会とひとつになって、生き続けていくことを承認しますか?
Yes/No
生府の老人たちや、螺旋監察官たちは、想定していなかった事態に一瞬戸惑いはしたが、迷いなくYesを選択した。
(ウーヴェのようなものたちを除いて)
今回の事態に怖れを抱いていた者を中心に、医療社会に生きる多くの人類も、同様の選択をした。
そして、Noを選択した人類には、ミァハからのメッセージが示された。
「さあ生きて自由にハーモニーを奏でよう」
その後の社会では、紛争もまだ続いている、自殺だってその存在を消してはいない。
しかし、『空気』と呼ばれていたものは、もうそこには存在しない。
この社会では、お酒を飲んでいる者を見ても、誰も見向きもしない。
もちろん、司法は存在している。
殺人を犯せば罪に問われるように、飲酒が違法な地域や年齢では罪を償わされることになる。
しかし、空気という形で人々から自由を奪うことは、できなくなってしまった。
偏狭な生命主義者も、それを他者に押し付けるために必要な「意識」を失ってしまったのだから。
Posted by ブクログ 2022年06月16日
10年以上も前に書かれたものだと思うと、なぜこんな未来を想像できるものなのか、と驚いてしまうくらい設定がすごく面白い。
watch meは今のApple Watchみたいなものだし、度の行き過ぎた健康志向、心身共に平和に穏やかにいようと言う風潮も、今の時代に十分ある。