【感想・ネタバレ】ハーモニーのレビュー

あらすじ

〈ベストセラー『虐殺器官』の著者による“最後”のオリジナル作品〉これは、“人類”の最終局面に立ち会ったふたりの女性の物語――急逝した著者がユートピアの臨界点を活写した日本SF大賞受賞作。※本文中にHTMLタグのような表記がありますが、これは本書の仕様です。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ものすごく、「幸福とは?」ということについて考えさせられる話だった。

 私は常に主人公に感情移入して読む癖があるので、当然のごとく、トァンの感情とリンクさせながら話を追っていた。
 トァンの立場からいくと、ミァハがあのころカリスマ的にまぶしくみえる存在であったことも、でも完全に同じ“人間”にはなれなかったからこそ、今も生きて「ミァハだったらこうするんじゃないか」という人生を生きているのもなんだか分かる。
 そして、もう1人の友達・キアンが自死してからの彼女の焦り・不安・恐さ、そしてそれでも自分の意志で、自分が確かめたい、という強さ。
 この本ではまさに「意志」「意識」つまり、「わたし自身」について考えていくのだが、私だったら、トァンのように「自分」を貫けるだろうか。自分が大切に思い続けていた人に、引き金を引けるだろうか。

 友情であり、一種の宗教でもあり、それを振り払ってでも受け止めた愛情の物語であったと思う。

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2026年06月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。
世界観を飲み込むのに時間がかかるが、100ページ辺りから急速に物語が進むので、そこからはサクサクいける。

誰もが健康で"あるべき"世界なんて、理想郷だと思っていたけれど、そうでもないのかもしれないと気付かされる。
自分の身体を外側からコントロールされることに違和感をもつ少女たち。学生時代はやっぱりルールというものを疎ましく思う人はどこでもそれなりにいて、そんなルールから脱しようとする子を世間では不良とよんでいる。ミァハたちもこの世界ではその立ち位置なのだろう。
自由という言葉を前にすると途端に固まってしまう私からしたら、ルールはそれこそよく言うレールのようなものであり守ってこそなんだけれど、自分の身体を縛る鎖のように感じる人にとっては、作中のWatch meを埋め込まれた身体は苦痛でしかないのだろう。

意識のない世界とはなんだろう。
何も選択する必要がない、と著者は言っているが、生活を続ける上で選択をしない場面なんてない。
朝起きる時間も、朝食も、服装も、乗る電車も、常に人間は選択をしている。それがなくなるとは、生活の動線全てにパターンが用意されていなければならず、そのパターンの詳細を選択する人間がいなければならず……。
意識のない人間の具体的な想像は難しくて、なかなか私には掴めないところではあった。
でも、意識というものがあらゆる争いなどの火種であることは共感できる。互いの正義がぶつかるときに争いは起こる。大元を無くそうと考えることは誰でもあると思う。「そうなった世界って、人間の存在する意味はあるのか?」と一瞬思ったけれど、そもそも動物に存在する意味はない。ただ産み落とされただけ。それなのに、意識を失うと考えたら、その生は意味あるのか、と考えてしまう。

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2026年05月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何とかハーモニーをオーディオブックで聴き終えた。
HTML構文みたいな文章が頻出するので、すごく聞き辛かった。

感想
序盤で仮想現実の話かなと予測したけれど、
もっとグロテスクな話だった。

意識が不要なものとして、人類が捨て去ってしまった世界に残された文章だったとは。
しかも意識を理解する為だけに残された記録。

この記録を読んでいるのは誰か?
もしかして、意識を持った人類が勝ち残り この記録を発見したということかもしれない。

生成AIがまるで意識があるかのように振る舞う現代で、
意識とは何かを問う作品だった。

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2026年04月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私はラストの展開について、人間の意思を取り除くことによって生命主義システムの存続のためにを人類が行動するようになった世界、人間が何をすべきかというのはシステムが自ずと示してくれるため、人間が迷わなくなった、悩まなくなった世界になったという解釈をしています。

この本の中では大部分を実存主義的なものの見方で人間の自我というものを定義している気がしています。作中にもあった「このからだも、このおっぱいも、このおしりも、この子宮も、わたしのもの」というところにも現れていた気がします。

一方で、構造主義的な見方によると、人間の自我というのは、その人の中にあるのではなく、その人が発する言葉の中、人間関係の中にあるというような考え方です。(だとわたしは解釈してますが、違ってたらすみません。)

そして、構造主義的な見方でこの本に描かれたラストの世界観をみると、わたしはシステム= 世界であり、システム=世界はわたしだというように思えるようになったという見方ができます。この考え方自体は仏教の中には近い思想のものがありますし、個人的には好きな考え方です。

しかし、このシステムの一番の問題点も浮かび上がってきました。
それは失われてしまった意思の中に、現実を解釈するという機能も入っていて、それさえも失われてしまっている、つまり「システム・世界=わたし」という解釈さえも思えなくなってしまい、ただの部品になってしまっている可能性が高いという点です。(そういう記述もあったし。)

「私は世界で、世界は私である」と解釈できる力が残されていれば、人はこのシステムに従いながらでも、より良いものにしていけると思うのです。なぜならそれは自分自身なんですから。そして、ここに自我が残ると思います。
しかし、もしその力が完全に無くなっていれば、ただの物体になってしまったということですので、現状のシステムを維持する方向にしか動けないでしょう。これは完全に自我が消滅した状態だと思います。

停滞は衰退です。きっとこのシステムは将来的に何らかしらの変化に耐えられず消滅する気がします。例えば、敵が現れてこのシステム内の人間を殺戮しようとしてきたら。Watchmeをつけていない人類はこの人たちを殺さずに生かしておこうとするでしょうか。

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2026年04月14日

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ネタバレ

1.最適化
合理性を求めていった結果、規則や、空気に縛られて、最終的に人類の意識はなくなってしまう。そのきっかけが医療の高度化によって引き起こされるのは面白かった。「脳もまた肉体の一部である以上、それを制御してはならない根拠など、どこにあるだろうか。」脳を制御し始めた場合、自分の意志はどこに存在するのだろうか。正しい報酬設定のために生きることに意味はあるのだろうか。


2.美
トァンの最後の意志としてミァハを撃った。そして意識は消滅した。その表現がとても綺麗に感じた。文中のタグ表現で無機質に見えるような場面も多かったが、後半になるにつれて、そして一番最後の場面は「感情のテクスチャを生起」させられた。

3.虐殺器官
『虐殺器官』と比較すると、どちらも非常に面白かったが、個人的には『ハーモニー』のほうが強い現実味を感じた。『虐殺器官』が「悪意」や「暴力」を言語として操作する物語だとすれば、『ハーモニー』は「善意」や「健康」を突き詰めた先の物語だ。悪意のない健康への最適化の結果として、人類の意識が消滅していくという展開は、突飛に見えて、むしろ現代社会の延長線上にあるように思える。

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2026年01月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文体が綺麗で、残酷。
「調和」と「意識」という哲学的なテーマで、こんなにも惹かれるとは思わなかった。「意識の消失は死なのか」という命題に、真っ向から勝負している。
病気が根絶され、「福祉」という公共的な優しさで満たされた息苦しい社会。
苦痛や自殺を悪と見なし、「セラピー」という論理的な優しさで抑えつける社会。
まるで予言書のようで恐ろしかった。
結末がハッピーエンドかバッドエンドか、どちらとも解釈できるのが魅力的だった。

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2026年01月18日

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ネタバレ

文中にダグを入れるギミックは今まで見たどんなギミックよりも気に入った。後半加速度的に話のスケールが大きくなるのでやや冷めるが、ギミックの件もあって読書体験としてはかなり良い。伊藤計劃の書く文章が好きだということにこの2作目で確信を持った。個人的には殺伐としていた虐殺器官の方が好き

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2026年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

擬似プログラム言語のような独特の文体に慣れるまで、読み進めるのがなかなか大変でした。しかし、その「読みにくさ」こそが、人間がシステムの一部として管理・記述される不気味さを象徴しているようで、読み終えた今はそれも演出の一部だったと感じます。

痛みや苦しみがなくなり、ただ穏やかに生存し続けるだけの世界。それをユートピアと呼ぶのか、それとも意識の死と呼ぶのか。私は、たとえ苦しむことがあっても、自分自身の意志を持ち続けたい。人間が人間であるための「意識」というバグが消えていくラストには、言葉にできない恐怖を感じました。

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2026年04月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本SF界において、伊藤計劃前・伊藤計劃後と言われるほど伝説的な作家とは聞いていた。「屍者の帝国」は読んで個人的にイマイチでそれから離れていたのだけれど、この「ハーモニー」には「なるほどぉ…」と唸るほどの魅力がある。

「健康」を盾にした息苦しいまでの管理社会という視点において、「一九八四年」や「素晴らしき新世界」に近い世界構造。作者へインタビューの内容を見るまでもなく「二分間憎悪」も出てくる。
その中で、合理的な社会で人間が苦しむのは人間を人間たらしめる意識のせい、そして、意識は神の与えた神秘的な能力ではなく、動物としての生命維持器官であり、進化の過程で切り離してもよいものだとのストーリー。残酷ながら新鮮な視点が論理的で美しい。

だけど、この話の中心人物である御冷ミァハについては、冒頭ではそんな管理社会に対するパブリック・エネミーとしての立場を明確にしているのに、最終的に人間の幸福追求とはいえ、社会に迎合するよう人間を作り直してしまう立場に移行するのがちょっと謎というか、それでいいんか? みたいな感じ。体が社会でなく私のものだと主張するのだ、いう気概に賛同していただけに少し拍子抜け。
あと、元々意識のない種族の末裔だったはいいとして、性暴力を受けて意識を獲得した、という展開も少し強引に思える(ない状態から何をどうやって獲得したのか? 性暴力に耐えるなら意識がないほうが良くないか?)。
あと思春期までの子供や、watchmeを入れてない国もあるわけで、人類全てがハーモニったわけでもないのかなぁとか。

時折挟まるHTML構文での演出はとても画期的。まるで自分がプログラムを読み解く/書き込まれる機械になったような冷たい感覚と、そこに乗っかる「anger」「laugh」等のエモーショナルなタグと喚起される感情、そして文章自体の意味が、相反した、なおかつ複合した感覚を読み手に伝える。まるで作中に出てくるカプレーゼのような、食べ物同士の組み合わせで複雑な味を表現する料理のよう。
これは発明! 次世代の小説のスタンダードになってほしいかも…と思うけど、html構文の知識とか前提になるし、あと最後にネタばらし的に文体の理由が説明されるから難しいかな。でもSF感が突き抜けててとてもよい…

【追記】
読み返して、冒頭に「この話は敗残者、つまり「わたし(意識)」の物語である」と書かれていることに気付いたのだけれど、これは、「ハーモニー」が、進化の過程で振り落とされた意識を主人公とした物語ということが提示されてたのかも。
そうすると、このレビューの二段落目で書いた疑問が払拭されて、物語として一貫性が見えてきた。
つまり、意識がミァハを操り管理社会の中で生存しようとしたが、元々意識が不要な種族のミァハは、意識という時代遅れの器官を捨てた人間の進化を選んだいうこと。だから「わたし」は敗北者。
伊藤計劃は「屍者の帝国」でも言葉が生き物のように人間に寄生するという視点を提示していたし、実際はもうわからないけれど、もしかしたらそういう話だったのかも。だとすると矛盾点は消え、トァンでなく「わたし」の物語だったという記述トリックもあり、素晴らしく面白い!

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2026年03月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この人の小説を初めて読んだんだけど、まず最初にロジックがあって、その人の考える思考があって、そこにストーリーと感情がエッセンスに継ぎ足されているって感じの文体だった。
SF小説だから当たり前に科学的小難しさの続く文章に意識が遠のきかけたりっていう要因はありつつも、私は感情とストーリーがあってのロジックで繋げていく派だから、やっぱり感情移入は難しかった。というか骨組みが”理論”なので感情は後付けなせいか、トァンに感情移入できず置いて行かれ気味にラストまで駆けて行ってしまった。これは頭の仕組みと好みの問題。。。
でも考え方は結構わかりやすくて、面白い。会議を開いたり葛藤するのが「意識」であるから、それがない、すべてが理論で説明できる行動だけを選択するのなら、そこに「意識」はない。つまり、たましいが無くなる。うーんおもしろい。確かに。
そしてそれを、あらゆる厄介さというなの「自然」をとっぱらってきた人類が、無くしちゃだめだ!と言える立場ではない。なるほどすぎる。
というか、ちょっと思うもの。頭で理解していても選べない、感情で動いてしまう理性的でない自分に苦しめられる機会が多い自分からすると、「意識」も十分厄介だ。どうしてこうすると後の自分が後悔するだとか損になるだとか、そういうことが頭で理解していて最適解はこれだとわかっているのにそうはしたくないしそうできないやりたくないと思ってしまうのか。双曲線上に価値が変動していくことで、誤っていると冷静な自分は判ることを選んでしまう。そんなものあっていいことはない。消失してしまったほうがいい。

でも無くならないからこそ、わたしがわたしであるという思い込みがあるからこそ。意味がないやめた方がいいとわかっていても、止められないことにこそ、正しさ以上の魅力があるんだろうなあと思う。そのまったくもって理論の通らない選択こそが人間らしくて、おもしろいんだろうなぁ。楽しいことって意味のないことにあると思うんだよなぁ。とはね、思う。

無くなったら無くなったで楽なんだろうけどね、「意識」。まじで。ほんとに。心の底から。
でもそれはもう、存在している意義はないんだとも思う。そこにあるのは種の存続だけ。個人、は存在しない。だからつまり、これが人間とそれ以外の差ともいえるのかもしれない。と、いろいろ考えられたし考える余地があるくらい分かりやすいSFのお話だった。もう死んじゃったんだなぁ、この著者さん・・・。

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2026年07月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

設定がかなり作り込まれてて世界観が良いけどちょっと難しい!「誰も病気で死ぬことがない世界」が良いのか悪いのかわからなくなるけど頭で考えて選択し続ける人生のほうがたのしいよって思う プログラミング言語?が挟まれてて、それが最後の仕掛けに関わってくるのがセンス〜!!と思った。選択せず意識もない人間をヒトといえるのか おもしろ設定のSFだったけどかなりボリューミーで考えさせられるね

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2026年07月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大災厄後、「個の欲望・意識こそが暴力の根源」という結論に至った世界は、WatchMeによる生体管理=強制的な群淘汰的秩序を求める。
物語は最終的に意識の消去を通じて、個人の欲望が引き起こす暴力を根絶し、社会全体が強制的なハーモニーを奏でる群淘汰的秩序へと純化されて終わる。

暴力なき世界は、人間なき世界でしか実現しないのか?Audibleで耳読。

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2026年05月24日

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