【感想・ネタバレ】紙の動物園のレビュー

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15の物語が収められた、SF短編集。
いかにもSFらしい話もあれば、純文学っぽい話もあり。でも、どれもすごくいい!
中国移民の二世である息子と母との心の隔たりと悔恨を、「動く紙の動物」というファンタジックなギミックを使って、素晴らしい物語へと織り上げている「紙の動物園」。
縄文字(縄の結び目で文字を表したもの)を知る部族の長と、それを遺伝子ビジネスに利用しようとするアメリカ人との騙し合いが描かれ、文化人類学SFとでもいうような独特の世界観が楽しめる「結縄(けつじょう)」など、どれも粒揃い。読み終えたあと、しばし空想にふけりたくなる、そんな話がたくさん詰まっている。

しみじみとした叙情性とともに、孤独や諦念のようなムードを感じるのは、ケン・リュウという作家自身が中国からの移民であるというところが大きいのかもしれません。
SF好きにはもちろん、物語を愛するすべての人に勧めたい良作です。

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2020年07月15日

散々話題になって、2010年代SFのベスト10にも選ばれて、ようやく読んだケン・リュウの『紙の動物園』
確かに面白いのだけど、それ以上にSFというジャンルに吹いた新しい風というか、雰囲気を感じる短編集だったように思います。

表題作の「紙の動物園」は特に傑作だと評判は高かった気がしますが、本当に評判...続きを読むに違わない傑作!
アメリカ人の父と中国人の母を持つ息子が主人公。折り紙の動物に命を吹き込むことが出来る母。しかし息子は成長するに従い、中国人の母に反発を覚えるようになり……

国籍や言語の違い、文化の違い、それは親子ですらも遠い距離にしてしまいます。そして母からの手紙で明かされる、語られることのなかった母の人生と息子への想い。

過酷で孤独だった彼女の人生。そして見つけた居場所。一方でどれだけ愛が深くても埋めることのできない、我が子との距離。

どこかメルヘンチックな紙の動物たち。それはおもちゃで自分だけの世界を作っていた子どものころを思い出させるような気がします。
そして母への反発と紙の動物からの卒業。作中では人種や言語、文化の違いからこの反発の端を発していますが、この反発心やおもちゃからの卒業も、子どもだった人の多くが思い当たりそう。

そして、離れて失われてから分かる母の存在と愛情の大きさ。それでも決して時間は戻ることは無く……。

SFであったり、幻想であったり、海外が舞台であったり、異文化がキーワードになったり、歴史的な事件も織り込まれたりするのですが、それ以上に「紙の動物園」という作品は、どこにでもある普通の母子の物語でもあった気がします。

郷愁や思い出、母に対する決まり悪さ、そして母の愛と想い。あらゆる人が共感できそうな感情と過去をゆっくりとなでおこすような、そんな感覚を読み終えた時に思いました。
この切なさであったり、あるいは郷愁であったりは、ジャンルに縛られずあらゆる人に届くのではないか、とも思います。

もう一つ強く印象的だったのは「文字占い師」
台湾に引っ越してきたリリー。しかし父の仕事のため、台湾の米軍学校の同級生から距離を置かれてしまう。そんなリリーがある日出会った一人の少年と、彼を育てるおじいさん。
そのおじいさんは、自分は文字占い師だと話し、リリーが何気なく選んだ単語から、リリーの現在を言い当てて見せると言う。

リリーが選んだのは『秋』という単語。それに対し文字占い師の甘(カン)は、秋の漢字の成り立ちを説明した後、その下に心を書き加え『愁』という字に書き換えます。
そして「愁」には愁いや悲しみの意味があることを語り、リリーの孤独を言い当てます。そうしてリリーは、どんどん二人との距離を詰めていきますが……。

この文字占い師の甘の語りは、本当に魔術のよう。漢字の意味や成り立ちを説明していく中で、徐々に話は甘の人生、そして中国や台湾の歴史や国家の話へ形を変えていきます。
そしてそれは、国家や歴史、政治や思惑に振り回されてきた個人の悲劇と、それでも前を向こうとする人々の強さまでも表現しようとするのです。

しかし、やがて訪れる登場人物たちへの過酷な運命は、国家の矛盾と、国家に繋がれた個人の哀しさを浮き彫りにします。最後に残る切なさや寂しさが、印象に強く残りました。

「結縄」のアイディアは、この短編集でも随一の面白さだったなあ。縄で文字を伝える少数民族。その少数民族の元を訪れる研究者ト・ムの目的が明らかになったときは、アイディアの面白さに脱帽しました。

そしてアイディアの面白さで話を終わらせず、そこから科学や時代の波に飲み込まれる、少数民族の哀切を浮かび上がらせるのもすごい。

アイディアでいうと「選抜宇宙種族の本づくり習性」はまさにセンス・オブ・ワンダーという言葉が当てはまります。
様々な異星人、さらにはロボットのような種族までが、地球人からすると本とは思えない、それでも「本」としか言いようのないものを作っていく様子をただ解説する話。

想像力がかなり必要とされますが、これだけのことを文章に起こせるのがまずすごい。そして、ラスト一行は本好きにはある意味力強く響くかも。

他に印象的だった短編を簡単に。

「もののあはれ」の主人公は宇宙船の乗組員の日本人。
東日本大震災の時に、物資の配給にちゃんと列を作って受け取る日本人の姿が世界から賞賛されましたが、ケン・リュウもそんなふうに日本を良く思ってくれているのか、とも感じる短編。

ひねくれてる自分は、列を作るのは外国の人が思ってるような、崇高なものが理由でもない、と思ってしまうのですが、それでも作品の穏やかな語り口と、深遠なテーマは、日本という国や文化を誇らしく思わせてくれます。

「太平洋横断海底トンネル小史」
上海からシアトルまでをつなぐ巨大な海底トンネルの建設に、現場で携わった男の話。
国家の巨大事業として派手に進められた建設の裏で、地上で暮らす家族とは疎遠になり、地上に戻れなくなった男。やがて時代が進むに従い、産業の高度化や仕事の危険さ、人件費の高騰で工事の担い手が少なくなり国が取った選択と、男が取った行動は……

繁栄する世界の裏で、忘れられ語られることもなくなってしまった悲劇と罪。そして取り残された者の哀切が印象的。


「どこかまったく別の場所でトナカイの大群が」
安全な空間で暮らすレネイと、宇宙飛行士として飛び立とうとするその母。そしてレネイが初めて外の世界へ飛び出したときのワクワク感。
一方で外の世界を知ってしまった娘に対しての父の思いであったりと、冒険心と親の切なさが感じられる作品。

不老不死がテーマの「円狐」
生と死、様々な人や家族との出会いと別れから導き出される、人生の真理。静かに穏やかにたおやかに閉じられる物語の終わりが、また情緒深い。

妖狐の娘と妖怪退治師の男を描く「良い狩りを」も独特のSF。
文明や科学の発達により居場所を失っていく妖弧と妖怪退治師。本来相対するはずの二人が、そんな時代の波に飲まれつつも、その時代の中を必死に生き抜き、そして流れゆく時代に対し、最後に示す気高い姿と、未来への希望が心に残ります。


最後に収録されていた「良い狩りを」の影響もあるのか、『紙の動物園』に収録されている短編の持つ雰囲気は、ジブリ映画の『平成狸合戦ぽんぽこ』と似たものがあるように思います。

都市開発により、住処である里山を奪われそうになった『ぽんぽこ』の中の狸たち。彼らは妖術を使って開発を中止させようとしますが、それも徐々に限界を見せ始め……

失われたもの、戻らないものへの郷愁。科学や文明の発達に取り残されたり、あるいは翻弄される人々。国家や時代のうねり、科学技術の波に飲まれ、表舞台からひっそりと消えたマイノリティや弱者たち。

『紙の動物園』で描かれた登場人物たちの姿が、人間や文明の発達の前に、故郷を失い姿を消した『ぽんぽこ』の狸たちと、どこか似ているような気がします。

そしてもう一点、『紙の動物園』と『ぽんぽこ』に共通しているように感じたのは、そうした弱者であったり、表に出なかった声を掬い上げようとするどこか優しい視点。

人間たちへの反抗への一方で、狸たちの生活や個性、そして自然を生き生きと描いた『ぽんぽこ』
穏やかな語り口と静かな抒情で、登場人物たちを見つめる『紙の動物園』の短編たち。

時代や歴史の流れ、あるいは技術の発展に伴い失われゆくものや、表にでなかったもの、変わってしまうもの……。そして、そんな中でも最後まで変わらないもの。
そうしたものたちへの愛惜であったり、優しい視点が根底にあるように感じました。

そしてこの視点こそが『紙の動物園』が、ベストSFに名を連ねた理由だと自分は思います。
今まで読んできたSFも、こうした話はあったような気はします。でもその視点はどちらかというとシリアスというか、ブラックというか。
進みすぎた技術や、強大な国家への警鐘、あるいは皮肉が印象に残るものが多かったです。

一方でこの『紙の動物園』はそれ以上に、そうしたテーマに押し流される人たちの声を、静かに、そしてたおやかに掬い上げようとしていることが印象的でした。
そうした視点が、この感想の最初に書いた「SFの新しい風や雰囲気を感じた」理由だとも思います。

こういう視点って人柄もそうですが、著者のケン・リュウの出自もやはり関係しているのかもしれません。
歴史的な事件や政治的な事柄に対し、自国民に自由に語ることを許さない中国。その裏にはたくさんの声なき声が渦巻き、そして聞かれることのないまま、時代の中に消えていった声もたくさんあると思います。

幼少期をその中国で過ごし、その後アメリカに移住したケン・リュウ。海外から見た故国の矛盾と、その一方で子ども時代や、中国文化への郷愁。
そうしたものが合わさってこうした独特ながらも味わい深く、そして世界の壁を越えて愛される短編たちが生まれたのではないか、とも想像してしまいます。

以前『折りたたみ北京』という中国SFのアンソロジーの感想でも書いたのですが、中国SFの作中で描かれるキーワードやガジェットは確かに目新しくて面白いです。

でも作品の根底にあるものであったり、人間に対する視点というものは、やはり普遍的なもののような気がします。

一方で、中国という出自やキーワード、ガジェットがあるからこそ、その普遍的なものがより鋭く、あるいは味わい深く描かれているところもあって、だからこそ中国SFが熱い! という熱が生まれたのだとも思います。

でも〈中国〉や〈SF〉はあくまでキーワードであり、設定でしかありません。それを存分に生かした物語と、その根底にある優しい視点。それこそがこの『紙の動物園』の最大の魅力だと思うのです。

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Posted by ブクログ 2019年10月18日

中国で生まれ、幼年期を同国で過ごした著者。そのため表題作をはじめ、多くの作品には東洋文化の影響が色濃く反映されており、同じ文化圏の私たちには特に心にグッとくるものがある。お気に入りは「もののあはれ」「太平洋横断海底トンネル小史」「円弧」あたり。すでに多数の短篇を、しかも驚異的な速さで書き上げているみ...続きを読むたいなので、どんどん邦訳され刊行されると嬉しい。あ、長篇も出ている様なので、そちらもお願いします。今後大注目の作家。

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Posted by ブクログ 2019年01月19日

短編にもかかわらず、一話一話に読み応えがある。SFでありながら(だからこそ)人間の体温と心を感じる。その時々の自分の状況によって、響く作品が変わるため、手元に置いておきたい一冊。

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Posted by ブクログ 2018年10月14日

まず、気合いの入った装丁からして出版社の意気込みが伝わってきた。そして、その気合いも当然だなあといった内容。結構情緒的なものが多いし、著者が中国系(というか中国で育って幼少期に米国平民)なので伝奇SFっぽいものも数点。なかなか良い。ただ、これは中国じゃ出版できないだろうなあ?と思ったモノはやはり翻訳...続きを読むされていないそうな(訳者後書きより)そして、最後に一言。
『読んだ。悪くない。』言ってやった!言ってやった!

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Posted by ブクログ 2018年02月14日

しまった…これも人生後半に取っておくべき一冊でした!
テッド・チャン信奉者であるという点でもうハズレじゃないのは解っていた・・そして先生に勧められたので、これはもう読んでおこうかなと。昨年出版された文庫版は、こちらの短編集からの再収録なので、こちらのトールサイズを読んだ方がお得です。
以下気に入った...続きを読むものを抜粋して。

「紙の動物園」からもうね…霞んで読めない一作でした。これは少し不思議の方のSF。

「もののあはれ」正統派SF。そして染み入る様な語り口と、美しく悲しいラスト。でも悲しまなくても良いんだよと云う、優しさ。

「心智五行」若干乙女ゲ―的な楽しみを覚えました(笑)

「円弧(アーク)」生死とか愛情とか何それと思わせる話。もし人に永遠があったなら、リーナのような生き方をするだろうか、いやそれが悪いとか良いとかなど、誰かに断ずることは出来ず、本人が何もかもを(それこそいつ死ぬのかも)決めて生きねばならないのね、嗚呼。

「波」円弧に対を為すような話でありながら設定はガチSF。円弧では人の肉体を、こちらの波では意識を物理に用いています。またその上で前者は個を、後者は集団を描いた作品です。是非セットで。

「1ビットのエラー」まんまテッド・チャンの「地獄とは神の不在なり」展開で、ラストが違う感じかな…この作品でケンリュウ自身も作家として天国と地獄を見極めたのだという機縁な一作。読み比べ推奨。

「文字占い師」一番辛い・・・。小説には著者の生まれや育ち、思想が根ざす物とはいえ、彼が中国出身者であるという事を一番感じさせる一作。でも目を逸らしてはいけない事なのですね。

「良い狩りを」ボーイミーツガールな話かと思いきや!胸ワクドキ冒険活劇の始まりかと思いきや!いや、そういう部分が無いかと云われたらそうでもないけど!巻末解説の「きつねうどんだと思ったら蒸しパンだった」が云い得て妙。蒸パンク喰ぅSF!(笑)

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Posted by ブクログ 2018年01月26日

散々話題になっていたSFをようやく読みました。ふだんSFをそれほど読んでいないのですが、読むと面白いのですね。それはアイデアが開花する瞬間を目の当たりにする面白さとでも言いましょうか。そしてこの短編集でもその面白さを思う存分堪能したのです。
ひとつのアイデアから広がる世界。動き出す折り紙の動物、結び...続きを読む目を文字とする民族、未開の星へ辿り着いた人物の変化、不死を手に入れた者の想い、感情のアルゴリズム、文字占い、などなど。それらのアイデアが物語を展開させる時の軌跡の美しさと哀しさ。
いわゆるハッピーエンドの作品が少ないにも関わらず読後感が悪くならないのは、その軌跡の素晴らしさを見せられたから。種が芽吹き花を咲かす様子を堪能したから。物語作家としての力を見せつけられました。
これはSFに対して苦手意識を持つ人にも勧められる作品でしょう。物語に耽溺する悦びに満ちた作品集です。

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Posted by ブクログ 2018年01月04日

 15編からなる短編集。
 何気なく入った初めての書店のレジ横に積んであり、何気なく買ってしまった一冊。
 そういう本との巡り合わせっていうのもあるのだな、とちょっとした運命を感じたりする。
 僕にとってここ数年で読んだ本の中でもベストの一冊。
 SFらしからぬ作品も収録されているが、むしろ...続きを読む本書をSFという狭いジャンルに縛り付けてしまうべきではない、と思う。
 決してSFというジャンルを下に見ているのではなく、特定のジャンルという括りを大きくはみ出した面白さがあるからそう思うのだ。
 勿論、飛びぬけたアイディアによるSFもあれば、SFを背景としたいわゆるヒューマン・ドラマもある。
 中国系アメリカ人というスタンスから生まれた、アジアの悲劇的な歴史をテーマにしたとても重い作品もあれば、生と死にSF的な要素を見事に絡ませた哲学的な作品もある。
 表題作「紙の動物園」は物悲しく、胸が締め付けられそうになる話だし、「文字占い師」は本当に重く重く心にのしかかってくる話になっている。
「もののあわれ」は日本が舞台になっており、日本のコミック「ヨコハマ買い出し紀行」にインスパイアされた作品とのこと。
 プラスティネーションに関するグロい表現や、拷問に関する目を背けたくなるような悲惨な表現もあるので、その手が苦手な人にとっては少々要注意かも知れない。
 後味の悪い作品も多いが、どの作品も読み終った後に何かしら考え込まずにはいられない何かを残してくれる。
 全70編の中から日本独自に15編を選択した短編集とのこと。
 できればその70編全てを読んでみたいと強く思う。

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Posted by ブクログ 2017年07月20日

明敏かつセンチメントな文章というか。
「円弧」「文字占い師」はセンチって言葉じゃ温いか。この2作は本当にシビれた。前者は不死の社会、後者は二・二八事件に纏わる話。
よく訓練されたSFファンなら「トランス脂肪酸たっぷりのクッキー」と読んだ瞬間によだれが出るはず。舞台の時代背景とそれが禁断の誘惑に溢れた...続きを読む食べものであることを直感して。

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Posted by ブクログ 2017年07月06日

先月にテッド・チャンを読んで非常によかったのだが、他に邦訳がないので、同系列のケン・リュウを読んでみた。
中国系の登場人物や舞台、文化をベースにしていて、他に読んだことがないテイストのSF短編集。
SFというよりファンタジーかというのもある。
一部、難しくてよくわからない話もあるが、総じておもしろい...続きを読む、というか凄い。お薦め。

以下は読書メモ:

紙の動物園
紙で動物を折ると動きだす。壮絶な過去を持つ母親と、その息子の話。母が死んでから知る深い愛情が切ない。

もののあはれ
地球に小惑星が衝突するため一部の人が地球を脱出した。十数年航行して宇宙船に致命的なトラブル発生。唯一の日本人乗組員が数日がかりの修理に出るが…

月へ
法律事務所に勤めるサリーは難民を助けようとするが裏切られる。

結縄
縄を結ぶことで読み書きする部族。それを新薬開発に応用しようという企業。

太平洋横断海底トンネル小史
歴史が違って昭和の初めに太平洋横断海底トンネルが作られた。その掘削に従事するある人の話。陸の上にはもう住めない。

潮汐
月が地球に迫り、満ち潮で海面が上昇していく世界。

センバツ宇宙種族の本づくり習性
宇宙人の記録方法を何種族か説明。

心智五行
トラブルである惑星へ1人たどり着く。
そこにいた異星人と交流していく。
人類は病気を引き起こすバクテリアのない世界にいたが、その星は地球人が大昔に移住したらしく昔の地球のような生活をしていた。

どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
人間が電子化した世界では何次元もの空間に生きている。母は最後の実態がある世代。

円弧(アーク)
人間の死体を残す仕事。
不老不死が実現しつつある世界。
最後の子供は最初の子の100年後。


地球から400年、何世代にも渡る旅に出る宇宙船。途中で地球から連絡があり、不老不死の方法が見つかる。
目的の惑星に着いたら、機械のような異星人?に迎えられるが、それは…

1ビットのエラー
著者付記によると、この話には三つの着想の源があり、そのひとつがテッドチャンの「地獄とは神の不在なり」。なるほど、天使降臨が出てくる。
それにしても、ここまでで一番わからない短編だ。

愛のアルゴリズム
これも難しくてよくわからなかった。
テッドチャンの「ゼロで割る」からの着想だそうだ。
機械仕掛けの人形 鬱病

文字占い師
選んだ文字(漢字)から、その人を読み解く。その術を持った爺さんには、戦争の悲惨ね経験があった。
拷問シーンが出てきて読むのが気持ち悪くなる悲惨な展開となる。

良い狩りを
妖狐の母娘と、妖怪退治をする父息子の、香港の話。
イギリスから蒸気機関車などが入り世の中が都会化して、妖狐の娘は魔力が落ち、狐の姿に戻れなくなる。息子は妖怪がいくなって仕事がなくなり、街に出て技術を身につける。
最後はまさかのサイボーグ…

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年06月21日

ケン・リュウの評判は聞いていたが、この短編集良いぞ。
表題作を読んで「これのどこがSF?ファンタジーやん」と思ったのはともかくとして(笑、ミニマル小説の一つの完成形ではないだろうかと思う。そぎ落とすべきとこを、そぎ落とし、引き算で作り上げた小説。澄み切った出汁の味わいのような余韻が素晴らしい。

...続きを読むの他の作品には、そこまでの引き算感はないものの、想像力と感受性をグイグイ刺激してくるインパクトの強さ、これぞ短編小説の醍醐味という感じの作品が多い。

東洋人であることが、小説の中に表にも裏にもしみだしてきており、日本人も儒教や仏教や道教の影響を受けているんだなぁと、こんな俺でも思えてしまえるのだから、欧米や中国で絶賛される理由も分かるような気がする。新感覚のオリテントっぽさやねんなぁ。

中共批判が交じると、中国では翻訳出版されないらしい。そういう政治背景は残念だが、その手の作品も政治色よりは人間のあさましさや哀しさを描いていて、(少なくとも表面上は)なんでも読める日本にいて良かったと思う。

ケン・リュウ、他の作品も追いかけてみよう。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年05月18日

目次
・紙の動物園
・もののあはれ
・月へ
・結縄
・太平洋横断海底トンネル小史
・潮汐
・選抜宇宙種族の本づくり習性
・心智五行
・どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
・円弧(アーク)
・波
・1ビットのエラー
・愛のアルゴリズム
・文字占い師
・良い狩りを

この短編集は、よい。

昨日寝...続きを読むる前に表題作の「紙の動物園」を読んだ。
主人公の母の気持ちに胸がふさがれるような思いがし、主人公のいらだちや悔いは身につまされるほどリアルに自分のものだった。(私の母は健在ですが)

今朝、通勤の電車の中で「もののあはれ」を読んで、涙をこらえるのに苦労した。
トム・ゴドウィンの名作「冷たい方程式」の大人版だと思った。

愛する者を切り捨てる痛み。切り捨てられる切なさ。
それは研ぎ澄まされた刀でスパッと切られるのではなく、無理やりはがしたかさぶたのように、いつまでもじくじくと痛みを見せつけられる。
この短編集にはそんな痛みや哀しみがつまっている。
だけど、どんなに文明がすすんでも、身体が進化しても、人の心は変わらなくて。
人の心ってどこにあるのか、何でできているのかはわからないけど、それが人を人たらしめているものなのだろう。
2足歩行だとか、道具を使えるなんていうのは、ほんの表面上のことなのだ。

先日牧野修の「月世界小説」で、ニホン語についてさんざん読んだと思ったら、こんな記述
“日本語が陰影と雅趣に満ちた言語であり、一文一文が詩であることを父さんに教わった。日本語は、重層的な言語であり、語られぬことばが語られることばとおなじように深い意味を持ち、文脈のなかに文脈が潜み、まるで日本刀の鋼のように層が重なりあう言語である、と。”(「もののあはれ」より)

そして、日本人についても
“「日本人は、火山と地震と颱風と津波の国に暮らしているんだ、大翔。地下の炎と上空の凍える真空とのあいだにはさまれた、この惑星表面の細長い土地に縛られ、いつなんどき生命の危機に襲われるかもしれない暮らしをずっと送ってきた(中略)もののあはれは、いいか、耐え忍ぶことを可能にしているんだ。それが日本という国の魂なんだ。それが絶望することなくヒロシマを堪え忍び、占領を堪え忍び、都市の崩壊を堪え忍び、全滅を堪え忍ばせたんだ」”
耐え忍ぶことはあきらめることではない、と。

漢字の国の人、台湾の国民党と共産党、そして国民党の後ろにいるアメリカのパワーゲームに踏みにじられたアメリカ人の少女と台湾人の老人と少年の交流を描いた「文字占い師」も多分ずっと心に残る作品になるだろう。

多作の作家らしいので、もっと日本に紹介されればいいと思う。
〈氷と炎の歌〉シリーズに比されるような長編小説も発表されているようなので、日本語に訳されたらぜひ読みたい。
あまり長くなり過ぎないことを望むけれどね。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年03月12日

読後、満足感でいっぱいの短編集。いろんな人におすすめできると思う。宣伝は何度となく見ていて、真面目っぽい読み物かと敬遠してたけど、もっと早く読めばよかった!!
 予想通り、表題作他はしっとり純文学テイストだが、収録15編の内訳は、ガチSFもあればアホSFもあり、ファンタジーもあり、歴史の重さを背負う...続きを読む作品も。ケン・リュウは中国生まれのアメリカ人なのだが、日本人に響く感性を持っていて、読み心地は不思議に良い。
 多作な中からバラエティに富むラインナップを選んだが、まだ何冊も編めそうだと訳者は書いている。また読むのが楽しみ。
 この著者は、アイデア勝負の作品もあるけど、人間を描いているのは共通だと思う。地べたで生活する人間と、未来で変貌した人間の有り様と。いずれも面白いし、遠くへ連れてってくれる作品たちであった。

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Posted by ブクログ 2020年11月02日

とても面白かった。東洋の世界観が見事に反映されたSFで、このレベルの作品はなかなか出るものではないと思う。織り込まれている歴史背景や人種観のメッセージ性が深く、SFの枠を飛び越えて面白いと思う。 テッド・チャンの『あなたの人生の物語』のなかでも「地獄とは神の不在なり」が好きだったので、「1ビットのエ...続きを読むラー」を読んでピンときた。一番お気に入りの短編は「良い狩りを」で、訳者さんがトリに持ってきただけあるなと思った。訳者あとがきを読めば、この短編集への愛が感じられる。

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Posted by ブクログ 2019年09月20日

「折りたたみ北京」の編者兼英訳者が書いた短編集。

原題?に「fantasy and science fiction」とあるように、SFというよりファンタジー感が強い。

「折りたたみ北京」でも感じた抒情性はさらに強く、作者の作風なのか、中国”SF"の一般的傾向かはわからないが、何となく前...続きを読む者のような気がする。

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Posted by ブクログ 2019年08月03日

めちゃくちゃ面白い……なんでもっと早く読まなかったんだ〜〜!!!!どの作品が好きか選ぶの悩むな〜〜……表題作も大好きだし、「月へ」「結縄」「文字占い師」もショックを受けたけどそれがまたすごいなと思ったし、「円弧」とか「愛のアルゴリズム」みたいな、技術の発展ゆえの悲しさみたいなものを描く設定大好きだし...続きを読む、「1ビットのエラー」とか「良い狩りを」とか美しすぎるし……「選抜宇宙種族の本づくり習性」とか「心智五行」とかは最初ついていけないかな?って思ったらどんどん引き込まれてしまったし……どれも選び難いけどこの本でのマイベストはやっぱり表題作の「紙の動物園」かなと思います。あんまりSF読んでないからというのもあるけど、こんなSFあるんだ!と感動してしまった。

生まれた国からの移動や、文化への興味や、職業の経験や頭の良さや、すべてが豊かに活かされているというか………プログラマーと弁護士の経験を活かすSF作家って要素盛りすぎだと思うのに活きてるんだよな〜〜………
SFって無機質なイメージがあって、クールな選ばれし人たちが「これがいいんだよ!」と熱狂しているように思っていました笑、が、なんていうか、良い意味で普通の物語のひとつなんだなと思って。人間臭い物語もあるんだなあと。

あとは、世界すべてがSF的世界にすっかり染まり、新旧の技術を持った異なる存在の断絶ではなく、同じ世界に進んだ技術があり、それを選ぶ人も選べない人も、なんなら選びたくても選べない人もいて、さらには同じ登場人物でも時によって考えや選ぶことが変わったりする描写がとても上手くて、そういう時代は実はもう来てるんだろうなと、そのある意味でのリアルさにも舌を巻いてしまいました。

他の作品も読みたい!し、ケン・リュウさんは英語圏の作家さんと言えるんだろうけど、その生い立ちや他を絡めたあとがきのおかげもあって、非英語圏の海外作品も読みたいな!あとは単純にSFもっと読みたいな!と思える作品でした。めちゃくちゃ良かった!!!!

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Posted by ブクログ 2019年04月03日

予想以上に面白いSFだった。
どの短編も独特の世界観があり、陶酔させられてしまった。
どれが特にといわれると困るが、「紙の動物園」「心智五行」
「文字占い師」「良い狩りを」あたりかな。
また、時をおいてケン・リュウの違う作品を読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2019年03月17日

「紙の動物園」「良い狩りを」「文字占い師」が気に入った。叙情性の高さはブラッドベリを思わせるところがある。他の作品も読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2018年11月17日

短編のどの作品も単純なハッピーエンドでは無く物哀しさが漂う。「紙の動物園」「もののあわれ」の2作が飛び抜けて面白かった。他に自分好みなのは「心智五行」「波」。 別の作品も読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2018年08月08日

SF短編集。登場人物や舞台がアジアに関連しているものが多く、今まで欧米のSFばかり読んでいたので斬新だった。短編でも1話1話の話や設定の濃さがすごい!

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年07月01日

中国、アジアの香りがする。切ない話が多い。多彩。

1.紙の動物園
泣ける、せつない。折り紙の動物たちが可愛いだろうなあ、きっと。

2.もののあはれ
最後のシーンですごく宇宙がイメージされた。挿入される詩歌が叙情豊か。一番好き。

4.結縄
トム、ひどい!アミノ酸配列の設計のアイディアは面白い。...続きを読む

8.心智五行
これも面白かった。ストーリーも良いが、個人用AIがとても気に入りました。これまた欲しい。
バクテリアが気分や脳内化学に影響を与えてるというアイディアが面白い。

9.どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
これもなかなか面白かった。データとして不老不死で生きる時、親子関係や愛情はどのようなものになるのだろうか。

10.円弧(アーク)
こちらの中での不老不死は、あまり幸せそうでない。

11.波
永遠に子どもなら、身体は大人でも頭(脳の処理)的には大人並なのか?

12.1ビットのエラー
テッド・チャン「地獄とは神の不在なり」にインスピレーションを受けた作らしい。

13.愛のアルゴリズム …(紙の動物園)
テッド・チャン 「ゼロで割る」から、トーンと葛藤の部分のインスピレーションを受けたとのこと。

14.文字占い師 …(紙の動物園)
結末がきつい。ある程度予想はしていたけれど。

15.良い狩りを
歴史改変モノ ファンタジー+SF。これも好き。
予想を裏切る展開で意外だったが、想像すると妖狐が非常に魅力的だった。アニメ化してほしい。

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