書店員のおすすめ
15の物語が収められた、SF短編集。
いかにもSFらしい話もあれば、純文学っぽい話もあり。でも、どれもすごくいい!
中国移民の二世である息子と母との心の隔たりと悔恨を、「動く紙の動物」というファンタジックなギミックを使って、素晴らしい物語へと織り上げている「紙の動物園」。
縄文字(縄の結び目で文字を表したもの)を知る部族の長と、それを遺伝子ビジネスに利用しようとするアメリカ人との騙し合いが描かれ、文化人類学SFとでもいうような独特の世界観が楽しめる「結縄(けつじょう)」など、どれも粒揃い。読み終えたあと、しばし空想にふけりたくなる、そんな話がたくさん詰まっている。
しみじみとした叙情性とともに、孤独や諦念のようなムードを感じるのは、ケン・リュウという作家自身が中国からの移民であるというところが大きいのかもしれません。
SF好きにはもちろん、物語を愛するすべての人に勧めたい良作です。