【感想・ネタバレ】紙の動物園のレビュー

あらすじ

〈ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞受賞〉ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた……。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作ほか、地球へと小惑星が迫り来る日々を宇宙船の日本人乗組員が穏やかに回顧するヒューゴー賞受賞作「もののあはれ」、中国の片隅の村で出会った妖狐の娘と妖怪退治師の「ぼく」との触れあいを描く「良い狩りを」など、怜悧な知性と優しい眼差しが交差する全15篇を収録した、テッド・チャンに続く現代アメリカSFの新鋭がおくる短篇集

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15の物語が収められた、SF短編集。
いかにもSFらしい話もあれば、純文学っぽい話もあり。でも、どれもすごくいい!
中国移民の二世である息子と母との心の隔たりと悔恨を、「動く紙の動物」というファンタジックなギミックを使って、素晴らしい物語へと織り上げている「紙の動物園」。
縄文字(縄の結び目で文字を表したもの)を知る部族の長と、それを遺伝子ビジネスに利用しようとするアメリカ人との騙し合いが描かれ、文化人類学SFとでもいうような独特の世界観が楽しめる「結縄(けつじょう)」など、どれも粒揃い。読み終えたあと、しばし空想にふけりたくなる、そんな話がたくさん詰まっている。

しみじみとした叙情性とともに、孤独や諦念のようなムードを感じるのは、ケン・リュウという作家自身が中国からの移民であるというところが大きいのかもしれません。
SF好きにはもちろん、物語を愛するすべての人に勧めたい良作です。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

結縄と円弧が特に好き。理解力が追いつかないのもあったけど大体は楽しく読めた。

ト・ムを許すな!!!!!!(結縄)

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2022年09月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読書備忘録583号。
★★★★。
じわ~と来るSF短編集。カチコチのSFではなく、どの作品もファンタジー的で、東洋的で細やかな情感で、叙事詩的な雰囲気を感じさせる。
アメリカSF界の旗手で、本のタイトルになっている紙の動物園でヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞の3冠達成。史上初。
紙の動物園:生きていくためにカタログに載り、アメリカ人に買われて結婚した台湾人の母。ハーフとして生まれた主人公。幼い頃、おもちゃが欲しいとねだった。母はチラシの紙で動物を折り、ふぅ~っと息を吹き込み命を与えた。動き出す紙の動物たち。成長した主人公はいつまでも英語を話せない母にイラつく。そして母は亡くなり、動物たちは・・・。切ないですね。母の想い。
もののあはれ:小惑星が地球に衝突する。人類は宇宙船を作り、選抜された人々を乗せて旅立つ。日本での宇宙船建造は失敗。主人公は両親の口添えでアメリカの宇宙船に乗れることになった。しかし航行中、太陽帆(数kmに渡る)に穴が空き、修理しないと宇宙船は全滅する。修理できるのは複雑な骨組みを理解して破損個所まで最短時間でたどり着ける主人公だけ。移動中寝ることすら許されないギリギリの空気で修理に旅立つ主人公。
これらの代表作以外にも、太平洋横断海底トンネル小史、潮汐、心智五行、円弧、波などどれもこれも珠玉の短編。生命の捉え方が独特で、命の定義ってなんでもありだなと、新鮮に楽しめました。

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2021年05月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題作の「紙の動物園」が良かったです。包装紙を折り紙のようにして、動物を作ってそれに命を吹き込むところ、母がいろいろな苦労を重ねて今日に至っているところは感動しました。

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2025年08月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題作のほか、『心智五行』、『文字占い師』など、せつなくも惹かれる作品はある。しかし、半分の作品は理解できずに読み流してしまった。集中して文字を追わないと、展開を把握できぬままに進み、幾度も読み返すはめになる。翻訳がまずいわけではないのだろうが、奇抜であって、心理描写を読み解かなければならない海外SF作品についていけない自分を知った。うむ、残念。

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2020年12月25日

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