あらすじ
幸せな四人家族の長女として、何不自由なく育った弥生。ただ一つ欠けているのは、幼い頃の記憶。心の奥底に光る「真実」に導かれるようにして、おばのゆきのの家にやってきた。弥生には、なぜか昔からおばの気持ちがわかるのだった。そこで見つけた、泣きたいほどなつかしく、胸にせまる想い出の数々。十九歳の弥生の初夏の物語が始まった――。
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幸せな四人家族の長女として、何不自由なく育った主人公・弥生には、幼い頃の記憶が欠けている。
彼女は何かに導かれるようにして、叔母ゆきのの家を訪ねる。そこで見つける、懐かしく切ない想い出。雨の日、木が生い茂る森のような庭の中に建つ家、ゆきのがパジャマで床に座っているというシーンが印象的。弥生の周囲で人が死んだり、そのことで悲しんだりするのですが、その思い出を乗り越えるというよりは、思い出と一緒に前に進んでいきます。弥生と哲夫、ゆきのと正彦。恋愛をしている二人の関係性と、恋する気持ちの描写が可愛らしいです。この本が最初に出版されたのは1980年代なのですが、全く古い感じがしません。ただ、現在と違う軽井沢の風景には、おおと思いました。
感情タグBEST3
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あの人は、そういったなつかしいものや、胸の痛むことや、どうしようもなく歯ぎしりするようなことのすべてだった。
あの人がかさをさして雨の校庭を横切ってやってくるのを見ているだけで、僕は何かを思い出しそうになって気が狂いそうになったものです。
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見た目や形に囚われずに生きると、また人生の見方、そして出会いも変わるのでしょう。キャラクターと親しくなれた頃に本が終わったしまいましたが、言葉の表現がとても素敵で、楽しく読みました。
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吉本ばななさんの初期の頃の作品だろうか。私はとても面白かった。あっというまに読破してしまった。インパクトのある表紙に、内容の想像がつかなかった。哀愁があって、かっこよくてミステリアスで少しの恐怖があって。売れている作家さんなんだとやはり思わされる。
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哀しい予感 というタイトルからして、重く切ない 言い表すのが難しい。けどほんのりあたたかいような、不思議な感覚に陥りました。
恐山からふたりが帰ったあと、どうなったのだろう。血の繋がってない家族のことや弟のこと。ほんとうに、厄介事は何一つ片付いてなくてこれから試練や難関がたくさんあるんだろうな、と感情移入してしまうくらい、重い
短いあらすじだったけどぐっと引き込まれるものがあってすぐに読めました。
Posted by ブクログ
読み終わったあと軽く酔ったくらいには、リアルだった〜。重いけど、人生!って感じがして、そこに瞬間でしか見られない美しさとか自然の中でしか見られない美しさみたいなのが描かれてて、綺麗だった。。哲夫と弥生の空気感、やりとり、弥生の哲夫を見る目もすごく好きだった。
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高校時代に、小説にハマるきっかけとなった作品。
物語の根底にある物悲しい雰囲気が好き。
忘れていた子供の頃の記憶を呼び起こすため、弥生は家を出る。叔母の家で過ごす日々や血の繋がらない弟哲夫との旅…。真実を知ってしまうと、もう元に戻れないかもしれない、という「悲しい予感」がある。
しかし、最後にお母さんから『いつまで遊んでるの。早く帰って来なさいよ。』と電話がかかってきたとき、弥生とともに私も涙が出そうになった。温かい家族の愛で、哀しい予感を包み込み、ほんのり幸せな気持ちが芽生えるから。
弥生の気持ちの変化がとても繊細に描かれていて、美しい物語だなと思う。
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情景や湿度までも五感で感じられるような、美しく繊細な文章で、あっという間に読み進めてしまいました。哀しい出来事を思い出し、過去をたどりながらも、最後にはどこか明るい未来を予感させる終わり方で、心が少し軽くなりました。
タイトルに惹かれて手に取った一冊でしたが、刊行はなんと1988年。スマホのない時代、固定電話の描写がどこか懐かしく感じられました。それ以外は時代を感じさせず、今読んでも心に響く普遍的な作品だと思いました。
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再読したくて、夜急に買いに行った本なのですが
よしもとばななさんだなぁっていい意味で思うストーリーと文章です!おばさん「秘密あり?」がいい味だしてます!
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吉本ばななさんらしさがたくさん詰まった作品でとても良かった。大切な人の死、家族の愛、忘れてしまった記憶、夢現の話、旅、発見、、。哀しいことがあってそこから成長して前に進んでいく、吉本さんの作品はいつも身近なものや生活の中からたくさんの価値観や幸せを気づかせてくれる。
Posted by ブクログ
地続きな日常の中で、少しいつもより鮮やかな部分を切り取ったような小説。
読んでいる最中から読後まで一貫して、初夏と言うには少し早いくらいの心地よい風のような清涼感を覚えた。
(誰もすまなくなったおじいちゃんの家、当時のままになった叔父さんの部屋から出てきたものをパチってきたことにより出会った作品。叔父さんありがとう)
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読むの2回目だけど前回と全然違った感想を持った。
本を開く通勤と休憩の時間がすごく楽しかった。心が熱くなって心がふわぁって自由になってくのが心地よかったり、
弥生と弥生の家族が背負う微熱を持った不幸、 その訪れた不幸を時間をかけてゆっくりと受入れて輝いていく。それがなんともうつくしいと思えるこの感覚ってすごいな~。これが吉本ばななだな~て思う。
ばななさんの本、だいすきです!
Posted by ブクログ
吉本ばななさんの作品が世間で広く受け入れられていることに、あらためて驚きと嬉しさを感じずにはいられませんでした。その言葉の持つたおやかさは、もちろん素晴らしいもので、スピリチュアルな内容もいとも簡単にその中に包括してしまう感性。吉本ばななさんの作品は、淡い夕焼け色を彷彿させるものが多いような気がします。この作品の登場人物達も、みな美しく、その中に溶け込んでしまうように感じながら、小説を読み終えました。
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情景描写の言葉が綺麗。
頭にスッと入ってきつつ、とても幻想的で切なさや哀しさを感じさせるような言葉が並んでおり、引き込まれた。
主人公の立場は自分とは全く違うのに、なぜか共感できて、涙が出そうになる。
特に、弟(血のつながりはない)と恋愛関係になっていく場面では、いやらしさではなく、甘酸っぱい純粋な恋心を感じられて印象的だった。
Posted by ブクログ
弥生と叔母のゆきのの2人の話。正確にいうとまったく2人だけの話ではないが、私はこの2人のための話だと思う。この2人が姉妹だとは考えも付かなかったが、分かってからもう一度読むと血縁関係があることがありありと分かった。特に、ゆきのがいなくなった家で母親が弥生に電話をかけたシーンなんか血のつながりをよく表している。母親がけろっとした声色で「早く帰ってらっしゃい。」というシーンは、あまりにもあっさりしすぎていて違和感を覚えた。
血のつながりというのは果てしないもので絶対的なものだと思った。それに早くから気づいた哲夫はすごい。
哲夫と弥生の関係はすごく好きだった。哲夫が真面目すぎる故に成り立っている恋愛。だからこそ弥生は哲夫に惹かれるのだと思った。ゆきのだってそうだ。正彦は哲夫とよく似て真面目だ。
ここにも血のつながりが現れている。
Posted by ブクログ
哲生くんにずっとキュンキュンしてしまいました。
ばななさんの小説に出てくる男の子、いつも素敵。
ゆきのさんがどんな家に住んでいるか、想像しながら読みました。
2024/11/18
再読。ゆきのさん本当に綺麗な人なんだろうな。
ばななさんの本は、一行文章読むだけで幸せな気持ちになる。美しい描写。だから何回読んでも飽きない。
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血の繋がりがなくても兄弟ものの恋愛は嫌いなのに、この作品は読めた。
家族の描写がすごく温かい作家さんだなと思った。
不安がすっと消えていって、心が満たされる文章だった。
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最後に読んだのは大学生の頃だろうか。
覚えていないがとても昔のことだ。
吉本ばななさんの作品はこれまで沢山読んできたが、新しい作品ほどどうもしっくりこなくて一度手放してしまった初期の作品をもう一度手に取ってみた。
読んでしばらくして、あぁこの設定知っているとなった。
一度読んでいるのだから当然だが、私の場合読んで何年も経っている作品はすっかり忘れていることがほとんどだ。
それでもピンときたということは、やはり私は初期のばななさんの作品が好きだったのだ。
ばななさんの『良いことを教えてあげる』というスタンスのない純粋な小説になっていることが読みやすい。
これを機にまた初期の作品を読んでみたいと思う。
美しさの中に怖さも
吉本ばななさんの著書は初めて読みましたが、全体を通して非常に繊細だなという印象です。
登場人物の心情や家の散らかり方、山奥の風景まで事細かに描かれており、世界観に入り込みやすかったです。
序盤のお風呂のアヒルのシーンではかなり不気味な怖さを感じました。
ホラー小説かなと思わせるほど笑
他の著作も読みたくなりました。
Posted by ブクログ
『あんまりたくさんありすぎるものを見ると、
人間は不思議と悲しくなっちゃうんだよ』
幸せな家庭で過ごしているが、幼い頃の記憶が欠けている弥生。
変わり者だが美しいおばのゆきの。
真っ直ぐで誰からも愛される弟の哲生。
それぞれの想いや、明らかになる過去。
弥生と共に、常にどこか切ないような、でも静かに満たされていくような感覚になりながら読み進められた。
初めて吉本ばななさんの作品を読んだが、情景描写や心情を紡ぐ言葉がとても美しくて素敵で、こころが澄んでいくような気がした。
今後も色々な作品を読んでいきたい。
Posted by ブクログ
童話の世界に迷い込んだ気分になれる小説
主人公は確かにいるのに、自分が主人公になったような感覚
✏あんまりたくさんありすぎるものを見ると、人間は不思議と悲しくなっちゃうんだよ。
Posted by ブクログ
主人公の弥生は、しあわせな4人家族の中にいる。
けれど、幼少期の記憶がすっぽりない。
徐々にその違和感に気づいた時、
叔母だと思っていた姉。
弟と思っていた哲夫。
周りとの微妙な距離や、感情が炙り出される。
吉本ばななさんは、
あぁその気持ちっていう言葉にはできない曖昧な感情を表現する天才だと思う。
ことばが染み入ってくる。切なくなるし、でも浄化される感じ。
Posted by ブクログ
よしもとばななさんの本の中の、重くて透明で優しい世界がとても好きです。
何度も読み返して癒されています。
この本は、雨の情景のイメージが強くて、雨の音を聴きながら心地よくうたた寝しているような気持ちになれて、特に好きです。
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久々に活字が読みたいと思い、誰が買ったのかわからないが実家にあったこちらを手にとってみた。初めて読む吉本ばななさんの本だ。
旅を通して自分の記憶を掘り起こすことで、これまでの家族や人間関係が変わっていく物語。
それはこれまでの心地良い関係の終焉をも意味するのだけれど、決して哀しいタッチで描かれるのではなく、前向きな変化として淡々と捉えられていく。
えー!そうだったのね!と驚きながらも、なんだかほっこりとさせてくれるので、何も考えずにボーっと読むのに良かった。妊娠中のつわり時期でも読めた。
Posted by ブクログ
2025初読み
自分だけかもしれないけど、ばななさんの作品て夢の中で物語を読んでる感じに近い
そして思い立ったらすぐ行動しちゃう女の子と生と向き合っていく
この作品も不思議でいて哀しくもあるんだけど、それ以上に前を向く姿勢が強くて、切り取られた場面場面の思想がとにかく透明に思えた
ネタバレかもしれんが対象となる存在たちの名称が変わってゆく過程 で主人公が捨てたんじゃない作ったんだ(たぶんこんなニュアンスだったと思う)てなってたのがいい
あと、ロマンスな場面もある、たぶんツッコミたくなると思う
好きなフレーズ引用
母と2人で暮らした時代は永遠に誰とも分かち会えない何かになって僕の中にずっとあった
恋は恋という生きもので別物なのだ
今までのどのような恋もこんはふうに風景を消し去ったことはない
Posted by ブクログ
初版は1988年か。随分昔になるのですね。吉本ばななの初期の頃の作品の1つを、十数年ぶりくらいに読み返しました。この頃の著者の作品に共通してある、独特な透明感やみずみずしさ、優しい人たち、そして血縁関係や家族の形や死や超自然現象的な力といったテーマが散りばめられています。
若い頃に読むと、すごく共鳴するところがあるんですよね。残念ながら、読み返して気づいたのは、もうあの頃のような感動を受け取れなくなっているということでした。どんな本にも、読むべきちょうどよい年齢ってありますよねー。
若い10代20代のうちに読んでほしい本でした。
自分がこの本の読書適齢期を明らかに過ぎてしまっていてそんなに心が動かなかったという意味で、★3つ。
主人公は二十歳前後の女性。優しい父母と弟の4人家族として幸せに暮らしているけど、なぜか小さい頃の記憶がなくて、心がたまに根無し草のような感覚にある。物語を通して、自分の出自の秘密に、気づいていくお話。彼女を取り巻く登場人物として、とても変わり者で自由気ままに生活する三十路の音楽教師のおば、気持ちの良い爽やかな明るさを持つ弟、そしておばの元恋人の男子高校生などが出てくる。
物語で示される、家族や親しい人とのあり方の多様性や、立場にとらわれないで正直な真っ直ぐな気持ちで人と相対することの良さは、この本の読書適齢期を過ぎた身にも染みた。
あと、この時代の特徴なのかな、会話のなかの「〜だわ」「〜なのよ」みたいなレトロな語尾や言葉遣いが結構好きです。
表紙のデザインが素敵で、この表紙の濃紺と、物語の中で描かれる濃厚な深い緑の森や木々のイメージがぴったりな物語。
Posted by ブクログ
欠けた幼い頃の記憶、叔母へのシンパシー__19歳の夏、弥生はその理由を知ることとなる。変わり者と言われる叔母だけど、人を惹きつける不思議な魅力がある...その存在に翻弄される3人がまたいい。ばななさんの柔らかな表現が好きでした。
Posted by ブクログ
表紙絵好き。
やっぱり文章の書き方大好きだなあと再確認。
近親相姦やレズビアンに焦点を当てるバナナさんとのことやけど、私は設定を気持ち悪く感じてしまった。(たぶん私も弟と距離感が近かったからかな)
お姉さん(ゆきのさん)がどんな姿なのか気になる。
Posted by ブクログ
高校生の頃に読んだ吉本ばななをアラフォーになった今また読みたくなった。
ばななワールドは切なくて物悲しくて、死と生と愛が横たわっている。
「叔母の家」「血の繋がらない弟」というキーワードだけ覚えていたけれど、まさか軽井沢から青森の恐山まで旅する話だったとは。
Posted by ブクログ
ばななさんの小説を久しぶりに読んだけれども、やはり文章がさらっとしていて読みやすかった。タイトルで気になって読みはじめた。冒頭の、小学生の弥生がおばさんを訪ねていく場面がだいすきだった。少女とおばという組み合わせを主軸にした小説は他にいくつもあるけど、「哀しい予感」はただそれだけではなくて、よかった。こころがあたたかくなる小説。
Posted by ブクログ
そこまで読書経験が豊富だというわけではないが、初めて読む作家の本というのは文体全体の雰囲気などがやはり新鮮なものに思えるというのは、新たな作家の本を読む時のいい点だと思う。その意味で言うと、今回のこの吉本ばななという作家はこの人だけが持つ独特さというのがおぼろげながら理解できて、ああ、これが読書の楽しさなのだなと再確認できた。中身も少しはかなげな青春を抒情的な表現で綴っていて趣深いなと感じた。