小説・文芸の高評価レビュー
-
Posted by ブクログ
ネタバレ評判通り見事にどんでん返しを喰らいました。ある一文で全てがひっくり返ると前から知っていたので、注意して読んでいましたが、そう来たかという感じでした。自分なりに、「館が十角形である意味は?」「半年前に起こった中村青司の事件の真相は?」「なぜ庭師は行方不明なのか?」など色々考えていたのですが、全く関係なかったです。正直、この辺りの部分は物語上無くても問題ない作りになっているので、話を膨らませたり、ミスリードをさせたりさせる部分なのかなと読み終わった後考えてしまいました。改めてざっと見返したところ、島田潔が半年前の事件の日に中村紅次郎と一緒にいて「紅さんにはアリバイがある」といってもいた場面は、今回の事件の犯人を示唆している会話だと感じて、そう思うと面白さが倍増した気がします。正直、半年前の事件や庭師の失踪などが必要ない構成になってしまっているので、物足りないなと感じてしまった部分は否めないですが、面白くてページを捲る手が止まらなく、どんでん返しに引っ掛かることが出来たので大満足です。面白かったです。
-
Posted by ブクログ
光文社古典新訳文庫から乗り換えたので、第三部の第八編「ミーチャ」からスタート。
挫折が怖くてとにかく読みやすさ重視の光文社版をここまで読んできたものの、流石にここから挫折することもないだろうから定評のある新潮文庫で続きを読むことにした。
なお、ネットで探せばすぐに見つかるが光文社の亀山訳にはロシア文学者や有識者からのかなり痛烈な批判がある。
玄人からすれば許せない訳でも門外漢なら気づかないレベルだろう、と高をくくって光文社版で読み始めたものの、読んでいてどうも腑に落ちない箇所がちらほら。調べてみたら誤訳として指摘されていた。
内容についてだが、「予審」がすこぶるよかった。
僕は人間というものを、時折、それもこと人生の大切な局面において、信じられないほど不合理なことをしてしまう生き物だと思っている。
しかし一方で、世の中のほとんどの犯罪や事件は常識や社会通念で説明がつくのもまた事実。人間の考えることなんて所詮はみんな似たり寄ったり、およそ常識では信じがたい釈明なんていうものは嘘に決まっている。そう思いたくなる時もある。
そんな僕自身の鬱屈した気持ちを晴らしてくれるような真実味が、ミーチャの釈明にはあった。
いくぶん狂気じみてはいるものの、どこまでも真摯なミーチャの話ぶりと、聞く耳を持たずに瑣末なこと(捜査上の必要があるのは理解できるが、当事者からすればやはり「瑣末なこと」だろう)ばかりを白けた表情で質問する官憲の鈍麻した感覚。
文章にして説得力のあるもの以外は存在しないも同然、とでも言わんばかりの行政官的な、もっと広くいえば法的な思考様式は、人間が人間に対して抱くべき敬意や謙虚さを蝕んでしまうのかもしれない。
安易に権力批判をしたくはないが、この滑稽ですらある対比は、僕にはいささか心苦しいものだった。 -
Posted by ブクログ
涙が溢れて止まらなくなるので、外で読むのはおすすめしません。
短編5話で構成されていて、芥子実庵という家族葬専門の葬儀屋の関係者や近しい人たちが人の死に直面し、自身の抱える悩みや想いと向き合うようなお話です。特別何かが解決するわけではないのですが、なんだか少しだけ光が差し込むような、ロウソクの火が灯るような優しい気持ちになるお話ばかりでした。
心に留まった言葉をもう一度読み返そうと思います。
でも悩みの原因になっているような人たちは本当の腹立たしい!笑
自分が登場人物だったら「さっさと別れちゃえ!!一発殴ってやれ!」と大声で喚き散らしてるなと思いました笑 -
Posted by ブクログ
重厚な人間ドラマ・社会派ミステリーを読みたい人におすすめ! ただの警察小説、謎解きでは終わらない、登場人物全員の人生と痛みが胸に迫る本格ミステリー
■あらすじ
東京都内で松川美和の死体が発見された。親族に連絡をすると、彼女はすでに亡くなっている人物だという。ではこの人物はいったい誰なのだろうか?
元北海道警察の刑事で、現在は児童相談所の職員として働き始めた新内。彼のもとに警視庁の刑事がやってきて、松川美和のことを聞かれる。彼女の部屋に新内の名刺が残されていたのだ。
同じころ、北海道の石狩市でひき逃げ事件が発生。北海道警察捜査一課の砂本刑事が捜査を進めていくと、被害者の自宅からも新内の名刺が発見される。新内はどちらの人物にも面識がなく、全く覚えがなかった…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 新たな警察小説の書き手、伏尾美紀先生の新作ミステリー。
いつものとおり事件を追う捜査パートは濃厚濃密なんですが、今回はさらに警察官の描写が素晴らしい。あたりまえなんだけど、警察官彼らもひとりの人間なんです。家庭もあり、悩みもあり、失敗もある。本作は、人間の生き様を絞り出しているところが一番の読みどころですね。
今回はふたつの事件を追う物語。北海道で発生したひき逃げ事件と、東京で発見された死体が誰なのかわからないという事件。まるで関係なさそうなふたつの事件なんだけど、なんと被害者の部屋から同じ名刺がでてくる。
それは北海道捜査一課の元刑事、新内由紀の名刺で本人には覚えがない。いったい被害者ふたりと新内には、どんな関係性があったのだろうか? そして事件の犯人、真相は? という筋立て。
ひき逃げ事件は砂本刑事が追い、並行して東京で発見された死体の正体は新内が追うことになる。彼らは先輩後輩の仲でもあり、かつて捜査一課で同じ釜の飯を食った戦友でもあるというのもポイントです。
捜査に当たっては、警察内部の駆け引きや特別な捜査部門などの現実も描かれる。この辺りのリアリティさの書き込みは流石と言ったところで、興味津々に読むことができますね。もちろん捜査自体も粘り気のある職人芸が楽しめます。なんつーか…、やっぱりどんな職業でもプロってのは怖いなーと思いました。
今回の読みどころのひとつ、事件の背景ですよね~ 本書のタイトル『誰何』とはよく名づけられたもので、死体の身元と背景が分からないという謎で物語をけん引していくのです。疑うことにかけては海千山千、新内の聞き込みっぷりと宝生刑事とのやりとりが生々しくていいんすよね。
そしては人間を綿密に描いた小説でもある。生きるために大切なものを犠牲にする人、親に向いてない人、必死にもがきながらも上手に生きれない人。誰しもが封じ込めておきたい過去があるのですが、清算できずに背負い続けている人がいる。本作では容疑者や犠牲者だけでなく、警察官もふくめ登場人物すべての人間ドラマが描かれるのです。
警察小説でありながらも、人間の光と影を映し描いた物語。今後の作品にも期待しています!
■ぜっさん推しポイント
新内夫婦のあるエピソードを読むと、胸が張り裂けるような思いになります。今は改善されたとのことですが、おそらく現実に同じような体験をした夫婦がいたんでしょう。気持ちはわかるから、あなたが悪いとか責め立てるわけにもいかないでしょうし。なんとも切ないです…
表示されていない作品があります
セーフサーチが「中・強」になっているため、一部の作品が表示されていません。お探しの作品がない場合は、セーフサーチをOFFに変更してください。