砥上裕將の一覧
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ユーザーレビュー
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主人公・野宮が守ったものは「見えること」だけではない、患者さんの心のわだかまりや彼らの家族や友人との関係も。。。そんな読後感を持った一冊でした。
前作「線は僕を描く」が大変よい作品だったので、本作も期待しながら読み進めましたが、この作家さんは(まだ二作目ですが)ハズレがないですね。
主人公・野宮
...続きを読むはどこか頼りなげで、でも誰もが見逃してしまう小さなきっかけから患者さんを救う道筋を見つける、ちょっと謎解きのエッセンスも感じられます。
そんな野宮が勤務する眼科医院を訪れる患者さんたちは”目”以外でもちょっぴりケアが必要な部分を持った人たち。。。目の治療と並行して彼らの抱えていたものが少しづつ解きほぐされていき、心の視界が開けてくる様は読みながら思わず目頭が熱くなるほどでした。
ちなみにタイトルにある「7.5グラム」とはどうやら眼球の重さのことのようで、さらに「奇跡」とはこの眼球を通してものが見えること自体が様々な奇跡の積み重ねであることから本作のタイトルになっている模様、このセンスも素敵ですね。
Posted by ブクログ
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不器用で就職先も決まっていなかった視能訓練士の主人公、野宮恭一。彼が勤めることとなった普通の街の普通っぽい眼医者「北見眼科医院」を舞台にした5つの短編を収録。
モノが見えるというのは普通に思えて、いかに貴重なことなのか。たった7.5グラムの眼球とそれらをとりまく部位がいかに精密に機能しているか。本
...続きを読むを読むこと、映画を観ること、ゲームをしたり、スポーツでも目が酷使している俺は、色々と反省しきり。もっと目を大切にケアしていかないとなぁと思った次第。
それにしても砥上さん、2作目でさらに大きな成長を遂げたなぁ。デビュー作では若干浮世離れした展開やご都合主義ともとれる(小説においてそれは必ずしも悪いことではないのだが)もあったが、本作はぐっと読み手の現実に寄り添っている。生活に根差していて、それこそ家の近所の眼科でも実際起こっていておかしくない出来事を、丁寧に展開し読ませる小説にできているのがすごい。
まだまだ面白い本を読ませてくれそうな作家さん。今後がさらに楽しみである。
Posted by ブクログ
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前作の「線は、僕を描く」が良かったので、読んでみたが、期待以上だった。主人公は周囲の人に助けられながら成長していく過程で、自分が視能訓練士として働くことの必然性を強く認識していく。主人公の意志が明確になっていくことで、行動が自発的、主体的になっていくストーリー展開が良かった。作者は多忙なのか、決して
...続きを読む多作という感じではないが、できれば早めの三作目に多いに期待しています。
Posted by ブクログ
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大変美しい作品だった。やわらかで、心にそっと寄り添うような言葉がたくさんあった。「視能訓練士」という職業を初めて知った。登場人物や舞台は同じだが、登場する患者さんが1章ずつで変化して、視能訓練士の野宮さんや北見眼科医院のみなさんが患者さんの病を見つけ、人生に向き合っていく物語。読み進めていくとだんだ
...続きを読むん「この人の病は〇〇かも?」とか「ここに問題があるんじゃ?」とか先読みして、その後答え合わせができる「医療ドラマ」特有の面白さもある。
p.87 「カラコンがあると気持ちが落ち着くんです。私は大丈夫って感じられます。つけていないと不安で人と目を合わすことも、まっすぐなにかを見ることもできません。どうにかならないでしょうか」そう言ったあと、彼女の目が輝き始めた。沈黙の重さと同じ位鈍い光が強くなると、涙が零れた。それは傷ついた瞳が流す痛みのようだった。彼女の問いに対して、彼の僕らには打つ手がない。僕らは眼を治療することもできる。けれども、誰かの心を治すことができない。彼女は明らかにカラコンに依存していた。カラコンをつけた瞳で世界を世界に接することによって、自分自身のイメージを作り出し守っていた。自己のイメージを作り上げて、なりたい自分になり、 世界に向き合う事は、自然なことなのかもしれない。好きな服を着ることを誰も病気だとは言わないし、化粧することを病気だとは思わない。カラーコンタクトを使用することも、誰かにとやかく言われるようなものでは無いのかもしれない。実際にたまきさんのカラコンの使い方に問題がなく、円錐角膜でなければ、これほど厳しく注意されることもなかっただろう。
p.101 「すごく明るい茶色で、月のように煌めいている瞳です。出会った人の印象に残る素敵な女だと思います。玉置さんが自信が持てないと思っているその瞳は、あなたのとても美しいところです。本当はもうカラコンなんて必要ないんです。僕が今からそれを証明します」
p.128 「病気になって悲観的になって、自信をなくされる患者さんはたくさんいます。そのことや、絶望や、孤独を、僕らに話される患者さんもいます。そのたびに、何て答えたらいいかわからなくて…、三井さんは、そんな悲観的な患者さんにはならないような気がしています。三井さんが築き上げてきたものは、何があっても消えないような気がするのです」「それはどうして」 どうして、と尋ねられてから、僕は戸惑った。なぜ僕は、三井さんは違うと思ったんだろう?答えは僕の手の中にあった。コーヒーカップは空っぽになっていた。けれどもそこには確かに香りが残っていた。
「なぜだかわかりません。でも空っぽのコーヒーカップを眺めていても、かつてそこにあったものを感じられるように、誰かの心に残り続けていくものをいっぱいいっぱい積み重ねてこられたからだと思います。そういうものの価値を信じていたいのかもしれません」
p.137 年齢を重ねた人たちだけが発する垣根のない優しさだった。
p.138 「もちろんです。1日も欠かさず、どんな時も目薬を決まった時間に差し続けるとは、難しいことです。でもね、丁寧に生きる価値はあります。正確に目薬を差し続ける価値もあります。人生と言うのは本質的に、手作りです。自分の手と心で作っていくものです。私にとっては、それはコーヒーを入れることですが、ここの先生にとっては患者さんを診ること、あなたにとっては何か?少なくとも目薬を差すことはその中の一つに入ると思います。自分の光を守ることには価値があります。自分の人生を形作るのは、自分の手と行いです。自分の手で積み上げてきたものは、形は変わっても、その手触りは消えていったりはしないんですよ」
p.206 美しい山で物思いに耽り、自分の歩調で、静かな場所あることに安らぎを感じていた。刺激が多いことも楽しいけれど、刺激を可能な限り減らし心を沈めていくことにも楽しみがあることを初めて知った。山はあるけれど、山以外何もない。自分の意思で歩いてはいるけれど、実際には、自分を空っぽにして歩き続けている。頑張るってことの反対を今やってるんだな、と、人に思った。赤い帽子を探しながら、ゆったりと歩いて、何も見つからないまま、山頂にたどり着いた。
p.230 「 今日しなければいけないことがいっぱいあるし、自惚れてはダメだけれど、全く自信を持っていないと言うのもプロとしては良くないことだよ」そう言うと、大きなあくびをした。「それって凄く難しいことのような気がします」「もちろんそうだよ。でも、その自信と疑いとのあいだでバランスをとって、一つ一つの仕事に向かっていくことが大切。どっちかだけじゃダメ。どっちがどっちもあるとミスが減る」
p.279 「美しい瞳はね。暗い世界の中で懸命に光を探ろうとした時、現れるんだ。生きようって思う気持ちは、瞳にいつも現れている。鳥の瞳が美しいのは、未来を、次の一瞬を生きようと、目を見開いているからじゃないのかな」
p.285 「自信と疑いとの間でバランスをとって」と言っていた。今ならその言葉の意味がわかる。心のどこかに失敗や、自分の予想しているものと別の可能性を考えながらも、目の前の検査に全力を尽くすことだ。困難な症例や、検査に当たれば当たるほど、先輩の言葉は意味を深めていくのだろう。
Posted by ブクログ
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水墨画家の方が書いた小説で、水墨画の魅力が詰め込まれた感じがある。好きな世界観、続きが読みたくなる。
Posted by ブクログ
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