窪美澄のレビュー一覧
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これからの10年をどう生きるか。
30歳の誕生日を迎えたとき、わたしは真剣に考えた。20代はまだ若いので誰でもそれなりに可愛くいられるけど、30代は違う。それぞれの心の持ちようで、外見は人によって大きく変わっていくはず、きっとこれは女としての人生の岐路なんだって。
ちょっと大袈裟かもしれないけど、これからもきりのいい数字の歳を迎える日に、わたしはそう思い続けるだろう。
主人公の酒井絵里子は52歳。
2歳年上の夫と、大学2年になる娘と暮らしている。あるとき、夫が定期的に風俗に通っている証拠を見てしまい、娘が歳の離れた男性と道ならぬ恋をしていることを知ってしまい、ショックを受ける。
いったい自分はなんなんだろう。空気みたいな存在なのか。これまで幸せだと思ってきた時間は、まったく意味のないことだったのだろうか。
老いと向き合い、人生の終わりすら見え始めてくる50代。
絵里子は久しぶりに参加した同窓会で、生き生きと素敵に輝いているかつての親友と再会し、終息に向かっていると諦めていた自分の人生を見つめ直す。
でも家出同然で一人旅に出て、そのまま帰らずに親友の世話になり、その間家族からの連絡はまったく見ないなんて、なんか頑固過ぎるなあと苦笑した。残された家族はすっごく心配するじゃないの。
でもそれだけ絵里子の怒りは激しかったし、絶望は深かった。その気持ちは家族に向けられたものだったかもしれないけど、最終的には自分自身を激しく傷つけたのだ。
一度傷ついたら、それをなかったことになんて出来ない。忘れることができないから、それを受け入れて一緒に生きていく強さを持たなければ。
つらいときに支えてくれたのは家族ではなかったと、著者はあるインタビュー(この本じゃない)で語っている。両親が離婚し、自らも離婚を経験。20代で生まれた最初の子どもを病気で亡くした。悲しい経験をたくさんしてきたけど、そのとき側に寄り添ってくれたのは、いつも家族以外の人だったそうだ。
だから大丈夫。
家族を大切に想っていても、囚われることはないって、そういう著者からのメッセージなのかもしれないって思った。 -
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「女による女のためのR-18文学賞」受賞後、性をテーマに依頼された作品群、短編9編。
「父を山に棄てに行く」
子供を亡くした経験があるライターが、老いた父親を施設に送る、その時。父と子供の父親も棄てる。
「インフルエンザの左岸から」
父を山にの後日譚。
「猫降る曇天」
東日本大震災時、別れた子供に水を届ける父親の悲哀。
「すみなれたからだで」
更年期以降の夫婦の現実感
「バイタルサイン」
義父とのインモラルな関係。別離の後、男の死期に立会い、これからの愛を探す。
「銀色紙のアンタレス」
夜に星を放つにも収録。高校生の現実感ある恋心。
「朧月夜のスーヴェニア」
この短編が一番好きかな。危険な地域へ出征している婚約者がありながら、今現実に眼の前に現れた強引な男性に惹かれていく。敗戦近い死と隣り合わせの性。それらの過去を思い出す、死期近い女性。戦地から戻った婚約者との苦しい結婚生活を支えたのは思い出の男。
「猫と春」
「夜と粥」
日常から居なくなる、猫や男や女。記憶だけは、残る。
あとがきからすると、窪さんは、小説家となるためにR-18を選択したのであって、得意としていたという事ではないようですね。かなり、苦労して創作されたようです。とはいえ、窪さんの小説は、“性”にとどまらず、しかもそれを含めての生活感とか微妙な心理が良いなと思ってます。 -
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東日本大震災は、多くの作家さん達にも衝撃を与えました。こちらの作品も震災後の執筆とのことで、当時の混乱した様子や、崩れた日常生活が、小説に読む事ができます。
第一章では、70歳をすぎても、お元気にマタニティスイミングのコーチとして、新米妊婦さん達のアドバイスを続ける女性、晶子の半生を。戦争直後から昭和の成長期を、彼女の当時の家庭生活を通して、描いていきます。これは、「ヤンババの出産・子育て知恵袋」の金澤直子さんの人生に近いものでしょうか。
第二章では、平凡な主婦だった母親が、その料理センスからお料理タレントとして成功していき、一般的家庭から乖離した少女時代を過ごしたカメラマンの女性、真菜。母親との隔たりは、今なお続いている。願わぬ妊娠をするが、一人で産み育てようとしている。
第三章で、震災は、多くの犠牲をだし、社会は混乱する。孤立した真菜へ、晶子や彼女の幼なじみの女性達が手を差し伸べる。最初は躊躇していた真菜も、その手助けを受け取る。
親から受けたい愛情は、子供によって違うのかもしれない。親の背中を見て、そんな言葉は死語かもしれない。それでも、一人では、できない時は、誰かの助けが欲しい。 -
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若者の多くが、恋愛や結婚、子育て等を望む事が希薄となっている、近未来、日本。
若者達は、一人で生きることを選択して、未来への閉塞感からか自殺が増加している。
国は、“アカガミ”という、ほぼ出産を目的としたお見合いシステムを政策として作り上げていた。
SF的なお話ではあるけれど、マッチングされてからの男女は、恋愛に不慣れな見慣れた構図のようだ。一緒に暮らす事から、情が生まれ家族の片鱗をうかがわせる。
「アカガミ」のシステムは、問題のない男女から問題のない子供の出産を目的としているところに異常さがある。そこから外れれば、潔く放出する。ラストはリドルストーリー的。そのシステムから逃れた方が、おそらく人として幸せを得そうだということ。まあ、現状日本を誇張しているようなところが怖いでしょうか。
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Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて購入。
9つある物語のうちの殆どで性的な描写がかなり濃厚で困惑していたが、あとがきを読んで合点。
"性"がテーマだったのね〜。
どうりでエロいわけだ。
継父と男女の関係になったり、戦争に行った許嫁がいるにも関わらず行きずりの恋に身を燃やしたり、正直結構不快だった。
"女の喜び"みたいな表現もすごくイヤだった…。
全体的に掴みどころがないまま終わってしまう話ばかりだったが、すこし暗く、地に足のついたような文体は割と嫌いじゃなく(何様)、直木賞受賞作も近いうちに読もうと思いました。
ただ、猫の表現がリアリティに欠け、猫飼いではないな?と勘繰ってしまった。