感情タグBEST3
Posted by ブクログ
無様に。だけど、私はまだ生きているのだ-。焼夷弾が降る戦時下、喧騒に呑まれる80年代、そして黄昏ゆく、いま。手さぐりで生きる人々の「生」に寄り添うように描かれた8つの物語。
Posted by ブクログ
読み応えのある短篇集だった。
生きている限り切り離せない「生と性」がおそらくテーマで、そこに「死」のエッセンスが加わってくる。
自分自身歳を重ねて思うのは、まさに「すみなれたからだ」で何十年もこの身体と付き合ってきているのに、いまだに掴み切れない…というか、歳とともに変化してゆく部分を実感せずにはいられないということだ。
太りやすくなる、疲れやすくなる、など加齢とともに表れやすい一般的な変化もあるし、女性ならば生理や出産などでの変化は人それぞれで、同じ女性同士でさえ理解し合えないことも多々ある。
そこに男女の性愛が加わろうものなら、悩み、虚しさ、過去に対する思いなど、様々なものがないまぜになっていく。
16歳と48歳の義理の父娘のインモラルな関係を描いた「バイタルサイン」、家族からは認知症と思い込まれている93歳の寝たきり女性が、戦時中に情事を重ねた男のことを回想する「朧月夜のスーヴェニア」がとくに印象に残ったし、他のお話よりエロかった(←褒め言葉)。
おもてには明かさない種類の性愛だからこそ…の雰囲気。
16歳のひと夏の恋を描いた「銀紙色のアンタレス」は切なく瑞々しくて、何となくダラダラと続く1組の同棲カップルの元に猫がやってきた「猫と春」はさらっとした中に深いテーマが隠されていると感じた。
「性欲ってどうしようもないな」と感じる事件も世の中ではよく起こっていて、どうしようもないからこそコントロールが必要で、でもそれが難しい関係性もあるからこそひとつの邂逅のような交わりに執着することもあるのかもしれない。
読んですぐに噛み砕くにはなかなか難しいテーマ。切り離せないからこそ悩むことも、よくある。
Posted by ブクログ
窪さんの小説を読んで、いつも思うのですが。
ほかの作家さんにない、奥行きというか心の動きというか、そういったものが怖いくらいに伝わってくるのです。
どうして踊るんだ?そこで触れたもの、見つけた物から感じたもの。そしてそれをどうして??とかね。
フィクションもあるけれど、ノンフィクションでもあるというようなことがあとがきにありました。
ひとはけして人には言わないけれど、いろいろなものを抱えて生きているんだ、誰にも言えないこともあるでしょう。きれいごとだけでは生きていけない。そうですね、孤独なのかもしれないなあ、と改めて。
うまく書けなくて申し訳ないのですが、すばらしい作家さんだと毎回思います。
Posted by ブクログ
16歳の男女のすれ違う繊細な恋心にドキドキし おばあちゃんの家や海、龍宮窟の風景が絶えず脳内映像で浮かんでいた「銀紙色のアンタレス」
16歳の少女と46歳の義父とのインモラルな関係をハードに描いた「バイタルサイン」
同居する彼女と猫の様子が思わず目に浮かんで来る読後感の良い「「猫と春 」
家族に認知症と思われている老婆の戦時中の恋愛を描いた「「朧月夜のスーヴェニア」は人間の生と性が味わい深く心に残ります。
バラエティーに富んだ作品集で短編ながらも読みごたえのある1冊でした。
Posted by ブクログ
久しぶりにどっぷり小説の世界観に浸れました。
『バイタルサイン』『朧月夜のスーヴェニア』秀逸。
別の作品も読んでみたいと思える作家さんに出会えて幸せです。
Posted by ブクログ
性と生と死を扱った短編集。表題作は登場人物と同世代の読者にとっては、ドキッとさせられる内容。窪さんの作品は、綺麗事ではない苦しみや悲しみがいつもそこにあって、心の底の方を揺り動かされます。
Posted by ブクログ
初の窪先生。
人間から切り離すことのできない性と愛
表題作の短さが逆によかったし、いい意味で詰め込まれてるなと思う。
色濃く性を表す作品もあれば、ほのかだけど確実な感情のはじまりとか、心の機微みたいなものが正直に描かれている。
抗えない性というものの虚しさと儚さと尊さが沢山入っていました。
Posted by ブクログ
「女による女のためのR-18文学賞」受賞後、性をテーマに依頼された作品群、短編9編。
「父を山に棄てに行く」
子供を亡くした経験があるライターが、老いた父親を施設に送る、その時。父と子供の父親も棄てる。
「インフルエンザの左岸から」
父を山にの後日譚。
「猫降る曇天」
東日本大震災時、別れた子供に水を届ける父親の悲哀。
「すみなれたからだで」
更年期以降の夫婦の現実感
「バイタルサイン」
義父とのインモラルな関係。別離の後、男の死期に立会い、これからの愛を探す。
「銀色紙のアンタレス」
夜に星を放つにも収録。高校生の現実感ある恋心。
「朧月夜のスーヴェニア」
この短編が一番好きかな。危険な地域へ出征している婚約者がありながら、今現実に眼の前に現れた強引な男性に惹かれていく。敗戦近い死と隣り合わせの性。それらの過去を思い出す、死期近い女性。戦地から戻った婚約者との苦しい結婚生活を支えたのは思い出の男。
「猫と春」
「夜と粥」
日常から居なくなる、猫や男や女。記憶だけは、残る。
あとがきからすると、窪さんは、小説家となるためにR-18を選択したのであって、得意としていたという事ではないようですね。かなり、苦労して創作されたようです。とはいえ、窪さんの小説は、“性”にとどまらず、しかもそれを含めての生活感とか微妙な心理が良いなと思ってます。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて購入。
9つある物語のうちの殆どで性的な描写がかなり濃厚で困惑していたが、あとがきを読んで合点。
"性"がテーマだったのね〜。
どうりでエロいわけだ。
継父と男女の関係になったり、戦争に行った許嫁がいるにも関わらず行きずりの恋に身を燃やしたり、正直結構不快だった。
"女の喜び"みたいな表現もすごくイヤだった…。
全体的に掴みどころがないまま終わってしまう話ばかりだったが、すこし暗く、地に足のついたような文体は割と嫌いじゃなく(何様)、直木賞受賞作も近いうちに読もうと思いました。
ただ、猫の表現がリアリティに欠け、猫飼いではないな?と勘繰ってしまった。
Posted by ブクログ
短編集。読んだことあると思ったらそのうちの1篇はアンソロジーで既読でした。
たぶん窪美澄さんの作品はアンソロジーでしか読んだことがなかったのでがっつり読んだのは初めてです。性愛が多いですがエロティックだとは思わなかったです。性は生と繋がってる、とあとがきで書かれていましたがそんな感じでした。
既読のおばあちゃんの過去話と、「父を山に棄てに行く」と「インフルエンザの左岸から」の裏表の話が好きでした。
う〜ん…と思った「バイタルサイン」ですが、まんまとタルコフスキーの『ノスタルジア』は観たくなったし、alice auaaかな?と思ったお洋服は好きでした。
Posted by ブクログ
9作品収録
いずれの話も男と女、時々猫も絡み
男か女が語るお話でした
男と女、人と人って簡単じゃない
その人、その人の思いが通じないと一緒に
いることなんて難しい
また、相手の思いなんてすべてはわからない
そんなことを感じながら読んでました
Posted by ブクログ
8篇からなる短編集。
性にまつわる話たち。
ちょっとした日常を切り取って、特別なものにできてしまう作家は凄い。
作者はまさしくそんな作家と言えると思う。
どの話も割と好みだったけれど、
「春と猫」の微妙な関係性の2人が何とも言えず好き。
「バイタルサイン」はエロくて非常に良かった。
Posted by ブクログ
一瞬でも燃えるほどの恋愛と、いつまでものぺーっと、ほんのりと想いを寄せる。どちらが幸せなんだろう、そんなことを思った。人には贈れる愛の量が決まっているのかな…。どんな恋愛でも、私は「死んでもいい…」なんて思ったことがないし、それどころか「怪我さえしたくない。」と思うくらい。人生を懸けられるほど、他人に想いを寄せられる恋愛に、少し憧れを抱いた。
Posted by ブクログ
銀紙色のアンタレス
目に浮かぶキラキラな情景が素敵だった
少年時代に過ごした夏はもう過ごせないから
どこか懐かしいような淋しいような気にさせられた
夏と恋と小さな意地が胸をくすぐりました
Posted by ブクログ
性(生)をテーマにした、短編集。
バイタルサイン、母の再婚相手と娘の話。
この手の関係性はどうしても好きになれない。
文章は嫌いじゃないが、毎回、窪さんの作品はあまり題材が好きになれない。
Posted by ブクログ
掌編に近いものもある短編集.
「父を山に棄てに行く」 父親の入所の手続きに奥多摩にある山奥の老人介護施設に行く途中で,いろいろ回想する話.
「インフルエンザの左岸から」 老人介護施設(おそらく1話目と同じ施設)で亡くなった,ろくでもなかった父親の葬儀にまつわる回想.
「猫降る曇天」 黒のタートルネックを着た美女と3.11と黒猫の話.
「すみなれたからだで」 中学生の娘のことで老いを感じた母親が,娘がデートに行ったことをおじさんになった夫に話して・・・.
「バイタルサイン」 窪先生らしい(失礼)かなりHな描写もある,義父と関係を持った娘の話.
「銀紙色のアンタレス」 夏大好きの男の真君(16才)が,夏休みにおばあちゃんちに行った時のひと夏の恋バナ.朝日ちゃんがかわいそう.
「朧月夜のスーヴェニア」 家族からはもうボケたと思われているおばあさんの,戦中の思い出.結構エロイ.スーヴェニアは「お土産」と暗記していたのだけれども「思い出で」という意味もあったのか.
「猫と春」 ついてきた猫と暮らすようになって,彼女が出て行って,猫を捨てたら,彼女が猫を連れて帰ってくる(本当に帰ってきたのだろうか?).
「夜と粥」 同棲していた彼女が出て行ってしまって,落ち込んでいる女性の話.
「あとがき」によると男女の違いがあるが,2話目は1話目の続編とのこと.また,読んだ時の印象の通り,この2作は窪先生自身のノンフィクションに近い作品らしい.この2作も興味深かったが,「バイタルサイン」,「銀紙色のアンタレス」,「朧月夜のスーヴェニア」がお気に入り,特に面白かった.