あらすじ
あの子は、どこから戻れなくなったんだろう──
小説家志望の女と、少年犯罪の加害者・元少年Aとの運命の出会い
東京で働きながら小説家を目指していた今日子は、震災が起こった翌年に夢を諦め、母のすすめで実家に戻る。
妹とその夫、娘との二世帯住宅の生活に倦み疲れながらも、小説を諦めきれない。
そんな中、過去に凶悪犯罪を起こした少年Aが地元にいるという噂を耳にする。
そしてパソコンなどを検索して知った少年Aの姿に急速に惹かれていく。
一方、神戸生まれで、東京に住む十七歳の莢(さや)も、少年Aを崇拝し、「聖地巡礼」と称して事件現場などを訪れていた。
また少年Aに当時七歳の娘を殺された母親は、息子、夫とともに同じ場所にとどまり、一見平穏そうに見える暮らしを送っていたが、教会の人間から、Aのファンの話を聞かされる。
少年犯罪の加害者、被害者遺族、加害者を崇拝した少女、その運命の環の外にたつ女性作家……それぞれの人生が交錯したとき、彼らは何を思い、何を見つけるのか。
著者渾身の長編小説!
作家が書くことに固執するのは、「人間の中身を見たい」からなのだ。これは、小説ノンフィクションのジャンルにかかわらず、作家が持つ病理なのだ。その意味で、私もAの同志なのである──佐藤優氏・解説より
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
窪美澄さんの作品の中で1番好き
少年の持つ異常性癖で感情が顕になった時のシーンが今でも頭に残っている
狂気じみて哀しい、だがその少年はとても美しい
少年を崇拝する者がいる
理解し難いことに魅力される者もいる
バラバラだけど繋がっている
こんな世界があるのだと撃ち抜かれた気分
物語はスピーディーで終始救いようの無い感じだが、凄く考えさせられる話だった
Posted by ブクログ
ほんとうに恐ろしいのは、叶ってしまった夢に振り回されることだ。叶ってしまった夢を現実として継続させていくことだ。
個人の魂を国家が管理して、国家に不都合な世界観や思想を持つ者に関しては、それを徹底的に改造する。これはファシズムの思想だ。本書で描かれているのは、「正常」「人権」という名で、知らず知らずのうちにわれわれの思考を支配しているファシズムのグロテスクな姿を浮き彫りにすることなのである。
Posted by ブクログ
自分は作家でこそないのですが仕事柄文章を書くことが多く、この作品に出てくる「作家」の心境とリンクするところがすごく多く、共感できて安心する半面、「ああやっぱりそうなんか、そうするしかないんか」と、絶望というか心が抉られるような気持ちにもなりました。題材や話の展開も相まって余計に。でも現実でも、救われるかわからずとももがきながら生きていくしかないんだろうな、と思います。生きる勇気とも希望とも違いますが、とにかく何か、生きてく上で必要な何かをもらえたような気がします。
Posted by ブクログ
実際にあった事件を題材にしてるだけに、不快に感じる方も多いかもしれないけど、解説にある通り"事件自体"を思考の外側に置かないとさよならニルヴァーナの深層を掴めない。
この事件を知らなかった自分はこれをきっかけに悲惨な事件だったと知ったから意味はあると思う。
妹家族に振り回されいる独身女性、少年Aに最愛の娘を殺されて何年も苦しむ母親、少年Aを好きになってしまった女の子、異常すぎる性癖を抑えられず14歳にして全てを失ってしまった少年A。
形は違えど皆一筋縄では解決できない地獄を抱えている。
人生はそんなものなのかもしれない。ドラマみたいに一発逆転はなくて、気づいたら"地獄の住人"になっていた。最後まで救われない。
ニルヴァーナ=死ぬ事で得られる苦のない安らかな世界。
「このまま死んでしまいたいです。」
少年Aは裁判所でそう言った。少年Aにとって死ぬことで涅槃の境地(ニルヴァーナ)に行くことができる。世間も死を望んでいる。色々なものを抱えて生きていく方が辛い。しかし国は死ぬ事を認めない。
やっと自分を好きでいてくれる少女という救いを手に入れたかに見えたが、愛する娘を殺された母親のように、最後には大切な人を失い、大きな喪失感とともに生きて償う。母親が少年Aに向けて言った言葉「離れ離れになったとき、あんたには私の苦しみがわかるやろ」のとおりに。
少年Aがした事は勿論許された事ではないけど、少年Aのような、大好きな祖母との生活を母親に無理やり剥がされ、カルト宗教集団の中で生活をして、誰からも理解されない異常性癖を持ってしまった、そんな人間はどうやって生きていったら良いんだろう。迷惑をかけないように死を望んでも国は認めてくれない。「何か原因があるはずだ、それを改善すれば元通りになる」そんなファシズム的な思考で。
大好きな作品だけど良い意味でもう一生読みたくない。読むのが辛すぎる。
Posted by ブクログ
読んでいる間も、読み終わった今もずっと考えてる。
でも、やっぱり理解や共感は難しい。
だからといって何故か放り出せない感情が付き纏う。
こんなにも複雑な気分なのに、またすぐ読み直したくなってるのは何でだろう。
なんだかすごい力….魅力?いや、違う、魔力を持った作品だ。
Posted by ブクログ
何度も何度も読んでしまう。
私が少年Aに興味を抱いているからだろうか。
うんん、違う気がする。
なぜだかこの小説を読んでいると、私自身の中身も洗い出されているような気がして、苦しくて、たまらなくなる。
普段の倍以上ひとつひとつの文章に感情移入してしまう。
話自体が面白いかと言われたら正直分からない。
ずっと地獄のようなぬめりがまとわりついてくるし、事件のことだけでなく書くということ、夢を見るということすらも地獄なんじゃないかと思うほどずっと暗い。
あとなぜ参考文献に元少年Aの手記がないのかと思ったけれど、これが出版された少し後に出されたからなんだね。
結局は創作だから当たり前なのかもしれないけど、実際の少年Aの方が何倍も恐ろしくてグロくて人間みがある。
※少年Aに興味を抱いているのは、莢や今日子のように恋心のようなものではなく犯罪心理的な面からである。
Posted by ブクログ
神戸で起きた女児殺害事件を題材に、加害者の少年、被害者の母親、犯人を崇める女子、実録小説を書かんとする作家志望の女の各視点から罪と罰に迫る。人間のリアルな感情をシビアに表す著者の持ち味が発揮された力作
Posted by ブクログ
何冊か窪美澄さんの本を読んだことがあったので、わりと軽い気持ちで読み始めたが内容はかなりしんどいものだった。
ハルノブは人の中身が見たいと言っていたが、私たちのような読書するタイプの人間も結局人の中身が見たいのだと思う。
涅槃(ニルヴァーナ)には辿りつかず、地獄を歩き始める本なので病んでる人は読まないで。
Posted by ブクログ
ううん…すごく考えさせられた…
視点が変わると事件の見方がこんなに変わる、
登場人物すべてに共感できてしまって、なんだかつらくなった…
実際に起きた少年Aの事件を題材にしているけれど、犯人像はかなり違う印象。
この本だとAにも辛い過去があって、魔が差した、みたいに読めて
同情してしまったし、更生して欲しいと思った。
だけど本当の事件を調べると全くそんなことを思わなくて。
この小説を被害者家族が読んだら、Aが美化されてて辛いだろう
犯人に対して「仕方がなかったんだな」と感じてしまう描き方は、
関係者にとってはあまりにも残酷ではないだろうか
本を読んだ感想だと
皆、しっかり生き抜いてほしいと
他人ながら悲しく願った
家庭環境って大きい
「違う環境だったらこんな事件を起こさなかったか」
と考えると分からないけど、もっと違う選択をできていたと思う
重いなぁ
特に最後。なっちゃん…
題材があるからこそ、小説の心情が重く感じる
Posted by ブクログ
誰も幸せにならない辛い辛い話しだった。
さよなら、ニルヴァーナというセリフは、死をイメージさせる涅槃からの別れ、生きるというメッセージだったのかな?
と、勝手に解釈した。窪美澄作品の中でも特別異様な作品だったけど、やっぱり読み終わった後に心に残るもやみたいなものがたまらない。
Posted by ブクログ
正直に言うと、後半は先が気になってどんどん読めた。でも前半は、重くて嫌な感じで、中々読めなかった。フィクションだとしたら、呆気なくて切ないけど面白いお話だと思う。
ただ確かに、本当にあったことと考えると、被害者家族は嫌だろうな。倫太郎も一緒に死ねてればいいのにって思ってしまったし、最後のなっちゃんの様子は、悲しみで気が狂っちゃったってことじゃないのかな?
職業柄は、晴信の成育史可哀想。親も人間で未熟だよなぁ、子どもができたらいきなりまともになれるわけじゃないし。血の繋がりって難しいな。
涅槃と因果。
私は、このタイトルは、輪廻からは良くも悪くも抜け出せないし、望んでしまった煩悩がやっぱり私たちの首を絞めるっていうこと?的な感じじゃないのかな。
莢もなっちゃんも倫太郎も。
ああ、読み応えあったけど、絶望的だった。
Posted by ブクログ
すごく読み応えがあった。けれども救いのないラストだなあ、、晴信がすごく美化されてる気がする。
確かにこの国は、被害者が守られず加害者が守られる不思議な国だと改めて思った。
Posted by ブクログ
少年犯罪の犯人、それを崇めるファンの女の子。そしてその二人を小説にしようと思う小説志望の女性。
本当にあった事件がモチーフになっていて、グロテスクなところもある。後味はとおっても悪かったですね!でも途中から引き込まれてずーっと読んでた。
面白いと言っていいのか悩むけど、つまらなくはなかった。
莢は結局なんかの病気だったのかなあ…?
Posted by ブクログ
かなり胸糞悪いので、読んでるだけで、気持ち悪さはあった。よくもここまで、怒鳴り付けたくなるようなキャラクターを描けるもんだと感心するくらい。どこまで堕ちていくのか知りたくて読み進めた。
Posted by ブクログ
酒鬼薔薇聖斗でしたか。
グロい描写、リアリティのある世界観、ドキドキワクワクして読んでいましたが、最後は放り出された感覚。考察していらっしゃる方のものを見て、なあるほど、放り出されていて正解か、ってな感じでした。
Posted by ブクログ
結末は誰かが救われるわけでなく、読後感はあまりよくはないものでした。
人の内部をみたいという欲求、それ自体は誰にでもある感情だと思います。犯人である人物は、それを物理的な手段をもってしか満たすことができない部分で、常人と相容れない考えの持ち主でした。
ものを書くことで人の内部を覗こうとする女性作家の存在は、他人からは理解され難い感情を持つという点で犯人との共通点を持つものでした。この女性作家の持つ感情は、作者のこれまでの人生や考え方を強く投影させたものであると感じました。個人的にですが、終盤の女性作家の感情描写について、実在の残酷な事件を取り上げることへのエクスキューズに感じてしまいました。
Posted by ブクログ
少年Aの事件はどうして起きたのか。
事件の後、少年Aはどうしているのか。
被害者家族の人生はどのようなものなのか…。
どこまでが真実で、どこからが創作なのか。
Posted by ブクログ
怖かった。サイコパスとか性癖っていう言葉で人間を区別しきるなんて無理だと感じた。
出来事の外側の事実と内面的な事実は、全く違う気がした。怖かった。
Posted by ブクログ
装丁はやさしいい雰囲気に感じたけど、
いろんな意味でショックをうけた。
嫌な人物たちの登場。
理解不可(私にとって)な母親(少年Aの母)、
作家の妹(とても困るキャラ―)・・・・・・
(ノンフィックションみたい)
加害者を崇拝するということも私は最後まであまり理解できなかった。
性的表現や、少年Aの殺害状況?ルーのネズミ実験?
などあまりにもリアルすぎて気持ち悪かった。
※【この国のすべての病は、母親から起こる】 わぁ・・・
心が痛い・・・
Posted by ブクログ
忘れることも出来る。
忘れずにいることも出来る。
けれど忘れられないことがある。
本当にあった凶悪事件を忘れかけていたけど
こうしてノンフィクション×フィクションにして、色んな立場の色んな感情達が絡み合って想像してしまう。それが楽しかった。
著者らしい描写もありながら著者らしくないなと思う部分もあり複雑な気持ちになったので星3。
Posted by ブクログ
娘を失い苦しむ母、家族がいることによる閉塞感に苦しむ子供。
登場人物が皆家族関係に苦しめられ、それでもわずかな光に手を伸ばそうとする姿に胸が苦しくなります。
終始暗い感じで進みますが、展開が上手いので先が気になり読み進めてしまいました。
ハッピーエンドではないので、読後感はなんともいえないもやもやが残りますが、「それでも生きなければいけない」という強さが感じられる作品です。
Posted by ブクログ
さよなら・ニルヴァーナ 窪美澄
息が、出来ないほど何度もページを閉じ深呼吸をして、箸休めのために別の本を読み、また再開する。
途中まではB級小説に転落したか窪美澄?と苛立ちを覚えた。
やっていい題材かどうか、私が批評するものではないけど、二児の母親として、読む度に胸が締め付ける。
私が被害者の母親だったら?きっと死にたくなるんだろう。
私が加害者の母親だったら?死んでも死にきれないおわびになれないと思う。
大変な人生を歩んだ人に読んでほしい。希望を捨てないでほしいと思ったけど、結末はあまりにも残酷だったので、どう話せばいいか。
結局最後までちゃんと読まずにページを閉じました。
もっと大人になれたら、もし少年Aに出会ったら、私はどんな言葉をかけるんだろう。
Posted by ブクログ
悪意のない悪事とか、善人にも降りかかるどうしても避けられない偶発の不幸とか、とんでもなく苦しい、それでも世にある恐ろしい事を考えてしまう。
作者の不幸の描き方が抉るように残酷なんだよな。
苦しい苦しい本です。元気な時にゆっくり読まないとキツい。
ままならないよな、人生。
Posted by ブクログ
重いしグロい。
表紙からは想像がつかない重グロさ。
親目線で読んじゃうから、少年Aの母親でも光の母親としても辛すぎた。再読はしない。
しかも、最終章が分かりにくくて…送り出すなっちゃんの気持ちも分からないし、黒い車は何なの?