感情タグBEST3
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自分の周りを眺めたいときに、読み返したい本。
中編2本だけど、どちらも内容が濃くて読み応えがある。
家族というものに対して、自分の中でじゅくじゅくに膿んで、でも外に出せず言葉にできない傷を、ぴったりくる表現であらわしてくれた。
傷は治せないし、そう簡単に癒せないけど、「ここが傷ついているよ」と教えてくれて知ってくれるだけでも、とても救われた気持ちになるのだなぁと思った。
救われない気持ちの人に出会ったら、下手な言葉をかける前に、そっと差し出したい一冊。
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17/05/18 (35)
クラウドクラスターはつまりはお母さんのことなのね。お母さんを愛する方法、か。むつかしいね。
・私にも守護の天使がいるだろうか。
ベッドに横になって左手を天に向けた。守護の天使がいるのなら、手を握ってと心のなかで思う。ベッドの上には天井の木目模様があるばかりだ。目を閉じると目の端から涙が流れて、耳の穴を濡らした。頭のなかに銀色のきらきらしたものが充満する。(P47 クラウドクラスターが愛する方法)
・「誰がどんなことを言ったって、さとちゃんが感じたことだけがほんとなんだよ。さとちゃんはね、もっとまわりに怒ったり怒鳴ったりしてもぜんぜんいいと思うよ。ときには荒れ狂う雨や風もないとね、青空は見えないもんなんだよ」(P140)
・ママが出ていった日、ばぁばは、クローゼットに隠れていた私を見つけて、私の前にしゃがんで言った。
「こういう日は大食いしてそのままぐっすり眠るのがいいのよ」(P167 キャッチアンドリリース)
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家族であること、家族になることの困難と希望・・・か。
わかる部分もあるけれど、あまり共感したくない感じもするなぁ。
同じ状況になりたくないというか・・・w
普通とか、平凡とか、平常とか、一般的とか、認識にもよるけれど、そしてつまらなそうではあるけれど、そういうものって貴重だったりするのかもしれないな。
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窪さんの本は何冊か読みましたが、、いつもどこか揺さぶられる様な感覚を覚えます。
主人公のさとちゃんと同世代で、この物語も年末年始で、だから何かとてもリアリティを勝手に感じてしまいました。
元彼と一緒に住んでいた頃に「食器を洗ってくれるかな?」という一言さえ言えなくて思い悩み。
今の彼氏にも同じ様に小言に口をつぐみ、嫌いになるポイントが日々加算されはじめ、元彼の時と同じことを繰り返すことを危惧し。
何だか見に覚えがある気がしました。笑
家族という複雑な存在には私もけっこーひねくれた思いを持っているので、本文中の
自分が重そうに抱えている荷物を「ほかに、もっと重い荷物を持っている人はたくさんいるんだから。その荷物なんてまだまだ軽い方でしょ」とは言われたくなかったのだ。
…という言葉には思わず大きく頷いてしまいました。
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初めて窪さんの小説を読む。「ふがいない僕は空を見た」の作者、という情報しかなかったので、あまり深く考えずに購入。紗登子の周りの人に対する遠慮とか、本当は打ち明けたいこととか、きっと誰もが生きていく上で抱えるものなのだろうに、それを大したことのないこと、と向井くんに片付けられている部分を読んでいて腹立たしくなった。みんなそれぞれ自分の度合いで苦しんでいるし、誰が誰より苦労しているというレベルなんてあるはずがないのに。反して克子との話は気分が晴れた気がする。
ただ少し終わり方が急だったから驚いた(笑)
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このところハマって読んでいる窪美澄さんの作品。
表題作は、母との関係がうまく行かず、男性との関係もちゃんと自分の言いたいことが言えず、うまく築けず、でも久しぶりに会った母と母が再婚した若い男性とのひと時を経て、少し前を向ける。
これきっかけに本人も買われるといいなあと思ったラストだった。
この作品はなんだかちょっと世界に入り込みづらかった。
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東武東上線の下り線に乗って移動するシーンは昔使っていた路線だったので懐かしさがあった。生活感の描写がリアルなので、自分も他人の家にお邪魔したような居心地の悪さを感じてしまう。
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「クラウドクラスター」とは積乱雲、入道雲のかたまりを意味するそうですが、それを主人公の母に例えています。
母親と娘、同性であり親子であるが故の複雑な思いが綴られていますが、気持ちの良い読後感でした。
「キャッチアンドリリース」は釣った(キャッチ)魚を傷付けることなく再放流(リリース)する意味合いです。
こちらも家族の物語ですが、親に対して持って行き場のない感情を抱えた子供の心情がリアルに描かれていて惹きつけられます。
いつもより暗さも陰鬱な感じも少ないけれど、窪 美澄さんの描く世界感は癖になります。
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子供の頃、自分たちを捨てて母が家を出て行ったことにどこかホッとした自分に後ろめたさを覚えると同時に、母に捨てられたという思いから今も母を愛することができない自分を持て余す紗登子。
同棲をしていた男からの結婚の意思表示に戸惑い、逃げ腰になる彼女のどうしようもない狡さが嫌だ。
結婚しているわけじゃないから、家事はお互いにしよう、と言いながら、男に住む場所を依存する女のご都合主義。身勝手さ。本人が自覚しているとはいえ、どうしたって共感できない。
主人公に共感できないってことは、私が家族に恵まれていたってことなのか、あるいは酷く鈍感だってことなのかな。。
こんな作品が多すぎて、それに共感する人が多いなら、今の世の中先行きは暗いな‥‥
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読み終えてから少し経ってからこの感想を書いているのだけど、わりと印象の薄い作品だったのかも、というのがひとつの感想。
中編が2つという構成の作品だったのだけど、表題作はものすごい事件が起こるわけではない日常の物語で、だけど小さな毒があちこちに潜んでいる。
仕事も恋愛もなんとなくうまくいかないアラサーの主人公・紗登子が、自分を捨てた(と思っていた)母と14年ぶりに再会したところから物語は始まる。
自分の恋愛がうまくいかないことを母との関係性のせいにしてしまいたくなったり、仕事と恋愛を公私混同してしまったり、彼女にはどこか境界線を曖昧にしがちなところがある。
そんな様々を含め、自分が産まれた家族や、自分が大人になって築いていく家族とうまくやることの困難さを描いている。
2つめの「キャッチアンドリリース」は小学校高学年の男の子と女の子が主人公。2人は棟違いの同じマンションに住んでいて、同じ塾に通っていて、そして片親の家庭であるという共通点がある。
多感な時期に差し掛かった彼らが、母と暮らしながらたまに父に会いに行ったり、父と暮らしながら祖母と仲良く過ごしたり、その中で性徴を感じる出来事に戸惑ったりしながら過ごしていく。
性的な変化に戸惑う描写が、何だか胸が痛んだ。変化していくことの恐ろしさは、子どもにも大人にもあるけれど、不安定なところに立っている子どもだとその恐ろしさもさらに大きい気がする。
こういう小さい毒が窪美澄節なのだけど、大事件が起きない分マイルドな印象で、だから読後の印象も薄かったのかもしれない。
厚みもそんなにない小説だったのでとても読みやすかった。さらっと読むにはぴったりでした。
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理想の家族を夢みる人たちの、家族であることの現実や家族になることの困難と希望を描く2篇。
家族とは最も小さな集団でありながら、その維持や継続に困難さも持ち得る。損益を目的ともしないし、絆という言葉でも表せない不思議な共同体だ。登場人物たちも疑問を抱きながらも依存する。でもそれが家族の在り方であり、時間の経過を共有するのが家族と思う。
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・クラウドクラスターを愛する方法
家を出ていった母。同じ様に専門学校の卒業とともに家を出た娘の紗登子。母や父、実家との微妙な距離、自分の今後に悩む。ちょっと島本理生の小説と似た感じがした。個人的には「ふがいない僕~」や「晴天の迷いクジラ」の方が好き。
・キャッチアンドリリース
同じマンションに住む小学生の莉子と光。2人とも両親は離婚。こちらの話も今までに読んだことある窪さんの小説とは違った印象。でも、窪さんが捕らえている本質は変わらないかな。