窪美澄のレビュー一覧
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「はたらけど はたらけど猶 わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る」
という石川啄木の短歌は教科書にも出てくるくらい有名な国民的短歌らしい。(知らなった。)
この小説は恋愛小説だが、主人公の日奈と海斗は介護士の仕事をしており、この石川啄木の歌は二人の生活をまさに言い表している。恋愛だけでない色んなことを伝えてくれる小説だと思う。
狡くて滑稽だけど、優しくて愛らしい、すごく矛盾した、一筋縄ではいかない人間の姿が書かれている。恋愛の胸キュンというよりも、日々の暮らしと労働をメインに、誰かに支えてもらわないと生きていけない矛盾だらけの男女の様子を描いている。
海斗の日奈への一途な想いが苦しかった。主人公の日奈の心情は最後まで全然共感できなかったけど、そこも含めてすごく人間らしくて良いと思った。 -
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ネタバレ女性は、長らく、自分の人生を自ら選択して歩むことが難しかった。できるよ、と言われても、多くは慣習や前例によって阻まれた。時代が流れて、できる女性とできない女性、しなくてもいい女性とせざるを得ない女性、ときに分断が生まれることもあり、主体的に人生を歩むことに対する否定的ななまなざしはなかなか減少しなかった。
その理由のひとつにロールモデルが少ないことはあるけれど(できる女性とせざるを得ない女性がいるのでいるはいる)、それ以前に自分が置かれてる状態への違和を感じるきっかけがなかなかないことも理由のひとつだと思う。主人公のように、夫の風俗のカードを見つけたりしない限り。また、違和を感じても、自ら選択したいと思える心の準備や選択するぞという意志の確立ができるタイミングも難しい。
いろいろな条件がそろわないと人生を自ら選択することが難しい環境で、それめも自分とは何者かを考え続け、どうやって主人公が「自分の」人生を歩んでいくかという物語でした。
久々の長年の幼なじみが女性をパートナーというエピソードがある。そのカップル2人の出会いエピソードは自然な感じでよかったし、その幼なじみはロールモデルが少なく自分の人生を歩まざるを得ない女性であるのは間違いなかったという意味で、とても重要なキャラクターである。
ただ、自分が同性に惹かれることに気付いたきっかけがアダルトビデオという女性同性愛者は少数派な気がする(いないとは言わないけれど)。あと、最後の方で「籍をいれてちゃんとしたカップルに」みたいなワードも出てくるけれど、まだ日本では同性婚できないので何を指していたのか謎。
パートナーシップ制度は自治体は認めてくれるけど国家レベルでの法的な保証は何もないし、同性婚のできる海外に脱出してその国の人になって婚姻するならギリギリわかるけど、日本に店を構えようとしているなら海外行く気ないと思うのでたぶんあまり正確な表現ではない。養子縁組を指してるのかなと思ったけど、籍は繋がって安定感はあっても表現に合う感じのちゃんとしたカップルと言い切るには代替案。親子になっちゃうし。
なかなか把握も難しいだろうけど、そこだけパラレルワールド化してしまったので最後急にスッと引く部分ができてしまった。主人公に言ってるのでわかりやすさを優先したのかもしれないが、そういうニュアンスに取れなかったので、ちょっと残念。 -
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窪美澄さんの直木賞受賞作。
巧く作られた話だし、丁寧な描写で読みやすいし、だけどもなんだろう、最終話にはしんみりしたが、「窪美澄さんの直木賞受賞作」ってことで私の中ではかなりハードルが上がったのか、全体的にはもうひとつガツンと来るものがなかった。
■夜中のアボカド
コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との顛末&早世した双子の妹の彼氏との交流の行く末。
そっちから電話かけてくるなんて珍しいじゃないと言いながら、どんな生き方をしてもいつもあなたの人生を応援するよと言ってくれる母親の存在がありがたい。
麻生さんがベッドの中でおどおどしていたのは何がなせる業だったのだろうかとか、亡くなった彼女の双子の姉ってどのように見えるのだろうかなど、色々気になった。
■銀紙色のアンタレス
海の近くに住んでいる祖母の家で過ごした夏休み、そこで出会った人妻のことが気になる中学生。
なんで?朝日ちゃんがいるじゃないか。
■真珠星スピカ
学校でいじめを受けている女子中学生と交通事故で亡くなった母親の幽霊との、二人だけの秘密の同居生活。
こっくりさんで娘をいじめている女子を懲らしめたり、幽霊が見えない父親の思い出話の最中に腕をからめたりする、母親の幽霊がお茶目でいい感じ。
■湿りの海
離婚してアメリカに移り住んだ幼い娘とパソコン画面上での面会を心待ちにする一方、隣の部屋に越してきたシングルマザーの家族との交流に希望を見いだそうとする男性。
心情的には分からなくもないが、どちらかと言えば「勝手なもんだ」という感想のほうが勝ってしまう。
■星の随に
父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさ。
なんか、ひどいなあ、自分たちの事情を説明しない両親もだが、とりわけ生まれたばかりの子どもに手を取られ連れ子の想くんのことを考えられない新しい母親も、どうして、こんな子どもみたいな大人が増えたのだろう。
佐喜子さんのようなお節介な人はもはや希少だし…。
自分はどういう親だったのか、息子たちを育てた昔のことを思い出して切なくなった。 -
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主人公の智晴は自分の学生時代のうちに父親の浮気による離婚、母の再婚相手候補との話し合い、さらには自分自身の初恋により勉強に手がつかなくなることなど、恋心によって人生が大きく左右される経験をする。
智晴の両親の離婚時には双子の弟二人がおり、母親が仕事に出ている間は二人の面倒を見る必要があった。
その頃から恋愛沙汰や弟二人の面倒を見ていたこともあり、良くも悪くも早くから大人びた視点を持つようになる。
そのように責任感を強く持ちつつも、弟たちとともに大人になるにつれて、彼らには彼らの人生もあるということで、過度に干渉するのはやめようという考えになるが、現実にそのような考え方に移行するのはなかなか難しいことだとも思う。
また、自分の人生を大きく変えた父親を最後まで完全に許すことはできなかったが、弟二人は父親が大好きであることと、母親の「たとえ形が変わっても家族」という言葉であった。
これも現実と比べても仕方のないことではあるが、実際に受け入れるのはかなり難しいことだと思う。
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ネタバレ窪美澄氏は2010年に『ふがいない僕は空を見た』でデビュー。2022年の『夜に星を放つ』で167回直木賞受賞。そのほか各種文学賞受賞。
本作は2014年に発表された作品。
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以前窪氏の作品『晴天の迷いクジラ』を読んで、余りにも自分のテイストと合わず、以降敬遠していた作家さんです。
で、老化の効果か、いい感じに前回読んだ作品も忘れてきて、再度チャレンジ?しようと購買に至ったものです(同じタイトルを買わなくって良かった)。
やはり、最近よく名前を聞くので、そらあ何か持っているんだろう、以前読んだものは「はずれ」なだけで、きっと「あたり」もあるはずだ、と手を伸ばしました。
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結論からすれば、なかなかよかった。
ジャンルはまあ恋愛小説です。
構成は、7章で連作チックになっています。章ごとに視点が変わり、読み進めるに従い全体像が立体的に浮かび上がるという構造。
登場人物は、みひろ、圭祐・裕太の兄弟がメインキャラ。彼らの視点が入れ替わりつつ物語が進行します。
話の筋としては、簡単にいえば、やや薄幸なみひろを兄弟で取り合う、とまあこんな感じ。下町の小さい商店街という狭いコミュニティの中で、みひろの家はもちろん、二人の兄弟の家にも不和やらなんやら噂やらがある中、みひろと二人の兄弟が恋愛模様を描いてゆく、というもの。
狭いコミュニティの息苦しさ、そんな閉鎖性にも関わらず人は恋する生き物だということが良く分かる作品です。
そして家族として、家の中の不和を受け止めていく。その修羅場と受容のありようもじっくりと描かれていました。
くっついても、別れても、あるいは元の鞘に戻っても、家族はなかなか大変。そしてコミュニティが狭ければ狭いほど、外野もうるさい。それをどうやって受け止め、受け流すかは、やはり個々の家族次第ということですね。
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ということで窪さんの作品は二作目でした。
恋愛小説というカテゴリのようですが、私としては恋のライバルとなった圭祐・裕太の兄弟を含めた家族の様子に焦点を当てて読んでいました。この家族が今後どうなるのか、と。
その点では、家族小説といっても良いかもしれないかもしれませんね。続編が出たりしたら是非読んでみたい。
きょうだいで同じ人が好きになったことが有る人、友人と同じ人が好きになったことが有る人などにはおすすめ出来るかもしれません。